ハーモニー の商品レビュー
最後の未読長編だったから大事に読もうと思ったのに、途中で止められなくて一気読み。etml の存在理由を理解して虚無感に襲われるのと同時に、これがバッドエンドだって簡単に断ぜられなくて心がざわざわする。紡がれたかもしれないこの先の物語を思うと悲しい。
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・「虐殺器官」の後日譚。平和になった世界。そこはハーモニーが取れたように見える世界。「自分を律することの大半は、いまや外注に出されているのだ」。そんな世界に馴染めない女子高生の視点から語られる世界の異常性。物語はそこから始まる。日本SF大賞だけでなく、アメリカでP.K.ディック賞...
・「虐殺器官」の後日譚。平和になった世界。そこはハーモニーが取れたように見える世界。「自分を律することの大半は、いまや外注に出されているのだ」。そんな世界に馴染めない女子高生の視点から語られる世界の異常性。物語はそこから始まる。日本SF大賞だけでなく、アメリカでP.K.ディック賞まで取った作品。 ・一見ユートピアに見えるディストピアということで、ウォルター・テヴィスの「モッキンバード」というSF作品を思い出させる箇所も散見される。だが、「モッキンバード」のような暖かく血の通った人間復権が描かれることはない。「虐殺器官」が救いのない物語だったのに対して、本作は、救いを求めてたどり着いたところが、とんでもなく救いのない世界(と言うか「救い」という概念を必要としない世界)だったという物語。何とも言えぬ後味の悪い読後感。これ、中学ぐらいで読んでたらトラウマになってたかも知れない。 ・秘密を知り、トリガーを引き得る存在となった主人公が、そのトリガーを引く必然性がイマイチ伝わってこない。実はそのことが、「虐殺器官」と「ハーモニー」で自分が最も戦慄した部分かも知れない。「何で、君は世界を破滅させると分かってるトリガーを引いちゃってるの?」という感じ。 ・本書は、初めて電子書籍で読んでみた(iPad版のKindle)。ページを繰る感覚や、以前のページに戻ってちょっと確認する、というのがやりづらい。あまり気にせずにマーカーをつけたり、挿入したコメントを後から一覧的に見ることができるのは便利。 2013/02/21(木)追記 「救い」を求めて行き着いたのが「救い」が意味を持たない場所。これはもしかしたら、作者が自らの死と対峙せざるを得ない状況の中で、その苦しみや恐怖をじっと見つめたからこそ出てきた想念だったのかも知れないということに気付いた。ちなみに、本作は作者が34歳という若さで亡くなった2009年の翌年、発表された。
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物語は楽しむべきだ、という気持ちがあって、作者やそのバックボーンは気にしないと気持ちもあるんだけど、この作品、著者は別になってしまう。 泣きそうにもなった。
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6:HTMLのタグの知識がない方も楽しめるのかが微妙なところですが、とても面白かったです。いまの健康志向になにか違和感を覚える身としては、怖いような、羨ましいような、不思議な気分でした。そして、ものすごく想像の余地のあるラスト。</harmony>というタイトル。(半角で入力する...
6:HTMLのタグの知識がない方も楽しめるのかが微妙なところですが、とても面白かったです。いまの健康志向になにか違和感を覚える身としては、怖いような、羨ましいような、不思議な気分でした。そして、ものすごく想像の余地のあるラスト。</harmony>というタイトル。(半角で入力するとタグ扱いされてしまうようだったので一部全角) 考え出すと止まりませんが、ミァハの悲しみと怒りと憎しみ、それを生み出した「世界」(生府)と終焉、そんなことを考えてるとやっぱり怖い。でも大好き。
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おそらく『虐殺器官』後の世界ー。 つながっているな、と思った。 優しさは、対価としての優しさを要求する。 教師の、親の、周囲すべての気遣いが、わたしを静かに窒息させている。 という文が、物語の最初の方にあった。 今の時代少なくとも日本の風潮としては、似た閉塞感が...
おそらく『虐殺器官』後の世界ー。 つながっているな、と思った。 優しさは、対価としての優しさを要求する。 教師の、親の、周囲すべての気遣いが、わたしを静かに窒息させている。 という文が、物語の最初の方にあった。 今の時代少なくとも日本の風潮としては、似た閉塞感が既にあると思った。 その先の、もっと先の果てにあるものー。 自由と引き換えに得る、倫理に縛られ優しさを強要される、一見争いのない平和な世界。 不気味すぎて、怖ろしすぎる。 超高度医療により病はほぼ消滅し、健康を維持するために身体に害となるものがほとんど禁止され、システムに身体を監視される世界。自らのものではない、社会のために存在する身体。そんな世界で、何を目指して楽しみとして生きていけばいいのだろう。 ストーリーは起伏が少なく、シンプルだった。 身体と精神性、世界が向かうとある方向性の究極の形。 読ませるなぁ。世界観は嫌いじゃない。 この哲学書のような本をもとに、よく映像化できたなと思った。
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政治体制が政府から医療と福祉を第一とする“生府”となった世界。 病気は基本的に撲滅され、他人への思いやりが最高潮となり、現存する“国”や“政府”の間で戦火が燻っています。 おそらくは著者の前作「虐殺器官」の後の世界であり、読み進めているうちに関連性を感じました。
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システムにより、病気にならない世界になった世界の物語。 発想や設定が面白いと感じました。読んでいて、何のために生きるのか、そもそも生きているとは何なのかを少し考えさせられました。 近未来的なSFを読みたい時は良い気がします。
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2016/12/08 読了 発想は面白いし、人類の未来の考察としても面白いけれど、エンタメとして、カタルシスを得られるものとしての書物ではないと思った。 フーコーの関連本をたまたま直前に読んでたから、それっぽい記述が出てきた瞬間は鳥肌が立った笑。
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虐殺器官のその後。 人々はシステムによって常に健康であるよう管理されていた。 健康を害するからという理由で酒も煙草も禁制品になっていて、それを結構苦労しながら主人公が手に入れてこっそり楽しんでいたりするのがおもしろい。 そのシステムを逆手に取って主人公の友人ミァハが目指す、だれも意識をもたない世界。調和と恍惚の世界。 その計画は食い止められないけれど「だけどそれをあなたには、与えない」っていう主人公の台詞がとても好き。 でも生活に疲れていたり、人が由来の暗いニュースを見聞きすると意識なんて無いほうが幸せなんじゃないかとも思えて、ミァハの思想を否定できなかった。
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SFでオススメは、と検索すると、必ず出てくる作品。 信じられないくらい、わたしの大好きなところを突いている。 残念なのは、これが遺作ということ。 デビュー作はまだ予約が回ってこないので読めていないが、この作品がこれほどど真ん中に来るのだから、間違いなく楽しめるものだろう。 思考を制御するという発想は、『ターミナル・エクスペリメント』を思い出させ、双曲線は『逆転世界』を思い出させた。 やっぱり好きだな、SF。大好きだ。
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