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母の遺産 の商品レビュー

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84件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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2012/07/17

ちょうど半分あたりまでは、母娘の話なんだなと思いながら読んだ。 母と娘の関係はいつの時代も変わらず、共感と嫉妬と反目と嫌悪と依存と…で、持ちつ持たれつ、どっちもどっち、とも言える。 中程から、むむ?これはお金の話?それとも、少しずつ老いを感じていかねばならない50女の話?となっ...

ちょうど半分あたりまでは、母娘の話なんだなと思いながら読んだ。 母と娘の関係はいつの時代も変わらず、共感と嫉妬と反目と嫌悪と依存と…で、持ちつ持たれつ、どっちもどっち、とも言える。 中程から、むむ?これはお金の話?それとも、少しずつ老いを感じていかねばならない50女の話?となったあたりから、流れがよどみだし、苦痛と言っていいくらいの感じになってきた。 母のみならずこの娘もまた、お金のない者に対する目が、常識人のように見えてその実、辛辣である。 バスで乗り合わせた老夫婦を「それなりの格好をしているが、二人の表情からも身体つきからも、一生お金の苦労をしてきた様子が何となく伝わってくる」と形容し、安マンションを「近代化を始めて150年後の日本の醜さがその狭い空間にこれでもかこれでもかと凝縮されて入っている」と評する。 残酷と思うほどである。 ただ、彼女にはその自分の位置がわかっている。自分が贅沢をするように育てられ、恵まれた人生を送ってきたということを自覚している。 後半は、なんだ、私には関係ない話だな、という印象が強い。 結局お金のある人の贅沢な悩みでしかない、と思わされたのだけれど、終盤にさしかかった頃、彼女が夫の哲夫に出したメールは、クールで潔く、なかなかよかった。 主人公もその母や姉も、「みじめじゃない!」と言う悲鳴のような声をあげるほど、お金のない者、貧相な暮しを恐れる。あのね、世の中の結構多くの人がそういう生活の中に幸せを見つけて生きているのよ、と諭してあげたくもなる。 ただ、主人公が自分が幼い頃の写真を眺めながら、幸せと気づかず幸せだった頃を思い巡らすあたりに救いはあり、お金のある人の贅沢な悩みの話であるだけでなく、幸せについての話、なのだった。たぶん。

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2012/06/27

うーん。 なんだか設定もいつも通りで(上流会志向な女性たち)、ファンだったら楽しめるのかな。 でも母親への恨み事がこれでもかって書いてあって、面白いかどうかっていったら微妙だけれど、でも、これでいいのかな。 私小説ってことで、いいのかな、と思いました。

Posted byブクログ

2012/06/25

母に早く死んでほしいと願うのは不謹慎なのか?これは悲喜劇。分厚い本だけど、面白くて、最後まで飽きなかった。親の介護、夫の裏切りに疲れた主人公に救いはあるのか?百年あまり前の新聞小説、「金色夜叉」と現代の新聞小説の取り合わせが珍妙なようで、意外に効果的。

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2012/06/24

衝撃的な帯の「ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?」というセリフから年老いた親の介護に疲れた女性の小説・・・と勝手に解釈してしまいましたが、どうしてどうして。 新聞小説だけあってまさしく読み手を飽きさせず、繰るページごとにそれこそドラマが、情熱が、愕きが潜んでいて主人公...

衝撃的な帯の「ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?」というセリフから年老いた親の介護に疲れた女性の小説・・・と勝手に解釈してしまいましたが、どうしてどうして。 新聞小説だけあってまさしく読み手を飽きさせず、繰るページごとにそれこそドラマが、情熱が、愕きが潜んでいて主人公のおばあさんに倣って、一ページ一ページ切り取って大事に取っておきたい箇所も数え切れないほど。 老いを看取るということは自分もいつかは老いる、看取られるのだということに改めて気付かされた思いです。

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2012/06/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

読売新聞土曜朝刊連載2010.1.16~2011.4.2 中央公論新社2012.3.25 読みやすく、とても面白い小説です 母の介護から死、遺産 夫の浮気をめぐる小説 著者の人生を下敷きにしながらも、小説として面白く読めるように 自由に作りなおした新しい小説空間 新聞に連載した66章をたどる中で戦後の日本が浮かび上がってくる 西欧や芸術に憧れた母の人生を娘もたどっている 夫との離婚を考える心の葛藤 離婚を決断し実行する果断な、容赦のない手際 老いや介護はトレンドなテーマであり、この小説もそこを外していないが読み物として成功している タイトルに新聞小説という言葉を掲げているだけあって 文学的な伝統を踏まえ 新聞小説としての様々な実験にも挑戦している

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2012/06/11

おもしろかった!こういう、読みやすい良い文章で書かれた厚い本、長い小説が、私は好きです。水村さんの本は初めて読みました。他の本も読んでみたい。 余計なひとことー花が咲くのは、梅、桜、桃の順なのでは。

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2012/06/10

彼女の小説は骨格が大きい。 なぜか気になる作家の1人。 亡くなった母に対する肉親であるが故の突き放した思い。 現在の著者の身の上と重なるのだろうか。 読み応えあり。

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2012/07/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『本格小説(上)(下)』があまりにも面白くて、こちらも読んでみた。親の最後を看取る場面や離婚問題、老後の暮らしなどとても現実的であまりにも生々しく、読むのがかなり苦しい。 特に母親が亡くなるまでの病院でのシーンは自分や母親の入院体験があるだけに、将来経験するんだろうという思いと共にリアルに迫ってきた。 母親が亡くなるまでを一晩で一気読みし、翌日、母親が亡くなった後のシーンを一気読み。後半(母親が亡くなった後)は、気楽に読めるし、箱根湖畔ホテルのちょっとミステリーチックな雰囲気やそこに集う人々との交流がなかなかよくて、人付き合いをあまり好まない私でもこんな雰囲気ならといいなと思えた。 読後は意外にもスッキリ。むしろ勇気が沸く。最後の姉の奈津紀の配慮はとても嬉しかった。これで何となく過去が相殺されるように思えたし、姉妹愛があることにもホッとした。そして姉の夫裕二の坊ちゃん育ち故の懐の大きさもホッとして、それと同時に哲夫は別れて正解だったと思わせる…、上手いなあと思う。 それにしても、どうみても主人公と著者が重なってしまうので、故に浮気夫は岩井氏なのかといぶかってしまう。

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2012/05/08

母の死を願っている、というよりは、元気でキレイなままずっと生きていて欲しい、という思いが感じられました。過去にいろいろあった上に、我儘言い放題の老いた母にうんざりしていたとしても、やっぱり母娘。 それに引き換え、夫婦の絆は・・・。

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2012/05/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

おんなもの。というか、母娘、家族の愛憎混じる物語から、最後は思いもよらなかった浄化へ。といったところか。 時代背景が物語のベースとして見えてきて、同じく新聞小説であった金色夜叉のエピソードが物語内の現実と、物語の中で読まれる物語としてうまい感じで絡んでくる。そして、フランスで金色夜叉に当たるのがボヴァリー夫人。 物語のようなドラマチックな人生を人間が求めてしまうのは、物語を知ってしまったからかもしれない。という問いかけには、なんとも考えさせられる。 意味と物語を求めすぎて、私たちは自然の流れでなんとなくどこかに流されていき、それを受け入れるのが下手になっちゃったんじゃないかと思った。

Posted byブクログ