僕は長い昼と長い夜を過ごす の商品レビュー
ミステリ、ってのは一応って事で。 広義の解釈でお願いします。 50時間起きて20時間寝る、特殊な睡眠障害を抱えた主人公がひょんなことで2億円を拾う。 設定自体はひきつけられるし、話の作り方は丁寧。 それぞれの要素もちゃんと処理していて難なく読めるのはいいのだけれども、うまく絡ま...
ミステリ、ってのは一応って事で。 広義の解釈でお願いします。 50時間起きて20時間寝る、特殊な睡眠障害を抱えた主人公がひょんなことで2億円を拾う。 設定自体はひきつけられるし、話の作り方は丁寧。 それぞれの要素もちゃんと処理していて難なく読めるのはいいのだけれども、うまく絡ませていないな、というところ。 それぞれの要素が独立していて、ものめずらしさにとりあえげたのでは、ともいえる。 それでなくてはいけない、どんなものでも抜いたら成り立たない。それが理想。 この作者ならあるいはいけるのではないか。
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“「それを」 声が裏返ってしまった。 「ナタネさんが救ってくれるんですか」 人間の命なんか紙切れより軽い。このトランクの中身を奪うためなら、僕なんか蚊より簡単に叩きつぶされてしまうだろう。ナタネさんは、ほんの少し申し訳なさそうに笑った。 「惜しい」 「惜しい?」 「さっき、この金...
“「それを」 声が裏返ってしまった。 「ナタネさんが救ってくれるんですか」 人間の命なんか紙切れより軽い。このトランクの中身を奪うためなら、僕なんか蚊より簡単に叩きつぶされてしまうだろう。ナタネさんは、ほんの少し申し訳なさそうに笑った。 「惜しい」 「惜しい?」 「さっき、この金は君のものだ、と言わなかったか?」 「言いました」 「それはつまり?」 つまり。 「逃げろ、と?」 大きく頷いた。 「それも選択肢のひとつだ。それだけの金があれば世界中のどこにでも行けて、当面の間は困らないで生活することができる。むろん、素知らぬ顔をしてその金をどこかに捨てる、という方法もある。彼らが君の存在を把握できなければ、それも有効な手段だろう」 「でも、その保証はないんですよね」 「残念ながら」 ちょっとだけ身体が震えた。ナタネさんは気の毒そうな顔をして、僕を見た。 「チームを組む、と言ったが、それは俺が動く、という意味ではない。君の結論を俺が補佐する、といった意味合いで、だ」 まぁチームというよりアドバイザーと言ったほうが的確か、とナタネさんは微笑んだ。” ああ、どうしよう。すごく良い本だった。 《非二十四時間睡眠覚醒症候群》のため五十時間起きて二十時間ばったりと眠ってしまうゲームプランナーの二十六歳独身の森田明二。 追われることになってしまったメイジを補佐する役割を担い出、何かとメイジを助けてくれる<種苗屋>のナタネ。 メイジに恋心を抱いておりそのことも原因で追われる羽目になった地顔が怒り顔の看護士、笈川麻衣子。 茶髪にジャラジャラとした格好のメイジと同じ会社で働くグラフィッカーにしてメイジの親友の安藤大悟。 メイジのネット仲間の凄腕ハッカーで多分女性のリロー。 特異な睡眠体質のため、ゲーム会社の社長に頼まれ探偵まがいのようにとある人物を尾行していたメイジ。 その成り行きで約二億円の<裏金>を手に入れてしまった彼は、<奪還屋><強奪屋>にその命を狙われることに。 そんな彼の前に現れた<種苗屋>の不思議な人物ナタネは、彼とチームを組もうと言い出して……。 巧妙に隠された伏線。 メイジの五十時間起きて二十時間眠るその奇病の原因とか。 登場人物たちの過去とか。 そして、ナタネさんの正体と、メイジをそこまでして助けた理由とか。 深くて、納得できて、感動できて。 最後ボロ泣きしてしまった。 頭の回転の早いメイジ視点の内容はとても読みやすく、息もつかせぬような展開の中でのメイジとナタネのふっと笑えるようなやり取りが心を和ませる。 うまく言えないけど、良い本だった。 “麻衣子ちゃんがちょっと考えて、でもしっかり頷いた。なんか怒っているような表情は崩さないっていうか本当に地顔なんだなこれ。 「協力します。私が出来ることならなんでも」 「よし」 ナタネさんが、手を打った。 「チーム結成だ」 そのまま右手を伸ばして手の甲を上に向けてテーブルにかざした。それって。 「手を重ねろとかいうんじゃないでしょうね」 「それ以外にこの仕草が示すものがあるかね」 ニコニコしながら言う。この人、本当に心底楽しんでいるんじゃないのか。僕のこの苦境を。僕が顰めっ面をしながらもナタネさんの手の上に自分の手を重ねると、麻衣子ちゃんもおずおずとそうした。ナタネさんがさらに左手を一番上に持ってきて、強く重ねた。意外に温かい手だった。 「名前は後で考えておく」 「名前?」 「チーム名だ。カッコいいのがいいな」 絶対、楽しんでる。”
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<内容>50時間起きて20時間眠る特殊体質のメイジ。草食系でのんびりした性格に反し、15年前、父親を殺されたというハードな過去の持ち主。現在はゲームプランナーをしつつ、体質を活かした“監視”のバイトをしている。だが、そのバイトのせいで二億円を拾ってしまい、裏金融世界の魔手に狙われ...
<内容>50時間起きて20時間眠る特殊体質のメイジ。草食系でのんびりした性格に反し、15年前、父親を殺されたというハードな過去の持ち主。現在はゲームプランナーをしつつ、体質を活かした“監視”のバイトをしている。だが、そのバイトのせいで二億円を拾ってしまい、裏金融世界の魔手に狙われる羽目に。メイジは戸惑いながらも知恵と友情を武器に立ち向かうが、この利とも枷ともなる体質が驚愕の事態を招く。
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久しぶりのミステリですが、やはり家族ものです。 ナタネさんとメイジの過去にグッと来た…。 急いで読んでしまったので、予約が空いたらちゃんと読もう〜。
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んー、悪くない。悪くないんだけれど、このもやもやは何だろう。タイトルになっている主人公の睡眠障害に思ったほどのインパクトがないせいか(こう感じるのはSF好きの性かも)。それとも、語り口に何となく既視感が漂うせいか。ほわっとした雰囲気が持ち味の作者のようだが、私はシャープな話が好き...
んー、悪くない。悪くないんだけれど、このもやもやは何だろう。タイトルになっている主人公の睡眠障害に思ったほどのインパクトがないせいか(こう感じるのはSF好きの性かも)。それとも、語り口に何となく既視感が漂うせいか。ほわっとした雰囲気が持ち味の作者のようだが、私はシャープな話が好きなので、なんだか焦点が定まらないように感じてしまった。
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ミステリ・青春・家族etc… 少し奇妙で胸を打つ小路ワールド最新作。僕の一日は五十時間起きて二十時間眠る。拾った二億円と謎の〈種苗屋〉ナタネさん。奪還屋、強奪屋。 非二十四時間睡眠覚醒症候群。15年前、強盗に殺された父親。ゲームプランナーとしての経験。すべてのピースを活かして、周...
ミステリ・青春・家族etc… 少し奇妙で胸を打つ小路ワールド最新作。僕の一日は五十時間起きて二十時間眠る。拾った二億円と謎の〈種苗屋〉ナタネさん。奪還屋、強奪屋。 非二十四時間睡眠覚醒症候群。15年前、強盗に殺された父親。ゲームプランナーとしての経験。すべてのピースを活かして、周りのひとたちを守るんだ。 50時間起きて20時間眠る特殊体質のメイジ。草食系でのんびりした性格に反し、15年前、父親を殺されたというハードな過去の持ち主。現在はゲームプランナーをしつつ、体質を活かした〈監視〉のバイトをしている。だが、そのバイトのせいで二億円を拾ってしまい、裏金融世界の魔手に狙われる羽目に。メイジは戸惑いながらも知恵と友情を武器に立ち向かうが、この利とも枷ともなる体質が驚愕の事態を招く。 (amazonより抜粋) 睡眠障害のネタが単なる場面のきりかえしでしか生かされていなかったのが残念。 ナタネさんのキャラはよかったですが、ちょっと物足りない。 切迫感が足りないのか、迫られているのにどこかほのぼのとしている雰囲気があるせいか。 んー・・・残念。先が気になってつい読んでしまう面白さはありました。
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兄弟の間の思いやり、同じような境遇の人に対する共有感、純粋な行為に対する感謝の心など「きれいな力」によって結びついているのは、本当に羨ましいですね。このような関係がベースになっているので気持ちよく「ミステリーワールド」に入り込んでいく事ができます。比較的分厚い本ですが、あっという...
兄弟の間の思いやり、同じような境遇の人に対する共有感、純粋な行為に対する感謝の心など「きれいな力」によって結びついているのは、本当に羨ましいですね。このような関係がベースになっているので気持ちよく「ミステリーワールド」に入り込んでいく事ができます。比較的分厚い本ですが、あっというまに読み終えてしまいました。
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絶好調のバンドワゴンシリーズの小路さんの最新作は ハヤカワ・ミステリワールドから。ガチガチのミステリ ではなく、やはり小路さんならではのなんともハートウォーム な作品。やはりいいですねー。 不思議な設定ですがその不思議さを感じさせないストーリー 運びと人物の描写が上手過ぎます。 ...
絶好調のバンドワゴンシリーズの小路さんの最新作は ハヤカワ・ミステリワールドから。ガチガチのミステリ ではなく、やはり小路さんならではのなんともハートウォーム な作品。やはりいいですねー。 不思議な設定ですがその不思議さを感じさせないストーリー 運びと人物の描写が上手過ぎます。 冷静になって見ればやや強引なご都合主義な部分や 同じ事件をグルグル回ってるような、やや回りくどさは ありますが、ラスト周辺の最高にジンっとする胸の芯を 突く展開がそんな細かい事を帳消しにしてくれます。 こう思うのは自分だけかもですが、今作は伊坂幸太郎の作品に かなり近いテイストを感じます。会話の軽妙さや、 キーパーソンの「ナタネ」さんのキャラなんかに ソレを感じません...か?
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いいです、とてもいい!(#^.^#)幼いころの辛い思いから睡眠障害になり、連続50時間起きて、その後、20時間寝るという日々を送る主人公・森田明二。今、彼はゲーム・プランナーとしての職を得、また同時に睡眠障害の特性を生かしたバイトもしている・・・。明二の語り口がとても好き。悲惨な...
いいです、とてもいい!(#^.^#)幼いころの辛い思いから睡眠障害になり、連続50時間起きて、その後、20時間寝るという日々を送る主人公・森田明二。今、彼はゲーム・プランナーとしての職を得、また同時に睡眠障害の特性を生かしたバイトもしている・・・。明二の語り口がとても好き。悲惨な子ども時代、障害による不具合、事件に巻き込まれててんやわんや、の中でも、常に冷静に自分と周りの様子を分析し、それがまた冷たい感じからは程遠いのがとってもいい!ゲームには私、全然詳しくないので、そっか、ゲームを作っている人ってこんな風に物事を考えるものなのか、という課程がとても面白かった。会社の友だち、社長、そして、途中から、なぜか明二のアドバイザー・兼・ガードマンみたいになった、正体不明のナタネさん。私は頭がゆっくりとしか働かないタイプなので、彼らのように頭のいい人の話は元気が出る、というか、いいぞ、いいぞ!とすっごく嬉しくなってしまうのです。明二の兄弟や実家の工場を守る古参の従業員たち、優秀なハッカーのリローなど、その他のキャラもいい具合に立ちあがっていて、今までの小路さんの作品の中で一番好きかも!!(#^.^#) と、ぐいぐい読ませられました。ただ・・・・(ネタばれです)とても面白く読んでいただけに、ナタネの正体には、ちょっとがっかり。魅力的な人物で、伊坂幸太郎の泥棒・黒澤さんに匹敵するくらい好き、なんて思って読んでいただけに、う〜〜〜ん、それはちょっと無理があるんじゃないかな・・・と。むしろ、そんな風に「正体がある人」ということじゃなくて、たまたま、明二に関わってしまった人、というわけにはいかなかったんだろうか。中島京子「小さいおうち」が冒頭からずっと面白くて、終盤、それがドカンともっと面白くなったことを思うと、「僕は・・」は私的にはちょいと残念かも。(実は、「小さいおうち」と同率一位かな、くらいに思って読んでいたので)
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50時間起きていて、20時間眠るという睡眠障害を抱えた明二。 監視のバイトなどとしていたのだが、偶然から2億円を手にしてしまい、思わぬ騒動に巻き込まれる。 もちろん一気読み。やっぱり長編も素晴らしい。 りろーの正体はなんとなく分かったのだが、オチが見事だった。ナタネさんかっこい...
50時間起きていて、20時間眠るという睡眠障害を抱えた明二。 監視のバイトなどとしていたのだが、偶然から2億円を手にしてしまい、思わぬ騒動に巻き込まれる。 もちろん一気読み。やっぱり長編も素晴らしい。 りろーの正体はなんとなく分かったのだが、オチが見事だった。ナタネさんかっこいい。 ぼんやりしつつ事態を冷静に把握し、頭の回転の速い明二がすごいとおもう。
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