罪と罰(3) の商品レビュー
殺す前後でラスコーリニコフの行った善行で、マルメラードフが選ばれたが、少女でストーカーされていたのを助けた方はそのまま流されていて、ずっと気になるところ。少女のその後を託した警官のような人も、ラスコーリニコフから馬車などのためにとお金をもらっておいてそのままというのも気になる。こ...
殺す前後でラスコーリニコフの行った善行で、マルメラードフが選ばれたが、少女でストーカーされていたのを助けた方はそのまま流されていて、ずっと気になるところ。少女のその後を託した警官のような人も、ラスコーリニコフから馬車などのためにとお金をもらっておいてそのままというのも気になる。この捨てられる線のおかげで、ソーニャと出会わせるためのような唐突なかんじがするマルメラードフの一件も自然さが出ているのかもしれない。 シベリアまで行こうとする(ドゥーニャと結婚して後に行ったはず)大親友のラズミーヒン、ドゥーニャを愛してペテルブルクまで追って出てきて「盗み聞き」という重要な役割を果たして金をばら撒いて自殺するスヴィドリガイロフ、この二つはファンタジーであろう。しかし、ドゥーニャが導線ということか。また、ルージンを悪者にしすぎている気もする。 スヴィドリガイロフが端から盗み見ていたというラスコーリニコフの描写[p267-268]から、ラスコーリニコフの精神的な窮地が最もよくわかる。エピローグの裁判で、ラスコーリニコフが施した善行が物語の始まる以前にもあったことがわかる(この物語は1865年7月7日から14日間のことである)。ひとりよがりの独善的な思想で人殺しをする人間が、一方では無償で人助けをするということにリアリティを感じるか感じないかはひとそれぞれであろう。 個人的には、ラスコーリニコフが雑誌には掲載されたものの、ひとりよがりで独善的な(傲慢な)思想にとらわれて人まで殺してしまい、自首する直前になっても、服役中もそれを「罪」とはみとめていなかったことが、リアリティがあって怖い。最後にはソーニャとの愛でスヴィドリガイロフの二の舞を免れるわけだが(スヴィドリガイロフが死んだことも助けにはなっただろう)、この話はもう、ここしか落としどころがないだろうとおもう。 ポルフィーリーの言うように、ラスコーリニコフはたまたまあの二人を殺しただけで済んだがそれは稀なケースで、大抵は現代にはびこるテロのような行為に至るのだろう。現代において、この物語は小説として優れているだけの都合が良いファンタジー、つくり話、おとぎ話(童話)の域を出るかどうかは疑問だ。
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3冊に及ぶ物語でありながら、たった2週間の出来事。社会や主人公ラスコーリニコフの精神状態(独自の持論)により事件を起こす。 自分は正しいのか違うのか、罪の意識。浮き沈みが激しく揺らぐ心理。 1人であればここまで悩むことはなく持論で開き直ってたのだと思う。 この場合、二人目があった...
3冊に及ぶ物語でありながら、たった2週間の出来事。社会や主人公ラスコーリニコフの精神状態(独自の持論)により事件を起こす。 自分は正しいのか違うのか、罪の意識。浮き沈みが激しく揺らぐ心理。 1人であればここまで悩むことはなく持論で開き直ってたのだと思う。 この場合、二人目があったから、罪の意識が出てしまい、持論で保てなくなった。 ラストはパァーっと視界が開けたような感動があった反面、本当にこれで良かったのか?とも。 この訳は読みやすかった。 なんとなく、読み始めからラスコーリニコフはハンニバル・ライジングに出ていたフランス人俳優キャスパー・ウリエルのイメージが出て、そのまま読み進めた。フランスじゃないけど。
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2015年27冊目。 「天才は自らの事業を成すために凡人を踏みにじる権利を持つ」というナポレオン主義から起こした殺人。 幾度も思いついては踏みとどまって来たラスコーリニコフは、ついに自首に至る。 彼が抱く罪の意識は、殺人に対してではなかった。 むしろ、運命が後悔をもたらしてくれればと、自分で自分を罰することができたらとさえ思っていた。 自首後に彼が抱いた罪の意識は、結局ナポレオン主義を徹底し切れなかったという点にしかなかった。 そんなラスコーリニコフに「観念としてではなく、生命として」訪れる最後の救いの瞬間が印象的。 『カラマーゾフの兄弟』もそうだが、ドストエフスキー作品の登場人物たちは、「自分を苦しめることで救いを求める」という一種のマゾヒズムのようなものを抱えていることが多い。 「少なくとも自分に誠実でありたい...」という点において、共感することが多い。 ロシアの宗教を始めとした文化事情をもっと理解しなければドストエフスキーの深すぎる仕掛けにはまだまだ気づけないが、 それでも十分に人に内在する共通項を感じ取ることができる。
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この本を読んだら生まれ変わらなくてはいけない気持ちになる。以下引用。 ひとりの人間がすこしずつ構成していく物語、その人間がしだいに生まれかわら、ひとつの世界からほかの世界へ少しずつ移りかわり、これまでまったく知られることのなかった現実を知る物語である。
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2015/1/12読了。 ついに読み終わった。全3巻の中では一番面白いと思えたが、多分ゴチャゴチャした記述がない部分があったからだと思う。相変わらず読みにくいことこの上ないが。周りが言うほど良い作品だと思えるような感想は持てなかった。ここから何を読み取ればいいのかはまだわからない...
2015/1/12読了。 ついに読み終わった。全3巻の中では一番面白いと思えたが、多分ゴチャゴチャした記述がない部分があったからだと思う。相変わらず読みにくいことこの上ないが。周りが言うほど良い作品だと思えるような感想は持てなかった。ここから何を読み取ればいいのかはまだわからない。 それにしても十字路にキスするってなんかの比喩?自首のこと?
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「罪と罰」読み終えました。 この物語は、「意思と運命」の話でもあると思いました。 運命=社会情勢、性別、家庭環境等。 意思=宗教、思想、愛、妬み、感情。 主人公を除く登場人物は、時代の「空気」や自分たちを支配する「運命」を悦びまた恨みながら、それでも「意思」によって、新しき時代を...
「罪と罰」読み終えました。 この物語は、「意思と運命」の話でもあると思いました。 運命=社会情勢、性別、家庭環境等。 意思=宗教、思想、愛、妬み、感情。 主人公を除く登場人物は、時代の「空気」や自分たちを支配する「運命」を悦びまた恨みながら、それでも「意思」によって、新しき時代を夢見ている。
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[1][2][3]巻読み終わりました。 登場人物の気持ちや心の中の葛藤などが多く、途中何を伝えたいのか分からなくなる部分が多々ありましたが、最終的にはきれいにまとめられていたので、気持ちよく読む事ができました。
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訳が読みやすくなっているのはよく分かりましたが、 心理描写が多すぎて、現実で何が起きているのかよく分からない。 が、主人公がウダウダしている時や、ジワジワ来る恐怖感の心理描写は すごい。 読むと重い気分になるので、再読はしばらくしてから。
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カラマーゾフの兄弟は、登場人物が、多く、難解だが、本書は、シンプル。 カラマーゾフの兄弟と、対比すれば、、完璧と言われる理由がよく分かる。
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ラスコーリニコフとポルフィーリーの心理学的な論争により、追い込まれていく場面の迫力は、学生時代に読んだものの今でも鮮烈に覚えていたところですが、今回久しぶりに読んでみて、スヴィドリガイロフの存在の大きさ!ラスコーリニコフ、ドゥーニャとのやりとりは悪の権化(しかし、巨悪というより、あまりにも小さく!醜い!)とも言うべき存在感は圧巻でした。第2の主人公とされるゆえが良く分かりました。ソーニャがルージンに泥棒扱いにされかねなかった場面での緊張感も凄いし。そして何よりも、第6巻でラスコーリニコフは未だ悔い改めているわけではなく、打算的に自首したものの、その後、エピローグの章での、シベリアにおいてソーニャの愛の実践により砕かれていく情景がリアルに感じられました。
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