天冥の標 Ⅰ(下) の商品レビュー
これは続きも読まねばなるまい…… 圧倒的なうねりと変革の果てに待つ『天冥の標』1巻の結末。餌をおあずけされたような気分になりつつも、まだ物語が続く楽しみも同時に味わっています。 植民星・メニー・メニー・シープの総督ユレイン三世の圧政に耐えかね、「海の一統」を始めとした市民たちは...
これは続きも読まねばなるまい…… 圧倒的なうねりと変革の果てに待つ『天冥の標』1巻の結末。餌をおあずけされたような気分になりつつも、まだ物語が続く楽しみも同時に味わっています。 植民星・メニー・メニー・シープの総督ユレイン三世の圧政に耐えかね、「海の一統」を始めとした市民たちはついに蜂起し、ユレイン三世の退任を要求する。それに対し軍部は兵士を派遣。メニー・メニー・シープは内戦状態に突入し…… 上巻は全体的に溜めの状態が続いている印象だったけど、下巻はとにかく動く、動く。登場人物たちが動き回り、各都市、各団体が結集していく一方で闘いは激しさを増していく。軍隊と市民たちの攻防戦が息つく暇も無く展開されていき、気がつけばあっという間にページ数が少なくなっていきました。 戦闘描写の迫力もそうなのだけど、合間合間に挟まれる群像劇も面白い。アンドロイドであるラゴスをめぐる二人の女性の描写と、それぞれの愛と欲。そしてラゴスの心中と思いは、設定を存分に活かして、種族を越えた愛であったり、人間の支配や愛を求める欲、アンドロイドの苦悩を表現します。 登場人物の魅力も物語を引っ張る。上巻から活躍する「海の一統」の若きリーダー、アクリラは上巻、そしてこの下巻と大きな挫折を体験しながらも、それでも前に進んでいく。女性議員のエランカは、正義に目覚め少しずつ同士を増やしながら、革命軍の政治的な部分において、徐々に中心人物となっていき、カドムも革命の使命を徐々に見出していく。そして、ここでも種族を越えた不思議な絆が生まれ…… 一方でユレインをはじめとした政府・軍部側の人間たちに、アンドロイド、メイスンと呼ばれる異星人たち。それぞれをピックアップしながら、物語は重層的に、そしてより大きなうねりをともなって展開されていく。 様々な思惑が入り乱れる人間たちに、アンドロイドの苦悩、異星人たちの自我の芽生えといったところまで、戦闘の描写の中に書き込まれていて、ただただ感嘆してしまいます。スピード感と迫力溢れる展開に、情報量もなかなかのものがあって、読んでいる間に、自分もメニー・メニー・シープをめぐる大きな渦に飲み込まれていくような感覚を覚えました。 そして、物語の最後に待つ壮絶なラスト。回収されていない伏線、多くの謎を残したまま、1巻は閉じられます。それでも満足度は高い。革命をめぐる物語のエンタメ度がそれだけ高くて、それ単体でも自分は十二分に満足できたからです。 地球から来たという二人組。物語中、終始謎めいた言動をとり続けたノルルスカイン。メニー・メニー・シープという星はそもそも何だったのか? を始め、よくよく考えると分からないことばかり。 しかしあとがきで著者の小川一水さんは『この話の終わりはすでに見えています。そのころにこの話は、たいしたものになっています』と豪語されています。こうなれば一読者としては、その自信を信頼し、『天冥の標』という物語の大きな流れに、身を任せるのみです。
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それぞれの野望や思惑がメニーメニーシープに大きな変化をもたらし、予想だにしないことが起こる。。これも誰かの思惑なのかな?って感じのところで終わりましたね。ノルルスカインや地球からきた奴らが何を知っていたのか、気になります。次の巻がとても楽しみです。
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話の大まかな流れは、圧政君主と革命群の戦いの続きといった感じだが、物語が進む中で複数の疑問が浮かびあがる。 今後の展開次第でどう解明されていくのか 楽しみである。
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何という終わり方なのか。 上巻のはじめはラノベ的な雰囲気があってちょっと敬遠していたが、読み始めるとページターナーだった。 物語がぐんぐん進んでいくけれど、どこかおかしいと不穏な雰囲気。 結局何だったのか。それは2巻以降にあるのでしょうか。 キャラが個性的。結局、あの2人組は?
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太公望のような話だなと思っていたら、急展開。 しかし伏線はしっかり張られていたので、唐突な感じではないけど、予想よりずっと救いのない展開 これで序盤みたいだから先はどうなることかますます気になる
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長編小説の第一章完結。フェロシアン、ダダー、メイスンの正体、ユレインは何を隠しているのか、ある程度の謎が開示された。 先は長い。
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いやぁ、これは読ませる。臨時総督ユレインから、ついに植民地の指揮権を奪還したアクリラ、カドムらは、どうやらパンドラの箱を開いてしまった様だ。読者が想定しているであろう展開から、また一捻りした方向に進むので「え、、、ウソ、、、」ってなる。ラバーズやカルミアン/メイスン、フェロシアン...
いやぁ、これは読ませる。臨時総督ユレインから、ついに植民地の指揮権を奪還したアクリラ、カドムらは、どうやらパンドラの箱を開いてしまった様だ。読者が想定しているであろう展開から、また一捻りした方向に進むので「え、、、ウソ、、、」ってなる。ラバーズやカルミアン/メイスン、フェロシアンらの関係も明かされつつあり、それらが植民地の謎と渾然一体となり、物語の先を追わずにいられなくなる。植民地はなぜ闇に閉ざされてしまったのか、フェロシアンに襲われた首都オリゲネスとカドムたちはどうなったのか。このままの勢いで2巻へ。
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始まりの終わり完了。 ただ、壮大な物語になりそうなので、メニーメニーシープの陥落は、転換点でしかないのだろうな、と感じます。 ラストで語られたかつて存在した六つの勢力。 「医師団(リエゾン・ドクター)」「宇宙軍(リカバラー)」「恋人(プロステイテュート)」「亡霊(ダダー)」「石...
始まりの終わり完了。 ただ、壮大な物語になりそうなので、メニーメニーシープの陥落は、転換点でしかないのだろうな、と感じます。 ラストで語られたかつて存在した六つの勢力。 「医師団(リエゾン・ドクター)」「宇宙軍(リカバラー)」「恋人(プロステイテュート)」「亡霊(ダダー)」「石工(メイスン)」「議会(スカウト)」。それらが抵抗した「救世軍(プラクティス)」。 プラクティスの呼び名がとにかく気になる。羊飼いが「咀嚼者(フェロシアン)」であるイサリをそう呼んでいた。 咀嚼者の異端であろうイサリを、人間と敵対する存在に救世軍と呼び名がつく理由は? 覚醒したリリーたち「休息者(カルミアン)」はどういう存在なのか? 続きが気になるばかりです。早く第二巻を、というわけで早速読み進めることにします。 一気読みの醍醐味。 咀嚼者のビジュアルイメージはゼルダのゾーラ族。凶悪ミファー。
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63:全10巻のシリーズということで、完結するのか、打ち切られないかと手を出すのをためらっていましたが、かなり評判がよく、刊行ペースも早いので思い切りました。思い切ってよかったです!(笑) 「海の一統」たちの電気代謝体質やコイルガンなどをはじめとするガジェットがものすごく魅力的で...
63:全10巻のシリーズということで、完結するのか、打ち切られないかと手を出すのをためらっていましたが、かなり評判がよく、刊行ペースも早いので思い切りました。思い切ってよかったです!(笑) 「海の一統」たちの電気代謝体質やコイルガンなどをはじめとするガジェットがものすごく魅力的で、それに負けないほど登場人物たちも厚みがあって豊かです。容赦のなさは相変わらずですが、こ、こんな終わり方ってーーー! と叫ばずにはいられないラストには一言申し上げたいです(笑)。「早く続きが読みたい!」
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