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ハーモニー ハヤカワSFシリーズJコレクション
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ハーモニー ハヤカワSFシリーズJコレクション

伊藤計劃【著】

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ハーモニー ハヤカワSFシリーズJコレクション

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 早川書房
発売年月日 2008/12/25
JAN 9784152089922

ハーモニー

¥825

商品レビュー

4

175件のお客様レビュー

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2024/12/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2020年11月ぶり以来の再読。読むきっかけは、最近医療系の本の話をよくしていて、来年の読書テーマをそっち側にしようかと少し思っていることがあって、そういえばハーモニー全然細部まで覚えてないなと思って再び手を取った。前回は⭐︎4つで、私の感想としても虐殺器官の方が好き、というものだったけど、もしかして今は本作の方が好きかも。明確に、自分の身体というものをより深く感じているからの違いだと思われる。 オチもあんまり覚えてなかったけど、集団自殺が起こり、ミァハが生きていることがわかり、すでに人類の脳内に人間の意志を変えるシステムが仕込まれており、集団自殺で人間の野蛮性に怯えた一部の権力者が人類変革ボタンを押して、人類から意識が失われるというオチ。その世界を望んだミァハは連れて行かないということで、主人公のトァンがミァハを殺して、人類から意識が消えて終わる、という話。いやー面白かったな。 以下好きだったところ 「体を見張るメディモルの群れ。人間の体を言葉に還元してしまうちっぽけな分子。そうやって、わたしたちはありとあらゆる身体的状態を医学の言葉にして、生府の慈愛に満ちた評議員に明け渡してしまうことになるのよ」 「自分のカラダが、奴らの言葉に置き換えられていくなんて、そんなことに我慢できる…」 「わたしは、まっぴらよ」(p.17-18) 「オトナたちは、それまで人間が分かちがたい自然の産物と思ってきた多くのものを、今や外注に出して制御してる。病気になることも、生きることも、もしかしたら考えることも。むかしは自分自身のものだった。…このカラダはわたしのもの。わたしはわたし自身の人生を生きたいの。互いに思いやり慈しむ空気に締め殺されるのを待つんじゃなくってね」(p.30-31) 自分の体について、トァンの胸を揉みながら力説するミァハが、「トァンはさ、わたしと一緒に死ぬ気ある…」(p.41)と聞くときはなんと甘やかな愛の告白なんだろうとクラクラ。 人間の意志ってのは、常識的に思いがちなひとつの統合された存在、これだと決断を下すなにかひとつの塊、要するにタマシイとかその類似物じゃなく、そうやって侃々諤々の論争を繰り広げている全体、プロセス、つまり会議そのものを指すんだ。意志ってのは、ひとつのまとまった存在じゃなく、多くの欲求がわめいている状態なんだ。人間ってのは、自分が本来はバラバラな断片の集まりだってことをすかっと忘却して、「わたし」だなんてあたかもひとつの個体であるかのように言い張っている、おめでたい生き物なのさ。(p.164) … 精神は、肉体を生き延びさせるための単なる機能であり手段に過ぎないかも、って。肉体の側がより生存に適した精神を求めて、とっかえひっかえ交換できるような世界がくれば、逆に精神、こころのほうがデッドメディアになるってことにはなりませんか(p.168) 「健康」って価値観がすべてを蹂躙しようとしている。それってどういうことだと思う?この世界が「善」に覆い尽くされることなんだよ。(p.174) いわば意識されざる葛藤の結果が我々の意識であり、行動であるのだと。そして調和のとれた意志とは、すべてが当然であるような行動の状態であり、行為の決断に際して要請される意志そのものが存在しない状態だと。完璧な人間という存在を追い求めたら、意識は不要になって消滅してしまった…ただ社会と完璧なハーモニーを描くよう価値体系が設定されているため、自殺は大幅に減り、この生府社会が抱えていたストレスは完全に消滅する(p.256) 「権力が掌握してるのは、いまや生きることそのもの。そして生きることが引き起こすその展開全部。死っていうのはその権力の限界で、そんな権力から逃れることができる瞬間。死は存在のもっとも秘密の点。もっともプライベートな点」 「誰かの言葉、それ」 「ミシェル・フーコー」(p.283)

Posted by ブクログ

2024/11/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

プログラミング言語……? 一行目から面食らったが、何故それが挿入されるのか、何故それが必要なのかを知った時は鳥肌が立つような思いだった。 ちょうど自分が人間の意識だとか、哲学的ゾンビだとか、そういうものに興味を持っていた頃に読んだので、それらとの偶然の繋がりにも興奮した。出会うべき時に出会えた本というのは特別な一冊になるものだ。 この物語の結末に人類が選択したのは、退化だったのか、進化だったのか、いまだに考え続けている。

Posted by ブクログ

2024/07/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

大災禍から数十年、人類は老衰や不意の事故以外で命を落とすことは稀になった。有害とされるものに触れることなく、管理された平和な社会で、少女たちはそれに抵抗を試みようとした。 本編のネタに触れるかもしれないので、一応ネタバレ仕様で。 作中はすでに管理化された社会であるが、そんな中大きな引き金になる出来事が起きる。 一部の上層部の怯えが理由でここまで管理されている一方、人の一線を越えることも躊躇している。 完全な管理化でそれで人類は幸せなのか?といったようなことは他でも書かれてきたと思うが、真の平穏とは何か?のひとつの解答が、この作品で書かれている。 病気や有害なものにほとんど触れることのない社会でも、自ら命を絶つものはいる。どうしたって社会を窮屈に思うなら、自らを社会に究極的に合わせれば良い。「意思」で苦悶するのであれば、意思そのものをないものにしてしまえばよい。 それ(意思)なしでもやってきた過去があるミァハならば「何故それを躊躇するのか?」など思ったかもしれないが、意思が存在しないならば、そもそもそんな事を考えるということがなくなるのだろう。 時折書かれる、プログラムのコーティングのようなものに感情のような語が登場するのは、感情の類すら想起することがなくなった後世のための、目印のようなものかもしれない。 著者はロジックの流れにキャラクターを置くような形で物語を書くタイプだったようだが、それも興味深い。

Posted by ブクログ