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動的平衡 の商品レビュー

4.1

227件のお客様レビュー

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    71

  2. 4つ

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2016/01/05
  • ネタバレ

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 非常に面白い本だった。知的好奇心も満たしてくれるし、なにより人類の、というか宇宙全体の生命体に思いを馳せることが出来る素敵な時間を過ごせた。2016年新年1冊目の読み物としてはなかなかGOODな選択だった。  氏の著作は2冊目。 専門分野の話題も噛み砕いて、卑近な喩えを用いて判りやすく説いてくれる。プロローグで、著者自身も関わりあるバイオのベンチャー企業(ジェネンテック社)の話からはじめるあたり、ビジネスマンも読者層に据えているのか、そんな構成も巧みだ。  大きな主旨としては「動的平衡」という、ヒトを含む生命は分子レベルで絶えず分解と再構成を繰り返しているという概念の紹介。今自分の身体は外界とは皮膚等で隔てられ存在しているかのように思えているが、それはたまたまそこに高密度で分子が一時留まっている”淀み”でしかない。まさに鴨長明の「方丈記」の冒頭”ゆく川の流れは…”の、あれである。 科学的な最先端の理論が鎌倉時代の随想と繋がる不思議さにもゾクゾクさせられる。  そして「鉄腕アトム」世代の我々が思い出すのは手塚治虫の数々の作品群だ。手塚のライフワークの『火の鳥』を引くまでもなく、命とは、生とはなんぞやということを何度もなんども読んできた。生物個体の生命(いのち)だけでなく、受け継がれていく生命の尊さをも、器は変われども未来永劫続いていくもの、それが永遠の生命だということを学んできた。なので、この動的平衡という考え方も、なんの違和感もなくストンと腑に落ちてくる。なんて手塚作品は崇高で深淵で、生命の真理を突いていたのだろうかと、改めて思わされもした。  昨今話題のIPS細胞やSTAP細胞も、将来的に大きな利益が見込まれる分野だけにヒートアップ気味だけど、手塚ならどんな寓話を用いて警鐘を鳴らすのだろう。本書を読みつつ、今ここで冷静に立ち止まって考える必要があるのでは?と思わされる。  神の成せるワザとしか説明しようのない生命体の神秘、そんな宇宙観を孕む大きな話を、時に詩的に(冒頭の青いバラの話や、終盤に出てくるゾウとクジラの挿話など)、時に世俗的に(プロローグのベンチャー企業や、遺伝子組み換え大豆に絡む除草剤「ラウンドウアップ」に絡む話、「NO MSG」という化学調味料にまつわる話等)、難しい理論や言葉を用いることなく、さらりと開陳していく博学ぶりと文章力には舌をまく。実に巧い。  最後に「ロハス」や「サスティナビリティ」な話に持っていかなくてもいいんだけどなと思ったが、雑誌「ソトコト」での連載だったのか。そこは止む無し。そんな経済性も意識しているあたり、著者のバランス感覚の良さだと好意的に解釈しておこう。 個々にも役立つ豆知識がフンダンに。以下、備忘として箇条書き; ・コラーゲンをたくさん摂取すれば肌の張りを取り戻すことが出来るか? - No (ヒザが痛いからといって鶏軟骨食べてもダメってことだ・笑) ・齢を取ると時間の進み方が早く感じる仕組み(新陳代謝速度が加齢とともに鈍化、体内時計の進みが遅くなるから) ・可変的でサスティナブルな生命というシステムは構造ではなく、分子の流れがもたらす「効果」。ゆえに機械などには置き換えられない(デカルトの生命機械論への反証) ・糖尿病などの病理が遺伝子情報に残る仮説(血糖値が低下し副交感神経優位の「眠い」状態に入りにくいグループを残し、生存の可能性を残す) ・第六感、英語ではガット(gut=消化管)・フィーリング(なるほど~、腸で考えるって言われるもんなぁ)

Posted byブクログ

2015/12/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

汝の身体は、食べたもの、通り過ぎたもので、成り立っている。 新陳代謝を繰り返し、現在の姿を保ち続ける我ら。『動いているからこそ、平衡を保ち存在し続ける』 人も組織も自然も然り…と、深く納得。 サイエンス本でここまで思いを巡らせたのも久しぶり。 “歳をとるほど、一年が早く感じる理由。”も腹落ち充分。 最初の1冊で福岡先生にハマった!

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2015/10/07

生物の機械論者を否定。 生物は絶えず生まれ変わっている。 動的平衡。 あとダイエットの話とか大衆ウケしそうなトピックがちらほら。

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2015/08/30

生物を生物たらしめている「動的平衡」。生物のシステムとしてだけではなくて、生活のスタイルとしても、ものの考え方としても、当てはめて考えられるよう思う。凝り固まるのではなく、インプットとアウトプットを繰り返し、揺れながらバランスをとる。そんなことも考えられるような、理系の読み物であ...

生物を生物たらしめている「動的平衡」。生物のシステムとしてだけではなくて、生活のスタイルとしても、ものの考え方としても、当てはめて考えられるよう思う。凝り固まるのではなく、インプットとアウトプットを繰り返し、揺れながらバランスをとる。そんなことも考えられるような、理系の読み物でありながら、壁のない、受け止めやすい内容。

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2015/07/16

「生命とは動的な平衡にあるシステムである」と、私たちの生命が可変的でありながら持続的であるさまについて語っています。

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2015/07/13

久しぶりに本を読んでドキドキした。 なかでも「私たちの生命を構成している分子は例外なく絶え間ない分解と再構成のダイナミズムの中にある。 (中略) 個体は感覚としては外界と隔てられた実体として存在するように思える。しかしミクロのレベルでは、たまたまそこに密度が高まっている分子のゆ...

久しぶりに本を読んでドキドキした。 なかでも「私たちの生命を構成している分子は例外なく絶え間ない分解と再構成のダイナミズムの中にある。 (中略) 個体は感覚としては外界と隔てられた実体として存在するように思える。しかしミクロのレベルでは、たまたまそこに密度が高まっている分子のゆるい「淀み」でしかない。」の部分を読んだとき衝撃が走った。 自分の中の視座を確実に変化させてくれる素晴らしい本です。

Posted byブクログ

2015/05/29

1959生まれの分子生物学者~「生きている」というのはタンパク質(正確にはアミノ酸)の流れ,すなわち動的平衡のことで,新たなタンパク質の合成がある一方で,細胞は自分自体のタンパク質を常に分解して捨て去っている,合成と分解との平衡状態を保つこと。コラーゲンだとかヒアルロン酸だとかコ...

1959生まれの分子生物学者~「生きている」というのはタンパク質(正確にはアミノ酸)の流れ,すなわち動的平衡のことで,新たなタンパク質の合成がある一方で,細胞は自分自体のタンパク質を常に分解して捨て去っている,合成と分解との平衡状態を保つこと。コラーゲンだとかヒアルロン酸だとかコンドロイチンだとかという栄養補助食品は膵臓から出る分解酵素によってアミノ酸レベルに分解されるから,意味はない。トマトの果肉がポリガラクチュロナーゼによって壊されていく,その崩れかけがおいしいのだ(これは食とセックスが共通の構造を持っている好例?)。ミクロなパーツが組み合わされ,エネルギーと情報がやりとりされ,その「効果」の方法に生物現象のすべてがある~プロローグを読んでいて…ナンの話だ? バイオビジネスはなかなか当たらないってこと? と疑問に思ったけど,必要なんだろうか? ロハス・マガジン,ソトコトに載ったエッセイがネタ

Posted byブクログ

2015/04/19

生命に関する様々なテーマに対し、分子レベルでわかりやすく解説した本 生物は様々なパーツでできてはいるものの、 機械とは全く異なるダイナミズムがあり、 可変性、全体としてのバランスを保つ機能が非常に優れている。 この機能を動的平衡と表現している。

Posted byブクログ

2015/04/14

http://lib.s.kaiyodai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?amode=11&bibid=TB10042289

Posted byブクログ

2015/01/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「生物と無生物との間」も面白かったが、こちらも読みやすくていい。内容はかぶっているようでいて、また違う話もあるので問題ない。ライアル・ワトソンが目撃したというクジラと象の対話というのは実話なのだろうか?悲しくて胸を打たれた。

Posted byブクログ