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の商品レビュー

3.9

184件のお客様レビュー

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2022/02/23

“そこにしか居場所がなかった人たち”の 静謐で妖しい7つの短編集。 この本、巻末のインタビューと解説がすごいのだ。 小川さんの作品になんとなく惹かれてやまない、 が、なぜ惹かれるのかうまく言語化できない、 という人(まさに私)は、 ぜひ巻末にいっそう力を入れて読んでほしい。 「...

“そこにしか居場所がなかった人たち”の 静謐で妖しい7つの短編集。 この本、巻末のインタビューと解説がすごいのだ。 小川さんの作品になんとなく惹かれてやまない、 が、なぜ惹かれるのかうまく言語化できない、 という人(まさに私)は、 ぜひ巻末にいっそう力を入れて読んでほしい。 「それです!!」ってなるので。 “気味の悪さや残酷さといった、 どこか死を連想させる“差し色”を適量混ぜ込んだ、 暖色一辺倒でない作品” それです!! “空想の核となる設定や物体の周りに、 文章が結晶して成長し、完成したもの” うおお、それです!!! とまあ、少々ずるいが、 インタビューと解説から抜き出すだけで 最強の感想文ができてしまう。 それだけこの7編が小川さんの作品の魅力を 凝縮したものだからこそ、なせる巻末なのだろう。 小川さんファン、ビギナー(私イマココ)、初読の人にも ぜひ読んで欲しい作品だ。 各人より深みにハマれることでしょう。 このまま巻末抜粋ばかりしていると 全く自分の感想文にならないので、 読んで思い出した 個人的な経験を書き残しておきたい。 少し前に夢を見た。 雨音を鳴らして外を歩き回る 音楽隊に入る夢だった。 雨が降ると5人くらいで1列になって、 それぞれに奇妙な道具を抱えて その日の雨にふさわしい音をたてながら 路地をくまなく歩き回る。 変なんだけど、 多分ないんだけど、そんなものは、 妙に具体的でリアリティがあって、 その存在を信じてしまうような空想。 (実際夢の中の自分は 音楽隊に抜擢されたことをだいぶ喜んでいた。) そんな夢とこの作品はすごく似ていると思った。 知る人ぞ知る、聞いたこともないような秘匿事実 (例えば鳴鱗琴、活字管理人、題名屋)が、 どこかに本当にあると感じさせるような 緻密な設定、丁寧な描写がやっぱりすごい。 それらは隠されているものだから、 ささやかで小さくて、 世界のすみっこにあるんだけど、 その周りには 自分と同じ地べたの人間の生々しい生活があって、 地味だけど力強くて魅力的だ。

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2022/02/22

ガイドが一番好きでした。 個人の思い出に題名をつけてくれるだなんて、なんて理想的なお店、、ぜひ行きたい。

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2022/01/03

だいぶ古い本ですが、読んでいなかったので手に取りました。 短編集です。 私としては、タイピストを抱える会社の話が印象的でした。 タイプライターのだめになった文字を管理する人、その管理人に恋心を抱くタイピスト、ダメになった文字を含んだ文章・・・ ぎょっとするような文章も、タイピスト...

だいぶ古い本ですが、読んでいなかったので手に取りました。 短編集です。 私としては、タイピストを抱える会社の話が印象的でした。 タイプライターのだめになった文字を管理する人、その管理人に恋心を抱くタイピスト、ダメになった文字を含んだ文章・・・ ぎょっとするような文章も、タイピストはすました顔でタイプし続けるのです。 仕事ですから。

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2021/12/24

静かに話が進んでいく短編集。 読後もやっとする話が八割を占めていた。 不器用な人が頑張って他人に合わせようとする様になんともいえない居心地の悪さを感じた。 著者作品初読。

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2021/09/21

短編が7つ。どの話も好きだけど、私が一番、好きなのは「ガイド」です。働きながら子育てする全てのお母さんを応援しているようなお話ですね。「ひよこトラック」と「缶入りドロップ」も好き。心優しいおじさん?おじいさん?が世の中に増えるといいな。

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2021/08/30

情景描写が綺麗な本を読みたくて、繊細な文章を書く作家、とGoogle検索してヒットした作者。さっそく本屋に行って1番初めに目について手に取った本。読んでみて、ヒット上位になるのが納得の本だった。前知識で小川洋子さんの作風は透明感や美しさがありながら、どこか不安で残酷な特徴があると...

情景描写が綺麗な本を読みたくて、繊細な文章を書く作家、とGoogle検索してヒットした作者。さっそく本屋に行って1番初めに目について手に取った本。読んでみて、ヒット上位になるのが納得の本だった。前知識で小川洋子さんの作風は透明感や美しさがありながら、どこか不安で残酷な特徴があると聞いていて、「海」「銀色のかぎ針」は正しく幻想的で綺麗で繊細な話だった。「ひよこトラック」は不安で残酷な特徴、という部分が顕著にあった。話全体でみたら温かい気持ちになるのに、綺麗な情景描写の中に、ひよこの行方の部分や虫や蛇の抜け殻など不穏な、ザワザワした雰囲気が急に出てきて、これか…と皆が言う小川洋子ワールドを少し体感できた。その他にも「風薫るウィーンの旅六日間」「缶入りドロップ」はクスッと笑えたり、「バタフライ和文タイプ事務所」なんかは、最後の展開に思わず「えっ」と声が出たし、2、3回ページをペラペラ読み返しても最終的に官能小説に移行してて、新しいタイプのアハ体験した気持ちになった。短編集だったけど、密度の濃い大満足な本。

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2021/08/11

いい意味で、不揃いな短編集。短いものはわずか3頁。 全7編 海/風薫るウィーンの旅六日間/バタフライ和文タイプ事務所/銀色のかぎ針/缶入りドロップ/ひよこトラック/ガイド 小川作品はまだあまり読めていなくて、たぶん映画化もされた「博士の愛した数式」以来2作目だと思うのだけれど(...

いい意味で、不揃いな短編集。短いものはわずか3頁。 全7編 海/風薫るウィーンの旅六日間/バタフライ和文タイプ事務所/銀色のかぎ針/缶入りドロップ/ひよこトラック/ガイド 小川作品はまだあまり読めていなくて、たぶん映画化もされた「博士の愛した数式」以来2作目だと思うのだけれど(私にとって;注、)あらためて、すごくすごく妄想の世界で時間を過ごしてきたひとの生み出す文章だとおもう。不思議で優しい世界を創り、覗くことができるかんじの。すこしへんてこで、思いやりがある、どこにでもいそうでいない、架空のいきもののようなひとたちが住んでるもうひとつの世界、そんな印象が残る。空想好きさんにはおすすめな1冊。

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2021/07/15

久々の小川さん。3ページほどのごくごく短いものを含む短編集。小川さんの小説は、通常なら出会わないような組み合わせ、親しく交わらないようなペアが主人公で、どこにでもあるような、同時にファンタジーのようなお話しで不思議な読後感。言葉が頭だけでなく心にも届く感じで、ちょっとさざなみが起...

久々の小川さん。3ページほどのごくごく短いものを含む短編集。小川さんの小説は、通常なら出会わないような組み合わせ、親しく交わらないようなペアが主人公で、どこにでもあるような、同時にファンタジーのようなお話しで不思議な読後感。言葉が頭だけでなく心にも届く感じで、ちょっとさざなみが起こる。どんなに凪いだ海でも、必ず水面に揺れがあるように、嬉しくても悲しくても不思議でも普通でも何かしらの動きがある。それを見逃さないようにしたいなあ。今回の短編集には珍しく官能的な物語もあるので小川ファンは必読。

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2023/05/04

短編は短い妄想だと、著者インタビューに書いてあり、その果てを知らない妄想には、私の想像力など全く及ばない。だから、ついつい読み耽ってしまう。 「海」というタイトルを見て、こういう話ではないかと、なんとなく想像してみたが、かすりもしないのは、そりゃそうであって、小川さんの述べる「...

短編は短い妄想だと、著者インタビューに書いてあり、その果てを知らない妄想には、私の想像力など全く及ばない。だから、ついつい読み耽ってしまう。 「海」というタイトルを見て、こういう話ではないかと、なんとなく想像してみたが、かすりもしないのは、そりゃそうであって、小川さんの述べる「その世界でしか生きられない人たち」を、「そうではない人」と触れ合うことで生まれる物語は、おそらくささやかな出来事であっても、お互いにとって、大切なものになったのではないかと思ってしまう展開が素晴らしくて、「ひよこトラック」の中年のドアマンと無口な少女もそうだし、「ガイド」の僕と題名屋の老人もそう感じました。ガイドは、タクシーの運転手も良い味出してて好き。 また、それとは別に、「風薫るウィーンの旅六日間」の終わり方がまた印象深く、ものすごく厳かな雰囲気の中に、突如訪れるコメディ的な要素が、何とも言えない感じで良かった。まさかと思ったけれど、これはこれで良かったよねって。 そんな他の人にとって、どうでもいいようなところにも目を向ける小川さんの人柄は、インタビューを読んでもすごく興味深く、下記の言葉が特に心に残りました。 「たとえ本というものが風化して消えていっても、耳の奥で言葉が響いている・・・そんな残り方が、私の理想です」

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2021/06/06

いろんな短編集。すごく短いのもあったり。でもそれぞれの世界観が好きだなあと。ガイドをしている母と息子と老人の話、缶入りの飴をポケットにしのばせる幼稚園バスの運転手の話、和文タイプの話が中でも好きだった。小川さんは日常の断片を物語にするのが上手いなと思う。そこかしこな落ちていそうな...

いろんな短編集。すごく短いのもあったり。でもそれぞれの世界観が好きだなあと。ガイドをしている母と息子と老人の話、缶入りの飴をポケットにしのばせる幼稚園バスの運転手の話、和文タイプの話が中でも好きだった。小川さんは日常の断片を物語にするのが上手いなと思う。そこかしこな落ちていそうな小さなものを組み上げてまぶしい物語にするのが上手い。尊いものになる。

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