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きみの鳥はうたえる の商品レビュー

3.7

48件のお客様レビュー

  1. 5つ

    7

  2. 4つ

    20

  3. 3つ

    12

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

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2018/10/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

長らく積読の山の中にあって何度もタイトルを見ていたのに、映画を観るまでは『きみの鳥はうろたえる』だと思い込んでいました。ビートルズの曲でもあったのですね。 先に映画版を観ているから、どうしてもキャストを重ねて読んでしまう。生々しい描写もそこそこあるため、柄本佑よりもうちょっとは顔も体もイケているほうがよかったなぁ。柄本さん、すみません。役者としては好きですよ(^o^)。 だらだらと過ごす3人の21歳の夏。映画版でも感じたように、登場人物すべてだらしなく感じられて誰にも共感できません。でも、このぐらいの年齢の頃って何かを目標にがんばっていたわけでもなく、毎日適当に寝て適当に起きて好きなことをやる、その繰り返しだったかもしれない。 この著者の作品を読んでいてつらいのは、41歳で自らの命を絶ってしまった人だということが毎度最初に頭をよぎるから、決して楽しい読書にはならない。別の著者の作品ならば、普通に青春の一コマとして読めたであろうところ。そしてラストは映画版とは大きく異なり、再び自死した事実を思い起こさせられてしまうのです。 生きていてほしかった。生きているあなたの作品をもっともっと読みたかった。 映画の感想はこちら→https://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/eef9eaf20131efe5b696f9024fc8230c

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2018/10/01

佐藤泰志の作品は、「そこのみて光輝く」以来。 僕と静雄と佐知子が過ごした夏。 僕と静雄の距離感。 僕と佐知子の温度感。 身体の関係からか、気持ちの繋がりか。 佐知子に出会った時から、彼女に好意を抱く静雄を見守る僕。 僕を通して静雄の考えは読み手に伝えられる。それなのに、なんとなく...

佐藤泰志の作品は、「そこのみて光輝く」以来。 僕と静雄と佐知子が過ごした夏。 僕と静雄の距離感。 僕と佐知子の温度感。 身体の関係からか、気持ちの繋がりか。 佐知子に出会った時から、彼女に好意を抱く静雄を見守る僕。 僕を通して静雄の考えは読み手に伝えられる。それなのに、なんとなく彼が何を考え、感じていたのか不思議とわかる。 夏の暑さや、汗の湿り気など、文章からにおいと湿度が伝わってくる。 「草の響き」は、そのまま作者が見えてくるようだった。

Posted byブクログ

2018/09/29

佐藤泰志作品、実は初めてで、すごく硬い文章の人だと勝手に思っていたのだけど穏やかで澄み渡った、けれどすぐ足元に生の気だるさを置いた文章だった。映画版は時代も街も変わっているのにたしかにこの小説から出てきたものだと思った。終わらないようでゆっくり死んでいく時間、常に破滅がちらついて...

佐藤泰志作品、実は初めてで、すごく硬い文章の人だと勝手に思っていたのだけど穏やかで澄み渡った、けれどすぐ足元に生の気だるさを置いた文章だった。映画版は時代も街も変わっているのにたしかにこの小説から出てきたものだと思った。終わらないようでゆっくり死んでいく時間、常に破滅がちらついている、何か、確かな予感を秘めた時間。 気だるさはふと訪れる死の予感にとても敏感、だから未来を生きられず今の時間だけをさまよっている。破滅はふと、天気が変わるだけのこと。原作を読むと、映画版があれでもかなり「青春」に舵を切ったのだなあと思う、けど映画版もまごうことなくこの『きみの鳥はうたえる』だと思った。 映画版では時代設定が現代になってたけど原作は佐藤泰志が生きた80年代で、スマホもなく、静雄と僕が置き手紙でやり取りするのとても良いなあと思った。「水曜日さ」っていうたった一行の返信が、これ以上なく美しいものに思えた。佐知子が笑い飛ばすのもわかるなあと思った。いちばん好きな一節。 もし、映画にも静雄のAnd Your Bird Can Singをアカペラで歌うシーンがあったならどうなってたんだろうなあと思う。染谷将太がきっとあの遠くを見てる目で、間接照明に横から赤く照らされながら、曖昧なところは鼻歌も挟んで静かに愉快にうたう、彼の声以外には音のない夜だっただろう。

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2018/09/24

映画を先に。 3人の世界。 いつまでも、誰にも、おかされず。 居心地のいい場所はしだいに冷えていく。 美味しいものは美味しいうちに。 今のこのぬくもりを忘れないで。 遠くにいても誰かを思います。 自分のことではない誰かを。 それもひとつあたたまる術。

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2018/09/16

走ることを文章にするのは難しい。 まして、それを軸に小説書くのも。 単純化しない。 曖昧なものを曖昧なままに表現する。 因果関係なんてせせこましいことは言わない。 ストーリー は、小説を遅延させる、のであれば、この人の話にももちろん小説はあるけど、この人の描く小説の中の今は遅延な...

走ることを文章にするのは難しい。 まして、それを軸に小説書くのも。 単純化しない。 曖昧なものを曖昧なままに表現する。 因果関係なんてせせこましいことは言わない。 ストーリー は、小説を遅延させる、のであれば、この人の話にももちろん小説はあるけど、この人の描く小説の中の今は遅延なし。

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2018/09/12

映画をずっと観たり、顔馴染みの飲み屋で突然サッカーをはじめたり、どこか懐かしく、また羨ましくもある。

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2016/10/06

2作とも、 主人公の心情と、 その説明が最小限でありながら、 主人公の行動の描写と、 とりまく人物たちの独特な魅力の対比によって、 浮かび上がる生命への問い。 名前がないことによって明確になる、 空気のように意味の無いようになることを目指しながら、 限りない実感を求める物語たち...

2作とも、 主人公の心情と、 その説明が最小限でありながら、 主人公の行動の描写と、 とりまく人物たちの独特な魅力の対比によって、 浮かび上がる生命への問い。 名前がないことによって明確になる、 空気のように意味の無いようになることを目指しながら、 限りない実感を求める物語たちに、 愛着を拭いきれないのである。 無いことを知り、あることを悟る。 あることを捨て、無いことを理解することによって、 その先の、あることを見出す。

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2015/09/03

いわゆる“ドリカム状態”の男女三人(表現が古い?)の青春を描いた表題作と、仕事のストレスから精神を患い医者に勧められたのがきっかけで走ることに夢中になった若者を描いた「草の響き」の二本収録。 以前読んだ「そこのみにて光輝く」同様、若者たちの間に漂う閉塞感みたいなものの描き方秀逸で...

いわゆる“ドリカム状態”の男女三人(表現が古い?)の青春を描いた表題作と、仕事のストレスから精神を患い医者に勧められたのがきっかけで走ることに夢中になった若者を描いた「草の響き」の二本収録。 以前読んだ「そこのみにて光輝く」同様、若者たちの間に漂う閉塞感みたいなものの描き方秀逸で、1970年代後半から1980年代前半に書かれた新しくはない小説が、今の若い人たちに共感され甦ったのも頷ける。 二作のうちでより印象に強く残ったのは「草の響き」で、それは私自身がかつて精神を患ってこの主人公同様医者にかかった経験があるからで、医者とのやり取りをどこか冷めた気持ちで見ているところや、待合室で診察を待つ時に周りの患者を見ていて色々考えたことなど、あまりにも身に覚えがありすぎて苦しくなるほどだった。 身体を動かすことで精神的にも段々と上向きになってきた時に主人公が思う、「振り出しに戻りたくない」という強い思い。これはそういう病を経験した人にしか分からない、恐れと切迫感からくる切実な願いだと思う。 苦しみ抜いて死んでしまう人と、苦しみ抜いて尚生きる人の差って何だろう、と考えた。 不意に絶望を感じた瞬間を、何かの巡り合わせでその手に掴んでしまうかどうかなのだろうか、って。 両者の違いはそんなに大きなものではないようにずっと思っているのだけど、それは、死ねない側に立つ私だから思うことなのかもしれない。 そしてもうひとつ。罪を犯してしまうか、理性で踏み留まるか、という小さいようで結果的には大きな違いも、そこに至る道筋だとかそうなってしまった何かのタイミングとか、変な勢いとか、そういうものもきっとあるのだと思う。 どちらのお話も主人公の名前が一切出てこないところが印象的だった。それは誰でもなく、そして誰にでも当てはまる可能性がある、ということ。 貧しく、これといった希望もなく、執着心もない。だけどどこかで誰かとのつながりを求めている。 まさに“今”だな、と思う。 時代を感じつつ古くない、そんな小説。

Posted byブクログ

2016/09/19

映画海炭市叙景を見て、気になって作者を調べたら「きみの鳥は歌える(and your bird can sing)」、タイトルにグッときて読んでみた。最後まで読んでも、僕のことも静雄のことも佐知子のこともよく知らないままで。大人が若者を羨ましがって書いた小説かと。でもすごく分かる。

Posted byブクログ

2014/12/09

洋楽の曲名の直訳をタイトルにしたものが新鮮。 男女3人の奇妙な友情と愛情が独特の情感を表している。そしてそれが不思議と心地よい。

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