僕は長い昼と長い夜を過ごす の商品レビュー
+++ ミステリ・青春・家族etc… 少し奇妙で胸を打つ小路ワールド最新作。僕の一日は五十時間起きて二十時間眠る。拾った二億円と謎の〈種苗屋〉ナタネさん。奪還屋、強奪屋。 非二十四時間睡眠覚醒症候群。15年前、強盗に殺された父親。ゲームプランナーとしての経験。すべてのピースを活か...
+++ ミステリ・青春・家族etc… 少し奇妙で胸を打つ小路ワールド最新作。僕の一日は五十時間起きて二十時間眠る。拾った二億円と謎の〈種苗屋〉ナタネさん。奪還屋、強奪屋。 非二十四時間睡眠覚醒症候群。15年前、強盗に殺された父親。ゲームプランナーとしての経験。すべてのピースを活かして、周りのひとたちを守るんだ。 50時間起きて20時間眠る特殊体質のメイジ。草食系でのんびりした性格に反し、15年前、父親を殺されたというハードな過去の持ち主。現在はゲームプランナーをしつつ、体質を活かした〈監視〉のバイトをしている。だが、そのバイトのせいで二億円を拾ってしまい、裏金融世界の魔手に狙われる羽目に。メイジは戸惑いながらも知恵と友情を武器に立ち向かうが、この利とも枷ともなる体質が驚愕の事態を招く。 +++ 躰は健康そのものなのに、五十時間起きて二十時間眠るという病気のために、一般的な仕事に就けず、事情を理解してくれたゲーム会社<トラップ>でプランナーをしている森田明二(メイジ)が主人公である。変則的な就業形体のせいでプランナーとしてはなかなか大成できないが、その体質を活かしてときどき<トラップ>の代表のバンさんから監視の仕事を請け負ったりしている。この物語は、この監視の仕事からはじまってしまった出来事にまつわるものなのである。 メイジの如何にも善人であっさりしたキャラクターは、思わず見守ってあげたくなるし、ナタネさんや安藤や麻衣子ちゃんやリロー、そのほかの登場人物の誰もがとてもいい。みんながそれぞれに恰好よくて、愛おしくなる人たちばかりである。そして物語は、はらはらどきどきさせられるのだが、なぜかそうひどいことにはならなそうな安心感がある。ナタネさんの存在ゆえだろう。安心して危険な冒険を愉しめるなんて、この上ない贅沢である。そしてそもそものはじまりのことを知ったときには、メイジでなくともじんとして涙がにじむのである。あたたかいものがこみあげてくる一冊だった。
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特殊な事情を持つ主人公の物語。 頭のいい登場人物たちが織りなすストーリーで、最後まで一気に読めました。 最後が少し盛り上がり不足な感もありますが、全体としてきれいに一つにまとまっていておもしろかったです。 ミステリーをあまり読んだことない人にもおすすめです。
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抜群のストーリー・テラーとして知られる小路さんの新作は、ゲーム・プランナーとしてのキャリアを生かしたミステリ。睡眠障害という不思議な体質を持つ若者・森田明二(メイジ)が主人公。400ページの長い小説だけれど、途中で何度もゲーム戦略の応用思考が披露され、ミステリとしての面白さが加速...
抜群のストーリー・テラーとして知られる小路さんの新作は、ゲーム・プランナーとしてのキャリアを生かしたミステリ。睡眠障害という不思議な体質を持つ若者・森田明二(メイジ)が主人公。400ページの長い小説だけれど、途中で何度もゲーム戦略の応用思考が披露され、ミステリとしての面白さが加速される。舞台は、東京から札幌へ。いろいろな登場人物と、過去の不幸な殺人事件も絡んで、より複雑な展開に、、、しかし、最後のエピローグに至って、読み手として否応なくひとつの推測を促されるところは、少しやるせない。
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目を背けたり現実逃避したりするのではなく、未来への希望を持って物語が織られていくのが心地良かった。 主人公は逃亡者なのに、逃げていないし逃げようとしていないところが特に好き。 ナタネさんかっこいい。でも服はリユースして欲しい。
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『東京バンドワゴン』シリーズとはちょっと趣きが異なります。 『HOMETOWN』あたりが一番近いかな。 (おそらく)幼少の頃の経験がきっかけで、きっかり50時間起き続けて 20時間眠るという病気(非二十四時間睡眠覚醒症候群)になってしまった 青年、メイジの物語。 ちなみに、この...
『東京バンドワゴン』シリーズとはちょっと趣きが異なります。 『HOMETOWN』あたりが一番近いかな。 (おそらく)幼少の頃の経験がきっかけで、きっかり50時間起き続けて 20時間眠るという病気(非二十四時間睡眠覚醒症候群)になってしまった 青年、メイジの物語。 ちなみに、この病気、実在するそうです。http://bit.ly/bwI9s9 主人公はその中でも特異な部類に入るようですが。 ゲーム制作会社のプランナー(契約社員)として働きつつ、 その特異な体質を活かしたバイトを行っていた主人公が、 とある事件に巻き込まれ、2億円という大金を手にしてしまう。 幼い頃に失踪した母親、その後強盗殺人に遭った父親。 それぞれの事件もまだ解決しておらず、 巻き込まれた事件と少しだけ絡んでくる。 心優しき周囲の人物たちに助けられながら、 メイジはそれぞれの事件をどう解決していくのか。 派手な闘争、逃走シーンはないけれど、小路作品の中では ハードボイルドに近い色合いをもつ物語。なかなか面白い。 こういうのを読むと、もう少しミステリ色の強いものも 書いてくれたらいいのにななんて期待しちゃう。 小路さんの優しい物語が好きなくせに、贅沢にもそう思うことがある。
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