きみの鳥はうたえる の商品レビュー
共に21歳の僕と静雄はふたり暮らし。そこに僕の彼女である佐知子が加わる。 全体をとおして常に息が詰まってしまうような淡々と語られる青春小説。 ほこり臭くて、じめっとしている。 僕が彼女である佐知子を躊躇なく静雄に渡してしまうなど、僕の心情がなかなかつかめません。 後半、静雄が気を...
共に21歳の僕と静雄はふたり暮らし。そこに僕の彼女である佐知子が加わる。 全体をとおして常に息が詰まってしまうような淡々と語られる青春小説。 ほこり臭くて、じめっとしている。 僕が彼女である佐知子を躊躇なく静雄に渡してしまうなど、僕の心情がなかなかつかめません。 後半、静雄が気を違えてしまったり、文庫本に同時収録されている「草の響き」の主人公が自律神経失調症であるところなどは、著者の私生活での影響が少なからず出ているのかもしれません。 ちなみに「きみの鳥はうたえる」というタイトルは、この作品を執筆しているときにたまたま流れていたビートルズの「And Your Bird Can Sing」からなんとなく付けたのだそう。先日放送された佐藤さんのドキュメンタリー映画「書くことの重さ 作家 佐藤泰志」で語られていました。 著者は本作を筆頭に5度の芥川賞候補となるも受賞ならず。41歳という若さで自死を選ぶ。 映画「海炭市叙景」を観て、原作者の佐藤泰志さん(原作名も海炭市叙景)に興味を持ちました。全作読みたいです。
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初めて佐藤泰志を読みました。70年代の青春。息の詰まる、痛い、苦しい、不安、けど、文章は風みたい。空気みたい。救いが無い様で、希望がある気がする不思議。自死した作者の人生は、私には想像がつかないけど、きっと全くわからない事ではない、と思った。
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海炭市叙景に続いて読んだこの作品は、佐伯一麦氏の「芥川賞を取らなかった名作たち」でも作品名があげられていた。全編にみなぎる緊張感に拍手したい。
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表題作の透明感。併録の「草の響き」も素晴らしい。全ての出来事、フレーズにある含み。余計なことまで語らずに、確かな青春がそこにある。
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よくも悪くも「昭和の青春小説」という佇まいだった。 青春期特有の閉塞感を伴う破滅願望に裏打ちされた馬鹿騒ぎが、ひたすら潔癖な文章で描かれている。こういうのは嫌いではない。むしろずっと以前には相当憧れた世界観である。 だからこそ、なのだろうか。それは今、たまらなく青臭く、まぶしい。...
よくも悪くも「昭和の青春小説」という佇まいだった。 青春期特有の閉塞感を伴う破滅願望に裏打ちされた馬鹿騒ぎが、ひたすら潔癖な文章で描かれている。こういうのは嫌いではない。むしろずっと以前には相当憧れた世界観である。 だからこそ、なのだろうか。それは今、たまらなく青臭く、まぶしい。そしてあの時代、「死」とはこんなにも身近にあったのか。とあらためて思う。「星空のマリオネット」という映画を思い出した。
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「草の響き」、特によかった。諦念とか、心の脆さとか、遠く感じながらも妙に納得した気持ちで読む。 夏はこういう小説に惹かれる。
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哀しいまでにみずみずしく、傷つきやすい。 社会生活を支障なく営んである一定の年齢を越えると、こういう感性は青すぎて見えてしまうのかもしれない。若くして命を断った著者の文章は、そういう未熟さ、脆さ、純粋さみたいなものを凍結して、読む者の前に解凍してみせる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
佐藤泰志、2冊目。 女を介してしか他者と交信できない男の話。 父親目線のエディプス・コンプレックス、と解しては誤読か。 二段ベッドとか、そこでの情事とその後の展開とか。 要再読、いつの日か。
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