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凍りの掌 の商品レビュー

4.5

45件のお客様レビュー

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2016/08/24

 シベリア抑留者という存在を誰しもが忘れているのではないか。  たいてい、人は戦争という言葉を毛嫌いすることはあってもそれを深く追求しようとはしないものだ。ましてこの世の中、平和に暮らせるのは彼らが批判されながらも行ってきたその戦争があったからではないか。  そして戦争が終わ...

 シベリア抑留者という存在を誰しもが忘れているのではないか。  たいてい、人は戦争という言葉を毛嫌いすることはあってもそれを深く追求しようとはしないものだ。ましてこの世の中、平和に暮らせるのは彼らが批判されながらも行ってきたその戦争があったからではないか。  そして戦争が終わり厳しい抑留から日本に帰還してもそれを思いやれる存在が日本にはなくなっていた。二重の苦しみに耐えた人たちももう少なくなってきている。  敵国はアメリカだけではないこのマンガに出てくるようにロシアもそうなのだろうがもはやそれらを思い出せる土壌すらなくなってしまった。  日本の行く末は一体どこにあるのだろう。   自分たちの礎にある彼らが帰還しても仕打ちに対し恥ずかしい思い出いっぱいだ。

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2015/10/12

私の祖父もシベリアに抑留された経験のある人でしたが、家族にはその時の話はいっさいしませんでした。 当時の状況がこんな過酷な状況だったということをこの本で知ることができました。

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2015/08/22

作者の「あとかたの街」と同時に日本漫画家協会賞大賞を受賞した本書は、しかし「あとかた」とは違い、ほとんど画像資料のないのにほとんど唯一のシベリア抑留漫画になっている。同じように小熊英二「生きて帰ってきた男」に記された小熊英二さんのお父さん謙二さんの体験と多くの部分は重なる所があり...

作者の「あとかたの街」と同時に日本漫画家協会賞大賞を受賞した本書は、しかし「あとかた」とは違い、ほとんど画像資料のないのにほとんど唯一のシベリア抑留漫画になっている。同じように小熊英二「生きて帰ってきた男」に記された小熊英二さんのお父さん謙二さんの体験と多くの部分は重なる所があり、2人の記憶の正しさを証明することにもなっている。お互い相補う所もあり、是非一読をお勧めする。 ちばてつやさんが「暖かく、やさしいタッチのマンガ表現なのに、そこには「シベリア抑留」という氷点下の地獄図が、深く、リアルに、静かに語られている。」と推薦文を書いている。その通りだと思う。 特に最大の犠牲者を出したという、1946年の最初の冬越えを詳しく描いていて、貴重である。 2015年8月読了

Posted byブクログ

2015/08/11

シベリア抑留者の悲惨な状況を描いた漫画作品です。 シリアスな物語にそぐわない優しいタッチの画風ですが、作品の質を全く損なっていません。 私は漫画をほとんど読まないのですが、これほどの物語を描くことができる作家がセミプロの中にいることに、日本のマンガ界の層の厚さを感じました。 戦...

シベリア抑留者の悲惨な状況を描いた漫画作品です。 シリアスな物語にそぐわない優しいタッチの画風ですが、作品の質を全く損なっていません。 私は漫画をほとんど読まないのですが、これほどの物語を描くことができる作家がセミプロの中にいることに、日本のマンガ界の層の厚さを感じました。 戦後補償の面では全く恵まれなかったシベリア抑留者の皆さんですが、彼らがあの時あの場所で歯を食いしばって生きていたことを、平和な時代を生きる我々はもっと知らなければなりません。この作品を読み終え、改めてそう思いました。

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2015/07/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『あとかたの街』と並んで、おめでたい受賞をしたという話題作。 戦争で本土襲撃や沖縄戦、硫黄島戦の玉砕などを扱った文学やドラマ、映像作品はいくらもある。本作はいささか珍しい、実父にシベリア抑留体験を扱ったもの。 まず心を打たれたのは、著者が口の重かった父の語りについて作品にする、ことに配慮をしていることである。失礼だが、この漫画は表現が拙い。プロではない。当時はコミケで同人誌として発行したものらしい。 戦争末期補給部隊として満州に送られた学徒たち。 ソビエト兵の捕虜となりシベリアの収容所へ送還。苛酷な労働が待っていた。乏しい栄養、倒れていく友はゴミのように遺棄される。終戦すれば上も下もないのに、いまだに上官将校たちがいばりくさって、優遇されている。凍傷で手足を失っても、それでもたちあがって働かねばならない男たち。 やがて、共産主義への思想洗脳がはじまり、かつての上官たちが糾弾され、吊るし上げられていく。生活改善のためソ連兵と交渉してくれた人望厚い兄貴分まで、自分の友人が陥れる。 生死の境をさまよう病を経て、主人公にやがて帰国の命が下る。彼が五年ぶりに土を踏んだ故郷では、人々はすでに資本主義の豊かさを享受していた。共産主義になれた若き父は就職差別を受け、やっとのことで職を得る。シベリア抑留兵たちには、他国から引き揚げた日本兵と違って戦傷者扱いされず、なんらの補償金も下りなかった。 絵があまりにシンプルで、人物の見分けがつきがたく、漫画の表現力としては疑問符がつく。しかし、この作品が訴えんとする事実の衝撃はあまりに大きい。おそらく、著者が言うように、現実の過酷な労働はこの何倍もの地獄であったことだろう。 映画で観て戦争を知った気になっていた自分の愚かさを恥じた。

Posted byブクログ

2015/06/24

シベリア抑留の自分の知識は、その言葉を知っているということに過ぎないレベルであったが、実際に体験した父親からの話をコミックに書き下ろした本作は、私の心に静かに深く、しかしどきりとする体感で迫ってきた。

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2015/05/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

44回 日本漫画家協会 大賞受賞とのことで 早速読んでみた。 シベリア抑留の話は小説などでもいくつか読んでいたが 漫画だと別のものが伝わる。 寒さ、凍土の硬さ、 理不尽さ そして希望がなくなるということ。 家内の祖父もすでに 亡くなっているが 抑留体験者 もっと話をきいておくべきだった。 平和な日々に感謝

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2015/04/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

作者おざわゆきさんの、お父さんの実体験を元にしたお話。絶望感に圧倒される。戦争の怖さってこういうことか。 私の母方の祖父も、母には一切戦争のことを語らなかったといいます。それを聞いただけでも戦争の辛さが伝わってくる。60年封印してきた記憶を語ってくれたお父様もすごいし、そこから優しく丁寧に作品を生み出した作者もすごい。 カバーデザインがヒグマさんの飼い主じゃったー!

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2015/03/10

シベリア抑留の体験記。収容所での過酷な労働、飢えと寒さ、想像したくないぐらいの極限状態です。 でも一番怖かったのは共産思想に赤く染まった収容所内での日本人同士の吊るし上げ。これは軍国主義が共産主義にすり替わっただけだ。戦争に突き進むとき、日本全体でこれと同じことをしていた。同調圧...

シベリア抑留の体験記。収容所での過酷な労働、飢えと寒さ、想像したくないぐらいの極限状態です。 でも一番怖かったのは共産思想に赤く染まった収容所内での日本人同士の吊るし上げ。これは軍国主義が共産主義にすり替わっただけだ。戦争に突き進むとき、日本全体でこれと同じことをしていた。同調圧力で軍国主義に染まっていった。誰もそれを止めることができなかった。戦争で酷い目にあってるのにまた同じことをしている。心底恐ろしかったです。

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2015/01/27

太平洋戦争末期に徴兵をうけ満州に派遣された東洋大学生はついに一発の弾を撃つことも無く終戦を迎え、ソ連の捕虜となりシベリア収容所送りとなる。劣悪な環境下での強制労働、飢えと寒さ、次々と死んでいく戦友達、自分も死線をさまよい転々と収容所を渡り歩く。ソ連に取り入るもの、赤化されていくも...

太平洋戦争末期に徴兵をうけ満州に派遣された東洋大学生はついに一発の弾を撃つことも無く終戦を迎え、ソ連の捕虜となりシベリア収容所送りとなる。劣悪な環境下での強制労働、飢えと寒さ、次々と死んでいく戦友達、自分も死線をさまよい転々と収容所を渡り歩く。ソ連に取り入るもの、赤化されていくもの、日本人同士の争い、そしてついに日本に帰りつくまでのドキュメンタリー漫画だ。やはりこの事実は全員が知っておく必要が有る。そして実写版とか小説ではない漫画という手法が、これを伝えるには最適だとわかる。

Posted byブクログ