横道世之介 の商品レビュー
地方から東京に出て大学生活を始めた横道世之介の4月から3月までの1年間の物語。わずか1年の間に世之介に深く浅く関わった人たちの20年後の回想も織り交ぜながら物語は進む。一見すると世之介の恥ずかしい青春譚であるが、実のところこれは世之介自身の物語ではなく“彼が生きていた証”が生まれ...
地方から東京に出て大学生活を始めた横道世之介の4月から3月までの1年間の物語。わずか1年の間に世之介に深く浅く関わった人たちの20年後の回想も織り交ぜながら物語は進む。一見すると世之介の恥ずかしい青春譚であるが、実のところこれは世之介自身の物語ではなく“彼が生きていた証”が生まれる物語なのだろう。そのため著者は三人称を用い、世之介及び関わった人たちのシーンを距離を置いてみせてくれる。それは世之介が人々の心に残していった記憶の断片のようだ。随所に見られる吉田修一らしい言葉の選び方が、このベタになりがちな物語に質感を与え、世之介の人物像を透明感のあるものにしている。弱ぞーで優柔不断な世之介が何故か魅力的に見えてくるから不思議だ。登場人物中最も萌えなキャラはなんと言っても“与謝野祥子”さんでしょう。世之介以上に浮世離れした彼女は、実質この物語の主人公と言っても良い存在感をみせてくれます。この物語はTVドラマや映画など映像作品にすると面白い素材だと思う(事故の設定は改変が必要だろうし、映像化はパレードの成否にかかっているかな?)。ただし、映像化の際には実写ではなく是非アニメ化していただきたい。また、その際に祥子の声をあてるのは是非“能登麻美子”さんにしていただきたい。祥子の声はそれ以外考えられないので心よりお願いする次第だ…。
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吉田さんにしてはちょいとアンチスマート大学生 横道世之介が主人公。 九州から進学のために上京してきた日からほんの1年の間と、その10〜20年後の友達の人生が描かれている。 学生時代が80年代で、ケータイもパソも持っていない時代の大学生ライフがめちゃめちゃ懐かしい アタクシも下宿し...
吉田さんにしてはちょいとアンチスマート大学生 横道世之介が主人公。 九州から進学のために上京してきた日からほんの1年の間と、その10〜20年後の友達の人生が描かれている。 学生時代が80年代で、ケータイもパソも持っていない時代の大学生ライフがめちゃめちゃ懐かしい アタクシも下宿してたから友達の部屋に入り浸って暑いの寒いのお腹すいたのって文句ばっかり言ってたこと思い出したり。 何をとっても「並」で、熱い情熱とか怠惰な生活とか、とにかくそういう極端なモノはなにもない世之介が自分の人生を自分の足で歩き出そうとしたところで物語は終わる。 なぜ終わるのかは中盤で明らかになっているので、読者はどうしてそういうことになったのかを想像しながら読み進めることになる。 大学時代に世之介と知り合った友人達が十数年後に彼のことを思い出すのだけど、その思い出はみんな楽しかったことばかりなのである。 それってすごいステキなことだよな。 自分もそうでありたい、って強く思った。
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