紙の月 の商品レビュー
極悪非道な人間ではなく、普通の主婦が、正義感の塊だったような女性が、どんどん堕ちていく。堕ちて堕ちて、戻れなくなるさまは、読んでいてとても怖くなる。またそこに惹きつけられて、読み続ける。 角田さんのエッセイを読んだあとだからこそ、女性の深層心理の描き方が、その洞察力や観察力の賜...
極悪非道な人間ではなく、普通の主婦が、正義感の塊だったような女性が、どんどん堕ちていく。堕ちて堕ちて、戻れなくなるさまは、読んでいてとても怖くなる。またそこに惹きつけられて、読み続ける。 角田さんのエッセイを読んだあとだからこそ、女性の深層心理の描き方が、その洞察力や観察力の賜物だと思い至った。 お金が怖いというよりも、普通の人が犯罪に手を染めてしまう時代になっているということが怖い。どこか満たされない、幸せを感じられない、そんな人が世の中に増えているということが怖い。 小川糸さんの「つるかめ助産院」を読んだあとだからだろうか、南の島の人は、このような小説を読まないのではないだろうか?と思った。都会の、現状に満たされない多くの女性が読んで、妙にリアルに自分と当てはめて、怖い、けれども面白い、と思いながら読むのではないだろうか。
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最初に主人公が横領し、逃げていることから物語がはじまる。 そして横領してしまう理由が明らかになっていく。主人公が堕ちていく様子に、思わずストップかけたくなる心境になる。読み進めたいけど、悪事を働くとこはみたくない。そんな複雑な心境にさせる角田さんの技量にまたやられた感じになった。
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一晩で一気に読んだ。 角田さんの長編、今回もずしりとしてます。 誰かの一言や誰かに出逢うことがきっかけで、それまでの我慢の糸がプツリと切れることって誰にでもある。ここまで豹変するのも怖いがそこがリアル。人生転落し始めたら、一瞬だ。 もしこの作品を映像化するなら、梨花は松雪泰子、光太は綾野剛、亜紀は鈴木砂羽がいいな。
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これ読んでお金って怖いね、って一言ですんじゃえばいいんだけど、あっさりそう言っちゃえる人はお金で苦労した経験がないとってもしあわせな人ではないかと思うんですがどうでしょう。 金に振り回されるなんてバカらしいと言えるほどに達観できないのがふつうなんであって、たいがいの大人は毎日多かれ少なかれ金勘定しながら日々を生きてるんじゃないのかしら。 日本人の多くが一番快感を覚えるのは消費をしている時だと昔テレビで言ってて、まあそれを鵜呑みにするわけではないけど、たしかに消費って気持ちいいんだよね。 でも反面、贅沢すると罪悪感もどこかにあったりする。 言い訳したり、理由つけたりしたくなるのはなんでだろう。 あってもなくても振り回される。 そうならないためにはどうしたらいいのか、って考えるきっかけをくれます。 若い男に入れあげて横領に手を染めた女。 ってたとえばニュースで聞くと私たちは色々想像して好き勝手言うんだけど、その裏側にはきっと当事者にしかわからない色んな事情とか偶然とか感情とかの要素が絡み合ってる。 この小説はそういう裏側の事情みたいなもの、犯罪にいたるまでのエピソードとか、言葉にならないような心の動きをこれでもかってくらいに綿密に積み重ねてくので、梨花が特別「バカな女」だったわけじゃないと思わされる。 横領はじめる前がみじめな貧乏生活だったかといえば、金銭的には全然めぐまれたセレブ妻。 だけどそれだけじゃ満たされない何かがあったからそこに行ってしまったわけで。 それが一体なんだったのか。 しかし角田さんの小説のこのリーダビリティってのはなんなんだろうねえ。 同行の上司にバレそうになっちゃう場面なんてサスペンス的にハラハラさせられるし、ホテルのスイートでの豪遊とか、こっちもお金つかって贅沢してるみたいな爽快感を味わえたり。 買い物や預金残高なんかの具体的な金額が出てくるのも面白い。 洋服をすすめる店員の言葉なんか、リアルすぎて笑ってしまうくらい。 個人的には一番木綿子の金銭感覚に近い、でも独身のときは亜紀みたいに物欲爆発しちゃったこともあるし、和貴の生活の倦怠感みたいなものもわかる。 それぞれに共感できてしまうのがすごい。 ちょっと読み始めたら止まらなくて深夜一気読みコースでした。
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わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が約1億円を横領した。梨花は発覚する前に、海外へ逃亡する。梨花は果たして逃げ切れるのか? という内容紹介だけど、逃げ切ろうと思っている犯罪者、のような感じではない。 平凡な結婚生活、夫へ自分の意見を言えないがそれで満足しようとしている...
わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が約1億円を横領した。梨花は発覚する前に、海外へ逃亡する。梨花は果たして逃げ切れるのか? という内容紹介だけど、逃げ切ろうと思っている犯罪者、のような感じではない。 平凡な結婚生活、夫へ自分の意見を言えないがそれで満足しようとしている自分、主人公の梨花の他にも彼女の同級生や元恋人などの章があり、最初は別々の物語のようだけど・・・ 年下の大学生・光太と出会ったことから、金銭感覚と日常が少しずつ少しずつ歪んでいき、「私には、ほしいものは、みな手に入る」と思いはじめる。 横領事件より、浮気や女としての悲しみ、焦燥感、夫婦のことに自分に当てはまることもあって、読み進めるのが怖くなったぐらい。さすが角田光代だと思った。こういう長編小説、もっと書いてほしいなぁ。
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どんどんと堕ちていく様が恐ろしくも、目が離せず。 苦しい内容でしたが、一気読み。 ここまでしないだろ、と内心突っ込みつつも、こういうこともあるのかもしれないと、ただただ怖い。 自分よりうんと若い恋人はダメだな、とか(笑 そうなってしまう気持ちがわからなくもない・・・気が...
どんどんと堕ちていく様が恐ろしくも、目が離せず。 苦しい内容でしたが、一気読み。 ここまでしないだろ、と内心突っ込みつつも、こういうこともあるのかもしれないと、ただただ怖い。 自分よりうんと若い恋人はダメだな、とか(笑 そうなってしまう気持ちがわからなくもない・・・気がする・・・・。 お金・・・お金・・・。怖い。
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文章構成とリアリティ、読ませる引力を感じます。が、この類いの心理描写は経済観念の欠陥があり、「読むんじゃなかった」と私の男脳の感想。なにかを得るためでもなく、なにかを代償にしたわけでもなく、ある種の副産物である媚薬(お金)から快楽を得た女の話。それは私の女脳の感想。 水中に落とした鉛のように沈んでいく物語。 角田さんの小説でお金中心の物語は「しあわせのねだん」以来。
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銀行から1億円を横領して海外逃亡した契約社員の梨花と、その友人や元彼の過去と現在が淡々と語られて特に盛り上がりも無いまま終わってしまいます。「え~~っと、それで?」というのが正直な読後感です。
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銀行から横領した金で男に貢ぐ話というよりも、 多様化する夫婦の形の中で何のために稼ぐのか 収入差は夫婦の力関係に影響を及ぼすのか、何に幸せを見出すのか… ということ等を考えさせられた話。 物語のスピードにのって一気に読んでしまう。 「これがあるからこの子たちは幸せだって言えるものを、 お金じゃなくて、品物じゃなくて、おれたちが与えることは無理なのか」 の台詞がずしりと残る『紙の月』、手にとって良かった。
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何人かの物語を交互に語るスタイルで どの話も引き込まれるせいで ときどきこの人誰だっけと思うことがあった もう少し整理して読めば もっと深く読めた気がする やはり横領にはまっていく 行員女性の物語が圧巻 異常な心情を ワイドショーのように 心のヤミとか見えない動機とか 自分たち...
何人かの物語を交互に語るスタイルで どの話も引き込まれるせいで ときどきこの人誰だっけと思うことがあった もう少し整理して読めば もっと深く読めた気がする やはり横領にはまっていく 行員女性の物語が圧巻 異常な心情を ワイドショーのように 心のヤミとか見えない動機とか 自分たちとは隔てた世界のように 扱うことなく 自分と陸続きの 自分にもありうる世界なんだと 思わせるのは小説の力だ 消費依存がテーマ といってしまうと この小説をつかみきれていない感じがする 消費と夫婦関係,家族関係 そんな主題だろうか こわいこわい話
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