そうか、もう君はいないのか の商品レビュー
タイトルから、筆者の深い喪失感が伝わる。 何十年も前の出会いや、その後の新婚生活を瑞々しく書くこと自体、いかに筆者がその頃幸福感に満ち溢れていたかの表れ。病気が発覚するまでの40年余り、喧嘩をすることもなく居心地よく暮らした日々は、筆者にとってどれほど幸せに満ち溢れていたものだ...
タイトルから、筆者の深い喪失感が伝わる。 何十年も前の出会いや、その後の新婚生活を瑞々しく書くこと自体、いかに筆者がその頃幸福感に満ち溢れていたかの表れ。病気が発覚するまでの40年余り、喧嘩をすることもなく居心地よく暮らした日々は、筆者にとってどれほど幸せに満ち溢れていたものだったか。 だからこそ、筆者が書く妻が亡くなった後の深い深い喪失感、次女の回想が重く胸にのしかかる。 大切な人を失う哀しみとは、これほどまでに深いものか。 哀しいけれど、夫婦の間に流れる穏やかな空気と幸福感に、心があたたかくなった。
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まずタイトルからして、グッと惹き付ける。 妻の亡き後がメインのお話かと思ったが、出会いからが丁寧に描かれていて、それがかえって後半になるにつれて、先がわかってしまうので切なくなる。でも、お互いの愛情表現方法は違えど、相手を思いやる気持ちが痛いほど伝わってきた。思えば思うほど、一人...
まずタイトルからして、グッと惹き付ける。 妻の亡き後がメインのお話かと思ったが、出会いからが丁寧に描かれていて、それがかえって後半になるにつれて、先がわかってしまうので切なくなる。でも、お互いの愛情表現方法は違えど、相手を思いやる気持ちが痛いほど伝わってきた。思えば思うほど、一人になったときの気持ちってどんなものだろうと想像してしまう。 娘さん筆のあとがきが、客観的に描かれているからこそ、一番胸にきました。
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別れは避けられないことで辛いが、こんな出会いがあって、一緒に暮らせた年月があることの幸せは何事にも変えられないだろうな。
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老夫婦の素敵な一生の話し。 なんか見ちゃいけないような感じ、死別は辛いけど、お互い満足な死に際を迎えられたのかなって、ほっとした感じ。 色々な夫婦の形を見てきたけど、羨ましいなと思える、お互いを思いやることの大切さが分かった。 わしも嫁さん大事にしよう。
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感想 ともに歩む。しかし死別は運命付けられている。別れが来ても人生は終わらない。思い出に浸りながら。いつかどこかで浄化する。インクに託して。
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何年か前にドラマ化されていて、 テレビCMで田村正和が「そうか、もう君はいないのか」と呟いていた姿が今も忘れられない。 ドラマは見なかったけど、ずっとそれが残っていたのが、本作を読むきっかけ。 こういうふうに、パートナーと寄り添って死んでいきたいなと思う。 ずっと仲良しで生きて...
何年か前にドラマ化されていて、 テレビCMで田村正和が「そうか、もう君はいないのか」と呟いていた姿が今も忘れられない。 ドラマは見なかったけど、ずっとそれが残っていたのが、本作を読むきっかけ。 こういうふうに、パートナーと寄り添って死んでいきたいなと思う。 ずっと仲良しで生きていきたいなと思う。 子どもが1番、というより、 実は夫が・妻が1番大事、 という夫婦の姿に惹かれる。 巻末に載せられた城山さんの娘の文書で 涙が止まらなかった。 仕事の残業やら飲み会やらで 家族と一緒に夕飯を食べなくても平気な人がいるけれど、 私には 家に帰ればずっともっと大事な存在がいるので、私は先に帰ります。 誰に何を言われても、これ間違いじゃないなって思う。 グッとくる文章はたくさんあったけれど、 戦後の話のところで 私は廃墟になって生きていた。 というフレーズがすごく刺さった。
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著者が妻と出会って亡くなるまでの話。 奥様のことを「天使」「天女」等々と表現されるところから、いかに奥様を愛されていたのかがうかがい知れます。 ちょっと赤裸々な話もあるけれど、作家として忙しい夫をしっかり支え、愚痴もこぼすことなく取材の手伝い、旅行の同行などされ、できた奥さまだな...
著者が妻と出会って亡くなるまでの話。 奥様のことを「天使」「天女」等々と表現されるところから、いかに奥様を愛されていたのかがうかがい知れます。 ちょっと赤裸々な話もあるけれど、作家として忙しい夫をしっかり支え、愚痴もこぼすことなく取材の手伝い、旅行の同行などされ、できた奥さまだなぁと感心する事しかり。 こんなに思い思われて、本当に互いに運命の相手だったのだな、と思いました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
今年は仕事でもプライベートでも「死」と向き合う機会がとても多かったので。 遺族として、共感出来るところがたくさんあったし、読み進める中で母や祖父の事を思い出さずにはいられなかった。 ー死んだ人もたいへんだけど、残された人もたいへんなんじゃないか、という考えが浮かんだ。理不尽な死であればあるほど、遺族の悲しみは消えないし、後遺症も残る。ー 母の死後、残された父を見ているのが辛い。母の死を受け入れるのは辛いが、それ以上に残された父を見ているのが辛い。突然死という理不尽な死だっただけに、後遺症は大きい。 ー最愛の伴侶の死を目前にして、そんな悲しみの極みに、残される者は何ができるのか。 私は容子の手を握って、その時が少しでも遅れるようにと、ただただ祈るばかりであった。 もちろん、容子の死を受け入れるしかない、とは思うものの、彼女はもういないのかと、ときおり不思議な気分におそわれる。ーふと、容子に話しかけようとして、われに返り、「そうか、もう君はいないのか」と、なおも容子に話しかけようとする。ー 父は母の最期どんな気持ちだっただろう。 次女・井上紀子さんの父が遺してくれたものー最後の「黄金の日日」も娘の立場から父母の様子、死を書いていて、共感出来るところがたくさんある。
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亡き妻をしのぶ城山三郎のエッセイ。出会いから再会、そして結婚と二人の間の何気ない日常が思い出の中で輝く。仲良しだったのだとしみじみ感じた。
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太陽の様に明るい妻。思いもかけず早くに妻を失い、その後7年は家にほぼ帰らず仕事場で過ごした。妻との出会いから別れまでを戦中を過ごした古武士の様な文体で綴られている。 祖父の文体にも似て、不思議と懐かしさを感じた。
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