横道世之介 の商品レビュー
本当になんてことない1年なんやけど、 その1年が世之介にとってのこれからの人生に影響を与えたことは確実で、 そう思うと自分自身の学生生活もまんざら悪くないものに思えてきます。 そして、当時は確固たるものとして存在していた関係性が、いつか薄くなったり、なくなったりしてしまう事実。 ...
本当になんてことない1年なんやけど、 その1年が世之介にとってのこれからの人生に影響を与えたことは確実で、 そう思うと自分自身の学生生活もまんざら悪くないものに思えてきます。 そして、当時は確固たるものとして存在していた関係性が、いつか薄くなったり、なくなったりしてしまう事実。 それをふっと思い出せる引き出しがあるって、幸せなんかもしれないです。
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世之介はなんだったんだろう。 自堕落な普通の大学生。 どこにでもいる、むしろ冴えない大学生。 よく言えば純粋、悪く言えば単純、能天気。 人に甘えて生きてきた。 大学時代の友人に、数年後にふと思い出されるぐらいの存在。 そんな程度の人間が主人公になれたのは何故だろう。 そん...
世之介はなんだったんだろう。 自堕落な普通の大学生。 どこにでもいる、むしろ冴えない大学生。 よく言えば純粋、悪く言えば単純、能天気。 人に甘えて生きてきた。 大学時代の友人に、数年後にふと思い出されるぐらいの存在。 そんな程度の人間が主人公になれたのは何故だろう。 そんな程度の人間を主人公にさせた意図はなんだったんだろう。
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「私、世之介の作品を世界で初めて見た女になりたいんですの」ラスト近くのこの一文に涙腺が一気に緩んだ。ふ、と思い出すとそこにいる世之介の存在は、思い出す人達の多少に関わらず、暖かく微笑ましいものであったのだろう。この事件の報道、映画化などの背景を知ると、昨今の政情を反映してか眉をし...
「私、世之介の作品を世界で初めて見た女になりたいんですの」ラスト近くのこの一文に涙腺が一気に緩んだ。ふ、と思い出すとそこにいる世之介の存在は、思い出す人達の多少に関わらず、暖かく微笑ましいものであったのだろう。この事件の報道、映画化などの背景を知ると、昨今の政情を反映してか眉をしかめたくなる。でも、彼という存在をその当時に結びつけず、学生時代を描くことで本当にどこにでもいそうな、それでいて稀有の緩やかな存在であったのだろうと思わされる。命を投げ出したのは日本人にもいたんですよね。忘れてはいけない事です。
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初めて読んだ時やたら長くて、つまらないと思ってたんだけど、映画見て相当感想変わりました。そもそも、吉田修一の「さよなら渓谷」が価値観の齟齬で凄く嫌いで偏見持って読んでしまっていたことをちゃんと告白します。今作ってその横道世之介の人格像に徹底してて、その挑戦が大成功している作品だと...
初めて読んだ時やたら長くて、つまらないと思ってたんだけど、映画見て相当感想変わりました。そもそも、吉田修一の「さよなら渓谷」が価値観の齟齬で凄く嫌いで偏見持って読んでしまっていたことをちゃんと告白します。今作ってその横道世之介の人格像に徹底してて、その挑戦が大成功している作品だと思います。世之介の心情というより、第三者からのイメージにクローズアップされてて、読み進めると徐々に透けて世之介の行動だとか心の動きが何と無く分かるようになってくる。死に際だって実に世之介らしくて、咄嗟に飛び出す情景なんかが自然と浮かんでくる。悪く言えば予定調和ですが、これって凄いことなんじゃないかと思います。雰囲気も独特でなかなか稀有な作品ではないかと思います。
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カメラマンになった世之介の被写体は絶望ではなくて、希望だった。呑気でフワフワしてるけど、希望に満ちていると思う。ボートピープルの時もそう、駅のホームでもそうだった。いろいろな人の記憶に顔を出す世之助の日常はちょっと影が薄そうだ。でも、世之介の魅力は太陽みたいに当たり前のような明る...
カメラマンになった世之介の被写体は絶望ではなくて、希望だった。呑気でフワフワしてるけど、希望に満ちていると思う。ボートピープルの時もそう、駅のホームでもそうだった。いろいろな人の記憶に顔を出す世之助の日常はちょっと影が薄そうだ。でも、世之介の魅力は太陽みたいに当たり前のような明るさ。気が付きにくい。困っている人がいれば迷わず体が動くというのは、なかなかできることではない。考えてやることじゃないから。
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2008年に、毎日新聞で連載された小説に加筆修正して出版された作品。 なんとも言えない味のある物語。 九州から上京してきた"普通"の青年世之介と、同じ時を過ごした人たちの1年が描かれている。 時代はバブル全盛期。 後半から所々現代と交錯する。 過去を振り返る人...
2008年に、毎日新聞で連載された小説に加筆修正して出版された作品。 なんとも言えない味のある物語。 九州から上京してきた"普通"の青年世之介と、同じ時を過ごした人たちの1年が描かれている。 時代はバブル全盛期。 後半から所々現代と交錯する。 過去を振り返る人たちは、世之介との交流はすでに途切れている。中には最後まで思い出せない人さえいる。 実際、大人になってから振り返る20年前の出来事は思い出のアルバムの1頁にも満たないわずかなものだと思う。 ましてや世之介との間にどんな劇的な出来事が起こるわけでもないのだから、だけど。 "なぜか(世之介と出会った)自分がとても得をしたような気持ちに"させる、不思議な魅力を持った青年なのだ。 それってすごい。 味がないようで味がある世之介の魅力は、まんまこの物語の魅力を表していると思う。 所々プッと噴き出したり、退屈だったり、しんみりしたり、最後に号泣したり。 私が涙もろすぎるんだろうけど(笑) 読まないよりは読んで良かったかな、と思える作品でした。 カメラのくだりを読んで、東京で暮らしていた頃、買ったばかりのLOMOで、近所を撮り歩いたことを思い出した。 なんだか私まで世之介と同じ時を過ごせた気分。
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さらっと斜め読み。素朴な人柄の青年が東京の大学に入学して過ごした1年生時代の話。いろんな出会いがまってる新生活。ハプニング有り、恋愛有りの思い出。最後の結末はう〜ん。
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映画先行。 文字だと、どう頑張ってもあんな美男美女たちは浮かんでこない。 映画以上に、何でもない感。でも映画よりグッときた。 キムくんとの絡み、重要だったのでは…あえて外したのかな?
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そんなによくわからない本だった。 世之介に魅力ないし、他の人の挿話も唐突だし、 ていうか祥子のキャラひどくないか?
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人ひとりの人生は小説になる、と常々思っているけれど、それは有名人でもなければ派手なわけでもない人生のほうが、もしかしたら味のある小説になるんじゃないかって思う。 人生はドラマチックなことはそんなに起こらないし、毎日似たような時間に似たようなことをするくりかえしで、記憶にさえ残らな...
人ひとりの人生は小説になる、と常々思っているけれど、それは有名人でもなければ派手なわけでもない人生のほうが、もしかしたら味のある小説になるんじゃないかって思う。 人生はドラマチックなことはそんなに起こらないし、毎日似たような時間に似たようなことをするくりかえしで、記憶にさえ残らない、取るに足らないようなことの積み重ね。 だけどそういう“取るに足らないようなこと”が大事なんじゃないかって思う。 ドラマチックではない日常で、人と出逢い、いろんなことを感じて、自分の中に積み重ねていくということが。 この小説の主人公・横道世之介も、どこにでもいるような普通の青年。 田舎から東京に出てきたひとりの青年が、恋愛したり、大学行ったり、バイトしたり、嫌々サークル活動をしたり、失恋したり。 本当にどこにでもあるような日常を綴った小説なのに、最後は涙がおさえられなかった。 大人になった祥子が大学時代の世之介のことを振り返って言ったこの言葉が心に残ってる(要約ですが) 「何にでも『YES』って言ってるような人だった。それで失敗することはたくさんあるんだけど、それでも『NO』じゃなくて『YES』って言ってるような人」 これが世之介のすべてを表しているような気がする。 だから世之介は、関わったいろんな人々の心の中に、優しく在り続けるんだと。
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