憂鬱たち の商品レビュー
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「ウツイ」「カイヅ」といった、比較的ニュートラル(日本人っぽくない)な名前を軸に、様々な登場人物がこの名前で登場してくるのが印象的だった。 相変わらず、淡々と長くそれでいて読み手を惹き付ける文章と、性的なアクティブさ、倦怠感、社会からの疎外感といったものを全面に感じさせる世界となっていた。 それでも、金原ひとみの凄いところは、主人公と共通する要素を持ってない読者にも、どこかに共感させる部分を小説の中に織り込んでいるところだと思う(単に自分が重なる部分を持っているだけかもしれないが)。 一見、精神異常でクレイジーな日常を送る主人公の心象風景だが、本当は世界はこのように見えるべきで、何も感じず普通に暮らせている自分の感じ方の方が間違っているのかもしれないと感じさせる力を、この人の作品は毎回持っていると思う。
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憂鬱はいつでも常に隣どおし。精神科に行きたい神田憂はいつも”ウツイくん”と”カイズさん”にいつも阻まれ、目的地には決してたどり着けない。そして自分がこんなに苦しみに苛まれているのなら他の人間はなぜ発狂しないのかと思う様はまさに末期で、自己至上主義。ただ、憂欝で悩む日々の中にもきちんと性欲はあり、人間の浅ましさみたいなもの、本能のようなものは残っている。やはり、人間の欲や源を描かせたらひとみ様はピカイチ。 同じ条件下でパラレルワールドを展開し、物語を作っていく金原ひとみ様はやはりおもしろい。あと、憂の妄想ともとれる一人語りは心地よいトリップ感を与えてくれる。あと、この本の装丁は装画「Lulu de Kwiatkowski」、装丁「大久保明子」で非常に美しい。インパクト大。
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きっと常に、現実は鬱なのだ。 精神科に通いたいけど「いつもその他の下らない物ものに邪魔されて行けない」神田憂。 精神科に向かう道で出会うカイズとウツイ。彼等はいつも違う形で彼女の通院を阻む(と、彼女は捉えている)。 短編ごとにカイズとウツイは違う設定になっている。例えばバーテンだったりピアッサーだったり憂の彼氏だったり。 カイズとウツイは、彼女の創り出した想像上の人物で、本当はそんな人など存在しないのではないか? 彼女の中の世界と、現実の世界が交錯して、何が本当で何が本当じゃないのか混乱する。 だけど、それはきっと私たちの世界に於いても言える話で、私は、私の頭の中に存在する世界と現実の世界がどこで交わっているのか 分からなくて、だからこそ怖くて、不安になる。 「いつになったら悲しみから解放されるのか。人生とは永遠に憂鬱なのだろうか。何故常に憂鬱がつきまとい、憂鬱に悩まされ続けるのか。これまでの人生、私は誰からも愛された事はなかったかもしれない。でもこれだけは言える。私は憂鬱に愛された女だ。憂鬱だけが私を愛し私を唯一のパートナーと認め私との生活を望み私との肉体的精神的繋がりを求め私にプロポーズをし君との子供が欲しいと言ってくれた。憂鬱だけは絶対に、私を見捨てない。」(p.83) 憂鬱は快感で、憂鬱は始まりで、憂鬱は永遠だ。憂鬱に終わりはなくて、それはとても、素敵な事。 金原ひとみにしては落ち着いた作品で、金原節炸裂、という部分が殆んどなかった。ある意味一般受けしやすいのかもしれないが、万人受けする思考回路ではないように思う。
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どんな本かって、一言で言えば「鬱・エロ」。それが100%。 でも一言で言われて「あっそう、ふーん」て通り過ぎるのは勿体ないくらい面白いです。 鬱とエロが苦手じゃなければ絶対に。 主な登場人物は、鬱で精神科に行きたいけど行けない若い女(ルックス良)、細身のイケメン、変態のオッサンの三人のみ。 是非一度金原ひとみワールドに連れていかれていただきたい。
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これはすなわち奥田英朗の伊良部シリーズの患者側からの逆パロディみたいなものですが、充実作。しかしメンヘルの社会性への言及皆無であることが難点といえば難点です。昔の笙野頼子、それから赤坂真理を、踏襲しているに違いなく、それなら尚更、そこに批評性が見られなければ、当然退化、がっかり、...
これはすなわち奥田英朗の伊良部シリーズの患者側からの逆パロディみたいなものですが、充実作。しかしメンヘルの社会性への言及皆無であることが難点といえば難点です。昔の笙野頼子、それから赤坂真理を、踏襲しているに違いなく、それなら尚更、そこに批評性が見られなければ、当然退化、がっかり、とも言えるのですが。
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主人公の神田憂とおっさんのカイズと若者ウツイが役とシチュエーションを変えて出てくる妄想短編集。 神田憂は精神科に行きたいのに行けない。 メンヘル系な言動にコワイなあと思いつつ引き込まれた。 確定申告編は私小説では?と思った。リアルだった。
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精神科に行こうとしているのに、結局行かずに他のことをしてしまうという女性の話。 自意識過剰や考えすぎが度を超えると、もはや滑稽になってしまうことが分かる。そしてそんな主人公に共感し、面白さと爽快ささえも感じてしまう自分も、彼女と同じタイプの人間なのかもしれないと笑えた。
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相変わらず凄い強烈。 カバーが今までにないくらい派手で強烈、激しいのに比べ内容は濃くみせてるが薄っぺらい 連作短編小説、だが異様に感じるのはどの短編も主人公神田憂、カイズさん、ウツイくんの三人で作られていること。 そしてどの短編にも共通しているのが神田憂が精神科に行けない話...
相変わらず凄い強烈。 カバーが今までにないくらい派手で強烈、激しいのに比べ内容は濃くみせてるが薄っぺらい 連作短編小説、だが異様に感じるのはどの短編も主人公神田憂、カイズさん、ウツイくんの三人で作られていること。 そしてどの短編にも共通しているのが神田憂が精神科に行けない話。そこで繰り広げられる神田憂の憂鬱な被害妄想。それは現実なのか、もしくは作り出したものなのか。 ゼイリでのウツイ君と神田憂のコンビニでの絡みは笑っちゃいました。 金原さんの本、すべて読んでるけど構造以外はつまらなかった。 なんかどの話しも似てる感じで、ちょっと飽きちゃった感が否めないかな。マンコオナニーセックス連発してるだけで、内容は本当に薄っぺらい。携帯小説みたいになってるのが残念
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短編連作ってゆ-のコレは?? 登場人物は全作品、カンダユウとカイズさんとウツイくん。 でもシチューエションは全然違う。 そこにつながりを見出すか、ただの演出と捉えて個々に読むのかは自由。 ずっと鬱。鬱病か人格障害かびみょ。 やばいきちゃってるひとの頭んなかのぞきたい人...
短編連作ってゆ-のコレは?? 登場人物は全作品、カンダユウとカイズさんとウツイくん。 でもシチューエションは全然違う。 そこにつながりを見出すか、ただの演出と捉えて個々に読むのかは自由。 ずっと鬱。鬱病か人格障害かびみょ。 やばいきちゃってるひとの頭んなかのぞきたい人はどうぞ。 妄想すごい。被害妄想と自意識過剰の嵐。 ちょと共感できる感じがまたヤバイんだけど。でもせつなさ全面ってよりはかなりギャグっぽいタッチ。暴走と自虐を笑っちゃう点はある意味さくらももこだよねとか思って読みました。 装丁美しい。単行本としてはあんまりな気がした。 そもそも短編て終わった瞬間ハっとなるのに、次の作品でまた同じ登場人物が違うところに落ちてるのって読者的にはついてけないというかついてきたくない。 ひとつずつ別の場所で群像なり文學界なりで読んだほうが面白かったかも。 エロさは相変わらずだけどグロさは減ってて彼女のすきな拒食症もいないし、病的なクレイジーさが笑える描かれ方、金原さん結婚して丸くなってきてんのかなあ長生きしてくれたらうれしいなあと思います。ファンとして。
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ネームの通り「憂鬱たち」の群像です。が、登場人物おのおのの憂鬱の成分が違います。が、読めばあなたも憂鬱たちの仲間入り間違いなし? 軽く読める作品=印象に残らないに漏れず。憂鬱の追体験したい方にはおススメ。
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