運命の人(2) の商品レビュー
縒れた糸は張りを戻すこと無く、絡み縺れ落ちていく。 (以下抜粋) ○「事情は承りました。事件について詳しいことは解りませんが、学校にはいろいろな事情を持つ児童がおり、そういうお子さんを守るのも、私ども教師の務めです、ご推察するに今、一番、大変なのはお母さんだと思います、確か四年...
縒れた糸は張りを戻すこと無く、絡み縺れ落ちていく。 (以下抜粋) ○「事情は承りました。事件について詳しいことは解りませんが、学校にはいろいろな事情を持つ児童がおり、そういうお子さんを守るのも、私ども教師の務めです、ご推察するに今、一番、大変なのはお母さんだと思います、確か四年生のお兄ちゃんもいますね、二人のためにも、ここはお母さんが気丈にしていて下さい」(P.109)
Posted by
毎朝(毎日)新聞社の弓成亮太(西山太吉記者)が、外務省職員の三木昭子(蓮見喜久子事務官)から入手した極秘電信文を、社進党(社会党)議員によって政府追及の手立てに用いられてしまう。国民の知る権利を主張するジャ-ナリズムと守秘義務違反で起訴に踏み切った国家権力との熾烈な法廷論争が展開...
毎朝(毎日)新聞社の弓成亮太(西山太吉記者)が、外務省職員の三木昭子(蓮見喜久子事務官)から入手した極秘電信文を、社進党(社会党)議員によって政府追及の手立てに用いられてしまう。国民の知る権利を主張するジャ-ナリズムと守秘義務違反で起訴に踏み切った国家権力との熾烈な法廷論争が展開される。情報の入手が不倫スキャンダルと絡むにおよび、被疑者の家族をも巻き込む一大事件と発展していく。国家公務員の守秘義務とジャ-ナリズムの功罪について思いを馳せる。
Posted by
山崎豊子『運命の人』文春文庫 読了。外務省秘密漏洩事件を題材に、ジャーナリズムの在り方があらゆる切り口から問題提起される作品。沖縄返還に伴う日米密約について果敢にも国家権力に立ち向かった新聞記者が、沖縄で密約の影に潜む実態を目の当たりにし再び奮闘する生き様には感慨深いものがある。...
山崎豊子『運命の人』文春文庫 読了。外務省秘密漏洩事件を題材に、ジャーナリズムの在り方があらゆる切り口から問題提起される作品。沖縄返還に伴う日米密約について果敢にも国家権力に立ち向かった新聞記者が、沖縄で密約の影に潜む実態を目の当たりにし再び奮闘する生き様には感慨深いものがある。 2012/09/07
Posted by
国家権力の闇を暴こうとする弓成亮太が、スキャンダルという脇の甘さを突かれ苦悶する。 『クリーンハンドの原則』という言葉が出てくるが、今の国会の野党の追及の光景と妙に重なってしまう。
Posted by
内容紹介 警視庁地下の取調室で重々しく響いた声は「弓成亮太、逮捕状を執行する」。強大な国家権力と「報道の自由」を訴えるジャーナリズムの全面戦争に沸騰する世論。ペンを折られ、苦悩する弓成。スキャンダル記事に心を乱し、家族を守ろうとする妻・由里子。弓成の不倫相手と注目され被告席で...
内容紹介 警視庁地下の取調室で重々しく響いた声は「弓成亮太、逮捕状を執行する」。強大な国家権力と「報道の自由」を訴えるジャーナリズムの全面戦争に沸騰する世論。ペンを折られ、苦悩する弓成。スキャンダル記事に心を乱し、家族を守ろうとする妻・由里子。弓成の不倫相手と注目され被告席でぐったりと目を伏せる元外務省の三木昭子と、それをじっと見つめる夫。そしてついに、運命の初公判──。戦後史の意味を問いつづける著者・渾身の巨篇、第2巻。 内容(「BOOK」データベースより) 「弓成亮太、逮捕する!」ペンを折られ苦悩する弓成、スキャンダル記事に心を乱す妻・由里子。夫婦の溝は深まり、子どもたちも動揺を見せ始めた時、大野木正を中心とする弁護団の真摯な励ましが二人を支えた。そしてついに、初公判の朝が訪れた。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 山崎豊子 大阪市に生まれる。京都女子大学国文科卒業後、毎日新聞大阪本社に入社。昭和32年、処女長編「暖簾」を刊行。翌33年、「花のれん」で第三十九回直木賞受賞。以後、それまで聖域とされていた分野をテーマとし、意欲的な長編を発表し続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
昭子との所謂「不適切な関係」を暴露したのが、起訴状にある「情を通じ」との文言。 この関係を弁護側と、自社所属の新聞に事前に開示していなかった弓成の軽率さが事態を暗転させ、さらにあらぬ方向へと誘っていく。 もうこの時代は女性との不倫、殊に人妻との不倫を許さなくなっていたのだ。いや、許さない時代だったのか…。 弓成目線から離れた本作は、事実を後に小出しにするタイプの小説だったんですね。最初が「いい人」なのに段々化けの皮が剥がれていくのは、その人物の印象をより悪くする。著者の弓成に対する冷ややかな目線が感じられる構成だ。 とはいうものの、一方では、国策捜査における捜査側の調書作成の在り方、とりわけ敵対的関係にある共犯(すなわち、訴追側に立った被告人)が提示した自白調書が、自らの調書と、問題点の実、そして現実とを歪めていく様は、何とも言いようがない…。 加えて、敵対的共犯を恒常的に利用することが許容される司法取引が、もし訴追側に悪用されたらどうなるか?。 事実と違う、あるいは歪曲・誇張された供述調書の問題を生ぜしめかねないなぁとの感も生まれる。
Posted by
逮捕からの裁判。 とにかくハラハラして一気読みでした。 明かされていく事実と弓成記者の現状。 騒ぎ立てるマスコミ。そして彼の妻の苦悩。 重苦しく辛いのに次々読んでしまいました。 沖縄返還密約、弓成記者と事務官の関係、報道(知る権利)vs国家権力。 様々な要素が絡み合って法廷描写が...
逮捕からの裁判。 とにかくハラハラして一気読みでした。 明かされていく事実と弓成記者の現状。 騒ぎ立てるマスコミ。そして彼の妻の苦悩。 重苦しく辛いのに次々読んでしまいました。 沖縄返還密約、弓成記者と事務官の関係、報道(知る権利)vs国家権力。 様々な要素が絡み合って法廷描写が濃い。 三巻が楽しみです。
Posted by
権力に楯突くとこんなにも辛い仕打ちが待っているのか、逮捕された人はこんなにも酷い仕打ちを受けるのか、と恐怖します。 まるで体験したかのような緻密な描写です。その描写がかなりの部分において真実なんでしょうね。作者の執念の取材に脱帽です。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
問題の文書は、国益に影響を与える「国家の機密」なのか、国民の「知る権利」に基づき公表されるべきものなのか。 国民の税金の使い道にも繋がるものだから無論知る権利がありそうだが、全てを知らせる必要があるのか。 文書を入手した経路が記者と国家公務員の不倫関係からだったことが波紋を呼ぶ。 弓成氏はそそのかし罪に問われるのか。 裁判の内容はやはりわたしには難解であるが、「密かに情を通じー」という起訴状の文言は検察の上手な策やなあと思う。 2巻では何と言っても由美子さんの苦悩が読んでて辛い。 氏の思いやりのなさは言語道断だが、こういうマスコミの格好のネタになった家族は、心ない文字の暴力にさぞかし苦しめられるのだろう。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
沖縄返還のさいにアメリカと結ばれた密約の内容とは、1971年当時、ベトナム戦争で火の車だったアメリカに対して本来アメリカが負担するべき沖縄の原状回復費用6億8500ドルを日本が肩代わりするというもの。これがいわゆる今もアメリカに支払われ続けている「おもいやり予算」のはじまりだとされる。この、まったく対等ではないとおもわれる密約を敏腕新聞記者、弓成亮太が外務省の女性事務官、三木昭子から入手する。ニュースソースを守るためそれをはっきりと記事にできない彼は、正義感から野党議員に機密文書を渡して国会で追及させようとするのだけれど、そこから逆にニュースソースが割れてしまい、弓成記者と三木昭子は逮捕される。ここまでが第一巻。 第二巻は、警察での尋問と裁判。「知る権利」の問題が、男女のスキャンダル問題へとすりかえられていく。司法がいまひとつ独立した力を発揮しなかったり外務省官僚があざとい証言をしていったり、やきもきさせて第三巻へ続く。ちょっとむずかしくて時間かかってます。 ただ、国民に対して「アメリカに強気に臨んで沖縄を返還させる」と、たとえポーズでも世論を気にしてアピールするだけ今よりましなんじゃないかと、錯覚してしまいそうになるほど沖縄の現状は厳しいとわたしには思える。当時の日本政府がしっかりと「ほんとうの返還」を要求しなかったからなんだけれど。
Posted by