動的平衡 の商品レビュー
間断なく流れながら、精妙なバランスを保つもの。絶え間なく壊すこと以外に、そして常に作り直すこと以外に、損なわれない方法はない。生命は、そのようなありかたとふるまいかたを選びとった。それが動的平衡である。
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※このレビューにはネタバレを含みます
動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか LOHAS雑誌の「ソトコト」とダイナースカード会員誌「シグネチャー」に掲載されたものを編集したものです。 「生物と無生物のあいだ」のようなストーリー性はなく、個々のトピックスは独立しています。 ”コラーゲン食品や化粧品は、コラーゲンは一度アミノ酸まで分解されて吸収されるので全く意味がない”(「汝とは汝が食べたものである」)や”食品が作られるプロセスや流通されるプロセスを知らずにただ安いものを買うという行動形式を取っている消費者の問題である”(「その食品を食べますか?」)、”カニバリズムには、同種にしか移らない病原菌を避けるという心理的な根拠以外の根拠がある”(「ヒトと病原体の戦い」)など、面白くてためになる知見は満載です。 ”ヒトは、エントロピーの法則という何者も逃れられない流れに逆らおうとして、ES細胞による再生医療やクローニングなどに期待を寄せているが、それは虚しい悪あがきで、その根本にあるデカルト的な機械論から動的な平衡状態が生きていることであるというパラダイムシフトを受け入れることこそが必要”(「生命は分子の淀み」)というメッセージに共感する竹蔵です。 生きていることは、そのプロセスなのですから、そのプロセスを楽しまずして何の人生か? そんなことを考えてしまいました。 竹蔵
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(2009/8/12) 生物と無生物の間に で一躍有名になった科学者、福岡伸一さんの本。最新刊は「世界は分けてもわからない」。これはその前の作品。 なんとも凄い。生物の持つ神秘的な世界を、非常にわかりやすく、それでいて文学的に、芸術的に表現してくれる。 生命をこう表現している。 ...
(2009/8/12) 生物と無生物の間に で一躍有名になった科学者、福岡伸一さんの本。最新刊は「世界は分けてもわからない」。これはその前の作品。 なんとも凄い。生物の持つ神秘的な世界を、非常にわかりやすく、それでいて文学的に、芸術的に表現してくれる。 生命をこう表現している。 引用する。 「生命はひとつの準備をした。エントロピー増大の法則に先回りして、自らを壊し、そして再構築するという自転車操業的なあり方、つまり「動的平衡」である。しかし、長い間「エントロピー増大の法則」と追いかけっこをしているうちに少しずつ分子レベルで損傷が蓄積し、やがてエントロピーの法則に追い抜かれてしまう。つまり秩序が保たれないときが必ず来る。それが個体の死である。」 「ただ、そのときにはすでに自転車操業は次の世代にバトンタッチされ、全体としては生命活動が続く。現に生命はこうして地球上に38億年にわたって連綿と維持されし続けてきた。だから個体というのは本質的には利他的なあり方なのである」 この文章を読んで泣きそうになった。 凄いではないか。 生命をこんな風に表現するとは。 この本を読んできて理解したこと(私には容易にまとめられないが)を、最後にこんな風にまとめるのだ。 この福岡さん、結構ラジオにもよく出て、podcastで聴く機会がある。 ぼそぼそと話していて、とてもこういう文章を書く雰囲気ではないのだが、、。 すごいです。
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「動的平衡」概念にもとづくエッセイ集のようなもの。生物学の話の説明としては、非常にわかりやすい。 これを読むことで、生物・生命に関するテーマを大方洗い出すことができそう。福岡先生の視点で見たときに世の中がどうみえているのかを知るのはよい思考のエクササイズではないか。 ・生...
「動的平衡」概念にもとづくエッセイ集のようなもの。生物学の話の説明としては、非常にわかりやすい。 これを読むことで、生物・生命に関するテーマを大方洗い出すことができそう。福岡先生の視点で見たときに世の中がどうみえているのかを知るのはよい思考のエクササイズではないか。 ・生命現象とは何か。 ・人はなぜ錯誤するか ・汝とは何か。「汝の食べた物」である ・太らない食べ方はあるのか。 ・その食品を食べますか。 ・生命は時計仕掛けか。 ・ヒトと病原体の戦い ・ミトコンドリア・ミステリー ・生命は分子の「淀み」 なぜ、バイオテクノロジーはうまくいかないのか、アルファ・ジーン社の例をとってのイントロダクション。生命現象は、本来的にテクノロジーの対象となりにくい。工学的な操作、産業上の規格、効率よい再現性。そのようなものになじまないものとして、生命がある。(・・・日本の匠的な生命?) フランシス・クリックの晩年のテーマ。 「人間はどのようにして意識を持ち、なぜそれは時に錯誤を起こすか」
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前からタイトルは知っていた。 科学分野での名著らしい。 と言っても、2009年の本だから、いろいろ変わっているところはあるだろうな、と思いながら読んだ。 身体の部品は、ただ機能だけを重視したプラモ的なものではなく、時間が重要。 順番に、かついいタイミングで効果が生み出されること...
前からタイトルは知っていた。 科学分野での名著らしい。 と言っても、2009年の本だから、いろいろ変わっているところはあるだろうな、と思いながら読んだ。 身体の部品は、ただ機能だけを重視したプラモ的なものではなく、時間が重要。 順番に、かついいタイミングで効果が生み出されることが。 という考えにはっとした。 自分自身、どちらかというとデカルト的な考えだったかもしれない。 「邪魔なら無くせばいいでしょ?」みたいな。 ミクロから見たら、ただの「淀み」である自分自身は、いったい何ができて、どう生きられるのだろう。 と考えると、機能面に考えが行きがち。 でも、周辺のかけがえのない淀みたちと一緒に生きていきたいという、情を大切にしていきたいな。
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おそらくとても難しい内容を分かりやすくまた面白く書いておられるので、一気に読んでしまいました。生命の神秘というけれど本当に不思議、まだまだわからない事だらけですね。
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動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか 福岡伸一 木楽舎 この題名を見て手に取る人は少ないだろうが 中身はビックリするほどに面白く 食物と様々な生命体との隠された関係を 暴露した物語に惹きつけられてしまう 中でも肥満とダイエットや 食材の生産と流通に関する 強欲と安全と危険につい...
動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか 福岡伸一 木楽舎 この題名を見て手に取る人は少ないだろうが 中身はビックリするほどに面白く 食物と様々な生命体との隠された関係を 暴露した物語に惹きつけられてしまう 中でも肥満とダイエットや 食材の生産と流通に関する 強欲と安全と危険についての見えない情報は 常識を覆す驚くことばかりである とは言うものの 矛盾を感じる部分も多い 高校生へのメッセージの中でも 自由であることの可塑性について語るかと思えば 直感に頼るなと ヘナチョコな学者みたいなことを言い 全体は部分の総和でないと言いながらも 部分の総和プラス生気ではなく時間だと説く 不可逆的な時間の折りたたみの中に 生命は成立すると言い切る 生き物はエネルギーなる物質の賜物だと 証拠もなしに信じているらしい 物である人間が相対する者として 精神的な意識だとは見えないのだろうか? あるいは 精神性は時間と同意語だとでも言うのか? 生命を部品の集合体という物質レベルでのみ 考えると時間の重要性を見失い 機械論の落とし穴にハマるとも言う 科学の中に入り込むと 無限もゼロも見えなくなり 都合の悪い飽和状態を飛び越えて 有限なるモノ環境へと逆走することになるらしい 最後に曰く 生命とは何か その答えは 動的な平衡状態にあるシステムなのだ 構成分子そのものに依存しているのでなく そのサスティナブルな流れがもたらす「効果」である 生命現象とは構造でなく効果なのである だとすると 福岡伸一の語る時間とは何なのだろうか?
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再読 マイバイブル たまたま雑誌ソコトコに掲載されている文章を読んで著者のことを知ったのが10年ほど前 これを読んで「死」そのものは怖くなくなった (死に付随するであろう苦しみとか痛みは怖いけど) 科学的思考の面白さを知った一冊
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生命は分子の「淀み」。 分子は破壊と再生を繰り返す、 生命は、構造でなく効果。 効率→質感、加速→等身大の速度、直線性→循環性、 線形性→非線形性、 渦巻きは生命と自然の循環性をシンボライズする意匠そのもの
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地球ができてから、38億年にわたって連綿と維持され続けてきた生命。その中で、常に分解と再生を繰り返して自分を作り換えながら平衡を保ち、そして少しずつ進化してきた。 私たちの生命は、思っている以上に奇跡的なものである。 って実感しました。
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