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ラピスラズリ の商品レビュー

3.6

63件のお客様レビュー

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2022/01/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

目次 ・銅版 ・閑日 ・竈の秋 ・トビアス ・青金石 私が読んだのは国書刊行会版なのですが、図書館から借りるときに「こんな古い本であってますか?」って驚かれたくらい表紙の色も色褪せ布製の表紙もところどころ傷んでいました。 しかしこの本、2003年に出版された、まだ現役の作家の小説です。 この古色蒼然としたたたずまいが、実にこの本にふさわしいと感心したのでした。 連作長編小説と聞いていましたが、強く繋がっている作品もあれば、雰囲気をかすめる程度の作品もあります。 最後に収録されている『青金石』というのがラピスラズリのことですが、ラピスラズリそのものを冠した作品は収録されていません。 全てが絡まっているようなほぐれているような、複雑な距離感でそこにあります。 冬になると冬眠する人たちの、冬眠前の慌ただしい日を描いた『竈の秋』が一番長く、一番難解でした。 多分論理で理解するのではなく、感覚で理解する話なのだと思いますが。 そして多くの人形たち。 それは痘瘡症(感染症)からの身守りも兼ねているらしい、膨大なコレクション。 現在進行形で語られながら、全てが古ぼけて見える。 ゴーストと亡霊は別物で、それらは時に生きている人間とも普通に交流できる。 母と子、姉妹、親戚の女たち。 時系列も空間情報もあやふやになっていき、頭に浮かぶのはただ、青い闇。 光を反射する青ではなく、光をのみ込む青。 フェルメールの青が、ラピスラズリの青だったような…。 だけどそれは多分、一度終焉を迎えたのちに復活するのである。 秋の枯れ葉に始まる春の目覚めのものがたり。 美しく、儚く、たくましい。 今年最初に読むにふさわしい一冊でした。

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2021/05/22

銅版・画廊にあった3枚組の銅版画。閑日・冬の館の大台所の少年とゴースト。竃の秋・冬眠する主人たちと準備に忙しい使用人たち。トビアス・冬眠から目覚めたら。青金石・聖人フランチェスコ。 シュールでもありリアルでもあり。最初の銅版画の情景とタイトルの短編、ひととおり読み終わってから見...

銅版・画廊にあった3枚組の銅版画。閑日・冬の館の大台所の少年とゴースト。竃の秋・冬眠する主人たちと準備に忙しい使用人たち。トビアス・冬眠から目覚めたら。青金石・聖人フランチェスコ。 シュールでもありリアルでもあり。最初の銅版画の情景とタイトルの短編、ひととおり読み終わってから見直すと、ああそうか、と思えます。

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2020/06/21

作者という幻視者にしか見えない幻想が、読者の想像力をもって読者だけの姿で浮かび上がるという読書の快感。現実を喪失させる嬉しさを存分に味わうことができる。 それこそ小説という媒体、映像のような実像ではない、文章が導く言語化できない幻想の世界がこの本にはある。 極端に言えばそれを味わ...

作者という幻視者にしか見えない幻想が、読者の想像力をもって読者だけの姿で浮かび上がるという読書の快感。現実を喪失させる嬉しさを存分に味わうことができる。 それこそ小説という媒体、映像のような実像ではない、文章が導く言語化できない幻想の世界がこの本にはある。 極端に言えばそれを味わうことができれば満足できて、考察とか解説とか、この本には必要ないとすら思っている。

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2019/12/03

冬に読みたい本でお勧めされて読んだ。 短編集なのですぐ読み終わるだろうと言う考えは甘く、短編とは思えない重厚感。 2週間位読んでたけど、感覚的には凄い長い期間読んでいた気がする。 同じ文を2度読み直し、数ページ戻り、自分の中で物語を何度も噛み砕いて解釈するのにとても時間がかかる。...

冬に読みたい本でお勧めされて読んだ。 短編集なのですぐ読み終わるだろうと言う考えは甘く、短編とは思えない重厚感。 2週間位読んでたけど、感覚的には凄い長い期間読んでいた気がする。 同じ文を2度読み直し、数ページ戻り、自分の中で物語を何度も噛み砕いて解釈するのにとても時間がかかる。 でも、その分読むのは全身全霊をかけて読まないといけないけれども、噛めば噛むほど味が出る本だった。

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2019/08/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

断片的な語りが、まるで悪い夢でも見ているかのようなループに迷い込ませる。 ‪その全貌が見える頃には虜になっていた。‬ ‪閉ざされた冬から喜びの春への移り変わりが美しく、繰り返す四季のように何度も読み返したい一冊。‬

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2019/04/14

幻想のような小説。 言葉の奔流にもがきながらもしがみついて辿り着いたラスト。冬眠者が長い冬を越え、鳥のさえずりを合図に目を覚ましたような、透き通った静寂、淡い光、吹き抜ける春の風を感覚した。

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2019/02/26

冬の間に読もうと思っていたけれど、読了は冬の終わりになってしまいました。 でもそれでも、秋に蓄え冬に眠り春に目覚める〈冬眠者〉の物語を読むのには良い季節だったのかもしれません。 寒いのが苦手なので、冬は冬眠したいと毎年思っているのですが、この物語の冬眠者と召し使いたちの不穏な空気...

冬の間に読もうと思っていたけれど、読了は冬の終わりになってしまいました。 でもそれでも、秋に蓄え冬に眠り春に目覚める〈冬眠者〉の物語を読むのには良い季節だったのかもしれません。 寒いのが苦手なので、冬は冬眠したいと毎年思っているのですが、この物語の冬眠者と召し使いたちの不穏な空気はひゅっとなりました。 お話は、世界が終末に向かっているような「トビアス」が好きです。 外国の絵画を見ているような、懐かしい風景をみているような…幻想的なひとときでした。

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2019/02/05

『 #危険な読書 』からお初の山尾悠子さん❃ こ、これは…何て作品なの!? 独自の世界観!しかも一筋縄でいかないのよ! 五つの短編が収められていて 一話目はふと眺めていた銅版画に纏わる物語。 続いて二、三目話は銅版画に描かれていた冬眠者の世界が描かれる。 冬眠する一族、その屋敷...

『 #危険な読書 』からお初の山尾悠子さん❃ こ、これは…何て作品なの!? 独自の世界観!しかも一筋縄でいかないのよ! 五つの短編が収められていて 一話目はふと眺めていた銅版画に纏わる物語。 続いて二、三目話は銅版画に描かれていた冬眠者の世界が描かれる。 冬眠する一族、その屋敷に仕える使用人達、ゴースト… いいっ!ワクワクする世界観 しっかし、そこまでは分かるんだよ! だけどその後冬眠者という共通点はあるものの 全く違う物語が綴られる。 3度読み返したけど、その理由が理解出来ないぃ! これは時間をおいて再読必須です!

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2018/10/02

冬になると鍵をかけた部屋で人形と共に眠る貴族の「睡眠者」と、その屋敷に仕える者たちの物語。 冒頭の版画の世界へ飛び込んだようだった。 繊細で優美で不思議な言葉で敷き詰められていて、ちょっと毒と寂しさがある。 特に79、80ページの料理の描写が最高。

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2018/08/14

夜の画廊から、人々が冬眠する館の中へ。 作中のゴーストのごとく、読んでいる私の意識が彷徨った作品。 冬の寂しさ、過酷さが妙に肌に残る小説だった。

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