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ポトスライムの舟 の商品レビュー

3.4

239件のお客様レビュー

  1. 5つ

    19

  2. 4つ

    74

  3. 3つ

    92

  4. 2つ

    21

  5. 1つ

    6

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2024/07/19

短編2篇のお仕事小説。 表題「ポトスライムの舟」は、働く女性が抱える問題を、多方面から描いたような作品。 ひとたび考え出すと、思考の沼に陥るところなどは主人公に大変共感できた。 いろんな生き方があるし、暮らし方がある。 日常生活の描写から、ひいてはなんのために働くのか、といった...

短編2篇のお仕事小説。 表題「ポトスライムの舟」は、働く女性が抱える問題を、多方面から描いたような作品。 ひとたび考え出すと、思考の沼に陥るところなどは主人公に大変共感できた。 いろんな生き方があるし、暮らし方がある。 日常生活の描写から、ひいてはなんのために働くのか、といった問題提起にもなっているようで、読了後にはなんだか感慨深く感じられた。 「十二月の窓」は、著者の実体験に基づくと思われるパワハラのお話。 ゆえに描写がとてもリアル。 あまりに理不尽だが、当時はこんな現場がごまんとあったのだろう。 逃げることの正しさのようなものが感じられた。

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2024/06/04

身につまされた。 少し前に読んだこの作者の本がはまらなかったけど、これはおもしろかった。 前半のポストライムは、救いがないようで、救いがある。友情というか、相互扶助といった優しさが見えてよかった。 ひとって、食べるためだけに働けない。 だから、世界一周とか、人によっては推し活...

身につまされた。 少し前に読んだこの作者の本がはまらなかったけど、これはおもしろかった。 前半のポストライムは、救いがないようで、救いがある。友情というか、相互扶助といった優しさが見えてよかった。 ひとって、食べるためだけに働けない。 だから、世界一周とか、人によっては推し活とか資格習得とかにいくのかな。 十二月の窓辺はパワハラ話で、読んでるこちらまで胃が痛くなった。身内のことを考えて暗澹とした気持ちになった。  ポストライムの主人公のナガセもパワハラで新卒採用の正社員を辞めた、て書いてるから主人公の名前違ったけど、続編かと思って読んだ。 読んだ後、寒々とした季節にいるかと錯覚したくらいの没入感。(今は初夏なのに。) どちらの話も主人公にじゅうぶん感情移入できた。

Posted byブクログ

2024/06/01

酔いが回って朦朧としたなかで、カラオケ店のトイレに貼ってある世界一周旅行のポスターに、何度夢を思い描いただろう。 本作の主人公であるナガセも、勤務先の工場の掲示板に貼ってある世界一周旅行ポスターに心を奪われたひとり。 参加費は163万。 工場での年間の手取りとほぼ同額。 工場で...

酔いが回って朦朧としたなかで、カラオケ店のトイレに貼ってある世界一周旅行のポスターに、何度夢を思い描いただろう。 本作の主人公であるナガセも、勤務先の工場の掲示板に貼ってある世界一周旅行ポスターに心を奪われたひとり。 参加費は163万。 工場での年間の手取りとほぼ同額。 工場での時間がそっくりそのまま世界一周に移行されるということが頭から離れず、ナガセは163万貯金することを決意するが…。 津村さんの芥川賞受賞作。今まで読んできた作品よりも若干温度が低く、主人公のナガセを筆頭に、友人のりつ子、同僚の岡田さんと、それぞれ人生について悩んでいるので重みを感じる。 旅先で移動のたびに開いては閉じ…をしていたので正直集中しきれなかった部分もあるが、自分の時間を対価に差し出された薄給で、娯楽やたまの贅沢に割く余裕もなく、ただ生活を続けていくことしかできない虚しさや、無力感が、現代の読者に痛いほどの共感をもたらすと感じた。 発刊された2008年でさえ不景気といわれていたけれど、物価上昇の速度が上がり、税金も上がり、実質賃金も下がり続けるなかで、政治家は素知らぬ顔で脱税をし、大した罪にも問われない2024年のどうしようもない無力さ、置いてけぼり感が哀しいかな、今この本を読むのにふさわしい時期な気がした。 2作目に収録されている"十二月の窓辺"もなかなか暗い。 著者もパワハラの被害にあった経験があるということなので、経験ベースなのか、主人公のツガワは、お局係長に辛く当たられ続けている。 P先輩、Q先輩、V係長、とイニシャルで登場人物が記されているので、誰が誰だか分からなくなってしまいがちではあった。 私自身、職場の人たちには恵まれていたものの、前職では人を見て態度を極端に変えるひとりの上司に酷い扱いを受けた経験があるので、"冷たい汗が足の指の間から湧き出し、腕に鳥肌を立てて目に涙を浮かべながら、ツガワは耳に飛び込んでくる一言一句の語尾にすみませんと添えた"という文章なんかは、当時を思い出し、胸がえぐられるようだった。 後半は若干抽象表現が見受けられ、理解が難しく目が滑るような感覚がある箇所もあった。わかりやすく長所が一つも見当たらない悪役が出てくる物語は苦手なので、こちらは読んでいて少しつらくなった。

Posted byブクログ

2024/05/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

仕事や家庭でのいろいろが身に染みてくるお話でした。 タイトルになっている、「ポトスラムの舟」もだけど、 もう一つのお話、「十二月の窓辺」も、もしかしたらこっちのほうがもっと身近に共感していたかもしれないぐらい、よかったです。 社会に出ること、社会で経験すること、 理不尽をどう解釈し、消化し、自分を失わずに生きられるか、 難しいなー。 「ポトスラムの舟」は、ちょっとリズムがあるというか、 ポスターを見て、世界一周の旅の料金が163万円と知った長瀬由紀子(ナガセ)が、自分の今の工場勤務の年収とほぼ一緒と気付き、行くかはともかく意識して貯金を始める。 「あんたの一年は、世界一周とほぼ同じ重さなわけざね、なるほど」(本文より、ヨシカ) ナガセは、新卒の会社をモラハラで辞めて、その後1年棒を棒に振った、という。 ここでいろいろ突っ込みたくなってしまうんだけど、 さらに、復帰後の彼女はフル稼働で、工場、友人ヨシカの始めたカフェ、内職、老人にパソコンを教えるなど、掛け持ち激し目。 母と暮らす実家は老朽化で、家の修繕か引っ越しか、そのためにもお金を貯める必要があるとか。育て増やしているポトスライムを料理して食べるなんて夢まで出てきて。 ヨシカのほかには、既婚の同期、りつ子とそよ乃が出てくる。 それぞれに、いろいろあり。その時々を皆懸命に生きているんだと思うけれど。 ___工場の給料日があった。弁当を食べながら、いつも通りの薄給の明細を見て、おかしくなってしまったようだ。『時間を金で売っているような気がする』というワンフレーズを思いついたが最後、体が動かなくなった。働く自分自身にではなく、自分を契約社員として雇っている会社にでもなく、生きていること自体に吐き気がしてくる。 時間を売って得た金で、食べ物や電気やガスなどのエネルギーを細々と買い、なんとか生き長らえているという自分の生の頼りなさに。それを続けなければいけないということに。(本文より) ・・・ 「十二月の窓辺」は、設定は違うけれど、同じく、仕事に忙殺されるような人生と、無力感とが漂う。 中年女性・ツガワが、新しく就職した職場で孤立している。上司からのハラスメントも激しさを増し、辞めるタイミングを見計らう感じ。 同じ建物で働いている女性・ナガトとときどき一緒にご飯を食べたりしているんだけど、彼女は社内ではできる人らしく、頼まれごとも多い様子。 何を言っても伝わらないだろう人間に対し、 どう意志表示できるか、言葉で無理なら態度で、身体で、 そんなことを思いながら過ごしている人、多いと思う。 だからとてもリアルで。 上司に否定されながらも、自分は他に役に立てる場所があるはず、と自分の可能性を密かに信じる、夢見るところも。 ___自分がここから、壁や空気や窓に隔てられたこちらから見守っている人々は、いざ自分と関わるとなると眉をひそめて使えないと思うのだろうか。 答えはそのときどきによって変わった。資料を見ながらモニタに向かい、やたらと肩を回したり目を押さえたりしながら仕事をしている人を見ると、自分なら手伝える、と思ったし、携帯電話を耳に当てながら窓ガラスを額で叩いている人を見ると、自分ならこの人を苛立たせてしまうかもしれない、と思った。(本文より) 組織構造として、どこへ行っても誰かがそういう立場にあっているんだ、と気付いたり。 いや、必ずしも同じようなことが同じような理由で起こっているわけではない、と知ったり。 そうじゃない場所もあるのかもしれない。 分からない。 孤立しないようにすることかなー。 ここだけを唯一の世界にしないこと。 病む前にその世界の外側とのつながりを育てること。 そもそも構造を是正する気力を搾り取られないようにしよう…。

Posted byブクログ

2024/05/03

あまり面白くないな、何を言いたい話なんだと思いながら、なんとかポトスライムの舟を読み終えた。ブクログに登録しようとしたら、芥川賞受賞という記載があり驚いた。なぜ受賞できたのか理解できない。

Posted byブクログ

2023/09/16

うつになってアルバイトで生活。今の社会を描いている。2作とも何十年後の未来の人が読んだら羨ましいと思うのか辛い生き方をしてたんだって思うのかどっちなんだろう。今をギュッと詰め込んだ話になっている

Posted byブクログ

2023/05/13

パワハラや同調圧力や、職場でありがちだろうけど、あまり良い環境と言えるのかはわからない人たちのお話に感じた。 ささやかな幸せで満足するというのはもちろん素敵なんだけど、周りにいたらもう少しやる気を給料や境遇にも活かせるようおせっかいしたくなりそうな主人公… ただ、淡々と日々が進む...

パワハラや同調圧力や、職場でありがちだろうけど、あまり良い環境と言えるのかはわからない人たちのお話に感じた。 ささやかな幸せで満足するというのはもちろん素敵なんだけど、周りにいたらもう少しやる気を給料や境遇にも活かせるようおせっかいしたくなりそうな主人公… ただ、淡々と日々が進む様子を描かれているのは好みで、読み心地は好き。

Posted byブクログ

2023/03/22

「ポトスライムの舟」「十二月の窓辺」の二作品収録。 両方ともOLが主人公の話だけど、淡々と物語が進んでいき終わってしまった。

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2022/05/07

お金がなくても夢は育てていける…確かにそうなんだけど、お金を貯めている日々の暮らしが、あまりに味気ない気がして、あまり共感は出来なかった。

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2021/10/03

芥川賞受賞作の表題作は今この国のそこここに生きている人々の姿が静かに綴られた一遍。昨今よく使われる言葉でいうと"世界の片隅で"慎ましく暮らしている人々の姿。主人公は著者がモデルだろうか。正社員の職をパワハラで辞め、契約社員として単純作業をこなす日々(検品バイト...

芥川賞受賞作の表題作は今この国のそこここに生きている人々の姿が静かに綴られた一遍。昨今よく使われる言葉でいうと"世界の片隅で"慎ましく暮らしている人々の姿。主人公は著者がモデルだろうか。正社員の職をパワハラで辞め、契約社員として単純作業をこなす日々(検品バイトは『君は永遠にそいつらより若い』でも出てきていた)。職場に貼られた世界一周旅行のポスターにあった旅行費用が契約社員としての年収と同額だと知り、その額をためるため内職を増やしながらも生活はさらに慎ましくなるが、家庭の問題を抱えた学生時代の友達や職場のリーダーらとの日々の中で自分なりの居場所を見つけていく。とても小さな自己肯定感。でもこれが作者自身、自分の立ち直りのために必要だったんだろう。そして今息苦しさを抱える人にも通じるところが芥川賞で「普遍的」(宮本評)と評されたのだろう。最新作にある柔らかさや余裕は見られない(面白いと思った文章は「よもやこの界隈の平均年齢を下げに派遣されてきたわけではないだろう。」(p.42)くらい)。まだ作者自身もそこまでの余裕がなかったのだろう。同時に所収された『十二月の窓辺』は読んでいてより苦しかった。同様に職場のパワハラで引きこもりになってしまった身内を思い出しながら読んだ。

Posted byブクログ