共喰い の商品レビュー
欲望は、すべて水に還る。少年たちの愛の行方と血のいとなみ。川辺の町で起こる、逃げ場のない血と性の濃密な物語を描いた表題作と、死にゆく者と育ってゆく者が織りなす太古からの日々の営みを丁寧に描いた「第三紀層の魚」を収録。第146回(平成23年度下半期)芥川賞受賞作。
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表題作「共喰い」は女性にとってかなりおイタな作品だった。 川をめぐる描写も毒々しく作品世界を強く反映されていた。 同時収録の「第三紀層の魚」は小学生信道と曽祖父の釣りをめぐるふれあいで、最後はちょっとだけうるっときた。 この本に収録されているものは真逆ではあるけれど、とても印象深...
表題作「共喰い」は女性にとってかなりおイタな作品だった。 川をめぐる描写も毒々しく作品世界を強く反映されていた。 同時収録の「第三紀層の魚」は小学生信道と曽祖父の釣りをめぐるふれあいで、最後はちょっとだけうるっときた。 この本に収録されているものは真逆ではあるけれど、とても印象深い作品ばかりだった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「共喰い」の方は方言とクセが強くて読みにくかった。 主人公達の性癖には共感できなかったが、欲望が狂気じみていてなかなかこう書ける人はいないと思った。 「女が父のお古なら、自分自身は、一番新しい父だと感じた。」とか。 「第3紀層の魚」は教科書にも載せれそうで、硬質な印象で良かった。勲章を買おうとするシーンが好き。 どちらの作品も情景が思い浮かびにくい。それにしても評価低いなぁ 苦笑
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セックスのときに女を殴る父と右手が義手の母。自分は父とは違うと思えば思うほど、遠馬は血のしがらみに翻弄されて──。映画化が決定した、第146回芥川賞受賞作。(Amazon.co.jp) 休日にふらっと本屋さんへ。特に目的もなかったので、ゆっくり歩きながら眺めていると、本著が目に...
セックスのときに女を殴る父と右手が義手の母。自分は父とは違うと思えば思うほど、遠馬は血のしがらみに翻弄されて──。映画化が決定した、第146回芥川賞受賞作。(Amazon.co.jp) 休日にふらっと本屋さんへ。特に目的もなかったので、ゆっくり歩きながら眺めていると、本著が目に留まる。著者の田中慎弥氏が、芥川賞を受賞した際に「(石原)都知事閣下と東京都民各位のために、もらっといてやる。」というニュースを思い出しました。小説はほとんど読まないのですが、『どんな内容なんだろう?』と思いそのまま購入。 テーマが、性・暴力・血縁なので、うーん・・・かなりダークな内容でした。『こういう人生観もあるんだなぁ。』とネガティブな気持ちで読んだのですが、不思議なことに嫌悪感は出なかったので一気に読みきりました。上手く表現できないのですが、リアル感とモヤモヤ感が絶妙に入り込んできた感じ。親近感を覚える描写が少なかったのですが、こういった視点で読めたのは逆に新鮮だったのかもしれません。著者も仰っていましたが、女性の登場人物は丁寧に描かれていたので、とても好感が持てます。特に、仁子さんは強くてやさしいお母さんなのですが、最後は人間の凄まじさを見せつけてくれました。 普段はビジネス本ばかり読んでいるのですが、たまには目的を持たずに読みふけるのもいいですね。純文学は理解できていないジャンルなのですが、消化不良であれこれ思考する徒労感も心地いい。
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一気読み。作者のイロモノっぷりばかりが先入観としてあったので、あまり期待せずに読み進めたけど、表題作の共食いはドライブ感満載で引き込まれずにはいられない。カラマーゾフの兄弟も並行して読んでたので、同じ血を分かつ蛇の共食いに重なる。友達にちょうど山口出身のやつがいたので、方言がまた...
一気読み。作者のイロモノっぷりばかりが先入観としてあったので、あまり期待せずに読み進めたけど、表題作の共食いはドライブ感満載で引き込まれずにはいられない。カラマーゾフの兄弟も並行して読んでたので、同じ血を分かつ蛇の共食いに重なる。友達にちょうど山口出身のやつがいたので、方言がまた妙にリアルに聞こえてくる。第三紀層の魚も淡々としてよかった。でも一番は瀬戸内寂静との対談かも(笑)
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川辺の町で起こる、逃げ場のない血と性の濃密な物語。主人公「遠馬」の憤りや、川や雨の匂いを強く感じました。著者田中sanの故郷山口県?の会話も新鮮。同収録の「第三紀層の魚」は、死にゆく者と育ってゆく者が織りなす太古からの営みが描かれていました。 【第146回芥川龍之介賞】
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登場人物の話し方が標準語だったらここまでえぐい気持ちにならなかったと思いました。きつい山口弁?と話の内容との相乗効果で色々な意味で強く印象に残る本です。 表現の仕方が独特で、比喩の表現でなるほどと思ったものも多かったです。
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「夜が近づくと川辺は、夕闇とは違う、病気に罹ったような暗さになり、紫色がかった暮れ切らない薄闇が来た。風はなかった。」 第146回芥川賞受賞作品 行為中に相手を殴る父親を持つ 17歳の主人公 遠馬の欲情との 葛藤を描いた作品。 自分も父親の二の舞を演じるのではないかと拭えない...
「夜が近づくと川辺は、夕闇とは違う、病気に罹ったような暗さになり、紫色がかった暮れ切らない薄闇が来た。風はなかった。」 第146回芥川賞受賞作品 行為中に相手を殴る父親を持つ 17歳の主人公 遠馬の欲情との 葛藤を描いた作品。 自分も父親の二の舞を演じるのではないかと拭えない不安感に取り付かれる遠馬は恋人 千種との距離を置くが、お社の祭りの訪れが事態を一転させる。 くすんで異臭を放つゴミだらけの川の存在がきっと映画になると映えるんだろうけど、私にはいまいち想像出来ず、読むのがしんどかった。でもこの汚れた川のお陰で主人公の渦巻く心情が具現化されてるのでしょう…。私には共感して楽しむには難易度の高い作品でした。 『第三紀層の魚』 「曾祖父と釣りの話がしたかった。チヌが釣れないのだと言いたかった。そんなことを話してもなんの意味もなさそうだと思い、もどかしくなった。」 小学4年生の主人公 信道は4歳の時に病気で父親を亡くし、それからはシングルマザーの祥子と2人で暮らしている。また、信道の祖母も夫を亡くしており、96歳の曾祖父の面倒を見ながら生活している。 血縁関係のない大人達の間に挟まる唯一全員と血縁関係のある信道。大人同士の距離感とそれぞれが抱える孤独、浮かんでは飲み込む言葉…鋭い洞察力はないけど子どもだからこそ見逃せない大人達が描かれている。 苦しいことを受け流すことが 大人になるということもしれないと信道を見て思った。
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可もなく不可も無く、というところか。「よく書けた」小説だとは思うのだけれど。純文学よりも大衆文学よりの作品だった。芥川賞受賞ということで純文学を期待して読んだけれど、言葉はいたって普通だ。下手ではないけれど、引っ掛からないというか。 書きぶりは丁寧だし、読者に親切すぎる描写もある...
可もなく不可も無く、というところか。「よく書けた」小説だとは思うのだけれど。純文学よりも大衆文学よりの作品だった。芥川賞受賞ということで純文学を期待して読んだけれど、言葉はいたって普通だ。下手ではないけれど、引っ掛からないというか。 書きぶりは丁寧だし、読者に親切すぎる描写もあるけれど、真摯さは伝わってくる。でも、やはり。でもやはり、なのだ。田中慎弥という人はどんな言葉を使うのだろうと期待して読んだだけに、期待はずれだったのかもしれない。彼は、どんな言葉も使わなかった。 うまい文章を書ける人なら、世の中にいくらもいる。でも、それだけでは駄目なのだ。
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面白いお話ではない。終始生臭く陰鬱。 父と「決別」したことで、主人公は自立できたんだと思う。母親の力を借りて。 いやしかし男とは弱い生き物ですね。
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