海 の商品レビュー
恋人の家を訪ねた青年が、海からの風が吹いて初めて鳴る〈鳴鱗琴(メイリンキン)〉について、一晩彼女の弟と語り合う表題作、言葉を失った少女と孤独なドアマンの交流を綴る「ひよこトラック」、思い出に題名をつけるという老人と観光ガイドの少年の話「ガイド」など、静謐で妖しくちょっと奇妙な七編...
恋人の家を訪ねた青年が、海からの風が吹いて初めて鳴る〈鳴鱗琴(メイリンキン)〉について、一晩彼女の弟と語り合う表題作、言葉を失った少女と孤独なドアマンの交流を綴る「ひよこトラック」、思い出に題名をつけるという老人と観光ガイドの少年の話「ガイド」など、静謐で妖しくちょっと奇妙な七編。「今は失われてしまった何か」をずっと見続ける小川洋子の真髄。著者インタビューを併録。
Posted by
何ともいえぬ不思議な短編が詰まっており、かといって何も残らない訳でもなくて、お茶の微かな苦味を味わうようなクセのある作品だった。 特にひよこトラック、ガイド、が好みだった。 題名屋の話はまだまだ聞いていたい。
Posted by
海 風薫るウィーンの旅六日間 バタフライ和文タイプ事務所 銀色のかぎ針 缶入りドロップ ひよこトラック ガイド 不思議な感じがするお話し
Posted by
素敵な短編集。 一つひとつの作品世界に引き込まれていきますよ。 「たとえ一瞬でも自分のことを思い出してくれる人がいるなんて、うれしいじゃありませんか。」 本も同じで、私のなかにまた素敵な言葉と物語、作者の想いが刻まれいつでも思い出せる幸せを感じさせてくれました。 ぜひ〜
Posted by
すべて不思議な短編、 海 バタフライ和文タイプ事務所 銀色のかぎ針 缶入りドロップ ひよこトラック ガイド
Posted by
小川洋子さんの短編集を読むのは「妊娠カレンダー」「薬指の標本」に続けて3作目。 最近は小川さんの長編を続けて読んでいたので、箸休め的に読めるものがいいなと思って、書店で何の気なしに手に取ったこの本。 結果として私にとってはとても大事な、何度でも読み返したい本になった。 優しいけど...
小川洋子さんの短編集を読むのは「妊娠カレンダー」「薬指の標本」に続けて3作目。 最近は小川さんの長編を続けて読んでいたので、箸休め的に読めるものがいいなと思って、書店で何の気なしに手に取ったこの本。 結果として私にとってはとても大事な、何度でも読み返したい本になった。 優しいけどどこか不穏、官能的なのにちょっと笑える、切ないのにどこまでも穏やか。 忘れていた色んな感情を思い出させてくれる、そんな物語のアラカルト。 今の私にはぴったりな作品だったように思う。
Posted by
小川さんの作品は、ほっこりの中にほんの少しの毒が入っていて、それがクセになる。その少しの毒が、切なさや不気味さ、可笑しみだったりする。 7つの短編のうち「風薫るウィーンの旅六日間」がお気に入りで、くすっと笑ってしまう毒がしこまれてました。 言葉の組み合わせに透明感があり、その...
小川さんの作品は、ほっこりの中にほんの少しの毒が入っていて、それがクセになる。その少しの毒が、切なさや不気味さ、可笑しみだったりする。 7つの短編のうち「風薫るウィーンの旅六日間」がお気に入りで、くすっと笑ってしまう毒がしこまれてました。 言葉の組み合わせに透明感があり、その美しさにやられました。特に「ひよこトラック」の夜明け前の表現が大好き。 【闇が東の縁から順々に溶け出し、空が光の予感に染まりはじめる。】 ステキです!
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
『海』 小川洋子/新潮文庫 . 短編集。 . 題名の鳴鱗琴奏者である恋人の弟話を筆頭に不思議な雰囲気の短編。 タイプライターの話は言葉遊びをされていると感じた。
Posted by
優しい。ありそうでどこにも無い不思議な世界で、人々は誰かと会話する。一つしかない楽器を持つ義弟だったり、言葉を話せない少女だったり。いいな、夢に出てこないかな、こんな世界。個人的には「ガイド」が一番好きだった。題名屋のおじいさんに題名をつけてほしい。
Posted by
ひよこトラック 40年間町で唯一のホテルのドアマンとして働いてきた初老の男性と言葉を失った6歳の少女との交流 あとがきより 小さな場所に生きている人を小説の中心にすえると、物語が動き出す感じがする。 ひとつ世代が抜けている者同士のつながり 年齢を重ねた人は死の気配、匂いを漂わせ、...
ひよこトラック 40年間町で唯一のホテルのドアマンとして働いてきた初老の男性と言葉を失った6歳の少女との交流 あとがきより 小さな場所に生きている人を小説の中心にすえると、物語が動き出す感じがする。 ひとつ世代が抜けている者同士のつながり 年齢を重ねた人は死の気配、匂いを漂わせ、若い人は現実の生々しさを発信している。そのふたりの交流はダイナミックなものになる ほのぼの感も盛り込みつつ、気味の悪さや残酷さといった、どこか死を連想させる差し色を量を加減しながら作品の中に必ず混ぜ込む。死は生に含まれている。今笑っている自分のすぐ隣にも死がある。
Posted by