海 の商品レビュー
すべて不思議な短編、 海 バタフライ和文タイプ事務所 銀色のかぎ針 缶入りドロップ ひよこトラック ガイド
Posted by
小川洋子さんの短編集を読むのは「妊娠カレンダー」「薬指の標本」に続けて3作目。 最近は小川さんの長編を続けて読んでいたので、箸休め的に読めるものがいいなと思って、書店で何の気なしに手に取ったこの本。 結果として私にとってはとても大事な、何度でも読み返したい本になった。 優しいけど...
小川洋子さんの短編集を読むのは「妊娠カレンダー」「薬指の標本」に続けて3作目。 最近は小川さんの長編を続けて読んでいたので、箸休め的に読めるものがいいなと思って、書店で何の気なしに手に取ったこの本。 結果として私にとってはとても大事な、何度でも読み返したい本になった。 優しいけどどこか不穏、官能的なのにちょっと笑える、切ないのにどこまでも穏やか。 忘れていた色んな感情を思い出させてくれる、そんな物語のアラカルト。 今の私にはぴったりな作品だったように思う。
Posted by
小川さんの作品は、ほっこりの中にほんの少しの毒が入っていて、それがクセになる。その少しの毒が、切なさや不気味さ、可笑しみだったりする。 7つの短編のうち「風薫るウィーンの旅六日間」がお気に入りで、くすっと笑ってしまう毒がしこまれてました。 言葉の組み合わせに透明感があり、その...
小川さんの作品は、ほっこりの中にほんの少しの毒が入っていて、それがクセになる。その少しの毒が、切なさや不気味さ、可笑しみだったりする。 7つの短編のうち「風薫るウィーンの旅六日間」がお気に入りで、くすっと笑ってしまう毒がしこまれてました。 言葉の組み合わせに透明感があり、その美しさにやられました。特に「ひよこトラック」の夜明け前の表現が大好き。 【闇が東の縁から順々に溶け出し、空が光の予感に染まりはじめる。】 ステキです!
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
『海』 小川洋子/新潮文庫 . 短編集。 . 題名の鳴鱗琴奏者である恋人の弟話を筆頭に不思議な雰囲気の短編。 タイプライターの話は言葉遊びをされていると感じた。
Posted by
優しい。ありそうでどこにも無い不思議な世界で、人々は誰かと会話する。一つしかない楽器を持つ義弟だったり、言葉を話せない少女だったり。いいな、夢に出てこないかな、こんな世界。個人的には「ガイド」が一番好きだった。題名屋のおじいさんに題名をつけてほしい。
Posted by
ひよこトラック 40年間町で唯一のホテルのドアマンとして働いてきた初老の男性と言葉を失った6歳の少女との交流 あとがきより 小さな場所に生きている人を小説の中心にすえると、物語が動き出す感じがする。 ひとつ世代が抜けている者同士のつながり 年齢を重ねた人は死の気配、匂いを漂わせ、...
ひよこトラック 40年間町で唯一のホテルのドアマンとして働いてきた初老の男性と言葉を失った6歳の少女との交流 あとがきより 小さな場所に生きている人を小説の中心にすえると、物語が動き出す感じがする。 ひとつ世代が抜けている者同士のつながり 年齢を重ねた人は死の気配、匂いを漂わせ、若い人は現実の生々しさを発信している。そのふたりの交流はダイナミックなものになる ほのぼの感も盛り込みつつ、気味の悪さや残酷さといった、どこか死を連想させる差し色を量を加減しながら作品の中に必ず混ぜ込む。死は生に含まれている。今笑っている自分のすぐ隣にも死がある。
Posted by
「ガイド」が好き。 巻末のインタビューと解説を読んで、ああ確かに「バタフライ和文タイプ事務所」はコメディーだなあと思う。多分またあれが読みたいなあってこの本を思い出すきっかけになる一遍だった。
Posted by
いずれの作品も詩を読んでいるような錯覚を覚える。純文学なのにこれだけ引き込まれる作家はいないと思う。
Posted by
たとえ一瞬でも自分を思い出してくれる人がいるっていいね。外の世界で自分の存在を感じられる瞬間だと思う。 私の人生にも題名をつけて欲しいな
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
短編5つ掌編2つ、184頁。この長さ、気負わず楽しめた。 2006年単行本発行。もう少しで20年経つというのに古さがない。スマホはなくても違和感皆無の小川ワールド。 一人ホテルステイのために数冊持参した中でホテルのカフェエリアで読むのに最適な一冊でした。ゆるゆるとした思考の波に漂いながら読み終えました。 「海」 なさそうでありそうな楽器、鳴鱗琴(メイリンキン)、欲しい。 「風薫るウィーンの旅六日間」 「こんな旅の同行者は嫌だ」が穏やかに描かれている…。 「バタフライ和文タイプ事務所」 本書の個人的No.1。タイプライターってパソコンにはない哀愁を備えているなぁ。ひんやりした感じが良い。小川さんの文字に対するこだわりも見えて面白かった。 「銀色のかぎ針」 「缶入りドロップ」 どちらもほんわかした。 「ひよこトラック」 ひよこが積まれたトラック、虫の抜け殻、ドアマンの男と6歳の女の子。慣れ合わない2人の距離感、お互いを尊重している交流の方法はとても居心地が良さそう。 「ガイド」 ママの仕事を手伝う良い息子。『博士の愛した数式』を思い出しました。 著者へのインタビュー 「誰が書いたかなんてこともだんだん分からなくなって、最後に言葉だけが残る。」(P168)という小川さんの理想、その姿勢、潔さがたまらなく好きです。 『ことり』や『博士の愛した数式』が好きな人にはぜひお勧めしたいです
Posted by