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最終講義 の商品レビュー

4.4

82件のお客様レビュー

  1. 5つ

    35

  2. 4つ

    28

  3. 3つ

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2012/07/09

「存在しないもの」からのシグナルを聴きとる。「教育に等価交換はいらない」とてもいい話です。基本は一人で語っている講義録ではありますが、そこに「相方が降りてくる」瞬間を読むと面白いよ、という著者の論。異論を立てる、いろいろな考えがある。矛盾もいっぱい。だからこそ革新や成長が起こる、...

「存在しないもの」からのシグナルを聴きとる。「教育に等価交換はいらない」とてもいい話です。基本は一人で語っている講義録ではありますが、そこに「相方が降りてくる」瞬間を読むと面白いよ、という著者の論。異論を立てる、いろいろな考えがある。矛盾もいっぱい。だからこそ革新や成長が起こる、ということを幅広く受けとめたい。

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2012/07/07

「上機嫌でいる」にこやかに微笑んでいる状態が現実をオープンマインドでありのままに受け容れる状態であり、自分の限界を超えたパフォーマンスを引き出すことができること。 自己利益を動機にしていては、自分の能力はある程度以上は上がらない。自分以外の「何か」を背負うことによって、自分の能...

「上機嫌でいる」にこやかに微笑んでいる状態が現実をオープンマインドでありのままに受け容れる状態であり、自分の限界を超えたパフォーマンスを引き出すことができること。 自己利益を動機にしていては、自分の能力はある程度以上は上がらない。自分以外の「何か」を背負うことによって、自分の能力の限界を突破することだって可能になる。 無意識に心に掛っていた自分だけでは言葉にならなかったもの、聴きたかった言葉を聴けたような気がする。

Posted byブクログ

2012/07/07

久しぶりにこういった本を一気読みしましたが、へとへとになってしまいました。 内田さんは、ツイッターやブログはいつも拝読してますが、著書読んだのはこれが4・5冊目かな。文章の組み立てなのか、議論の進め方なのかよくわかりませんが、読んでてすごく納得がいく。と同時にいろいろと考えがふ...

久しぶりにこういった本を一気読みしましたが、へとへとになってしまいました。 内田さんは、ツイッターやブログはいつも拝読してますが、著書読んだのはこれが4・5冊目かな。文章の組み立てなのか、議論の進め方なのかよくわかりませんが、読んでてすごく納得がいく。と同時にいろいろと考えがふくらんでいく。そして最終的に自分の無知さや思慮の浅さを痛感するのですが。。 講演録ということで、いろんなテーマが並んでいるのですが、その中でいくつか共通して出てくる話題がある。 それはやっぱりブログやらを見ててもちょくちょく出てくる話題で、内田さんの中でも確信めいたものがあるのだと思う。 特に教育の有りようについての意見などは、読んだ範囲では一貫した立場から述べられてる。 それを「はぁなるほど」とそのまま受け入れそうになるけど、それだと内田さんの仰ってることにまた反すますし、自分なりに考えを広げていかんとな。

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2012/07/03

初内田樹さん。 イメージしていたより、ニュートラルで感情的な押し付けがなく、読みやすかった。『知的高揚感』を味わった。内容に関して、自説を述べられるような教養を持てたらいいな。 特に教育については、あまり興味がなく考えたこともなかった。教育がビジネス領域として見られることを危惧...

初内田樹さん。 イメージしていたより、ニュートラルで感情的な押し付けがなく、読みやすかった。『知的高揚感』を味わった。内容に関して、自説を述べられるような教養を持てたらいいな。 特に教育については、あまり興味がなく考えたこともなかった。教育がビジネス領域として見られることを危惧する氏の説にはなるほどと思った。 ~メモ~ ・ヴォーリズ建築の魅力   →→教育のための仕掛けが施された建築。(神戸女学院) ・北方領土問題が解決すると困るのはアメリカだけ。   →→現状維持をするためにアメリカは必死で日本国内の世論形成を行っている。 ・倍音的文体 →→太宰治 ・断片的な情報から全体的なストーリーを紡ぐ知性

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2012/06/20

ここには、内田樹の神戸女学院での最終講義を含む六つの講演内容が収められている。内容に関しては、普段から著者がその著書やブログ、その他のメディアを通して語っている文脈に通ずるものがある。しかし、講義録ということで、文章にリズム感があり、かつ、非常に平易に彼自身の考え方を語っている。...

ここには、内田樹の神戸女学院での最終講義を含む六つの講演内容が収められている。内容に関しては、普段から著者がその著書やブログ、その他のメディアを通して語っている文脈に通ずるものがある。しかし、講義録ということで、文章にリズム感があり、かつ、非常に平易に彼自身の考え方を語っている。 「教育」について ○教育はビジネスではなく、無償の贈与から始まるものであり、そこで提供される効果は数値化出来ない。 ○教育の目標は「学生が幸福な人生を送ること」、そしてその幸福は実は計量できない ○教育とは、「理解できないような価値が世界には存在する」ということそれ自体を教えること つまりは、教える側=供給者と、学ぶ側=消費者都の間で成立するビジネスとして教育をとらえ、市場原理をそこに持ち込んでその優劣を競う現代教育のあり方が、本来の教育とはいかに乖離しているかを鋭く説く。 「政治」について 今の政治は、旧自民党内部の二大潮流:福田派的思考(新自由主義型都市政党)と、田中派的思考(社会民主主義的農村政党)を自民党と民主党がそれぞれ代弁しており、旧自民党以外の政治勢力は、いわば自民党の二大派閥の拡大分化によって呑み込まれてしまった。 確かに現在の民主党、自民党の根本には著者が指摘するところの潮流があると思う。さすればこそ、こういう視点で今の政治を考えてみると、どこに、あるいは誰の主張に、日本の今と将来を見据えた本当の議論と対立軸の提示があるのかの整理に非常に役立つ。 「学ぶ」ことを通して語られる著者自身の生き方について ○神戸女学院における最終講義で語られる、ヴォーリズが学院校舎の建築を通じて表現した学びの本質(自らの手でドアノブを回した者に贈り物は届けられること) ○若い頃の著者がエマニエル=レヴィナスに会えた際のエピソード(あなたの哲学的未来に幸多からんことを) ○著者がユダヤ研究を志した理由(アメリカを睥睨する知的ポジションに立ちたい) 六つの講義それぞれが、平易な話し言葉によるものだが、現代の社会とそこに生きる我々の生き方への示唆に富んでおり、その論旨は明快、そして著者自身の日本人に対する深い愛情を感じることが出来る。 レヴィナス先生とのエピソード紹介や、最終講義で神戸女学院を語る場面では、その熱い想いが伝わってきて、感激した。

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2012/06/16

共感するところが多かった と同時になるほど納得のとこもあって よかった そう!そうなの!と ふむふむ! の絶妙な感じがすき

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2012/06/14

「教育とは」「文学とは」などをいつもの語り口でわかりやすく講義してくれる.講義録なので臨場感があります.

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2012/05/14

201205/ 「隣人を愛する」というのは、隣人に自分の口からパンを与え、自分の服を脱いで着せかけ、自分の家の扉を開いて自分の寝台を提供する。そういう具体的な営みを意味しています。そして、そのような具体的な営みの裏付けがない限り、神を愛するという行いは達成しない。自分自身の今ここ...

201205/ 「隣人を愛する」というのは、隣人に自分の口からパンを与え、自分の服を脱いで着せかけ、自分の家の扉を開いて自分の寝台を提供する。そういう具体的な営みを意味しています。そして、そのような具体的な営みの裏付けがない限り、神を愛するという行いは達成しない。自分自身の今ここでの生身の身体が実現できるところから慈愛と正義をこの世界に積み増してゆく。永遠に実現されないかもしれないはるかな理想と、今ここで実践しなければならない具体的行為は表裏一体のものであり、一方抜きには他方も成り立ちがたいということを「愛神愛隣」という言葉は伝えている/ 真に危機的な状況に投じられ、自分の知的ポテンシャルを総動員しなければ生き延びられないというところまで追いつめられたら、人間はにっこり笑うはずなんです。それが一番頭の回転がよくなる状態だから。上機嫌になる、オープンマインドになるというのは精神論的な教訓じゃないんです。追い詰められた生物が採用する、生き延びるための必死の戦略なんです。/ 外で嵐が荒れ狂う暗い体育館で腕組みしながら、誰も来ない畳の上に座って待っていたときに、僕は覚悟したんです。人に教えるって、多分こういうことだろうって。誰も「教えてください」と言ってこないけれど、こちらが「教えたい」と言って始めた以上、教える人間はこのリスクを引き受けなければいけない。そう思ったんです。誰かが扉を開けてきてくれるまで、待ってなければいけない。畳を敷いて、準備体操をして、呼吸法もして、いつでも稽古できるように備えていなければならない。それが「教えたい」と言った人間の責任の取り方じゃないか、と。そのときに、教育というのはたぶんそういうものだろうと思ったのです。/ 子どもに四書五経の素読なんかさせたって、学問的有用性はまったくないんです。では、いったい何を教えているのかというと、「子どもには理解できないような価値が世界には存在する」ということそれ自体を教えているわけです。「お前が漢籍を学ばなければならない理由を私は知っているが、お前は知らない」という師弟の知の非対称性そのものを叩きこんでいるわけです。極端な話、漢籍の内容なんかどうだっていいんです。子どもに「手持ちの小さな知的枠組みに収まるな」ということを殴りつけて教え込んでいる。子どもに「オープンエンド」ということを教え込んでいる。それさえわかれば、あとは子ども自身が自学自習するから。/ 文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースはその『親族の基本構造』という本の中で、親族というのは、最低四つの項から成り立っているという仮説を立てています。ここに父と母と息子がいたとします。その三項では親族として不十分である。これに第四の項として、「母方の男の兄弟」つまり「おじさん」が加わらないといけない。(略)父親とおじさんはこの男の子(息子・甥)に対して、相反する態度をとるそうです。父親が息子に対してきわめて権威的で、親子の交流が少ない社会では、おじさんが甥を甘やかす。反対に、父と息子が親密な社会では、おじさんが恐るべきソーシャライザーとなって、甥に社会規範をびしびしと教え込む。男の子の前に二人の成人男子が「ロールモデル」として登場してくる。それぞれが彼に対して相反することを言う。一人の男は「こうしなさい」と言い、もう一人の男は「そんなことしなくていいんだよ」と言う。(略)この葛藤のうちに子どもは幼児のときから投げ込まれている、というのが親族の基本構造なんです。(略)子どもを成熟させるプロセスというのは、「葛藤」/

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2012/05/08

(以下引用) 頭がいいことはわかります。こちらが知りたいのは、その生まれついてのよい頭を使って「何を」するのか、ということなんです。でも彼らはそれを「私は頭がいい」ということを証明するために専一的に利用している。その使い方はなんだか根本的に間違っているような気が僕はするのです。せ...

(以下引用) 頭がいいことはわかります。こちらが知りたいのは、その生まれついてのよい頭を使って「何を」するのか、ということなんです。でも彼らはそれを「私は頭がいい」ということを証明するために専一的に利用している。その使い方はなんだか根本的に間違っているような気が僕はするのです。せっかく人並み優れてよい頭に生まれついたのなら、他に役に立つ使い道があるんじゃないか。(P.45) 天文学者が彗星を探すときに、毎日同じ時刻に、同じ方位の星座を写した写真を重ねて見るのと同じで、「それ意外の条件が全て同じ」であるときにだけ、わずかな変化を検出できる。知的活動においても同じです。昨日は脳内に存在しなかったアイデアを萌芽状態においてとらえるためには、それ以外の生活条件を全部同じにしておくに如くはない。規則正しい生活をするのが、脳内麻薬物質の大量分泌をもたらすためには最も効果的なんです。(p.69)

Posted byブクログ

2012/05/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

名前の樹は、「いつき」と読むとばかり思っていたら「たつき」でした。樹なつみ(漫画家さん)がいるから。 と、それはともかく、本書は、内田先生の最終講義から順番に時を遡りながら、講義・講演が収録されています。 松尾谷さんから教えてもらったブリコラージュの話が出てきました。   医療の現場は待ったなしです。「最高最適の医療をこれからご用意しますからちょっと待ってください」と言っているうちに患者が死んでしまうことだってある。今そこにある疾病という現実に対して、手持ちの材料で、手持ちの人員、手持ちの情報、手持ちの時間で対処しなければならない。   これをレヴィ=ストロースは「ブリコラージュ」と呼びました。「ありものの使いまわしで急場をしのぐ」ことです。医療とはその意味ではブリコラージュそのものです。だから、焼酎で傷口を消毒し、ホッチキスで傷口を縫合し、ガムテープと棒で副え木を作るというようなことは朝飯前なわけです。手許にある資源は全部使うことをつねに訓練されている。目の前にあるものの潜在可能性をつねに考量している。「これは何に使えるんだろう?」ということをいつも考えている。 待ったなしで、必死になって手持ちの駒で工夫しながら対処していくのはソフトウェア開発やソフトウェアテストでも同じですね。 ブリコラージュについては、ゆもつよさんがツイートしていた   仕事は本来ブリコラージュなんだ。けど、仕事の内容は体系的に残さないと伝えるのが困難になる。そこにエンジニアリングが必要なんだ。やり方を規定するのではなくやり方の共有方法の規定だと。 だから、書いてある事、聞いた事をそのままやってもうまくいかないわけだ。   だけど自分がやってる事を言語化するには本読んで頭を整理したり上手く言えなかった事を識別出来るようにならないといけない。 もとても大切なので再掲しておきます。 ★★★ こんなことも書いてあります。   教育というのは子供を「葛藤のプロセス」にたたき込むことに尽きるんです。「単一の価値観や単一の言葉遣いにしがみついていたのでは、自分の経験を説明することができない」という、その葛藤の中に巻き込むことなんです。   -- snip -- 子どもというのは「こうすればよろしい」という単一のガイドラインによって導かれて成長するのではなく、「この人はこう言い、この人はこう言う。さて、どちらに従えばよいのだろう」という永遠の葛藤に導かれて成長するのです。 そうですよね。様々な矛盾する意見がある中で、考えて成長していく。うん。そのとおりだ。 このように、内田樹はとても説明が上手いです。 比喩が適切で、すっっと分かった気にさせてくれます。 面白かったので、別の本も読んでみようかなぁ。今度は講義録でないタイプの物を。

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