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きみの鳥はうたえる の商品レビュー

3.8

48件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

    20

  3. 3つ

    11

  4. 2つ

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2024/07/21

映画から入ってしまったので、どうしてもイメージが現代に引っ張られちゃったけど、夏の美しさと鬱屈さが妙にリアルで今日このタイミングで読めたことを嬉しく思いました。思ったことはここに他の方が綺麗に感想として残してくれててそれもうれしい。またきっと、何年後かの夏に読むと思う。

Posted byブクログ

2024/06/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

自らのための備忘録  2024年令和6年の今より、1980年前後の時代の方が好き!と思わず感じた小説でした。  ここからネタバレします。  表題の「きみの鳥はうたえる」の最後のところを読んで、なぜ、この結末を想像できなかったのかと自分がイヤになりました。もう最初から、伏線はこれでもかっていうほど張られていて、それに気づかない読者なんて、この本を読む資格はないんじゃないかと思ったほど。  文庫本の解説のタイトルにもなっている「三人傘のゆくえ」は何より印象に残りました。 《そのうち、佐知子のむこうに、彼女を通して新しく静雄を感じるだろう》のあと、《そのうち僕は佐知子をとおして新しく静雄を感じるだろう、と思ったことは本当だった(略)今度は僕は、あいつをとおしてもっと新しく佐知子を感じることができるかもしれない》  この解説は、遅れてやってきた佐藤泰志ファンには有難いものでした。「草の響き」の印刷所での主人公の描写のリアリティは本人のものだったのかとわかりました。 《そうやって日を送っているうちに、彼は活字の埋め込み作業をしょっちゅう間違うようになった。単純すぎるほど単純な労働だった。それなのにしまいには、今までたった三本の指で、何十本もの活字をいっぺんに摑むことができたのに、それも不可能になった。活字は指からこぼれて、足元の床板に音をたてて落ちた。彼は仕事ができなくなっている自分を発見した。屈んでこぼした活字を拾いながら、急に眼が涙でふくらんで子供のように泣きだす自分をこらえることができなかった。床に屈んだままの姿勢で、彼はあたり構わず嗚咽する始末だった。そこからやっとのことで立ち上がると字詰めの主任のところまで行って、皆んなは僕を役立たずといっている、党員でもないし、党員になろうともしない僕をくずだといっている、とほとんど喚き声でいった。皆んな? と主任は穏やかな声でいった。確かに中にはそんなことを考えている奴もいるだろう。だがそんなことを現実に誰がお前に話したんだ? 彼は混乱した。みんなが陰でこそこそ話しているように僕が感じている、と彼は訂正して訴えた。馬鹿なことをいうな、と主任はメタルフレームのどの強いメガネを指で押し上げながら、かん高い鳥のような声でいった》  そう。この小説は2024年には書かれることのない時代が書かれていて、それが堪らなく心地よかった。それはケータイのない時代とかそういうことではなくて、友だちが身近にいて、「友情」とこそういう面倒なものではなく、共にいることが生活っていうのがとても心地よかった。  そして、友だちがいるからと言って「孤独」でないわけではなく、友だちがいようといまいとそんなことに関わりなく、人というものは孤独であり、生と死は常に紙一重のところにあるのだという当たり前のことがしっかり書き込まれていて、心からこの作家が好きだと思いました。

Posted byブクログ

2024/07/01

再読。本当に大好きな作品。 ひと夏の幸福な時間を描いているはずなのに、最初からずっと暴力的な予感がある。 「僕は率直な気持ちのいい、空気のような男になれそうな気がした」と言うように、「僕」は意識的に静雄や佐知子に自分の中を通り抜けさせているように思う。これは「僕」の話ではなく、...

再読。本当に大好きな作品。 ひと夏の幸福な時間を描いているはずなのに、最初からずっと暴力的な予感がある。 「僕は率直な気持ちのいい、空気のような男になれそうな気がした」と言うように、「僕」は意識的に静雄や佐知子に自分の中を通り抜けさせているように思う。これは「僕」の話ではなく、「僕」から見た静雄や佐知子の物語なんじゃないかと思うくらい。 「僕」はバイト先の誰とも関わろうとせず、バーの飲み仲間ともつるまず、自分にも全然興味を持っていないのに、静雄にだけは心を開いている。 オールナイトの映画に連れ出されるシーンや、カンダタのくだりに見られるように、「僕」は生活の中で静雄に引っ張られたり影響を受けているところがかなりある。静雄がどんなに情けなくても、「僕」はずっと静雄に心を寄せ続けている。 そこに佐知子が現れて、2人が近づいていくごとに、「僕」の気持ちも、「僕」から見える静雄も変わっていく。 静雄が佐知子に「もう一度お休みを言ってくれないか」と頼んだときから、「僕」は佐知子を通して新しく静雄を知り続けているんじゃないかな。 静雄が持つ独特の愛嬌やナイーブさはとても魅力的だけど、静雄が主人公だと独り善がりの苦しい物語になっていたと思う。「僕」の目を通して初めて 静雄が憎めないキャラクターとして浮かび上がってくるのではないかなと思う。 そう考えると、「僕」の周りとの距離のとり方はすごく切ない。まるで「僕」自身に実体はなくて、静雄や佐知子やバイト先の人達といった周りの人たちとの関係によってゆらゆらと形作られた陽炎だと思っているみたい。 「空気のような男」になる必要なんてない、あなたの人生の幸福はあなただけのものにしていいのに。最後、悲劇に巻き込まれるのは静雄だけど、本当に悲しみの底にいるのは静雄も佐知子も失った「僕」なんじゃないだろうか。

Posted byブクログ

2023/11/11

若者たちのひと夏の話でしたね、この瞬間が永遠に続けば、と思っても、人は変わるし、同じ夏も二度とはこない。若さゆえの倦怠と、根拠のない万能感、優しさと非情さと、気まぐれと。成人していても老成しきれない微妙な年頃の若者の描写が巧みです。佐藤さんの本は海炭市叙景を読みましたが、そこはか...

若者たちのひと夏の話でしたね、この瞬間が永遠に続けば、と思っても、人は変わるし、同じ夏も二度とはこない。若さゆえの倦怠と、根拠のない万能感、優しさと非情さと、気まぐれと。成人していても老成しきれない微妙な年頃の若者の描写が巧みです。佐藤さんの本は海炭市叙景を読みましたが、そこはかとなく漂う寂寥が、今作にもあるなと思いました。 読了後、本の内容と自身の記憶と思い返して苦しくなりました。映画も観たいです。

Posted byブクログ

2023/08/09

短中編2作品収録 青春小説で主人公に起こる出来事を たんたんと読んでいた感じです 表題作はタイトルから謎です

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2023/07/02

『きみの鳥はうたえる』 知らないはずの昭和の夏のにおいがする。(自分とは縁のないような)眩ゆいきらめきに満ちた日々の中に、ときおり恋愛・家族・生きることについての鈍い痛みがはしる。「僕」の捉えどころのなさ、佐知子の軽(やか)さ、静雄のナイーブさ…時に首を傾げる点もあったが、決して...

『きみの鳥はうたえる』 知らないはずの昭和の夏のにおいがする。(自分とは縁のないような)眩ゆいきらめきに満ちた日々の中に、ときおり恋愛・家族・生きることについての鈍い痛みがはしる。「僕」の捉えどころのなさ、佐知子の軽(やか)さ、静雄のナイーブさ…時に首を傾げる点もあったが、決して広くはない世界で、一見飄々と生きているようでも実は各々抱えたものがあるという物語は、時の流れによって色褪せることのない普遍的な題材だと思う。夏の入り口のこの時期に読んで非常に心がヒリついた一編だった。 『草の響き』 映画のビジュアルを見ていて、てっきり妻が出てくるものだと思っていたから意外だった。走ることを通じて内省する感覚はなんとなくわかる部分がある。 両作ともに主人公に名前がないこと、別の名前をつけられた男性との関係など、共通点もいくつか。作家が自死したという情報をあらかじめ知っていたので、作品自体をどうしても死のイメージから切り離すことができなかった。良いのか悪いのか。 『きみの鳥はうたえる』『草の響き』ともに映画を観ようと思う。

Posted byブクログ

2023/06/30

原作が小説とは知らず先に映像を見てしまった(あまりやらないようにしてる) こんなに古い原作だったとは これからあの映画を作ったって考えるとあの映画は成功してる気がする(映画好きだった)

Posted byブクログ

2023/07/15

若者のはがゆさや生きづらさが 淡々と描かれている様が印象的 「草の響き」は 生きることへの苦悩と希望の描写が繊細

Posted byブクログ

2022/09/07

きみの鳥はうたえる 少し難しい。次々と男を乗り換える佐知子という女性の心の動きも、よくわからない。 草の響き こちらの方がわかりやすい。走りたくなる。 ストーリーは静かだが、主人公が聞く音楽がロカビリーで、それを想像するとまた違った印象になる。

Posted byブクログ

2022/05/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

映画を先に見て、ストーリーは兎も角空気感は好きだと思って読んでみたが、元々函館を舞台にして書かれた訳ではない印象を受けた。 大家が女房を殴っているのを知っているなら通報して欲しい。 無断欠勤したり約束をすっぽかしたり、主人公がクズである。 細かいことで言えば、口が切れているのにレモンを食べるなどよく分からない言動が多い。 タイトルは美しいのだが、この筆者さんの登場人物は共感できない人ばかり出てくるので 個人的には非常に読み難い。

Posted byブクログ