反哲学入門 の商品レビュー
哲学入門として人に薦めてもらって読んだのだけど、あまりに分かりやすく素晴らしい本だったのでネットの海のどこかにいるその人を拝み倒したい気分になった。 教科書的な単純な思想家の羅列ではなく、哲学とは存在論だというところに焦点を絞って、古代ギリシアからの思想の潮流、世界観の移り変わり...
哲学入門として人に薦めてもらって読んだのだけど、あまりに分かりやすく素晴らしい本だったのでネットの海のどこかにいるその人を拝み倒したい気分になった。 教科書的な単純な思想家の羅列ではなく、哲学とは存在論だというところに焦点を絞って、古代ギリシアからの思想の潮流、世界観の移り変わりを丁寧に解説してある。 まずソクラテス以前の、「なりいでたもの」という日本人にもなじみやすいところから入って「哲学」を相対化し、プラトンとアリストテレスの思想のアレンジの交代劇という大まかな流れを見たうえで、最後のハイデガーの章で最初の「なりいでたもの」の思想にかえっていくという美しい構成も見事。 そしてもう一度最初から読むと、最初の「ふむふむ、そんなものなのか」と思って読んでいた箇所もするすると理解できるようになっているのがすごい。 哲学というのはソクラテスから順番にやらないと分からないというのは前々から分かっていたけれど、あまりに途方もない労力がいるように思えて尻込みしていた。でもこの本を読んでみると大きな流れ、勘所が分かるようになるので、興味のある所からでも頑張って読んでみようかなという気になる。 そしてやはり思想というのは時代の中で生きているものであって、当時の情勢や人々の暮らしと切り離せないものであるということがよく理解できた。 前にニーチェを読んだときに、ドイツ国民云々書いてある箇所はほとんど理解不能だったのだが、この本の該当箇所に当時の急激な科学の進歩についていけていなかった超自然的思想や芸術の状況、人々に民族の歴史という意識が見いだされるに至った経緯などが解説してあって、はじめてその意味や意義が理解できるように思った。
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ここまで何冊か哲学の本を読んできたが、この本が一番しっくりくる。古代ギリシャから現代のハイデガーに至るまでの西洋哲学の解説を日本人向けに説明している。かいつまんでの説明だが、とても分かりやすい。日本人向け、としたのは西洋で始まった哲学というのは学問をしているか否かにかかわらず日本...
ここまで何冊か哲学の本を読んできたが、この本が一番しっくりくる。古代ギリシャから現代のハイデガーに至るまでの西洋哲学の解説を日本人向けに説明している。かいつまんでの説明だが、とても分かりやすい。日本人向け、としたのは西洋で始まった哲学というのは学問をしているか否かにかかわらず日本で生まれ育った人には理解が難しい(普通に生活していたらそこに至る発想が無い)から。存在を定義する誰か、なんて普通に生活してて考えたこともないが、西洋哲学のテーマはそれである。 読んでみて思ったが確かに、ヤスパースの言ってることのほとんどはよくわからなかったがソクラテスの本がわかりやすい理由はわかった。ソクラテスには哲学がなく、ただただ否定することを貫いたからであり、その論理の組み立てさえわかれば言ってることの理解はできるからだ。マーク・トゥエインの「人間とは何か」がでドヤ顔で著者が記述していたけどそれって当たり前じゃないか…?というところも、神が全てを決定するという思想の西洋にとっては当たり前でないことで、自然の中と融合しながら生活するアジアにとって当たり前ということなんだな。そしてその流れが途中からひっくり返って、今までの哲学を否定するという意味で反哲学的と著者は呼んでおり、そこからはわりとすんなり理解できる。 私が前から気になってた神の存在の証明については、この著者がそのからくりをバッサリと記述している。そういうことからも、ヤスパースも書いていたように哲学と言うのは西洋でしかありえない、ということがわかった。 この本はわかりやすいだけあって細かい意味では不足があったり若干誤解を招きかねない表現もあるのだろうが、西洋哲学の概要のとっかかりとしては最適だと思う。高校の世界史の教科書程度の知識でも十分楽しめると思う。
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哲学を否定するにあたり哲学の歴史を順を追って説明してくれるので、まず哲学入門として素晴らしい本だった。 特に「なぜこういう思想に至ったのか」を個々の哲学者の生涯を振り返りながら説明してくれるため、ただ哲学者とその思想を列挙した本とは比べ物にならない深い知識を得ることができた。 「...
哲学を否定するにあたり哲学の歴史を順を追って説明してくれるので、まず哲学入門として素晴らしい本だった。 特に「なぜこういう思想に至ったのか」を個々の哲学者の生涯を振り返りながら説明してくれるため、ただ哲学者とその思想を列挙した本とは比べ物にならない深い知識を得ることができた。 「要するに全部超自然だよね」って抽象化してくれてるのも、バラバラな情報をつなげる助けになった。 ただ私はエンジニアであるせいか形而上学的思想も共感できるため、反哲学に関してはまだ完全に受け止め切れていない。 一度読んだだけでは理解できてない箇所もあるため、何度か読んで身体に染み込ませていきたい本だった。
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「反哲学」とは,存在するものの原理として超自然的なものを据える「哲学」という思考様式に対して,ニーチェやハイデガーが志したこと。章立ては「1 哲学は欧米人だけの思考法である」「2 古代ギリシアで起こったこと」「3 哲学とキリスト教の深い関係」「4 近代哲学の展開」「5 「反哲学」...
「反哲学」とは,存在するものの原理として超自然的なものを据える「哲学」という思考様式に対して,ニーチェやハイデガーが志したこと。章立ては「1 哲学は欧米人だけの思考法である」「2 古代ギリシアで起こったこと」「3 哲学とキリスト教の深い関係」「4 近代哲学の展開」「5 「反哲学」の誕生」「6 ハイデガーの二十世紀」。胃癌手術後の療養中,インタビュー形式で語り起こしたものをまとめ直したもの。その出自のせいか読みやすいしわかりやすいと思います。(風呂に持ち込み入浴中に読み継いでようやく読了)
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哲学は欧米人だけの思考法である 古代ギリシアで起こったこと 哲学とキリスト教の深い関係 近代哲学の展開 「反哲学」の誕生 ハイデガーの二十世紀 著者:木田元(1928-2014、新潟市、哲学)
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なんと言っても「第一章 哲学は欧米人だけの思考法である」がいい。倫理社会の一回目の授業でこんな話が聞ければ、哲学への興味もグッとわいてくるはず。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
再読したが前回よりさらに本書の素晴らしさを実感。「哲学」という非常に哲学的な日本語が日本人の哲学感を狂わせているようだ。ニーチェ以前と以降では哲学は同じ哲学ではなく、ニーチェ以前の哲学は自然はなにかによって作られているというある意味決定論的・超自然的な立場に立っているが、ニーチェ以降では自然は自然にあるものというある意味日本人的な感覚になっているそうだ。プラトン以降、形而上学も含めて、結局のところ自然というのは超自然的なものに支配されているということを表現を変えて述べているだけとは驚き。いままでまったく理解できなかった哲学というものが少しわかった気がする。
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哲学史の入門には 私なりには一番のお薦めです 細かく細かく書くのは 難しくない 大筋をズバッと書くのは 難しさMAX 分かりやすく読みやすい 間違いないです
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●なぜ哲学が西洋で生まれ、日本では生まれなかったのか。それは「 自分が自然の中にすっぽり包まれて生きていると信じ切っていた日本人には、「自然」という「存在するものの全体」がなんであるかといった問いは立てられないし、立てる必要もなかった。西洋という文化圏だけが超自然的な原理を立てて...
●なぜ哲学が西洋で生まれ、日本では生まれなかったのか。それは「 自分が自然の中にすっぽり包まれて生きていると信じ切っていた日本人には、「自然」という「存在するものの全体」がなんであるかといった問いは立てられないし、立てる必要もなかった。西洋という文化圏だけが超自然的な原理を立てて、それを参照にしながら自然を見るという特殊な見方、考え方をしたのであり、その思考法が哲学と呼ばれた」と著者は説明しており、なるほどなと思った。
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木田元氏は胃癌手術後の療養中に、新潮社の編集者に唆されて、口述筆記による哲学入門の本を出しました。それが本書『反哲学入門』であります。否、口述筆記といふよりインタヴューに答へたものを基に、編集者が原稿を作つたさうです。ゆゑに、本書の功績も欠点も、木田元先生と編集者が分かち合ふべき...
木田元氏は胃癌手術後の療養中に、新潮社の編集者に唆されて、口述筆記による哲学入門の本を出しました。それが本書『反哲学入門』であります。否、口述筆記といふよりインタヴューに答へたものを基に、編集者が原稿を作つたさうです。ゆゑに、本書の功績も欠点も、木田元先生と編集者が分かち合ふべき性質の書物と申せませう。 そもそも哲学とはどんな学問なのか、哲学者つて何を研究してゐるのか、改つて尋ねられて気の利いた返答が出来る人がどれだけゐるでせうか。須藤凜々花さんなら朝飯前でせうが。 わたくしなぞは「哲学」と聞くと、『ふたりと5人』といふ漫画に出てきた「哲学的先輩」を連想するし、ソクラテスといへば野坂昭如氏の「ソソソクラテスかプラトンか」をまづ思ひ浮かべます。 そんなレヴェルのわたくしにも理解できるやうに、優しく語り掛けてくれる本書(白状すれば、それでも解らぬ部分あり)。しかしなぜ『哲学入門』ではなく、「反」がつくのか。 木田氏は、哲学者でありながら哲学といふものを肯定的に捉へられぬと言ひます。本来哲学とは欧米人だけの思考法であり、日本人が理解出来ぬのは当然であると説きます。へえ。そして哲学の概念を日本に輸入した人たちにも原因があると。 「希哲学」と訳すべきフィロソフィーといふ言葉を、「哲学」としてしまつた。これは誤訳だと木田氏は断じます。また、metaphysicsの訳語として、「超自然学」とでもすればいいところを、なぜか「形而上学」と訳した。確かに分かりにくい訳語ですね。 ソクラテス、プラトンのギリシャからカント、ヘーゲルを経てニーチェに至る流れがある訳ですが、ニーチェといふのは、従来の西洋哲学(プラトニズムとニーチェは言ふ)を批判し、アンチフィロソフィー(反哲学)なる概念を生み出したと。従つてプラトン以前と以後の「哲学」は同列に扱ふことは不適当であるさうです。 そして「二十世紀最大の哲学者」と著者がいふハイデガーについては、最後の第六章を丸ごと使つて解説します。ナチズムの思想と結びついた彼の主張は、実存主義ではなく「反ヒューマニズム」だと言ひます。 語り言葉ゆゑに解りやすい部分もありますが、逆に解りにくい要素もございまして、それは著者ご本人も認めるところであります。しかし西洋哲学の長く複雑な歴史を、僅か300頁の中に俯瞰してみせた力業には感服いたしました。 巻末に、読者に対する参考文献として、木田氏は自著を幾つか紹介してゐます。「書き言葉」による入門書も読んでみたくなつた次第であります。 デハまた。 http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-747.html
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