逝年 の商品レビュー
『娼年』が出た頃はそのエロティックさに興味津々で読んだものだけど、その後、自分のなかでこの著者のメッキが剥がれたからやや惰性的に読んだもの。『娼年』の続編であり、AIDSやGIDのFTMなんて題材を中心に扱っている。最近、そういった領域を覗いてきた自分としては、どうもこういった題...
『娼年』が出た頃はそのエロティックさに興味津々で読んだものだけど、その後、自分のなかでこの著者のメッキが剥がれたからやや惰性的に読んだもの。『娼年』の続編であり、AIDSやGIDのFTMなんて題材を中心に扱っている。最近、そういった領域を覗いてきた自分としては、どうもこういった題材が興味本位で扱われているような気がしながら読んだ。 もちろん、どのようなかたちであれ、AIDSやGIDといったものを抱えて生きている人がいることを知るのは、とりあえずは望ましいことなんだけれど、それをチャラチャラと描いているように思えてしまうのが、自分が今この著者に対して抱いている印象なんだろうな。
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≪内容≫ ボーイズクラブで娼夫として働く主人公リョウ。仕事を通して知る人の欲望の深遠さ、そして彼をその道に導いた静香という女性の最期。 ≪感想≫ 高校生の頃に前作『娼年』を読み、それから5年以上経って電車の吊り広告で続編の文庫化を知り購入した。登場人物が皆懐かしく、当時と同じ...
≪内容≫ ボーイズクラブで娼夫として働く主人公リョウ。仕事を通して知る人の欲望の深遠さ、そして彼をその道に導いた静香という女性の最期。 ≪感想≫ 高校生の頃に前作『娼年』を読み、それから5年以上経って電車の吊り広告で続編の文庫化を知り購入した。登場人物が皆懐かしく、当時と同じように夢中で読み耽ってしまった。 正しさ、常識、普通、モラルとはどこにあるのか、そもそも存在するのか。娼夫という仕事を題材に取り上げた前作、今作で一貫して描かれているテーマだと思う。特に人の欲望についてはその正解の無さ、あるいは答えの多様さに驚かされながらも、だからこそより深く知りたいと思ってしまう。そういった感覚が僕が主人公のリョウに感情移入してしまうポイントなのかもしれない。 死に直面してなお止むことのない性への欲望。互いに身体を重ねることで知る生の意味。続編としても一冊の小説としても、とても良くまとまっていると思う。 余談だが、男を魅力的に育て上げる女性の審美眼にはいつも感心させられる。成熟した女性が持つ魅力を含め、石田衣良はそういう視点からの描写が上手だなと思う。
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