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これからの「正義」の話をしよう の商品レビュー

3.9

301件のお客様レビュー

  1. 5つ

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  2. 4つ

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  3. 3つ

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2022/03/13

「正義への三つのアプローチ」を前提として順に確認し、本当にあるべき正義、道徳、自由とは何かを問い掛ける。10章立て、本文は約400ページ、巻末に原注と同著者の『それをお金で買いますか』序文が付属する。 大学の講義がもとになっており、「この本は思想史の本ではない」としながらも関連...

「正義への三つのアプローチ」を前提として順に確認し、本当にあるべき正義、道徳、自由とは何かを問い掛ける。10章立て、本文は約400ページ、巻末に原注と同著者の『それをお金で買いますか』序文が付属する。 大学の講義がもとになっており、「この本は思想史の本ではない」としながらも関連する一部の哲学者・思想家を紹介する側面もあわせもつ。本書の主な動機と見受けられるのは、サブプライムローン問題で破産した大企業の幹部が税金によって多額のボーナスを受け取っていた事実などをわかりやすい例として、貧富の差の拡大という現代的な問題が考えられる。 著者が前提とする「正義への三つのアプローチ」とは、すなわち「①福祉の最大化」「②自由の尊重」「③美徳の促進」であり、①は功利主義、②は自由至上主義(リバタリアニズム)がこれに該当する。これに沿って第2章で、ジェレミー・ベンサムとジョン・スチュアート・ミルによる功利主義の考え方と二人の違いを紹介し、第3章では個人の自由こそを正義とするリバタリアニズムの論拠を確認する。 これら二つの正義の捉え方を踏まえ、第4章で「戦場で戦う行為」と「子どもを産む行為」を例に功利主義とリバタリアニズムの不備を指摘する。そのうえで第5章以降はカントとジョン・ロールズの思想をベースに、アリストテレスによる道徳観も対置しつつ、「美徳の促進」としての正義とは何かについて論を進めていく。 構成のバランスからもわかる通り、「正義への三つのアプローチ」は等しく扱われるものではなく、著者自身が本書終盤で三つ目のアプローチとして挙がる「美徳の促進」としての正義に拠って立つことを明言している。書籍としてのあり方としてはいかにも中立的にみえるが、実際はリベラル派によるあるべき社会・政治を問い直す意思があり、冒頭のとおり現代社会の新自由主義的な現実への批判を基礎と考えて良さそうだ。 全体としては、哲学者や思想家が提唱した概念や理想をわかりやすく解説しながら、現実的な問題とリンクする例がふんだんに盛り込まれており、このあたりの配慮がベストセラーにつながったとも思われる。終盤には既存の「美徳の促進」としての正義を検証する流れの最後で著者なりの改善点を付け加えるに至り、ここで斬新な結論が導かれるのかと思いきや、結果としてはやや拍子抜けに終わった。 個人的には第5章にあるカントの思想の解説が抜けて興味深かった。もっと哲学思想解説寄りの内容に徹して良かった気もする。

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2022/03/07

幸福の最大化(功利主義)、自由の尊重(自由至上主義)、美徳の涵養(共通善に沿っているか)という3つの視点から、正義とは何かを考える内容。 幾つもの思考実験が登場し「自分だったら何を正義とするか」を深く考えることができるので非常に面白い。 本書に出てくる思考実験の中で有名なの...

幸福の最大化(功利主義)、自由の尊重(自由至上主義)、美徳の涵養(共通善に沿っているか)という3つの視点から、正義とは何かを考える内容。 幾つもの思考実験が登場し「自分だったら何を正義とするか」を深く考えることができるので非常に面白い。 本書に出てくる思考実験の中で有名なのはトロッコ問題だが、考え抜いて自分なりの正義で答えを出したとしても、「死ぬのが自分の友達だったら?」「死ぬのが5人ではなく1000人だったら?」「暴走したトロッコを止める方法が目の前にいる人を突き落とすことだったら?」と条件を変えると途端に回答が変わってしまう。 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/トロッコ問題 自分の正義の脆さと、唯一の正義はないということに気付かされる。 本書の最後に「大切なのは正義に対する議論をやめないこと」と締めくくられているように、正解がないからこそ常に考え続けることが大切であるし、「もしかしたら自分は偏った見方をしているかもしれない」という視点も持ちつつ、しっかりと自分の意見を持って世の中を眺めるべきだと改めて感じた。

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2022/03/05

幸福、自由、美徳 3つのアプローチから「正義」とは何かを問う。 大多数の幸福のために一人が犠牲になるのは正義か。 富裕層の所得に税金をかけるのは正義か。 死を願う者を殺すのは正義か。 4章までは楽しんで読めるが、 5章からは過去の哲学者の思想に触れる内容。 難しくて頭が痛くなっ...

幸福、自由、美徳 3つのアプローチから「正義」とは何かを問う。 大多数の幸福のために一人が犠牲になるのは正義か。 富裕層の所得に税金をかけるのは正義か。 死を願う者を殺すのは正義か。 4章までは楽しんで読めるが、 5章からは過去の哲学者の思想に触れる内容。 難しくて頭が痛くなってくる。 ずっと同じこと考え過ぎてこじらせたのかなとか 思ったり思わなかったり。

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2022/02/05

正義とは何か。哲学者や時事問題にからめて読み解いていく。古から知の巨人たちが求め続けた正義がを簡単に理解できるわけがないよな、ということで私の頭では消化できず。

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2022/01/28

「正義ってなに?君のその考えは普通?」 難しい。量的にも、質的にも絶対に1日で読めない。 しかし、正義はもちろん、普通とは何か、常識とは何か、当たり前とは何かを考えさせられる。 目の前の人の行動やモノをもう「普通」という言葉で片付けられなくなる。

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2022/01/23

「正義」・・子供の頃、ヒーローに憧れた私は、この言葉が好きです。  本書は、功利主義・自由主義・自律と他律・定言命法と仮言命法・・etc.の哲学用語に馴染みのない読者でも理解できるように、具体的な事例を交えながら「正義とは何だ?」を考えさせてくれます。  自分の頭では、全ての内...

「正義」・・子供の頃、ヒーローに憧れた私は、この言葉が好きです。  本書は、功利主義・自由主義・自律と他律・定言命法と仮言命法・・etc.の哲学用語に馴染みのない読者でも理解できるように、具体的な事例を交えながら「正義とは何だ?」を考えさせてくれます。  自分の頭では、全ての内容を理解しているとは到底言えませんが、現在の資本主義に順応し、格差社会を賢く生き抜く知恵を授けるというよりも、明日をほんの少しだけ良くしたいと足掻く人への応援メッセージ的な意味合いが強い印象を受けました。  個人的には、ロールズの「無知のベール」に関する話が印象に残りました。 〇【さいごに】  正義を掲げることは危険と隣り合わせである一方、社会を良くする原動力として必要不可欠な要素だと考えます。私が倒したい相手は「弱者に対する理不尽な暴力、その暴力を防ぐことができない社会システム」かな。  生きていく限り「正義」について考えていく・・ひいては自分の生き方を見つめることに繋がる・・社会の分断が叫ばれる中、私達はどう歩むべきか考えさせてくれる一冊でした。 P.S. 頭が少し疲れたので、甘々の恋愛小説でも読んでリフレッシュしたいです(笑)

Posted byブクログ

2022/01/06

「ハーバード大一番人気の講義」という安易なキャッチフレーズに誘われ読んで見ました。 いやいや、哲学なんて高校の倫理以来ですよ。 大学の講義内容を文書化しただけあって、常に語り口調で書かれています。 殺人、差別、戦争、政治、どれもセンシティブな事例を基に、「正義」とは何か。個人...

「ハーバード大一番人気の講義」という安易なキャッチフレーズに誘われ読んで見ました。 いやいや、哲学なんて高校の倫理以来ですよ。 大学の講義内容を文書化しただけあって、常に語り口調で書かれています。 殺人、差別、戦争、政治、どれもセンシティブな事例を基に、「正義」とは何か。個人の中でどのように正義が生成されているか、そしてそれが本当に正義と呼べるのかについて古来の学説を交えながら考えていく。 すごく考えさせらますよ。だって正解なんてないんだもの。要は自分が何を信じて生きていくかについて考えるんだもの。自分が持ってる道徳の根拠を深く掘り下げていって言語化するという途方もなく難しい作業です。 しかし残念ながらこの本を読んで浮き彫りになったのはハーバード大生の頭の良さと、自分の頭の悪さかね。 すごく時間かかったもの。これ読むの。 興味がなければ相当な根性が必要となる一冊。

Posted byブクログ

2021/12/12

社会・政治などの問題に切り込んで考察しており、自身の思考の癖などを認識できて面白いが、徐々に専門的な内容が多くなり、読み進めるのが難しくなる。テーマは面白いので時間があるときにじっくり読み込むと良い本。

Posted byブクログ

2021/09/21

現代社会の道徳的な問題を哲学でどのように解決しうるのかを解説した本。 とっつきにくい哲学者たちの思想を、自分と関連のある問題と紐づけることで、わかりやすく理解することができる。哲学入門にも良いと感じた。 哲学は役に立たない学問だとよく言われるが、他の学問では答えの出せない問いに答...

現代社会の道徳的な問題を哲学でどのように解決しうるのかを解説した本。 とっつきにくい哲学者たちの思想を、自分と関連のある問題と紐づけることで、わかりやすく理解することができる。哲学入門にも良いと感じた。 哲学は役に立たない学問だとよく言われるが、他の学問では答えの出せない問いに答えることのできる唯一の学問だと認識できる。

Posted byブクログ

2021/08/31

非常によく練られていて、難解な本でした。意味がないことをいっているわけではないことは、わかるのですが、意味をつかみきれないという体験でした。 この本では、正義に対する3つの考え方が出てきます。 ① 正義は功利姓や福利を最大にするものである。 ② 正義は選択の自由の尊重を意味する...

非常によく練られていて、難解な本でした。意味がないことをいっているわけではないことは、わかるのですが、意味をつかみきれないという体験でした。 この本では、正義に対する3つの考え方が出てきます。 ① 正義は功利姓や福利を最大にするものである。 ② 正義は選択の自由の尊重を意味するものである。 ③ 正義は美徳を涵養することと共通善について判断することが含まれているものである。 筆者の主張は①と②には欠点があり、③を支持したいというものでした。 平等とは何か、正義とは何かということについて考えさせられる本でした。 正義は、法や政治に反映されており、その哲学に基づいているのだと知ることができました。人の上に立つ方には、哲学ある政治をお願いしたい、と思うのでした。 おわり。

Posted byブクログ