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きみの鳥はうたえる 河出文庫
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きみの鳥はうたえる 河出文庫

佐藤泰志【著】

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きみの鳥はうたえる 河出文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 河出書房新社
発売年月日 2011/05/09
JAN 9784309410791

きみの鳥はうたえる

¥220

商品レビュー

3.7

47件のお客様レビュー

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2024/06/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

自らのための備忘録  2024年令和6年の今より、1980年前後の時代の方が好き!と思わず感じた小説でした。  ここからネタバレします。  表題の「きみの鳥はうたえる」の最後のところを読んで、なぜ、この結末を想像できなかったのかと自分がイヤになりました。もう最初から、伏線はこれでもかっていうほど張られていて、それに気づかない読者なんて、この本を読む資格はないんじゃないかと思ったほど。  文庫本の解説のタイトルにもなっている「三人傘のゆくえ」は何より印象に残りました。 《そのうち、佐知子のむこうに、彼女を通して新しく静雄を感じるだろう》のあと、《そのうち僕は佐知子をとおして新しく静雄を感じるだろう、と思ったことは本当だった(略)今度は僕は、あいつをとおしてもっと新しく佐知子を感じることができるかもしれない》  この解説は、遅れてやってきた佐藤泰志ファンには有難いものでした。「草の響き」の印刷所での主人公の描写のリアリティは本人のものだったのかとわかりました。 《そうやって日を送っているうちに、彼は活字の埋め込み作業をしょっちゅう間違うようになった。単純すぎるほど単純な労働だった。それなのにしまいには、今までたった三本の指で、何十本もの活字をいっぺんに摑むことができたのに、それも不可能になった。活字は指からこぼれて、足元の床板に音をたてて落ちた。彼は仕事ができなくなっている自分を発見した。屈んでこぼした活字を拾いながら、急に眼が涙でふくらんで子供のように泣きだす自分をこらえることができなかった。床に屈んだままの姿勢で、彼はあたり構わず嗚咽する始末だった。そこからやっとのことで立ち上がると字詰めの主任のところまで行って、皆んなは僕を役立たずといっている、党員でもないし、党員になろうともしない僕をくずだといっている、とほとんど喚き声でいった。皆んな? と主任は穏やかな声でいった。確かに中にはそんなことを考えている奴もいるだろう。だがそんなことを現実に誰がお前に話したんだ? 彼は混乱した。みんなが陰でこそこそ話しているように僕が感じている、と彼は訂正して訴えた。馬鹿なことをいうな、と主任はメタルフレームのどの強いメガネを指で押し上げながら、かん高い鳥のような声でいった》  そう。この小説は2024年には書かれることのない時代が書かれていて、それが堪らなく心地よかった。それはケータイのない時代とかそういうことではなくて、友だちが身近にいて、「友情」とこそういう面倒なものではなく、共にいることが生活っていうのがとても心地よかった。  そして、友だちがいるからと言って「孤独」でないわけではなく、友だちがいようといまいとそんなことに関わりなく、人というものは孤独であり、生と死は常に紙一重のところにあるのだという当たり前のことがしっかり書き込まれていて、心からこの作家が好きだと思いました。

Posted by ブクログ

2024/02/23

1970年代の青春のひとつだったと思われる この作家の夏と暑さと汗の描写にいつも感心してしまう すこしみじめでみっともない感じがなんか懐かしい タイトルの意味するところがまたもや判らないけどかっこいいな

Posted by ブクログ

2024/02/17

再読。本当に大好きな作品。 ひと夏の幸福な時間を描いているはずなのに、最初からずっと暴力的な予感がある。 「僕は率直な気持ちのいい、空気のような男になれそうな気がした」と言うように、「僕」は意識的に静雄や佐知子に自分の中を通り抜けさせているように思う。この話は「僕」から見た静雄...

再読。本当に大好きな作品。 ひと夏の幸福な時間を描いているはずなのに、最初からずっと暴力的な予感がある。 「僕は率直な気持ちのいい、空気のような男になれそうな気がした」と言うように、「僕」は意識的に静雄や佐知子に自分の中を通り抜けさせているように思う。この話は「僕」から見た静雄や佐知子の物語なんじゃないかと思うくらい。 「僕」はバイト先の誰とも関わろうとせず、バーの飲み仲間ともつるまず、自分にも全然興味を持っていないのに、静雄にだけは心を開いている。 オールナイトの映画に連れ出されるシーンや、カンダタのくだりに見られるように、「僕」は生活の中で静雄に引っ張られたり影響を受けているところがかなりある。静雄がどんなに情けなくても、「僕」はずっと静雄に心を寄せ続けている。 そこに佐知子が現れて、2人が近づいていくごとに、「僕」の気持ちも、「僕」から見える静雄も変わっていく。 静雄が佐知子に「もう一度お休みを言ってくれないか」と頼んだときから、「僕」は佐知子を通して新しく静雄を知り続けているんじゃないかな。 静雄が持つ独特の愛嬌やナイーブさはとても魅力的だけど、静雄が主人公だと独り善がりの苦しい物語になっていたと思う。「僕」の目を通して初めて 静雄が憎めないキャラクターとして浮かび上がってくるのではないかなと思う。 そう考えると、「僕」の周りとの距離のとり方はすごく切ない。まるで「僕」自身に実体はなくて、静雄や佐知子やバイト先の人達といった周りの人たちとの関係によってゆらゆらと形作られた陽炎だと思っているみたい。 「空気のような男」になる必要なんてない、あなたの人生の幸福はあなただけのものにしていいのに。最後、悲劇に巻き込まれるのは静雄だけど、本当に悲しみの底にいるのは静雄も佐知子も失った「僕」なんじゃないだろうか。

Posted by ブクログ

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