中国化する日本 の商品レビュー
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この本、内容は面白いのですが、文章に嫌悪感を感じる。著者は、一般向けに敢えてそうしてるんだろうけど、内容は、とても興味深い内容なのに、この文章のおかげで、すっかり嫌気がさしてしまいました。 それでも、忘れないよう、主旨は以下の通り。 歴史的には、有史以降の社会には2つの社会があり、一つを郡県制社会、もう一つを封建制社会に分類して、中国大陸にあった宋を起源とする郡県制社会の方を「中国化」と称して、これからの日本は中国化(郡県制)された社会に変わるとの論を展開。 1.郡県制社会:中国エリアの宋が起源、明治の日本、後醍醐天皇の日本、革命後の西洋、アメリカ合衆国。 可能な限り固定した集団を作らず、資本や人員の流動性を最大限に高める一方で、普遍主義的な理念に則った政治の道徳化と、行政権力の一元化によって、システムの暴走をコントロールしようという社会。 →とはいっても宋の実態はそうでもないらしい。宋の時代には貴族に変わって、士大夫階級という身分が登場し、この階級の人達から、科挙に合格した官僚が生まれる訳で、階級はこの時代でも固定化していたんですね。カネとヒマがなければ、勉強もできませんから。。。 2.封建制社会:江戸時代、昭和の日本、西洋の中世 身分が分かれていても、その身分に甘んじて、飢餓しない範囲でそこそこ繁栄している社会。ヨーロッパの中世も、穀物の生産量が限られていたから、それを平等に分配しようと言う社会だったらしい。したがって、自由競争的な、結果不平等のギスギスした人間関係もなく、、みな貧乏ながらも、そこそこ安定して生活を送っており、それはそれで幸せだったかもしれません。江戸時代の人たちも同じような感じだったろう。 昭和日本をずっと引きずってきた平成日本ですが、これからはそうもいってられませんよ。中国化していきますよってことですね。
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遅れていた日本が中国を追いかけるとの説の最もらしさ《赤松正雄の読書録ブログ》 後世畏るべしとはこういう人を言うのだろう。與那覇潤『中国化する日本』を読んで、いたく刺激を受けた。この人、未だ32歳の愛知県立大准教授。もとはといえば、2月初めの朝日新聞を見て、びっくり。オピニオン...
遅れていた日本が中国を追いかけるとの説の最もらしさ《赤松正雄の読書録ブログ》 後世畏るべしとはこういう人を言うのだろう。與那覇潤『中国化する日本』を読んで、いたく刺激を受けた。この人、未だ32歳の愛知県立大准教授。もとはといえば、2月初めの朝日新聞を見て、びっくり。オピニオンの「異議あり」とのページに、日本史の新しい常識を説く歴史学者としてのインタビュー記事があり、それを読んだことがきっかけ。後に、この本を読み、そして前作『帝国の残影』をも一気に読んだ。たまげた。小津安二郎の監督した映画全てを丹念に見た上で、縦横無尽に自分の得意の土俵で料理している。前者は「日中『文明の衝突』一千年史」、後者は「兵士・小津安二郎の昭和史」とのサブタイトルがつく。(『帝国の残影』については次号で) 彼が言う中国化とは、日本社会のあり方が中国社会のあり方に似てくることを意味する。その中国社会のあり方とは、唐のあとに出来た宋王朝で導入されたしくみをさす。その特徴は、経済の自由化と政治の集権化の同時進行に。科挙制度による官僚登用の全面化で、貴族制度を全廃し、皇帝が権力を独占。一方で農民にまで貨幣使用を行き渡らせ、市場で自由に競わせる体制だというもの。要するに、サッチャー、レーガン、小泉改革のような新自由主義に似て、トップダウンで競争原理を導入し、結果の平等を犠牲にしても成長を追求する、と。これって共産中国の今のあり方と二重写しであり、その原型が実は宋の時代に作られたというのだ。 日本は宋の影響を受けきれず、規制(身分)と共同体(ムラ)で生活を保障する江戸時代の体制をとり、ようやく明治維新で、身分制の廃止、試験による官吏の登用、廃藩置県による中央集権、職業の自由化などの中国化が行われた、と。明治維新は西洋化も議会政治を中心に行われ、両方同時に取り入れられたが、中国化がよりその本質だと言う。その後、日本は昭和初期に再び江戸化したというからややこしい。更にバブル期までそれは続き、今再び中国化が始まっているとして、その例を小泉、橋下に求める。つまり、既得権益という「悪」を設定し、それと闘う自分を「徳治者」に見せることで支持を得るという手法はそっくり中国式だとするのだ。 何だか、牽強付会の典型のような気もする。しかし、この人に言わせると、中国化という表現は自分のオリジナルだが、内容は歴史学の常識であり、元を正せば、東洋史学者の内藤湖南にあるとする。言われてみると、そんな感じがしないではないのも、現在の中国と日本の国勢の逆転現象にあるのかも。つまりは、遅れていた中国が日本を追い抜いたのではなく、もともと日本が遅れていたので、今必死で中国を追いかけているとの見たてだ。残念ながら実に穿(うが)っているように見えてならない。
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体系だった歴史認識を持ち合わせていない私にとって、とても刺激的で示唆に富む内容だった。現在のグローバル社会の先がけを宋朝中国=中華文明と捉え、その本質を①権威と権力の一致②政治と道徳の一本化③地位の一貫性の上昇④市場ベースの秩序の流動化⑤人間関係のネットワーク化としている。日本は...
体系だった歴史認識を持ち合わせていない私にとって、とても刺激的で示唆に富む内容だった。現在のグローバル社会の先がけを宋朝中国=中華文明と捉え、その本質を①権威と権力の一致②政治と道徳の一本化③地位の一貫性の上昇④市場ベースの秩序の流動化⑤人間関係のネットワーク化としている。日本は、この宋朝とは真逆の江戸時代のシステムに、何時までも愛着を抱き続けてきたという。しかしながら、制度疲労に耐えられず、ここに来てようやく日本も「中国化」してきたのである。再読したいと思う1冊でした。
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中国化する日本・・・ ってタイトルだけ読むとまったく誤解してしまいますが・・・ 中国の属国になるとか・・・ 中国人のようになるとか・・・ そういう話ではございやせん・・・ 歴史上のほとんどの時代、世界の先進国だった中国・・・ 馴染みの薄い宋の時代・・・ 中国は劇的な変化を遂げておったそうです・・・ それこそ現在のグローバル化に通じるような社会を築き上げていったそうな・・・ もちろん議会やら民主主義やらそういった類は無いのだけれども・・・ 強力な王朝の下の自由主義、競争社会・・・ 米英が推し進めてきた現在のグローバル化と親和性の高い社会を1000年前から築いてきた中国・・・ と・・・ それとは異なる社会を築いてきた我らが日本・・・ その完成形が江戸時代・・・ このように書いてあるわけじゃないけど、読んでみて自分なりに江戸時代の日本ってどんな社会だったかと言うと・・・ 強力なリーダーはいらない・・・むしろ邪魔者とされる・・・ とにかくなるべくみんなで決める・・・ とにかくなるべく平等・・・ 政治(家)は理念よりいかに食わせるか・・・ 若者の犠牲の上に老人が楽をする・・・ 空気を読む者は仲間・・・読まない者はポイ・・・ 個人よりも所属するコミュニティが大事・・・ と、こんな感じ・・・ 今の日本とそう変わらない・・・ そう日本って基本的に江戸時代の社会が大好きなんです・・・ ずーっと前からそう・・・ 日本は平安時代までは、中国でいうと唐の時代までは、中国社会の影響を非常に受けてきたけれども・・・ 中国が宋となって中国社会が変容してからは独自の道を歩むようになったとさ・・・ それ以来江戸時代を完成形に、現在にいたるまでずーっと上に書いたような感じの社会・・・ ただ! 一時期・・・ 平家全盛の時代・・・ 後醍醐天皇の建武の新政時・・・ 足利義満の時代・・・ 明治時代・・・ この僅かな間だけは中国社会に近い社会状態でした・・・ つまり・・・ 江戸時代的なる社会を基本に・・・ たまーに宋朝以来の中国社会になったりもする・・・ で、その江戸時代的なる社会がついに立ち行かなくなったんじゃね?ってのが著者の論・・・ 江戸時代的なる社会が決して悪いは言ってないのだけども・・・ 現に第二次大戦後の世界経済の中では、江戸時代的なる社会である日本が、江戸時代的なる社会であるが故に世界経済をリードしてこれた・・・ でも、冷戦終了後の世界には対応出来ていない・・・ グローバル化していく世界に対応出来ていない・・・ むしろ遥か彼方後方に置いてきたと思っていた中国の方が今の世界に対応出来まくっている・・・ あれ?逆転されてる・・・ もうさすがに・・・ 江戸時代的なる社会じゃ、今のグローバル化した世界には通用しないんじゃね? こりゃ久々に日本も中国(社会)化するんじゃね? するしかないんじゃね? ってな本です・・・ 長くなってしまった・・・ ま、とにかく・・・ 今までと違った視点で、日本史を読むことが出来る・・・ と言う点でかなりオススメ・・・ 素人目にもかなり雑だし、この人の文章(語り口)が嫌いな人もいると思うけど・・・ こういう歴史観は学んでおいた方が・・・ 面白いんではないかなー?
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基本は人類史にビルトインされたグローバリゼーションの展開を読み取る流れだが、中国に対する日本人の意識をおちょくっている所がミソ。国士様が読むと血圧上がりそうです。
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西洋化=近代化という公式に挑戦した本。科学的思考にもとづく「科学技術の発展」と「軍事力」、それから「国民教育」「ナショナリズム」といった要素は「近代」とは不可分の概念。しかしそうした要素を抜いて政治制度(中央集権、地方分権)、経済体制(自由放任、統制による結果の平等)といった軸で西暦1000年から現在までを論じると、不思議と「中国化」といった概念が説得力を持ってくる。科学技術・軍事力の先進性と、政治制度や経済体制のあり方は別物ということに気が付きました。国会の権力が強い日本の議会制民主主義と、行政の権力が強い中華人民共和国の統治の功罪について考えさせられます。
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話題というので読んでみたけど,いまひとつ。口調がざっくばらんすぎて胡散臭く,牽強付会な感じ。膨大な数の文献を参照しており,大量の知識を踏まえた上での執筆だろうけど,なんだかしっくりこない。映画やアニメ作品への言及も多く,議論が散漫な印象。主張の肝はこう。近世中国(宋朝)の文明は...
話題というので読んでみたけど,いまひとつ。口調がざっくばらんすぎて胡散臭く,牽強付会な感じ。膨大な数の文献を参照しており,大量の知識を踏まえた上での執筆だろうけど,なんだかしっくりこない。映画やアニメ作品への言及も多く,議論が散漫な印象。主張の肝はこう。近世中国(宋朝)の文明は,現在のグローバル社会のさきがけ,今の世界のミニチュア版だった。そこへ向かう「中国化」が歴史の必然であり,日本の歴史も「中国化」と,その逆との鬩ぎあいで説明できる。 アマゾンのレビューに,「トンデモ本だよなあ」とあったけど微妙に共感を覚えた。第七章「近世の衝突―中国に負けた帝国日本」の大枠は,著者の恩師の一人,安冨歩氏の『複雑さを生きる』に全面的に依拠してるそうだ。あ・の・安冨歩東大教授か…! まあでも歴史的な事実関係は大きく外していないと思われ,日本史のおさらいの役に少しは立つかも。「中国化」を推し進めようとした平家が没落して以降,封建的「江戸時代化」が長く続き,明治維新で再度「中国化」が図られたがすぐに「再江戸時代化」してしまい,今に至るってさ。 でも「中国化」は歴史の必然だから,これからいよいよ日本も「中国化」していくよ,いこうねという話らしい。なんだか書いてて眉唾感が増してきた。「歴史の必然」とか言い切るのってどうかと。
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史学科出身でもない限り、高校までの勉強と歴史小説くらいでしか歴史をとらえる機会がありません。史学科で学ぶと本書の具合にたたみかけるように先人の解釈をひもとき、新しい方向性を加えて今に導くという作業の繰り返しなのかなと思いました。
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宋が中国のキーポイントとする考え方にびっくり。宋といえば清盛の日宋貿易くらい。清盛がいかに革新人物だったかがわかる。なのに大河が成功しないのも、日本人? 僕も危惧していたのは、日本の欧米化についてなのだが、結局は中国化なのかと考えると、共感できる部分もあって面白かった。 処方箋が...
宋が中国のキーポイントとする考え方にびっくり。宋といえば清盛の日宋貿易くらい。清盛がいかに革新人物だったかがわかる。なのに大河が成功しないのも、日本人? 僕も危惧していたのは、日本の欧米化についてなのだが、結局は中国化なのかと考えると、共感できる部分もあって面白かった。 処方箋があれば、、
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歴史は虚学ではなく,必要な学問である―まったく,末尾で表明されたこの信念どおりの記述である.著者は左右に傾くことなく,歴史家として合理的・実際的であり,感情論を徹底的に排し,明晰に歴史を叙述してゆく.歴史が「虚学」となることを避ける方途は一つである.すなわち,「現在」の認識に資す...
歴史は虚学ではなく,必要な学問である―まったく,末尾で表明されたこの信念どおりの記述である.著者は左右に傾くことなく,歴史家として合理的・実際的であり,感情論を徹底的に排し,明晰に歴史を叙述してゆく.歴史が「虚学」となることを避ける方途は一つである.すなわち,「現在」の認識に資することが出来るか否かであろう.本書はそれを見事に成し遂げており,感嘆するばかりである.それに加え,専門書のように専門的な学術用語もほとんど用いることなく,通俗的に平易な文章で書かれていることにも驚嘆させられた.それは本物の知性を発見する喜びである.高度な概念をあれこれ繋ぎ合わせる程度なら,ちょっと訓練すれば誰にだって出来る.だが,それらを観念の領域に還元することが出来るのは,相対的に見て一握りの知性だけであろう.本書のテーマ自体は政治・経済を中心とした殺伐としたものではあるが,その殺伐とした世界にも生きている限り,私はこの書を読むべきであった. ◆メモったキーワード◆『再江戸時代化』『ネオ封建制』『パクス・トクガワーナ』『科挙』『ファースト・サムライ』『1600年』『パクス・モンゴリア』『石山戦争』『ブロン効果』『孫捨て都市』『動機オーライ主義』『気分は陽明学』『封建社会主義』『昭和維新』『日中戦争とそのオマケ』『欧米人の自慰史観』『形状記憶合金』『憲法「改正」』.
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