平成猿蟹合戦図 の商品レビュー
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横道世之介のような読後感は得られなかったが、どこに転がっていくのか見えないストーリー(かといってめまぐるしいわけでもない)は、それなりに楽しめた。 淡々とした書きぶりなだけに、ストーリーが転がりだすまでが若干もどかしいが。選挙エンタテインメントとしての部分をもっと書き込んでも良かった気がする。あと、「猿」がほとんど描かれなかったのは、わざとなんだろうか。わざとなんだろうな。ばあちゃんと握手したあのワンシーンが印象に残るように。
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五島のことが少し出てくるので、話題になって読んでみた。 最初はなかなか、進まなかったけど だんだんと、人物と話が繋がっていくのが面白かった。 五島出身の若夫婦、若夫婦の子どもをわが子のように可愛がる東京の母(美人ママ)、そのママを愛する渋いヤクザ、性格は明るくて考えないのが取り柄の元バーテンダー、人気のチェロ奏者、とその姪っ子、ある夢を持つ敏腕マネージャー、秋田で暮らす元気者のおばあちゃん・・・ 登場人物のキャラがほんわか、みんな好きになりました。
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ちょっととんとん拍子にことが進み過ぎ…感は否めないけれど、誰が猿で誰が蟹なのか考えながら読むのは楽しめた。 ひたすら園夕子さんがかっこいい。
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連絡が取れなくなった夫の朋生を探しに生後6ヶ月の瑛太を連れて、 長崎から博多、そして東京 歌舞伎町に来たスナックで働く美月。 そこで知り合ったバーテンの純平。 純平が働くクラブのママ美姫は堅実な商売で順調に店を切り盛りしている。 数か月前に純平が目撃したひき逃げ。 出頭した犯人が目撃した人と違うことに気付いた純平と朋生が企てた脅迫事件を発端に ひき逃げ犯のチェコ奏者 湊圭司とマネージャー 夕子・ 圭司の兄 宏司・その娘の大学生 友香・秋田に住む祖母 サワ・ 歌舞伎町のヤクザ・裏社会の便利屋たちを巻き込んだ戦いのお話。 戦いと言っても、殺し合いをするとかではなく、 題名通りの〈さるかに合戦〉のような心理戦や騙し合い。 たくさんの人間の思惑が絡んでいて、ちょっと滑稽で、ちょっと狡猾で、ちょっと怖い。 長崎弁や秋田弁も出てきて、なんとなくのんびりした雰囲気を感じるところも。 沢山の登場人物毎のいろんな話で構成されていて、 何がどう猿蟹合戦なのかわからぬまま読み進み、 そして思わぬ方向に話が行くので、すこし違和感を感じてたけど、まとまり良く終了。 子供過ぎる純平と朋生を軸に、男たちの間の抜けた一生懸命さは子供っぽいけど、 それ故に、男性たちを支える女性たちの頭の良さが際立つ。 そして、やっぱり愛されて愛して守ろうとする気持ちがあって、男女ともに幸せになる。
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長崎の五島列島から、東京、秋田へと舞台が広がります。 主役級の登場人物たちが多く、意識が分散しそうですが、上手く絡んで、ラストを飾ってくれます。 子連れのホステスが、夫を探すために地元を離れ、東京・歌舞伎町で途方に暮れる場面からのスタートです。 その段階で、「その夫、どうしよう...
長崎の五島列島から、東京、秋田へと舞台が広がります。 主役級の登場人物たちが多く、意識が分散しそうですが、上手く絡んで、ラストを飾ってくれます。 子連れのホステスが、夫を探すために地元を離れ、東京・歌舞伎町で途方に暮れる場面からのスタートです。 その段階で、「その夫、どうしようもない奴!」って思うのですが、案外誠実なところもあって… そんなスタートからどんどん思いもよらない展開になっていきます。 最後まで目が離せなくて、一気読みでした。
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【要旨】新宿で起きた轢き逃げ事件。平凡な暮らしを踏みにじった者たちへの復讐が、すべての始まりだった。 長崎から上京した子連れのホステス、事件現場を目撃するバーテン、冴えないホスト、政治家の秘書を志す女、世界的なチェロ奏者、韓国クラブのママ、無実の罪をかぶる元教員の娘、秋田県大館に一人住む老婆… 心優しき八人の主人公が、少しの勇気と信じる力で、この国の未来を変える“戦い”に挑んでゆく。 希望の見えない現在に一条の光をあてる傑作長編小説。 最初、どこへ向かっていくお話なんだろう?とよくわからなかったけれど、半分過ぎた辺りから、この話が向かう先が見えてきてからが面白かった! 安直すぎるような気もするし、何もかもがうまくいきすぎるような気もするけれど、そんな小さなことどうでもいいか、と思うくらい最後爽快!! これは映像化したら面白そう。 映画よりも安っちいドラマとかのほうが逆に面白いかも。 ドタバタ感がお茶の間に合っていると思う。
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個人的に吉田さんは「悪人」とか「元職員」みたいな人の弱い部分を書くのがすごくうまくて引き込まれる作家さんです。 でも、この「平成~」や「横道世之介」みたいな、少しゆるい主人公が人を巻き込むようなちょっとコメディっぽい話の方が真骨頂な気がした。 みんながちょっと幸せ。笑顔になる。 こういう世の中だと、ちょっとスカッとしないか?って、吉田さんは笑っているような気がする。
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九州の田舎から夫である朋生を歌舞伎町まで探しに来た美月と赤ん坊の瑛太。 歌舞伎町のバーでバーテンをしている純平とホストをしている朋生は、目撃した轢き逃げ事件で恐喝を企てようとする。 その被害者である世界的に有名なチェロ演奏者と身代わりとなり刑務所に入った父を持つ友香。 息子夫婦を自殺で亡くし、孫までもが刑務所に入り、毎朝念仏を唱える90過ぎのサワ。 すべてが別々のところで始まったのに、最後には全部が結びつく感じ。暗い内容なのかと思って読み始めたけど、最後は青春モノみたいなスッキリした終わり方。 内容(「BOOK」データベースより) 新宿で起きた轢き逃げ事件。平凡な暮らしを踏みにじった者たちへの復讐が、すべての始まりだった。長崎から上京した子連れのホステス、事件現場を目撃するバーテン、冴えないホスト、政治家の秘書を志す女、世界的なチェロ奏者、韓国クラブのママ、無実の罪をかぶる元教員の娘、秋田県大館に一人住む老婆…心優しき八人の主人公が、少しの勇気と信じる力で、この国の未来を変える“戦い”に挑んでゆく。希望の見えない現在に一条の光をあてる傑作長編小説。
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好きな作家「吉田修一」の最新刊。 この作家の書く、人に対する感覚が僕にはたまらない。 どうしてこういう空気感、距離感をうまく表現できるのだろうかと、いつも感心する。
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確かに猿蟹合戦を平成の時代にして蟹側から蟹を脇役にして書いた感じ。 蟹は耐えながら、忘れたふりをしながら、じっくりと機会を窺っているのです。 小さい幸せをちゃんと幸せだと感じられる登場人物が多く、穏やかな気持ちで読み進めることができますが、ふと不穏な空気が流れます。 せっかく幸せ...
確かに猿蟹合戦を平成の時代にして蟹側から蟹を脇役にして書いた感じ。 蟹は耐えながら、忘れたふりをしながら、じっくりと機会を窺っているのです。 小さい幸せをちゃんと幸せだと感じられる登場人物が多く、穏やかな気持ちで読み進めることができますが、ふと不穏な空気が流れます。 せっかく幸せだったのに、ここから人生が谷底まで落ちていっちゃうの!? と思っていたら、事態はちゃんと収拾する。というのが繰り返されるので、どうかこのままみんなが幸せな方向に向かいますように、とドキドキそわそわしながら読みました。 舞台は、東京、長崎、秋田、たまに大阪。 その地方の方言がふんだんに出てくるのも面白かったです。
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