帰命寺横丁の夏 の商品レビュー
心地よい読後感ではあります/帰命寺にお祈りしたら死んだ人が帰ってきて別人として生きるがバレて指摘されたら消える/クラスメートのあかりは帰ってきた人らしい/カズん家が今の帰命寺だった/反帰命寺派のおばあさん水上里に本尊が盗まれた/消えるまでにあかりの願いを少しでも叶えようとするカズ...
心地よい読後感ではあります/帰命寺にお祈りしたら死んだ人が帰ってきて別人として生きるがバレて指摘されたら消える/クラスメートのあかりは帰ってきた人らしい/カズん家が今の帰命寺だった/反帰命寺派のおばあさん水上里に本尊が盗まれた/消えるまでにあかりの願いを少しでも叶えようとするカズ/あかりの読みたかった小説「月は左にある」が作中作として描かれるが、途中で切れているので残りを捜す。著者は誰? って、すぐわかるか/あかりは消えるのか? 「月は左にある」の結末は?/佐竹美保さんの表紙絵に惹かれた。 ■簡単な単語集 【あかり】信夫あかり。赤い玉が二つのぽっちりで髪をとめている少女。カズが見た幽霊にそっくり。同級生ということになっているがカズ(だけが)覚えていない。 【あかりの母】カズには透明に見える。 【アディ】作中小説の主人公。亡霊と人間の間にできた一族だと思われている。都で魔女に買われた。泥の中の金や宝石を見ることができる。 【安藤桂/あんどう・かつら】どうやら四十年前に十歳で亡くなったさおり=あかりの母らしい。 【石の魔女】作中小説の登場人物。アディを買った。 【井上】クラスメート。 【内丸小学校】カズの通う小学校。 【王子】『月は左にある』の登場人物。魔女、石の鳥の牢獄に囚われていた。 【オオカミの牙】『月は左にある』の登場人物。王子の友だち。以前魔女に使われていたが今は山賊? 表向きの商売は肉を扱う商人。裕福に暮らしている。 【おれ】→カズ 【カズ】主人公の「おれ」。佐田和弘。家は古くて広い。怖がりだからホラー番組を見る小学五年生。あだ名は「サード」。野球チームのポジションからだがなんでも三番手だからということもある。それは本性を他者に見せずひねているところがあるからだとねえちゃんは言う。 【帰命寺横丁】古い地図ではカズの家があるあたりの地名。帰命寺は祈れば死んだ人が帰ってくるがまったく関係ない知らない人として帰ってくるという寺で建物は存在しないが本尊は存在する。講のようなもので、信じる者が集まっていたのが帰命寺横丁で本尊を置くのを各家で回していたらしい。やがて信じる者もいなくなり現在はなんとカズの家の仏壇にある。現在の帰命寺は順一で、次代はカズになるらしい。 【キリコ】水上さんちの黒猫。青い目。この辺のボス猫。カズを見張っている? 【毛皮商】かつてハミを買った。大切にしてくれ魔女に売ってくれと請われても断ったがハミは魔女にさらわれた。 【桜陽一】クラス委員の一人。 【佐田元治/さだ・げんじ】カズの祖父。 【さっこ】クラスメート。 【信夫あかり/しのぶ・あかり】→あかり 【順一】居候。中国へ発掘調査に行ってる。父親の従弟。居候と言いつつ、本家は順一の方。 【ソラマメ】副校長のあだ名。 【田辺】クラスメート。 【タマ】隆盛寺の猫。 【町会長】「やぶや」という蕎麦屋の隠居。 【月は左にある】『デイジー』という月刊誌に掲載されていた小説。著者は「ミア・リー」。あかりが読みたいと言っていた。 【ねえちゃん】中学一年生。 【ハミ】『月は左にある』の登場人物。魔女、石の鳥の牢獄に囚われていた。 【ハムスター】クラスで飼っているハムスターの名はボンレスとムッチー。 【春川次郎】クラス担任。あだ名は演歌。 【水上里/みなかみ・さと】おばあさん。マンションのミナミハイツ暮らし。八十歳を超えているので古いことを知っているかもしれない。派手な格好がよく似合う。帰命寺という名前をゾンビみたいだと言い、そのことがわかる人が存在すると言った。愛車はマーキュリー。 【山形あゆみ】クラスメート。 【山辺みずき】クラス委員の一人。 【裕介】老舗の呉服屋の若旦那の風格が身についている同級生。家族が忙しくてコンビニめしのときは嬉しい。 【ゆきな】クラスメート。 【隆盛寺】水上里さんから紹介された寺。プロレスラーみたいな巨体。 【老人会の理事】昔、社会科の先生をしていたらしい。
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帰命寺横町にある不思議なご本尊「帰命寺様」に祈ると、死者がよみがえるという。主人公のカズと、よみがえった少女・あかりの不思議な夏休みのお話。2人の物語の中でもうひとつの童話「月は左にある」が展開していて、そちらも楽しめた。 死者はこの世に戻るべきではない。でも、理として正しくない...
帰命寺横町にある不思議なご本尊「帰命寺様」に祈ると、死者がよみがえるという。主人公のカズと、よみがえった少女・あかりの不思議な夏休みのお話。2人の物語の中でもうひとつの童話「月は左にある」が展開していて、そちらも楽しめた。 死者はこの世に戻るべきではない。でも、理として正しくないことであっても、目の前で懸命に生きようとする命を摘んでしまうのはどうなんだ?という答えのない問いが描かれている作品。帰命寺の結論は、正しくはないのかもしれないが、やさしさに溢れていてこれはこれで良いのではないかと思った。
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つい一気に読みました!「亡くなった人が生き返る」ことに反対する一派も出てきますが、その言い分も分かるなと色々考えながら読みました。作中に出てくる「月は左にある」もとてもよかったです。
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生まれかわるようただ祈る母と、生き返らせるために他者を傷つける母。後者の母はゆるされなくても、そこにある命は、生きているその人のものだ。誰に憚ることなく、伸びやかに、ただ生きてほしい。子どもはただ、自分の命を生きることだけを全うしてほしい。
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主人公は、夜、中庭から幽霊が出ていくのをみてしまう。 そしてなんと学校で調べ学習をしている時に、まるで昔からの知り合いのようにその幽霊が座っていた!? しかし彼女を知らないのは自分だけのようで・・・?彼女が誰なのか自由研究の名目で調べていく主人公。 するとある一つの事実が浮かび上...
主人公は、夜、中庭から幽霊が出ていくのをみてしまう。 そしてなんと学校で調べ学習をしている時に、まるで昔からの知り合いのようにその幽霊が座っていた!? しかし彼女を知らないのは自分だけのようで・・・?彼女が誰なのか自由研究の名目で調べていく主人公。 するとある一つの事実が浮かび上がってくる・・・。 それには主人公が住んでいる通りが昔帰命寺横丁と呼ばれていたことが関係していて・・・? すごく面白かった! 最初薄めの本かなと思って借りてみたら、すっごく分厚いの!( ゚д゚) もうびっくりしちゃって・・・予約してる人がいるから早く読まなきゃいけないし・・・。(´;ω;`) でも読み始めたらもう止まらない! 面白くてすぐ読み終わっちゃった ♪───O(≧∇≦)O────♪ 332ページあるのに(^_^;) 柏葉さんの本は面白い!すごく面白い! この本も読んでほしいけど、他の本も(霧の向こうのふしぎな街、天井裏のふしぎな友達、地下室からのふしぎな旅とか) とにかく面白いから読んでみて(笑)
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アメリカの翻訳児童書に与えられる文学賞を受賞したということで読んでみました。 日本文化についてもかなり詳しくないと翻訳できないと思うし、これが評価されたということに驚いたというのが率直な感想。 最初は主人公のカズの言動にイライラも感じたけれど、途中から、「あかりを消したくない...
アメリカの翻訳児童書に与えられる文学賞を受賞したということで読んでみました。 日本文化についてもかなり詳しくないと翻訳できないと思うし、これが評価されたということに驚いたというのが率直な感想。 最初は主人公のカズの言動にイライラも感じたけれど、途中から、「あかりを消したくない」という一生懸命さが伝わってきて、気づいたら応援していました。 途中に別の話を挿し込むのは「トムと3時の小人」と同じで、そっちはちょっと飛ばし読み。 読後感は悪くなかったけれど、私にとって柏葉作品のトップは、まだ「霧のむこうのふしぎな町」のままです。
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米児童文学賞受賞作。去年の夏「岬のマヨイガ」の原作と映画を見てその出来の良さに感心していたが、これは吉田玲子の脚本のおかげだと思っていたら、この著者の原作に力があったのだと思い知らされた。黄泉がえりした人間がその正体を見破られない限り普通に生活して行き子孫を作っていくことも可能と言うファンタジー、日本では良くある設定ではあるがストーリーが素晴らしいし、作中作の結末もなかなか切ない。日本の女性作家たちの力は本当に素晴らしい、男性作家はミステリー作家しかいないのかと嘆かわしくなる、村上春樹がんばれ!
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主人公の「カズ」は、何度、情けないと思い、泣きそうになったのだろう。 ただ、勘違いしないでほしいのは、彼が決して弱虫とか、意気地無しではないということ。 それは、小学五年生の彼一人の戦いであり、いじらしい彼女の、かけがえのない新たな人生を守るための戦い。 亡くなった人の命が...
主人公の「カズ」は、何度、情けないと思い、泣きそうになったのだろう。 ただ、勘違いしないでほしいのは、彼が決して弱虫とか、意気地無しではないということ。 それは、小学五年生の彼一人の戦いであり、いじらしい彼女の、かけがえのない新たな人生を守るための戦い。 亡くなった人の命が還ってきて、新たな人生を歩むことが本当にいいのかどうかを、様々な物語で考えさせられる、ファンタジーならではの題材は、却って、現実の人の命の尊さを如実に表してくれるように感じられる。それぞれの立場に上手く重ね合わせられる構成の素晴らしさも。 何度も泣きそうになるカズは、少しでも彼女にやりたいことをやらせてあげたい、生きて欲しいという、純粋な思いやりから、それが中々上手くいかない自分自身へのふがいなさから、そうした思いに至る。 確かに、彼の軽率だったり、考えなしの行動には、その時は失敗だったのかもしれないが、一貫して彼の行動には、他人の痛みを知ることによる無償の優しさが起因しており、私からすれば、その気持ちが大切なんだと彼に言ってあげたいし、彼の姿を見て、逆に泣きそうになるのは私の方である。 しかも彼の行動には、人の性格は変えられないけれど、行動を変えさせることはできることを、改めて教えてくれた。それは、彼の思いの一途さが相手に伝わったからである。 物語の終わり方には、好みが分かれるかもしれないが、私はこれでいいと思う。 いろんな未来をあれこれ想像できるし、人生、まだまだ先は長いし、カズもようやくいい男なのが認められたし。まあ、相手はともかくとして。 でも、この先絶対モテるだろうな、彼は。
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生と死の問題を、ソフトに深く問いかけてくるストーリー。今を生きる人の祈りが、この世を去った人たちを新たな「生」へとつなぎます。柏葉センセイ会心の一作、読み応え十分です。
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私が一番好きだった児童文学の作者が柏葉幸子さんだ。子供が大人の保護、管理の下を離れ、不思議な経験や冒険を経て成長する、王道でありながらも夢中になる物語を書く作家さんだ。 この本は、甥や姪に贈るために買ったもの。2011年に初版が出たものであり、私が夢中で読んでいた小説から30...
私が一番好きだった児童文学の作者が柏葉幸子さんだ。子供が大人の保護、管理の下を離れ、不思議な経験や冒険を経て成長する、王道でありながらも夢中になる物語を書く作家さんだ。 この本は、甥や姪に贈るために買ったもの。2011年に初版が出たものであり、私が夢中で読んでいた小説から30年以上の時を経て書かれたものだ。 私も大人になってしまい、かつてのように児童文学に夢中にはなれなくなってしまった。 しかし、だ。やはり柏葉さんの「世界」は健在だ。 この物語は、魔法や別世界が出てくるファンタジーではなく、現実っぽい世界が舞台だが、主人公が直面する「謎」と「不思議」、そして登場人物が夢中で読む「ファンタジー小説」が合間に挿入され、「日常」にバランスよくファンタジーがミックスされている。「はてしない物語」を思わせるような作りになっている。 柏葉幸子さんの小説としては「霧の向こうの不思議な街」や「りんご畑の特別列車」などを推したいが、これらの本を読んでいた時から30年が経ってなお、新しい小説に触れることができることを感謝したい。
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