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抱擁、あるいはライスには塩を の商品レビュー

4.1

239件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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  3. 3つ

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2024/08/05

大正時代に建てられたお屋敷に住む柳島家3代の物語。ロシア人の祖母や叔父叔母、親が違うきょうだいも同居する大家族。大学以外は通わせないという変わった教育方針や愛人との穏やかな関係など、柳島家ならではの暮らしが、それぞれの家族によって語られていった。 経済的に恵まれているからこその...

大正時代に建てられたお屋敷に住む柳島家3代の物語。ロシア人の祖母や叔父叔母、親が違うきょうだいも同居する大家族。大学以外は通わせないという変わった教育方針や愛人との穏やかな関係など、柳島家ならではの暮らしが、それぞれの家族によって語られていった。 経済的に恵まれているからこその、この家での数々の当たり前が、私の思う普通とは違い興味深かった。この家のなかでは、誰もが守られていて、独自の世界観があった。この環境から外に出たときのギャップを経験して、皆が成長していく様子は、面白かった。 複雑な人間関係をすんなり受け入れて、何事もないかのように生活している柳島家の人達も時の流れとともに変化していく。その様子も興味深かった。別れもあり、大家族もいつかは1人になっていくだろうという現実も感じた。 文中の言葉では、菊乃と百合と桐之輔の姉弟の合言葉「ライスには塩を」(自由万歳)と、柳島家の合言葉「みじめなニジンスキー」(かわいそう)、「かわいそうなアレクセイエフ」ありがとう、とか、お互いに)が印象的だった。その家でしか通用しない言葉があると、口にすればいつでもその頃に戻れそうだ。 594ページの長編だったけれど、複雑な家族関係と家族の有り様が細かく描かれていて、読むのが楽しかった。と、同時に栄枯盛衰も感じた1冊だった。

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2023/06/20

都会の外れにある洋館に住む『風変わり』な家族の46年間のお話。 学校に行かせない、ということが、変わってるのかと思いきや、色々奇妙。でも、それは私の考えが偏っているだけで、本当は私の家族だって他の人から見たら変わってるのかもしれない。おそらく、この家族から見たら、そう思われるに違...

都会の外れにある洋館に住む『風変わり』な家族の46年間のお話。 学校に行かせない、ということが、変わってるのかと思いきや、色々奇妙。でも、それは私の考えが偏っているだけで、本当は私の家族だって他の人から見たら変わってるのかもしれない。おそらく、この家族から見たら、そう思われるに違いない。 読後感は、なんか寂しいです。でも、悪い感じではないです。

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2023/06/19

文章が美しかった。 この家庭は特殊かもしれないが、こういう生き方もあるんだと思うと、少し心が軽くなった。

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2023/01/17

悪夢を見そうで見ない感じだから、寝る前に少しずつ読むのにちょうどよかった。ちょっとだけ人と違うひとたちを書くのがとても好きで、読んでいて落ち着く。そして羨ましい。違うことに不安を感じていないから。

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2022/12/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

この風変わりな一家に中々馴染めず…普通じゃないことが問題なのではなくその内容がね。不倫でできた子どもを育てる?!私には到底ムリだ。相手の奥さんを家に招待することも…しかも夫まで不倫してその子どもまで引き取る?!…。と思ったらそもそも祖母の裏切りから始まっていたという…繋がりが強いようで裏切り合っているようにしか思えなかった。 唯一少し好きになれたのは桐之輔かな。最後が悲しかったけど、一番家族を愛していたんじゃないかと思えた。となんだかんだ言いながらも最後まで読んでしまったのは、異国の香りを放ちながらも何故かノスタルジーを感じてしまうこの家にいつの間にか魅了されてしまったからかな。嫌悪感を抱きながらも惹かれてしまうそんな物語だった。

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2022/10/01

江國さんの作品の中でも大好きなお話。 とにかくこの家族、なにからなにまで素敵。考え方も生き方も人それぞれ。色んな形があっていいと思える。

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2022/07/30

世間とはかけ離れた世界に生きる名家の一族の1960年から2006年までの46年間を描いた物語。 年序列がばらばらで、語り手もその都度違うため、多少複雑なのですが、この構成だからこそ生まれる驚きや痛みがあり、物語がより深く濃いものに仕上がっていると思う。 彼らの閉ざされた世界が、窮...

世間とはかけ離れた世界に生きる名家の一族の1960年から2006年までの46年間を描いた物語。 年序列がばらばらで、語り手もその都度違うため、多少複雑なのですが、この構成だからこそ生まれる驚きや痛みがあり、物語がより深く濃いものに仕上がっていると思う。 彼らの閉ざされた世界が、窮屈そうでありながら、とても自由にも感じられ、幸せそうなのにとても淋しそうで、胸に沁み入る物語だった。 好きです、この感じ。いつもの江國さんも好きだけどこれもとても良い。

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2022/06/21

面白かった!自由で世間の常識にとらわれない独自の規律で暮らす一家の話。音楽や運動、物語や議論、食事やお酒、自然を愛する人たち。大切なものを見失わない。驚きもあちこちにある。美味しいワインを飲みながら親しい人たちと語り合いたくなりました。

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2022/01/22

心に残る江國香織作品でこれがトップをあらそう。 学校とか、結婚生活とかまったくキラキラしてないのが良い。タイトルのセリフをいうシーンが好き。マイノリティな立場の人達の苦悩ってほんとに心に来る。

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2021/08/15

三世代にわたる、家族と家の物語。 子どもがいる家は、明るくてエネルギーに満ちている。子どもそのもののように。 子どもが独立し家を離れ、老人が死に…家族はどんどん減っていく。 家は静かになり、ほとんど変化のない日々が続く。そして、昔の楽しかった時代を思い出す。 この本のラストでは...

三世代にわたる、家族と家の物語。 子どもがいる家は、明るくてエネルギーに満ちている。子どもそのもののように。 子どもが独立し家を離れ、老人が死に…家族はどんどん減っていく。 家は静かになり、ほとんど変化のない日々が続く。そして、昔の楽しかった時代を思い出す。 この本のラストでは、家もまさに「晩年」を迎えていた。 家(建物)の一生は、人の一生みたいだ。 家族それぞれが、日本人の多くが思う「普通」からは逸れた生き方をしているけど、この本を読むと「普通」なんて瑣末なことだと思う。 こういう家族だからこそ、人が人を思い、支え合って生きていく、という根本的なことが、言葉はなくても伝わってくる。 私が一番心を寄せた登場人物は、百合叔母だった。 彼女が一番、人間の弱さを感じたからだ。 甥を我が子のように溺愛し、依存しそうになる百合、婚家で良い奥さんになろうとして心を壊す百合。 はっきりとは書かれていないが、彼女が甥、姪の4人を平等に扱っていないところ(光一を溺愛し後年は依存する一方で、血のつながらない卯月との交流はほとんど描かれない)も、彼女の人間らしさを引き立たせていた。 登場する大人たちの多くが婚外恋愛をし、婚外子が存在するなか、そもそも恋愛自体に生涯縁遠かった百合だから、婚姻関係から生まれた光一を贔屓にしたのではないか、と思ったりもした。 柳島家では、婚外恋愛の末に生まれた子ども二人を育てあげた。 世間一般では「秘密」とされるようなことを、家族の中では「秘密」にしなかったのだ。 それとの対比で、ただひとり、死ぬまで秘密を抱えた祖母絹の秘密が、とても衝撃的で、しかも美しく思えた。 タイトルの「ライスには塩を」というのは、家族の合言葉のひとつだ。 大人になるまでライスに塩をふることを許されなかった菊乃、百合、桐之輔が、大人になってライスに塩をふれることになったことを自由の象徴として、「自由万歳!」という意味で使っている。 「乾杯!」みたいなものかな。 この合言葉も、菊乃と百合が死んだら、もう誰も使うことはないのだろう。 でも、きっと家は覚えている。

Posted byブクログ