光 の商品レビュー
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島が津波に襲われ壊滅する場面で昨年の大震災を思い出したが、奥付を見るとこの本は2008年の出版だ。 島民271名のうち266名が死亡。生き残ったのは中学生の信之と美花。小学生の輔。輔の父親と灯台に住んでいた爺さん。 他に旅行者が一人、津波から生還したものの信之に殺される。 その事件は津波のどさくさで表に出る事はなく、灯台守の爺さんを残して4人は島を出る。 次の場面は信之の家庭に移る。 島での事件がそれぞれに暗い影を落とす。 信之も輔も、ひどく屈折している。輔は信之の妻だと知って、いや信之の妻だからこそ関係を持ち、信之はそれを知っても知らないふりで美花を守るために暗い執念を燃やす。 輔の信之に対する執着は分かりづらい。 ひどく重たい作品だった。
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三浦作品は何冊か読んでいたので尚更この作品の異色さにびっくり。 川の流れのような流れる用な文体は三浦先生の色だな~とは思うのですが 暗い あまりにも救い様がないのがまさに異色 これまで暗くてもどこか艶しい雰囲気や救いの道があったのに この作品は進めば進むほどマンホールの中に落ちていく感じ 小説としての完成度としては☆5だとは思うのですが 個人的に暗い話、猟奇的な話にもエンターテイメント性を 求めてしまう性分なので☆2にさせて頂きました 信行はきっと津波がなくてもああいう性格だったろうなと思いました
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親も兄弟も何もかもを一瞬に打ち砕いたのは津波なのか。暴力と嘲り。刹那的で虚ろな男たちが寂しく哀れ。また、女たちの何かを守るためには手段を選ばない強かさと計算高さに得体のしれない不気味さを感じる。他作で見られる凛乎とした涼やかな女性の姿はどこにも見あたらない。描かれる光はいつも凍え...
親も兄弟も何もかもを一瞬に打ち砕いたのは津波なのか。暴力と嘲り。刹那的で虚ろな男たちが寂しく哀れ。また、女たちの何かを守るためには手段を選ばない強かさと計算高さに得体のしれない不気味さを感じる。他作で見られる凛乎とした涼やかな女性の姿はどこにも見あたらない。描かれる光はいつも凍えるような冷たさで悲しみに沈んでいる。
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求めたものに求められず、求めてもいないものに求められる。よくある不幸だ。 誰の愛も、強く、激しく、報われない。 読んでて結構苦しいです。 これまでの三浦しをん作品とは全く違った印象で、すこし衝撃受けました。
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津波で、5人を残し島民が全員死亡。2人の秘密の殺人、ずっと虐待され続ける子供、月日が流れ、秘密が暴かれそうになり・・・暴力は繰り返される。救いのない話が淡々と綴られている。全員が醒めたカンジで温度がない。淡々すぎて重い。
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グロテスク、という言葉の持つ本来のニュアンスを考えずにいられない。 登場人物は誰もがどこか卑怯で冷血で目を背けたくなるような人たちなのに、 微かに共感している自分に気づくか気づかないか…そんなギリギリのラインで先へ先へと視線がいざなわれていく。 人間の醜さと純粋さを錆びたナイフ...
グロテスク、という言葉の持つ本来のニュアンスを考えずにいられない。 登場人物は誰もがどこか卑怯で冷血で目を背けたくなるような人たちなのに、 微かに共感している自分に気づくか気づかないか…そんなギリギリのラインで先へ先へと視線がいざなわれていく。 人間の醜さと純粋さを錆びたナイフで肉の中からえぐりだしていくような、そんな作品。 最後まで読んでしまったけど、あまり好きな作風ではないので、星はふたつ。
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初の三浦しをん本。図書館で借りました レビューを見ていると異色作品のようですね。 日常の脆さ、という一言に尽きる。 あっという間に全て無くなり 自らを再構築し でも人間なんて過去ありき。 (支えられもするが縛られもするという意味で) 読後、自分もそうなんだろうな、と ぼんやり...
初の三浦しをん本。図書館で借りました レビューを見ていると異色作品のようですね。 日常の脆さ、という一言に尽きる。 あっという間に全て無くなり 自らを再構築し でも人間なんて過去ありき。 (支えられもするが縛られもするという意味で) 読後、自分もそうなんだろうな、と ぼんやり思った。
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津波によって5人と、旅行客1人を残し島民は総て死んでしまった。 かといって、ずっと島の中に居る訳ではなく、島を出る迄が序章、という感じなのですが。 どうせなら島を舞台に見たかったな、という気持ちはあります。 主人公と可愛い彼女と、主人公に懐く親戚の年下の少年と、その少年を虐待する父親と、灯台のおじいちゃんと、そして他所から来た彼女にいやらしい視線を向ける男と。 島を出る事自体は、もう島には住めない、というのがある大前提のもとなんですが、 その前に島内で主人公が男を殺してしまったのには吃驚してしまいました。 え?!これそういう話……?と慄いた程。 それから次の章では既に主人公は結婚(島に居た彼女とは別の、全然関わりのない女性)し、 彼女の方はその美貌を活かし芸能界へと入り、 少年だった男は、主人公の妻を不倫にいざない、 そしてその不倫をしている最中に主人公の幼い娘は変質者に悪戯をされてしまい―― 徐々に狂っているのか、最初から狂っていたのか、解らなくなるようなお話。 主人公は妻と娘を愛そうと努力はしつつも、矢張り一番こころに残っていたのは過去の彼女だったという。 何か、報われた人は居るけれど、そうでない人もいるなあ、という読後感がいいのか悪いのか解らなくなるかんじでした。 殺人、最後迄露見しないままでしたね……。
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一つ一つの表現がとても綺麗で丁寧で、情景や心情がすっ、と心の中に入ってくる気がした。内容に関していえば最後まで救いのない話だと思った。信之と輔と美花の三人のいとが再び絡まっていく様は鳥肌もの。きっと信之と南海子はお互いに気づかないふりをして、椿を愛するふりをして生きていくんだろう...
一つ一つの表現がとても綺麗で丁寧で、情景や心情がすっ、と心の中に入ってくる気がした。内容に関していえば最後まで救いのない話だと思った。信之と輔と美花の三人のいとが再び絡まっていく様は鳥肌もの。きっと信之と南海子はお互いに気づかないふりをして、椿を愛するふりをして生きていくんだろう。美花も美花としての自分を捨て、輔も一人ぼっちで生きていくんだろう。静かな夜に読みたい本。
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はじめの津波の部分から、自然に立ち向かったり人間関係を再構築したりするのに奮闘する話かと思っていたら、全然違った。そういう話を期待していたわけではないけれど、登場人物がみんな汚くて下品で、読んでいて嫌になってしまった。話にあまり起伏が無くて、どきどきしなかった。
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