傷はぜったい消毒するな の商品レビュー
正義感や使命感をもった素晴らしい医者であり、誠実さが本からも滲み出てくるようだ。著者が主張する、傷の湿潤療法は、傷口を消毒して乾燥させるのではなく、傷口を水道水で洗い流し、湿らせた状態のまま治すものとして、最近では最早市民権を得ている治療法だと思う。お値段高めのキズパワーパッドな...
正義感や使命感をもった素晴らしい医者であり、誠実さが本からも滲み出てくるようだ。著者が主張する、傷の湿潤療法は、傷口を消毒して乾燥させるのではなく、傷口を水道水で洗い流し、湿らせた状態のまま治すものとして、最近では最早市民権を得ている治療法だと思う。お値段高めのキズパワーパッドなども売られている。 本書では、そのメカニズムや実際の治療法や効果を説明するだけでなく、従来の方法からのパラダイムシフトに関しても多くのページを割く。痔や口内、内臓の傷では殺菌消毒ができない。でも、化膿することは稀である。 ー 浅い傷の場合には毛穴(および汗管)から皮膚が再生する。傷が深い場合にはまず肉芽が傷を覆い、その表面に周囲から皮膚が入り込んで再生する。実に単純なものである。そしてこの単純な現象が、なぜ傷を乾かしてはいけないかの理由を導き出す。 ー 消毒薬はどうやって細菌を殺しているのか。 消毒薬にはさまざまな種類があるが、どの消毒薬も破壊のターゲットは、タンパク質である。タンパク質といえば生命体の基本物質だから、それを壊してしまえば当然、その生命体は死ぬ。 消毒薬は人体にもタンパク変性作用し、傷口を傷つけるのだ。 更に、石鹸や消毒薬に含まれる界面活性剤が皮脂を洗い流してしまう。それでも毛穴から皮脂は常に分泌されるから問題はないが、皮脂の分泌を上回る頻度で洗っていれば、皮膚常在菌が生存できない皮膚になってしまう。皮膚には常在菌が必要で、常在菌が皮膚からの細菌侵入を防いでいる。その常在菌の生存に皮脂が必要だ。 また、著者は慎重に、湿潤治療には傷の程度により、向き不向きがあるとも述べる。目から鱗の話が盛りだくさん。まさに、パラダイムシフトを起こす本だ。
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湿潤療法の生みの親、夏井先生の衝撃の書! 切り傷や火傷なら、消毒液ではなく傷口の汚れを洗い流す「水」と傷口を覆う「サランラップ」と鎮痛効果が期待出来る「白色ワセリン」があれば、自宅でキレイにしかも短期間で治せるって話、貴方は信じられますか? 何よりも治療前に半信半疑だった患者さん...
湿潤療法の生みの親、夏井先生の衝撃の書! 切り傷や火傷なら、消毒液ではなく傷口の汚れを洗い流す「水」と傷口を覆う「サランラップ」と鎮痛効果が期待出来る「白色ワセリン」があれば、自宅でキレイにしかも短期間で治せるって話、貴方は信じられますか? 何よりも治療前に半信半疑だった患者さんの傷口がキレイに完治した結果が治療法の正しさを証明しています。 では、なぜ簡単で効果的な治療法があるのに医学界で共有されないのか。その理由についても多くのページを割いて解説しています。 昔は、今では考えられない危険で治癒効果の無い瀉血療法や水銀療法などが当たり前だった時代が確かにありました。当時の医者もいくら治療しても病気が治らないどころか悪化したわけですから、無駄で間違ったやり方だという事は知っていたはずでした。では、なぜ効果の無い治療法を続けたのか?それは、患者が治療を欲したからと他の医者も広くやっていたからです。とにかく苦しむ患者のニーズに何とか応えたいという気持ちと、有効な治療法が見つからない中でそれが医者として処置出来る唯一の治療法だったわけです。みんながしていたから、それが正しい治療法だったというのが真相です。 医学がこれだけ発展した現代ですが、近い将来、キワモノ扱いの「湿潤療法」が外傷医療方法の定番と認知される日を楽しみに待ちたいと思います。
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傷の治癒過程やなぜ湿潤治療がいいのかについて分かりやすいのはもちろん、化粧業界のマッチポンプ、医療や科学のパラダイムなど、ここまで書いていいのかなと思うような内容どした。 生物の進化の話で締めくくられているのもいい。お肌の常在菌大事にします。
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・2009年発行。著者は医者。 ・消毒せず乾かさないと傷が治る(外傷の湿潤治療)。キズパワーパッド。白色ワセリンを塗ってラップする。 ・傷のじゅくじゅくは最強の治療薬。浸出液(=細胞成長因子)を外に逃さない。 ・情報は共有されてこそ価値がある。 ・消毒薬はどうやって細菌を殺してい...
・2009年発行。著者は医者。 ・消毒せず乾かさないと傷が治る(外傷の湿潤治療)。キズパワーパッド。白色ワセリンを塗ってラップする。 ・傷のじゅくじゅくは最強の治療薬。浸出液(=細胞成長因子)を外に逃さない。 ・情報は共有されてこそ価値がある。 ・消毒薬はどうやって細菌を殺しているか。破壊のターゲットはタンパク質。人間の細胞膜蛋白も破壊する。 ・根拠はないのにその時代の誰もが信じていることをパラダイムという。 ・臨床医学はパラダイムだらけ。なぜなら人間の体はブラックボックスだから。 ・ひとつのパラダイムから次のパラダイムに置き換わる現象をパラダイムシフトといい、科学の歴史には何度もパラダイムシフトが起きている。 ・人間は常在菌なしには生きていけない。人体の全細胞数より腸管の常在菌の数の方が多い。 ・皮膚や頭皮から分泌されるもので温水で溶けないものはない。石鹸やシャンプーは不要。 ・化粧品は肌を老化させる。ほとんど乳化剤(界面活性剤)が含まれているから。皮膚常在菌に必要な皮脂が分解され続け、その代わりに栄養にならないクリームが覆っている。 ・マッチポンプ=マッチで火をつけ火事になってからポンプで消す=裏で問題のタネをまき、問題が大きくなってから収拾を持ちかけて何らかの利を得る。ユーザー側の無知を前提にしている。 ・ほとんどの皮膚の痒みは白色ワセリンをすりこむことで軽快する。 ・皮膚を乾燥させるもの=クリーム、乳液、石鹸、ハンドクリーム、尿素含有クリーム(=界面活性剤を含んでいるため)
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Kindleにて読了 これは化粧品に関わるものとしてはきちんと考えなくてはならない内容だ。。科学的に言って化粧品の何が悪いのか、、この本の上ではあくまでサブ的な触れられ方だが。。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
え、消毒って、過去の産物なの? 確かに口内炎って消毒しないけど、化膿したことない。 筆者は門前仲町の「なついキズとやけどのクリニック」院長であり、創傷被覆材「プラスモイスト」の開発者でもあり、超絶技巧的ピアノ弾きでもあるそうな。 ワセリン愛好家としてはウンウンと納得できる話多し。 あと、第11章の「脳は皮膚から作られた⁉︎」仮説が特に面白かった。神経伝達物質が元々は創傷治癒物質で、その特性がそのまま神経質伝達物質として適用されたってんである。あ、鎮痛剤が火傷の痛みに効かないってのも知らなかった。何気に重要よね?
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p.54 さまざまな面で発達を続ける現代医学の中で、傷の治療の分野だけが19世紀の治療のままであり、そのことに誰も気がついていなかったのである。 → ソフトウェア開発でも同じこと言えるかな? 3層WebシステムとかメールとかDNSとかIPv4とかsyslogとか。。。 問題意識が...
p.54 さまざまな面で発達を続ける現代医学の中で、傷の治療の分野だけが19世紀の治療のままであり、そのことに誰も気がついていなかったのである。 → ソフトウェア開発でも同じこと言えるかな? 3層WebシステムとかメールとかDNSとかIPv4とかsyslogとか。。。 問題意識があって刷新しようという試みが繰り返されてるけど、破壊的イノベーションまでには至ってないのよね。
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表題通り、この本を読むと以下に、傷に対して間違った対応をしていたのか分かる。この本に従えば、これまで痛かった傷もすぐに痛みがとれ、かなりひどい傷でも、綺麗に治る。 しかし、この本の価値はそれに留まらず、医学が科学になるヒントが含まれていると思った。生物学や化学の知識をベースに治療...
表題通り、この本を読むと以下に、傷に対して間違った対応をしていたのか分かる。この本に従えば、これまで痛かった傷もすぐに痛みがとれ、かなりひどい傷でも、綺麗に治る。 しかし、この本の価値はそれに留まらず、医学が科学になるヒントが含まれていると思った。生物学や化学の知識をベースに治療が検討されるようになったとき、医学はこれまでの常識を脱ぎ去り、金儲けの技術から、患者を助ける技術に昇華するであろう。 以下注目点 ・消毒薬は傷を深くする。接触性皮膚炎や、アナフィラキシーショックの元になる。消毒すればするほど、傷は深くなり、化膿する可能性が高まる。 ・傷をなめると痛くなくなるのは、濡らすから。乾かすと痛い。
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少々くどくて、独善的でホンマかいなと思うところもあるが、湿潤療法なんてこないだ会社の休憩コーナーにも張り紙があったし、常在菌の話など、回虫博士にも通じるところがあって、ここらへんの菌も含めて人体のトータルなバランスを重視する考え方は強まっているのだろう。 なんで大腸吻合部を消毒...
少々くどくて、独善的でホンマかいなと思うところもあるが、湿潤療法なんてこないだ会社の休憩コーナーにも張り紙があったし、常在菌の話など、回虫博士にも通じるところがあって、ここらへんの菌も含めて人体のトータルなバランスを重視する考え方は強まっているのだろう。 なんで大腸吻合部を消毒しないでOKか(できるわけないのだけれど)なんて疑問を持った、著者の論理思考は分かりやすい。 主婦手湿疹は白色ワセリンで一日数回ワックス掛けすれば治るということだがウチでも実験してみるか。 創傷治癒機能が転用されて脳神経系ができたという仮説は面白い。あとMRSAの分裂が普通の菌に比べて遅いという話にも納得。
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【要約】 ・傷口は消毒して乾燥、というこれまでの医学界の常識は誤っている、傷口は消毒せず、湿潤状態で治癒する。 【ノート】 ・blog not foundでの紹介 ・傷に対するケアとして湿潤治療の存在を知るだけでも随分と役に立つが、その理屈に至った著者の過程を教えてもらうのが、...
【要約】 ・傷口は消毒して乾燥、というこれまでの医学界の常識は誤っている、傷口は消毒せず、湿潤状態で治癒する。 【ノート】 ・blog not foundでの紹介 ・傷に対するケアとして湿潤治療の存在を知るだけでも随分と役に立つが、その理屈に至った著者の過程を教えてもらうのが、また面白い。さらに、細菌と、その存在意義についても理解が深まった。 ・人間と細菌の共存関係。皮膚常在菌と黄色ブドウ球菌、「人食いバクテリア」ことレンサ球菌。「きれいずき」で石鹸で洗い過ぎると皮膚常在菌が減少して、他の悪玉細菌を呼びこむ余地を作ってします。 ・脳と皮膚は源が同じ、という仮説。
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