鏡の偽乙女 の商品レビュー

朱川湊人【著】

2011/08/06

親元を出て画家を目指す主人公が、雪華と出会ったことから、不思議なことに遭遇するようになる。その怪異を、彼らなりの方法で解決していく。心残りのある死者たちの思いを汲み取り、とげさせてやる風波と雪華。おもしろくて一気に読んだ。こういう世界をいきいきと作り上げるってすごい！雪華の謎と惣三郎との決着がついてないままだから、きっと続編ありですね。楽しみ♪

2010/10/24

内容紹介
あの男は、もの言う幻だったのかも知れぬ――。
気鋭の直木賞作家が描く、怪奇小説の傑作!!

大正三年、東京。
画家を志し、家を飛び出す槇島風波（まきしまふうわ）。
闇を幻視する美貌の天才画家、穂村江雪華（ほむらえせっか）。
根津、蟋蟀館に集う異形の面々。
変わりゆく帝都を彷徨う未練者（みれいじゃ）たちの怪異。

続篇が切望される好シリーズである。―東雅夫氏

―千街晶之氏書評より―
全く架空の人物、歴史上実在した人物、明らかに実在の人物をモデルにしてはいるが虚構の人物など、さまざまな位相のキャラクターを同一時空に存在させることで、本作は虚実双方にまたがった大正時代のパノラマの様相を呈している。歴史と虚構を組み合わせ、更に人間界と霊界をも自在にシャッフルして眩惑的な世界を現出する技巧は、精緻な寄せ木細工を連想させるものがある。大長篇と短篇集というスタイルの違いこそあれ、本作は荒俣宏の『帝都物語』の系譜に連なる“東京幻想”小説の豊かな成果と言えるだろう。

2015/12/17

第一段‥墓場の傘
第二段‥鏡の偽乙女
第三段‥畸談みれいじゃ
第四段‥壺中の稲妻
第五段‥夜の夢こそまこと

　画家を志す私槙島風波は蟋蟀館に住む雪華と知り合う。そして、妖かしにやたら詳しい博識の雪華といろんな不思議に会う。まだ、雰囲気だけで何が言いたいのかちょっと解らないが、続きの期待できる面白さ。

2015,12,17　再読
すっかり内容を忘れていたが，改めて面白かった．

2010/10/08

意外にも不思議なものを見ることができる主人公が出会った人物こそが、一番不思議な人ではあるのだが…
画家を目指して家を出た主人公は、同様に絵を描いている雪華と名乗る人物とともに、その不思議な人たちの思いを汲み取ることになる。
大正浪漫漂う帝都は、光のそばには闇もあるということでしょうか。

2010/10/07

【収録作品】
墓場の傘／鏡の偽乙女／畸談みれいじゃ／壼中の稲妻／夜の夢こそまこと

この雰囲気にはまります。まだ続きそうな終わり方に続編期待。

2010/10/02

大正浪漫たっぷりのノスタルジックほんわかホラー物語。
穂村江雪華と過ごした不思議な日々。
飄々としてとらえどころのない雪華。雪華とはいったい何者だったのか？
この世に未練を残したまま死に切れなかったみれいじゃたちの切なさが物悲しい。
読み進めるうちにセンチメンタルだけどどこかあったかで優しい朱川ワールドにぐいぐいと引きずり込まれてる自分がいてました。
ノスタルジックな雰囲気のお話しは朱川さんやっぱり上手いですね。

2010/09/26

薄紅雪華紋様～実業家の跡取り息子の功次郎は絵の道に進みたいが美術学校を３度しくじって，いよいよ家に入れなくなり，本郷の下宿に越すが，雪の無縁坂を上る際に辿った足跡の先に奇妙な人物で絵描きの卵の雪華と出会い，大正の博博覧会会場で再会した後，根津の蟋蟀館に雪華を訪ね，谷中の墓地で鼠色の雲をスケッチで消す姿を目撃し，衝撃を受ける。止めるのも聞かずに引っ越した先の蟋蟀館で帝大の学生で焼死した男の幽霊を目撃し，鏡にそれと判る姿を描くことで成仏すると聞き，女性に産まれたかったに違いない姿を三度目に描いて絵と共に消すことができた。三人目の絵描き田端の惣太が遣っている娘は頭を二つ持つ蟷螂を捕まえてきたが，その場所を案内させると，父親が怪しい３人組を警戒するが，雪華は怪しい雰囲気を察しており，父親が行方不明になったと聞いても慌てず，娘のフウが欲している絵葉書を売っている店に行けば見つかると云い，正体は「みれいじゃ」だと説明する。功次郎の親戚で銀行勤めの男が硬派の不良であった時に憧れていた美少年・三郎の１４年前ままの姿で１２階下の阿片窟に誘い込まれているのを知るが，僧形の富ヶ谷某が錫杖の仕込み刀で切り伏せ，土塊に戻していた。松旭斎天勝の偽物は見事な技を持っているが，雪華はこれもみれいじゃだという。無念は早稲田の学生に手妻を見せることであった～４ヶ月に一度の割合で雑誌に掲載している連作だが，続きが出そうで，シリーズ名は薄紅雪華紋様か？　売れない画家が活躍する上野界隈＆大正時代。誰かの小説で大正時代を読んだけど，ブームかな。功次郎君が画家として腕前を上げてくれると嬉しいが，雪華や惣太には敵いそうにない。探偵の腕なら雪華のワトソン役ぐらいは務まるかも知れない。柔道の達人らしいし

2010/09/24

時は大正、不思議な青年と出会った画家見習いが遭遇する不思議話連作ホラー短編5編。最後の一ひねりを期待しましたが肩すかし。もしかすると続きがあるのかもしれません。

2010/09/19

予想外にコメディタッチ。これはシリーズ化する気満々？と思ってしまう内容。ちょっと晴明と博雅を思い起こさせる……
キャラクターが魅力的でありました。もっと色んな事件が読みたいな。

みれいじゃ……新撰組、惣三郎といえば映画「御法度」だあ！と思ってしまいました（確か司馬原作なのではなかったか？）。
隊員をことごとく籠絡し、奪い合いをさせたという美少年……こんなアプローチの仕方もアリか！と面白かった☆

妻と娘を想ってみれいじゃになってしまったお父さんの話は泣けた。
全体的にほんわかしていて、何篇でも読めそうな。
続編があるのであれば、期待してます☆
諸々、頑張れ風波！

2010/09/15

レトロな時代の幻想怪奇譚。怪奇だけど、あまり恐怖は感じません。すこし不思議で、なんだか切なくて、ほんのちょっぴりだけぞくりとさせられるそんな感じの物語。これは続編もありそうですねえ。楽しみです。
お気に入りは「畸談みれいじゃ」。この連作短編でもっとも重要になる物語だし、格別。この物語の後でもさまざまな「みれいじゃ」が登場して、その中にはやや恐ろしいものもあるけれど。全体としては切ないイメージ。「みれいじゃ」という言葉の響きも悲しいです。