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怪物はささやく の商品レビュー

4.1

133件のお客様レビュー

  1. 5つ

    44

  2. 4つ

    42

  3. 3つ

    25

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2012/10/07

ごつごつとして一筋縄ではいかない荒々しい現実。それに立ち向かう術を、少年に与えるものは何か? 荒削りで、容易には乗りこなせない荒馬のような、強烈な魅力のある物語である。 主人公は母と暮らす13歳の少年。母は死病を得ている。父と母とは離婚した。母方の祖母が母の看病と少年の世話に来...

ごつごつとして一筋縄ではいかない荒々しい現実。それに立ち向かう術を、少年に与えるものは何か? 荒削りで、容易には乗りこなせない荒馬のような、強烈な魅力のある物語である。 主人公は母と暮らす13歳の少年。母は死病を得ている。父と母とは離婚した。母方の祖母が母の看病と少年の世話に来てくれるが、少年は祖母が好きではない。学校ではいじめっ子集団に嫌がらせを受けている。それも発端は母の病気が皆に知られたためだ。 ままならぬ日々。鬱屈する思い。 そんな少年の元を怪物が夜な夜な訪れるようになる。怪物は少年に呼ばれたという。そして怪物が3つの物語をした後、少年に第四の物語を語れと告げる。自分自身の、真実の物語を。 制御することのできない現実。その現実を渡っていく力を与える物語。それは調和の取れたおとなしやかなものではないかもしれない。自分の思うとおりにもなってくれないだろう。だが最後まで寄り添い、証人となってくれる、誠実さを持っている。 現代の現実を描いていながら同時にファンタジックでもある。 迸る咆哮のような挿絵もまたすばらしい。 *2012年中学生向けの課題図書となっている。 うーん。この本で読書感想文を、というのも分かる気もするが、なかなかハードルが高そうだなぁ・・・。「感想文書けって言われて、わけわかんないの読まされた」って思う子が出そうで、そうだったらちょっともったいない気もするが。 *作中のイチイは、ヨーロッパイチイ(セイヨウイチイ)。タキソールの原料、10-デアセチルバッカチンIIIが取れることで知られる。

Posted byブクログ

2012/10/04

児童文学、ヤングアダルト向けの範疇に入る作品だろう。しかしその内容は限りなく暗く、たとえば小学生、中学生が読んだとき、どのように感じるのだろう。辛い体験の中でも明るい希望と癒しを提示する、というようなありがちな内容ではない。この作品には人間の真実の姿、その複雑さ、現実の厳しさを読...

児童文学、ヤングアダルト向けの範疇に入る作品だろう。しかしその内容は限りなく暗く、たとえば小学生、中学生が読んだとき、どのように感じるのだろう。辛い体験の中でも明るい希望と癒しを提示する、というようなありがちな内容ではない。この作品には人間の真実の姿、その複雑さ、現実の厳しさを読者に突きつける。自分自身の残酷さ卑小さを認識もしなければならない。しかしそれは絶望ではないこと、そこから新たな始まりがあることを示唆している。厳しい現実を体験しながら人は成長していくものだということ、それは辛いことではあるが、絶望の中でも手をさしのべる「何か」があるということを感じてほしい。大人が読んでも深く重い感動をもたらす作品だ。

Posted byブクログ

2012/10/03

事前に聞いていたほどは面白くなかった。コレで感想文を書けって、何を求めているのだろう。早く母の始末がつけばいいと願うほど、学校での孤独は辛いということか?

Posted byブクログ

2012/10/01

朝日新聞の推薦書。課題図書だったらしい。 昔、夏休みになると、感想文書くために買ったりした、押しつけがましい本、だ。 原文を読むと、もっとしっくりきたかもしれない。 周りがもっともらしく理由を付けて、不思議ちゃんになった男の子が、怪物の話を3つ聞いて、最後に自分が話すというもの...

朝日新聞の推薦書。課題図書だったらしい。 昔、夏休みになると、感想文書くために買ったりした、押しつけがましい本、だ。 原文を読むと、もっとしっくりきたかもしれない。 周りがもっともらしく理由を付けて、不思議ちゃんになった男の子が、怪物の話を3つ聞いて、最後に自分が話すというもの。 落ちは、うまいと思う、 イチイの木 我が家にも植えてみようか。

Posted byブクログ

2012/09/27

 この本を知ったのは、ブクログさんの書評から。児童向けでホラーで、課題図書っていうくくりになってて、ホラーなのに、児童向け?ホラーなのに、課題図書?って思って、興味を持ったことがきっかけ。  主人公コナーは、序盤はとにかく可愛くないガキ。自分に向けられる感情はいいものも悪いもの...

 この本を知ったのは、ブクログさんの書評から。児童向けでホラーで、課題図書っていうくくりになってて、ホラーなのに、児童向け?ホラーなのに、課題図書?って思って、興味を持ったことがきっかけ。  主人公コナーは、序盤はとにかく可愛くないガキ。自分に向けられる感情はいいものも悪いものもすべて無視して、一人達観して、平気なふりをして生きる。怪物が初めて現れたときも、「どうせなら、連れて行けば?」とまるで人ごとのような素振り。ああ、可愛くない。  でも、そんなコナーが、怪物の話す物語を聞き、物語が自分の考えていた結果と違うものばかりだと知ったときから、考え、悩み、思いあぐねて変化していく。私、このあたりから、コナーのこと応援し始めた。  コナーが、自分にどんなことがあってもそれを人ごとのように振る舞い、他人に決して自分の本心を見せないのは、「自分は間違っている」という考えに固執していたから。だから誰にも、自分の本心なんて知られたくなかったんだな。でも、怪物の物語を聞くにつれて、真実は一つじゃないのかも・・・という考えが頭をよぎるようになったんだろう。このあたりから、私は、コナーを思って泣いた。  彼が呼んだ怪物。怪物は、コナーを認めるために来た。「間違いなどではない。その真実を母親に話せ」と言いに来た。そして、母親の今際の際に、真実を話すコナー。真実なんて、誰にも言わない。そんなものは存在しない、と自分の本心を否定すらしていたコナーの、なんという変わり様。 深い。これ、児童が読んで、理解できるのかな?私は一回読んだだけでは理解できませんでしたが・・・  この物語は、ハッピーエンドではないと思う。でも、私はこの物語を読んで気づいたことがある。  まちがっていることは、実はまちがっていないのかも知れない。自分の考えがまちがっているかどうかは、行動に移してみて、その結果を見るまでは分からないのだ。  つまり、この物語のその後、コナーの十数年後は、ハッピーになっているかもしれないな。

Posted byブクログ

2012/09/20

p144「物語は凶暴だ。野生の獣みたいなものだ。ときとして、だれも予想していなかった方角へ、とんでもない勢いで走り出す」 p151「“物語は大事な意味を持っている。” 怪物が言う。“ときには、この世の何より力を持つこともある。そこに真実が含まれているならば。”」 主人公のコ...

p144「物語は凶暴だ。野生の獣みたいなものだ。ときとして、だれも予想していなかった方角へ、とんでもない勢いで走り出す」 p151「“物語は大事な意味を持っている。” 怪物が言う。“ときには、この世の何より力を持つこともある。そこに真実が含まれているならば。”」 主人公のコリーは、毎晩、崖から暗い穴に落ちる悪夢を見ていた。 彼は重い病気を患う母親と、二人暮らしをしている。 ある日の12時7分、コリーの目の前に大きな怪物が現れる。その怪物は家の前にある巨大なイチイの木であり、コリーに3つの物語を聞かせたのち4つめの物語をコリーに話させようとする。 3つの物語は何を意味するのか、そしてコリーの悪夢は、怪物が現れた理由とは。 ダークホラーな表紙と冒頭。中表紙のダークブルー以外全く色を持たない装丁と挿絵。 暗くて恐ろしくて、切なくて優しい小説でした。 人間の内面と少年の葛藤と、恐ろしい怪物の姿をした真実と優しい母への残酷な現実。 いじめっ子のハリーが途中でお前が望んでいることはなんだと呟いたこと、コリーが罰を望んだこと、母があなたはもっと怒っていいと言ったことが、この話を深く考える上で重要な所かと思いました。

Posted byブクログ

2012/09/17

一見した感じとタイトルでホラーかと勘違いして読みそこなうところだった。 肉親や家族の介護や治る見込みのない病で終わりの見えないつらさは、当人の苦しみとは違う、別の苦しみがある。その苦しみは助けてくれる、支えになってくれる人のいない13歳の少年にとってはあまりに重すぎる。悪夢が明...

一見した感じとタイトルでホラーかと勘違いして読みそこなうところだった。 肉親や家族の介護や治る見込みのない病で終わりの見えないつらさは、当人の苦しみとは違う、別の苦しみがある。その苦しみは助けてくれる、支えになってくれる人のいない13歳の少年にとってはあまりに重すぎる。悪夢が明かされたときには思わず涙ぐんでしまった。 おばあちゃんの歩み寄り、友達リリーとの友情が戻ることで希望の持てるラストにほっとした。 中学生対象の課題図書になっていたが、読むのは高校生以上のほうがいいのではないかと思った。

Posted byブクログ

2012/09/15

真夜中の12時7分、少年コナーのもとに怪物があらわれた。大きなイチイの木の姿をした・・。はじめは名前を呼ばれただけ。そして話しかけられる。3つの物語を話してきかせるという。 コナーには重い現実があり、イチイの木はそれに絡みあってくるのか。コナーの心が怪物を呼んでいるのか。 暗...

真夜中の12時7分、少年コナーのもとに怪物があらわれた。大きなイチイの木の姿をした・・。はじめは名前を呼ばれただけ。そして話しかけられる。3つの物語を話してきかせるという。 コナーには重い現実があり、イチイの木はそれに絡みあってくるのか。コナーの心が怪物を呼んでいるのか。 暗いおもくるしいかんじの挿絵もいいですね。

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2012/09/13

“「コナー・オマリー」ハリーの声には悪意が忍びこみはじめていた。「ママのことで、みんなに同情されてるコナー・オマリー。自分は特別なんだって得意げな顔して、自分の苦しみはだれにも理解できっこないって顔して、学校を歩き回ってるコナー・オマリー」 コナーは歩きつづけた。もう少しでハリー...

“「コナー・オマリー」ハリーの声には悪意が忍びこみはじめていた。「ママのことで、みんなに同情されてるコナー・オマリー。自分は特別なんだって得意げな顔して、自分の苦しみはだれにも理解できっこないって顔して、学校を歩き回ってるコナー・オマリー」 コナーは歩きつづけた。もう少しでハリーの目の前だ。 「罰を受けたがってるコナー・オマリー」ハリーはあとずさりを続けた。目はじっとコナーを見つめている。「どうしても罰を受けなくちゃいられないコナー・オマリー。どうしてだ、コナー・オマリー?罰を受けなくちゃならないような、どんな秘密を隠してる?」 「黙れ」コナーは言った。 怪物の声がそれに重なった。 ハリーがもう一歩下がったところで、窓に行く手をふさがれた。コナーが何をするのか、学校じゅうが息を殺して待っているようだった。遠くから先生の声が聞こえる。食堂で何か騒ぎが起きていることに気づいて、外で何か言っている。 「おまえの顔を見ると、おれの目に何が映るかわかるか、オマリー?」ハリーが言う。 コナーは両手を握り締めた。 ハリーがこちらに身を乗り出した。目がぎらぎら輝いていた。「何も映らないんだよ」”[P.161] 相反してしまう自分の中の気持ち。 思っちゃいけないはずのことを、どうしても思ってしまう。 読み進めるに連れて、胸の奥に冷たい重い小石が溜まっていくような。 押し込めていた気持ちが溢れそうになるような不安と共に文章を追いつつ。 コナーを助けるために現われたイチイの木の怪物。 三つの物語を彼に聞かせ、そして最後に怪物は、彼に真実を語れとささやきかける。話さなければならない、と。 最後はぼろぼろと泣いてしまった。沢山詰まった言葉。それが最後にすとんと腑に落ちる。 “コナーは長く、長く息を吐き出した。のどが詰まったような感覚はまだ残っている。 それでも、いまはもう息苦しくはない。悪夢が全身に広がって胸を締めつけ、コナーを崖から引きずり下ろそうとしているようなあの恐怖は、きれいに消えていた。 それどころか、悪夢の存在すらもう感じない。 「疲れた」コナーは頭を両手で抱えるようにして言った。「何もかもに疲れた」 "眠りなさい。"怪物が言った。"時間はまだある。" 「ほんと?」コナーはつぶやくように訊き返した。ふいにまぶたが重くてしかたなくなった。 怪物が両手の形をふたたび変えた。コナーが横たわっている葉でできた巣は、いっそう快適になった。 「それより母さんに会いたいな」 "かならず会える。"怪物が答えた。"わたしが約束する。" コナーは目を開けた。「いっしょに来るよね?」 "もちろんだ。わたしの旅の終着点はそこになるだろう。"”[P.203]

Posted byブクログ

2012/09/10

『怪物。本物の、正真正銘の、怪物だ。現実の、ちゃんと目が覚めている世界に、怪物が現れた。夢のなかではなく、目の前に。部屋の窓のすぐ向こうに。』 夜、決まった時間にコナーの前に現れる怪物。怪物はコナーに3つの物語を聞かせるという。そして最後にはコナー自身の物語を聞くのだと。母親が重...

『怪物。本物の、正真正銘の、怪物だ。現実の、ちゃんと目が覚めている世界に、怪物が現れた。夢のなかではなく、目の前に。部屋の窓のすぐ向こうに。』 夜、決まった時間にコナーの前に現れる怪物。怪物はコナーに3つの物語を聞かせるという。そして最後にはコナー自身の物語を聞くのだと。母親が重い病気になって虫の合わないおばあちゃんと暮らし、学校では孤立し、遠く離れて住む父親にはなかなか会えなくていら立ちを強めるコナーに、怪物は何をもたらすのか?

Posted byブクログ