1000の小説とバックベアード の商品レビュー
著者はきっと神経質で理屈屋で小説がたまらなく好きなんだろうな、と。 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』みたいな不条理な設定で、『HELLSING』みたいな洗脳的言語が飛び交う話。 この小説中もっとも男前なのはアンチさんだと思う。 「通じない人間なんて、この世に一...
著者はきっと神経質で理屈屋で小説がたまらなく好きなんだろうな、と。 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』みたいな不条理な設定で、『HELLSING』みたいな洗脳的言語が飛び交う話。 この小説中もっとも男前なのはアンチさんだと思う。 「通じない人間なんて、この世に一人もいないんだよ。子供だって大人だって貧乏人だって低学歴だって政治家だって犯罪者だって、いいもの読んだら絶対に受けとめてくれるんだよ。少なくとも物書きは、そう信じなきゃだめだ。だから小説を書くなら、読者のことを考えろ。文章書くのが恥ずかしいとか、ストーリーがあるのが気持ち悪いとか、登場人物の名前をつけるのが不快だとか、そんなどうでもいいことに頭をつかうひまがあるんならな」 「人間は、自分に才能がないことにかならず気づく。自分が天才じゃないことにかならず気づく。でも、そのときに屈服するな。あきらめるな。逃げるな。つらくても可能性がゼロでもふんばれ。笑うやつがいても無視しろ。なぜならそいつも才能がないからだ。わかったか?」
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独創的なようで何かの模倣でしかないようにも見える小説。作者の小説観・小説論がみっしり詰まった作品のようにも見えるが、随所にハリボテ文章っぽいのが見受けられたので、なんかすっきりしない。結局、読者側からは答えなんて見えないんだ。
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なんて考えさせられる本なんだろう。「三島由紀夫賞」を受賞しただけのことはあるなあ。納得。読後、こたつに寝転んでほうっとため息をついてしまった。小説を書く行為を神聖なものにしてはいけないのかなあ。うーむ…これ以上は語るまい。ネタバレになるからね。
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2006年の新潮12月号に掲載され、第20回三島由紀夫賞を受賞した作品。 題名が面白く、つい買ってしまった。 途中はそれなりに面白く読み進めたが、読み終わってみると何一つ残らない小説だ。どこか村上春樹をカリカチュアしたような、しかしもっとずっと無機質な小説だ。面白いのは、小見出し...
2006年の新潮12月号に掲載され、第20回三島由紀夫賞を受賞した作品。 題名が面白く、つい買ってしまった。 途中はそれなりに面白く読み進めたが、読み終わってみると何一つ残らない小説だ。どこか村上春樹をカリカチュアしたような、しかしもっとずっと無機質な小説だ。面白いのは、小見出しをずらりと並べてみると、まるで小説の書き方教えます、てな風のストーリーとはおよそ無関係な、ある意味ではストーリーのメタ見出しとでもいうのか、いったいなんのつもりなのかな、というような体裁になっている。小説なんておよそ好きずきであり、面白いという人も、評価する人もいるのだろうから(だから三島由紀夫賞も取ったのだろうが)、それはそれでいいのだが、それこそ著者が言うように、1000の小説さえあればいいのだ。でも新しい試みはどんどんやってください。楽しみにしています。
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第20回三島由紀夫受賞作。 ゆやたん、いつの間にこんな高みに…。『フリッカー式』はなんだったの。 依頼人1人のために文章を書く「片説家」。 不特定多数の読者のために文章を書く「小説家」。 小説家と同等の才能がありながらも小説を斜視する「やみ」。 京王プラザホテルの地下にある図書...
第20回三島由紀夫受賞作。 ゆやたん、いつの間にこんな高みに…。『フリッカー式』はなんだったの。 依頼人1人のために文章を書く「片説家」。 不特定多数の読者のために文章を書く「小説家」。 小説家と同等の才能がありながらも小説を斜視する「やみ」。 京王プラザホテルの地下にある図書館の館長「バックベアード」。 この発想、面白い。片説家、っていう単語は自虐的というかペーソス込み? 展開は村上春樹を彷彿とさせる。2人の姉妹、図書館、あと「やれやれ」。 だけど、ゆやたん特有のセカイ系構造がおれだよおれ!と主張を声高にして いる感じで、全くの模倣とは思わなかった。 小説が好きで好き過ぎて苦悶してこんなんできた、これが私の「小説」です、 という自負と矜持が見え隠れ。「言葉は残ります」か。良い宣言だ。 まぎれもなくこれは「文学」だと思う。 (にしても、化けたなぁゆやたん)
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佐藤友哉の文は読みやすい まどろっこしいけどリズムがあって情景がすぐ見えてくる気がする まさかホントにベアード様が出てくるとは! このロリコンどもめ!
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- ネタバレ
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2009/12/25 Amazonより届く。 2023/4/19〜4/21 三島由紀夫賞受賞作。なんと8年ぶりの佐藤作品。 たった一人のために書く片説家をクビになった主人公。クビになった瞬間に読み書きができなくなってしまう。そのドタバタを描きながら、小説とは何なのか、について鋭く問いかける作品。
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〈小説〉なるものへの挽歌と讃歌。ナイーブなまでの。あと、なんでこんなに「読みやすい」のか再考のこと。
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