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中国化する日本 の商品レビュー

4.1

97件のお客様レビュー

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2015/02/28

平安朝以降の日本史を、「中国化」⇔「(再)江戸時代化」という二項対立の概念で捉えなおしている。 本書のキー概念の「中国化」とは、近世宋朝中国に確立した社会を現在のグローバル社会の先駆けと位置づけ、その特徴に社会が近づくことを指している。その本質は、「可能な限り固定した集団を作らず...

平安朝以降の日本史を、「中国化」⇔「(再)江戸時代化」という二項対立の概念で捉えなおしている。 本書のキー概念の「中国化」とは、近世宋朝中国に確立した社会を現在のグローバル社会の先駆けと位置づけ、その特徴に社会が近づくことを指している。その本質は、「可能な限り固定した集団を作らず、資本や人員の流動性を最大限に高める一方で、普遍主義的な理念に則った政治の道徳化と、行政権力の一元化によって、システムの暴走をコントロールしようとする社会」であるとし、その特徴として、権威と権力の一致、政治と道徳の一体化、地位の一貫性の上昇、市場ベースの秩序の流動化、人間関係のネットワーク化を挙げている。 一方、日本では「中国化」の流れに乗りきれず、これと逆の特徴(権威と権力の分離、政治と道徳の弁別、地位の一貫性の低下、農村モデルの秩序の静態化、人間関係のコミュニティ化を持つ社会)を持つ社会が近世に成立(=江戸時代)したとする。日本の歴史は、中国化と反中国化((再)江戸時代化)のせめぎ合いの歴史として描かれている。そして、未来のシナリオとして、今度こそ、中国化の波は止められないと指摘している。 本書は、近年の歴史学の成果を、「中国化」という概念のもと、うまく料理し、再構成しており、歴史について、こういう見方ができるのか、と目が見開かされる。 中国化という概念ですべてを整理しようとするあまり、やや乱暴な議論に感じられるところも散見されるが、過去をどういうふうに認識するかという歴史学の醍醐味を感じさせてくれる一冊だと思う。

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2014/09/08

日本が中国化するというぶったまげた思想をぶち上げながら、その後続々と新しい歴史観と政治観を論理的に構想していく、非常に読み応えのある作品であった。以下は一部ではあるがメモ。 ・明治維新は下級武士の鬱憤晴らしに過ぎず平民はそれに踊らされていただけという捉え方の面白さ ・労働組合の...

日本が中国化するというぶったまげた思想をぶち上げながら、その後続々と新しい歴史観と政治観を論理的に構想していく、非常に読み応えのある作品であった。以下は一部ではあるがメモ。 ・明治維新は下級武士の鬱憤晴らしに過ぎず平民はそれに踊らされていただけという捉え方の面白さ ・労働組合の日本と海外のスケールの違い ・江戸時代の事業はケインズ的な政策だった ・創氏改名の意図は日本化ではなく、江戸化(父系地縁のネットワークの寸断) ・日中戦争が日中の文明の衝突であったという捉え方 ・郡県と封建の対立軸 ・グローバル化の世界秩序は宋朝時代からの中国の思想 ・格差拡大を少子高齢化の結果と位置付けること ・現代日本の打開策は平和憲法を軸とした「中華思想」の普遍化

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2014/06/11

大学3年の時にゼミで読んだ。まず、中国化とは何か?の定義から議論を始めた気がする。今や、文庫化されて、東大で一番売れた本!!って叩き売りされていてちょっと違和感。タイトルがちょっと過激だからなあ...内容は案外普通です。興味があれば面白いです。

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2014/06/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

中国化=グローバル化。グローバル化の源泉は宋朝にあり!(なんだってー!?) って、バカにしたみたいだけど、すごいダイナミックで面白い本でした。宋朝以後の歴史を中国化(≒グローバル化)という補助線と、「江戸化」(≒”いわゆる”古き良き日本)という日本スタンス」を引いて語り尽くす、壮大な構想。歴史に無学な私からするととても魅力的で、知的好奇心を刺激された。 巻末のブックガイドも、一般書にしては莫大なので、今後参考にしたい。

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2014/06/01

中国という易姓革命の伝統がある国と、江戸時代という権威と権力の分離を行った時代を対比させて、国の権力構造について、大きな物語の流れを主張したテキスト。社会に後進も先進もないはずなのに、中国を進んだ社会だと位置づける論理は、かなり強引。ところどころに出る「プロの常識」の言葉に、氏の...

中国という易姓革命の伝統がある国と、江戸時代という権威と権力の分離を行った時代を対比させて、国の権力構造について、大きな物語の流れを主張したテキスト。社会に後進も先進もないはずなのに、中国を進んだ社会だと位置づける論理は、かなり強引。ところどころに出る「プロの常識」の言葉に、氏の学問の水準がうかがい知れる。 本書は、対立軸として設定した、中国化という社会モデルと、江戸時代という社会モデルを対立軸としておいて見たときに、どれだけ過去の歴史を説明できるのか、というモデルの説明力を試した、テストケースだと考えれれば、問題点も浮かび上がっている点に、本書の価値は認められる。 問題は、この対立軸を用いて、未来の社会モデルを展望することができるかどうか、で評価すべきであるが、将来の社会モデルを構想するうえで、欠かせない以下の制約条件が、「中国化」モデルでは表現されていない。 (1)国家権力の自由度を決める財政 (2)国家のパワーを決める国際関係(安全保障や外交的なパワー) これらの要素が欠けているため、日本は中国化するといってみるものの、グローバル化により税収が世界的に均衡していき、国家予算の自由度が下がれば、中国的な振る舞いは取りえない。などなど。 一方で、「中国化」モデルでは、国内の権力構造と、権力構造から生じる統治エリートのふるまいやをうまく表現できているように思う。

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2014/05/01

表現が軽薄な上に挑発的なので、意図したところが伝わるのか?そもそも、伝える気持ちで書かれたのか、首を傾げます。「江戸化」と「中国化」という独自のワードを多用するのであれば、定義してください。文献をあげて補強されますが、牽強付会のきらいがあります。気鋭の学者の新説と思い拝読したので...

表現が軽薄な上に挑発的なので、意図したところが伝わるのか?そもそも、伝える気持ちで書かれたのか、首を傾げます。「江戸化」と「中国化」という独自のワードを多用するのであれば、定義してください。文献をあげて補強されますが、牽強付会のきらいがあります。気鋭の学者の新説と思い拝読したので、残念です。少し読み手を大切にして、再チャレンジして欲しいと思います。

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2014/04/15

日本史・アジア史についてOSをアップデートするみたいな本。右にも左にも振り回されない重石になる知識が得られる。最近の歴史学の常識に則ってのことなのでこのアップデートをしておいて全く損はない。 まず、近世と近代について。 「近世」とは現在の歴史学ではEarly Modern=初...

日本史・アジア史についてOSをアップデートするみたいな本。右にも左にも振り回されない重石になる知識が得られる。最近の歴史学の常識に則ってのことなのでこのアップデートをしておいて全く損はない。 まず、近世と近代について。 「近世」とは現在の歴史学ではEarly Modern=初期近代と言い、「全世界に共通する近代の前半期」として考えるようになったとのこと。一方で、これまで「近代」と呼ばれてきたものは「近世の後半期」。 世界で最初に近世に入ったのは「宋朝の中国」で、そこで導入された社会の仕組み、  ・貴族制度を全廃して皇帝独裁政治を始めた   (科挙、身分制廃止)  ・経済や社会を徹底的に自由化(貨幣の使用)  ・政治の秩序は一極支配で維持  ・皇帝の権力を抑え込むための全世界的な理念   (朱子学) が、今でも中国や日本以外の全世界で続いていると言える、という。 この本のタイトルにある「中国化」の中国とはこの宋朝のこと。 そして、日本は平安後期以降、何度も中国化を試みる人々(平家、後醍醐天皇、足利義満)が現れるも領地・イエ・家職の官僚的な社会を維持したい貴族や武家に阻まれ、独自の「近世」である江戸時代を迎える。 この「江戸時代」が大日本帝国と戦後の「社会主義国家」にしっかり受け継がれていく。 明治維新は中国化のついでに同じタイミングで西洋化もしただけで、近代化でもなんでもなく、とっくに近世を迎えていた大陸に中国化は不要だった、とか。 中国化による明治の自由な競争社会への反動で「再江戸時代化」が望まれ、庄屋=議員と代官所=政府のような関係が復活したり、昭和に入ってからは会社が「村社会化」した、とか。 「江戸時代」は藩、ムラ、イエの共同体の一員でなければ(長男以外、会社員、夫のいる専業主婦)セーフティネットが効かないけど、それは今も同じじゃないか、とか。 ※例えば、地域に保育所ができることに反対する高齢住民とかまさに「自分の家族やもとからいる住民以外の未来なんか知ったことか」なわけで。http://dot.asahi.com/aera/2014041400034.html 「おわりに」で「私たちが生きていかねばならないのは、おそらくは1000年も前に「歴史の終わり」を迎えて変化の止まった社会」と書いている。 つまりもう、イエや会社という共同体は助けにならず、「江戸時代の職分制と同様の「公共事業や規制政策による雇用維持を通じて生活保障を代替する」やり方が、通用しない」(P296)。 「「雇用に依存しない福祉」を一から作っていかねばならない」という。 私見だけど「非正規の被雇用者を(同じ職場、同じ仕事で)正規に」(つまり「江戸時代」的雇用を)と主張したところで、その「正規」はかなり限られた福祉、社会保障しか与えられないだろう。であれば、非正規、流動的であることを前提としたセーフティネットを厚くすることを求める方が機能としては有効なんじゃないかと思う。

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2014/04/05

日本の歴史を「中国化」と「江戸時代化」と二元的にとらえています。今後、さらなる中国化は避けられないだろうという話です。 いわゆる中国が宋代から貴族制を捨てて普遍的理想主義と実力主義(機会均等+自由経済)に移行した、これを近代化とみなし中国が先駆けて近代化したと主張しています。中...

日本の歴史を「中国化」と「江戸時代化」と二元的にとらえています。今後、さらなる中国化は避けられないだろうという話です。 いわゆる中国が宋代から貴族制を捨てて普遍的理想主義と実力主義(機会均等+自由経済)に移行した、これを近代化とみなし中国が先駆けて近代化したと主張しています。中国ではセフティーネット父系親類ネットワークが存在し、いざというときは「近くの他人より遠くの親戚」であったといいます。 一方、江戸時代化とは「封建制」のムラ社会でムラのルールにしたがって帰属していさえすれば多少窮屈でも食ってはいけるような社会です。 巻末の年表を見てもらうと無理やりっぽいところもありますが、視点は面白いですね。 結局、「一部のマニアックな雑学、ないしは平常時のお遊びであって危機の時代の有用性に乏しい虚学と勘違いされがちな歴史研究が、本当はこれからの国家国民の再建にとっていかに必要な学問である」ということが言いたかったんじゃないでしょうか。 増補版の文庫本も出てるようです。

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2014/03/23

とても面白く読む。 けれど、筆者の主張がどこまで根拠があるのか…。ほかのものと比較、根拠となる手がかりを探してみたい。

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2014/03/23

ビジネス書でよくみかける「世界基準の働き方は~」とか、「グローバルエリートは~」といった、日本人は思考がいかにクローズしているかを騙る本の歴史ジャンル版のような書き方をしている。 事あるごとに普通の日本人は視野が狭いが自分の見ている世界は広いんですよ、みたいなアピールが出てきて...

ビジネス書でよくみかける「世界基準の働き方は~」とか、「グローバルエリートは~」といった、日本人は思考がいかにクローズしているかを騙る本の歴史ジャンル版のような書き方をしている。 事あるごとに普通の日本人は視野が狭いが自分の見ている世界は広いんですよ、みたいなアピールが出てきて正直うざったい。 しかも世界の歴史家の中では常識です、とバックがついてることも示唆しているが、歴史研究でそんなに満場一致の事ってあるんだろうか。 歴史観としてはそういう見方もあるかな、と思ったが、なにぶん著者の語り方が癪にさわる一冊だった。

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