生きてるだけで、愛。 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
鬱の人への関わり方の難しさを感じた。 ウォシュレットの恐怖を理解してもらえなくて絶望する場面があるが、これで絶望されたら鬱の人にかける言葉はなくなる。主人公の彼氏みたいにとにかく刺激しないように努めることになるのだろうか。
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愛とは違うが、そばにいてくれる人がいること、その人と向き合えること、それが生きていること。 自分は自分をやめられない、全てそこから。
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装丁に一目惚れ。 この一見センスが悪いと思われる、 ハートで飾られたピンクの北斎が 自分にはなんだか可愛いものに見えてしまったのだ。 物語はありきたりだけれども ポイントはきっちり抑えてあって、 とかく文章が面白い。 読みながら何度も笑ってしまった。 解説は意味がさっぱりわか...
装丁に一目惚れ。 この一見センスが悪いと思われる、 ハートで飾られたピンクの北斎が 自分にはなんだか可愛いものに見えてしまったのだ。 物語はありきたりだけれども ポイントはきっちり抑えてあって、 とかく文章が面白い。 読みながら何度も笑ってしまった。 解説は意味がさっぱりわからなかったけれど、 難しいことは考えずに読めると思う。 ひとりで読んで内容を噛みしめるよりは みんなで読みあって感想を言い合いたい 映画のような作品に近いかな。 でもこういう寧子みたいな 自分が、自分が、って人間、 結構いるよね。 自分もいい加減自分のことだけでなく、 人を思いやれる人間になりたい。 あとは本の感想からはずれるけど、 個人的には個性を安易に躁鬱病で片付けてしまう昨今の風潮が苦しい。 みんな生きるために懸命に努力してる。 社会や環境の問題をさておいて、 当人だけを治療すれば解決だなんて…… ちょっと抵抗があるかも。
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読書にはいろんな読後感がありますが、最近読んだ中でここまで「共感」してしまったものはありませんでした。単に小説としてならものすごく優れた作品とまでは言えませんが、その点において、ワシにとっては傑作です。 しかも、自分自身でも驚いたことに、共感した相手は「メンヘラ25歳女性」とい...
読書にはいろんな読後感がありますが、最近読んだ中でここまで「共感」してしまったものはありませんでした。単に小説としてならものすごく優れた作品とまでは言えませんが、その点において、ワシにとっては傑作です。 しかも、自分自身でも驚いたことに、共感した相手は「メンヘラ25歳女性」という主人公。そう、自分と被っているところなんか無さそうなキャラクターです。 ところが、この彼女の思考回路というか、妄想力には、身に覚えがある。自分の心の動きやら妄想やらを、ビシッと指摘されたかのようなこそばゆさがあります。 そしてその恋人の男の態度にも覚えがある。ワシという人間を細分化して、その中でも比較的大きなものを二つ抜き出して作られたようなキャラクターが2名、この作品では恋人役として丁々発止しているのです。これは共感せざるを得ない。 その点で、ワシは著者の思考に、もしかしたら近しいのかもしれません。 とまぁここまで自分語り的に感想を並べ立ててしまいましたが、それを除いて評しますと、読みやすく、テンポ良く、それなりにドラマチックに、メンヘラ女性と無関心ふう男性の色恋模様が展開されます。 著者についての知識による先入観も込みですが、いかにも芝居を見ているような心地よさでお話が進みます。言葉が届きやすく、分かりやすい。さすが戯作家。 ただ、物語そのものは平板ですので、この、特に主人公二人の思考についていけるかどうかが、この作品が面白いと感じるか否かの分水嶺かもしれません。 実際、もう一編の作品「あの明け方の」は、残念なことに余り心に響きませんでした。物語の平板さは残しつつ、登場人物に共感出来なかったからかもしれません。 もうひとつ、忘れちゃいけないこと。ワシが読んだ新潮文庫版の仲俣暁生氏の解説が素晴らしかった。この解説を深掘りした本で一冊読んでみたい、そう思わせてくれました。
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ここまでではないけれど、主人公の燻り方や突如沸き起こる破壊衝動が他人と思えない。 うまくいっている日も、もがき苦しんでいる日も、他人は自分と別れることはできても、自分は「自分」と別れられない。そういう運命をどう受け止めていくか。 「幸せ」とか「愛」とかって、どう受け取るかに拠...
ここまでではないけれど、主人公の燻り方や突如沸き起こる破壊衝動が他人と思えない。 うまくいっている日も、もがき苦しんでいる日も、他人は自分と別れることはできても、自分は「自分」と別れられない。そういう運命をどう受け止めていくか。 「幸せ」とか「愛」とかって、どう受け取るかに拠るところがとても大きい。
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これは終わりまで一気に読んでしまった。 本谷さんの小説は2作目だけど、主人公の中に入って、脳内で一緒に言葉が反芻して、周りの風景をみて、それから何か言葉にしたり、行動をとったりする感覚は他の小説ではなく、とても面白い。 恋愛小説を超えた面白さでした。
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お気に入りの人のレビューからこの著者を知り適当な一冊を手に入れて読む。表題作と短編二本のごく薄い文庫本。困ったちゃんで本当に痛い主人公の話なのだが共感してしまう点がある。ある一節は自分が何度も思っていることを語っていて感無量になってしまった。文章はリズムかテンポがよく細かいディテ...
お気に入りの人のレビューからこの著者を知り適当な一冊を手に入れて読む。表題作と短編二本のごく薄い文庫本。困ったちゃんで本当に痛い主人公の話なのだが共感してしまう点がある。ある一節は自分が何度も思っていることを語っていて感無量になってしまった。文章はリズムかテンポがよく細かいディテールに笑ってしまった。読書中はドストエフスキー『地下室の手記』が何度も頭にちらついてしょうがなかった。他の作品も読みたい。
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葛飾北斎の富嶽三十六景をトレースした表紙。ただし基調がピンクという代物。インパクトが大きすぎて正直ずるいなと(笑) 寧子が心の中で思っていることに対して、鬱故にちぐはぐに出力される不安定な行動。同棲して3年になる津奈木は寧子に振り回され、衝突することはなく無気力に見える生活を送...
葛飾北斎の富嶽三十六景をトレースした表紙。ただし基調がピンクという代物。インパクトが大きすぎて正直ずるいなと(笑) 寧子が心の中で思っていることに対して、鬱故にちぐはぐに出力される不安定な行動。同棲して3年になる津奈木は寧子に振り回され、衝突することはなく無気力に見える生活を送っている。 津奈木の元カノが現れ、執拗に別れさせようとする所から物語は動き始め、ラストシーンのカタストロフィーへと登り詰める展開は圧巻ものだと思う。 という物語の展開はあるものの、一番印象に残っているのは作中のこんな話。富嶽三十六景の富士山を背景に波がザッパーンとなってる絵が、五千分の一秒のシャッター速度で撮影した物と一致するとのこと。その五千分の一の世界を葛飾北斎は想像できていたのかなぁ。という寧子の台詞が堪らない。ロマンがそこにある!
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本谷さんのように、容姿がきれいなのにぶっとんでる人というのは、好きか嫌いかの悩ましい存在だった。だけど、「乱暴と待機」を観て「永遠の愛は信じられないけど、永遠の憎しみなら信じられる」というメッセージがじわじわわかってしまい、最近インタビューで本谷さん自身はどうやらそんなにぶっとん...
本谷さんのように、容姿がきれいなのにぶっとんでる人というのは、好きか嫌いかの悩ましい存在だった。だけど、「乱暴と待機」を観て「永遠の愛は信じられないけど、永遠の憎しみなら信じられる」というメッセージがじわじわわかってしまい、最近インタビューで本谷さん自身はどうやらそんなにぶっとんでないと感じたので、本を読んでみたいと思ったのです。 前置きが長くなりましたが。 2つの話とも、主人公は共通してぶっとんだ女です。でも全然共感がないかというとそうはならなく、主人公の痛みがわかるから不思議です。「ぶっとんだ描写の中ではより大事なことがクリアになる」と、以前本谷さんがもっとうまい言葉で言っていたんですが、なるほどというかんじです。主人公は決して好きではない。不器用すぎて社会とうまくやっていけないし、自分自身もうまく扱えない人。でも、うまく生きてないなと感じることは自分もあって、だからふいに泣けました。 社会に順応してるけど、少しだけぶっとんでる社会人に贈りたい本です。読んだら前向きになるかというと、そうでもないけど・・・たしかに愛を感じます。
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「わたし」は「わたし」と別れられない。 解説が秀逸だ。自己完結しつつも他者を強く求め、ぶつかり、傷つくその様を卵の白身と卵黄の例えを用いて見事に表現した。 こんなヒステリックな女は嫌いだ。そして、この本を勧めてくるような女もわりと引く。それでも、僕にこの本を勧めた彼女がときどき...
「わたし」は「わたし」と別れられない。 解説が秀逸だ。自己完結しつつも他者を強く求め、ぶつかり、傷つくその様を卵の白身と卵黄の例えを用いて見事に表現した。 こんなヒステリックな女は嫌いだ。そして、この本を勧めてくるような女もわりと引く。それでも、僕にこの本を勧めた彼女がときどき、本当にときどき(それこそ、五千分の一秒で過ぎ去る程度だけどな!)、とても可愛らしく思えることがある。 よい読み物だった。
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