元職員 の商品レビュー
会社の金を横領している男のバンコク旅行記。息苦しい暑さと刹那。膝から下がガクガクで感覚の無いまま、金を使い、酒を飲み、女を買い。短くサラッと読めるが、麻痺する感覚がうつり、何かを考えるのが面倒になる。
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う~ん、うまいなあ、やっぱり。 相変わらず余計な描写は少ないのに、人物の心の動きが手に取るように伝わってくる。 舞台がバンコクだからじっとりと蒸し暑いはずなのだが(現にそう書いてもある)、著者の文章はいつものごとく乾いた感じだ。 この吉田氏の書く文章のテンポがすごく好き。 いみ...
う~ん、うまいなあ、やっぱり。 相変わらず余計な描写は少ないのに、人物の心の動きが手に取るように伝わってくる。 舞台がバンコクだからじっとりと蒸し暑いはずなのだが(現にそう書いてもある)、著者の文章はいつものごとく乾いた感じだ。 この吉田氏の書く文章のテンポがすごく好き。 いみじくも、つい先日友人のRが言っていたこと(タイに駐在で来て、日本で一般庶民だった人が、当たり前のように、豪邸に住み、安い賃金で働くタイ人のメイドさんを顎で使ったり不遜な態度をとったりするのを見ると、本当に不快になる)と全く同じことを、タイ在住の津田が言ったのですっと背筋が寒くなった。 自分も含め友人にも海外駐在経験者が多く、冷や水を浴びせられたような、一瞬はっと我にかえったような気分。 そう、身の丈を知るってことは、いつどこにいても人として重要なことのひとつだよね。
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うん、短くて単純でサクサク読めて、サラリーマンならちょっとゾッとする内容ではないでしょうか?主人公はささやかな金額から、些細な気持ちから、どんどん、どんどんと深みにハマって後戻りできない状態になる。そうなると、読み手側もなんだか、心理的に追い込まれてしまうんですよねぇ。ラストは皆...
うん、短くて単純でサクサク読めて、サラリーマンならちょっとゾッとする内容ではないでしょうか?主人公はささやかな金額から、些細な気持ちから、どんどん、どんどんと深みにハマって後戻りできない状態になる。そうなると、読み手側もなんだか、心理的に追い込まれてしまうんですよねぇ。ラストは皆さんご自由に、って感じでしたので少しモヤモヤな気持ちです、はい。
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吉田修一のファンであるということで新刊が出るたびに読んでいます。 【元 職員】 というタイトルから、何かが臭います。 「職員」ではなく【元職員】。 なぜ“元”なのか、そこに臭ってくるのはずばり負のものです。 冒頭からファーストクラスでバンコクに向かうところか...
吉田修一のファンであるということで新刊が出るたびに読んでいます。 【元 職員】 というタイトルから、何かが臭います。 「職員」ではなく【元職員】。 なぜ“元”なのか、そこに臭ってくるのはずばり負のものです。 冒頭からファーストクラスでバンコクに向かうところからお金の臭いがします。 そして、主人公がタイ・バンコクでの旅行記の中に、もう一つのストーリーが現れてきて、それと呼応するようにストーリーが進んでいきます。 さらさらした描写の中、結末に現れてくるものは、結局自分は典型的な日本人、もっといえばどこにでもいる一個の人間であることに気づかされていくのです。 そう、さらさらとした風景と同じく、人間も砂のように愚かでばかな存在なんだと。 人間の欲望は、ふとしたきっかけで花開き、思わずやってしまうような類のものなのかもしれません。 ですが、読後感は、ちょっとさらさらしすぎな感じもしました。臭いも意外と薄いもので、もっと濃厚なものを期待してしまいました。なぜ“元”なのかもっと突っ込んでもよかったのだと。
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なんてことのない話だった。何も残らない。 内容は横領をしてタイで豪遊している団体職員(公務員)が タイで買った女との交流を通して自分の妻のことを 思い出したり、横領にいたるまでの経緯を思い出したり する話。 実際に横領にいたるまではこういう経緯だろうなぁって わかりき...
なんてことのない話だった。何も残らない。 内容は横領をしてタイで豪遊している団体職員(公務員)が タイで買った女との交流を通して自分の妻のことを 思い出したり、横領にいたるまでの経緯を思い出したり する話。 実際に横領にいたるまではこういう経緯だろうなぁって わかりきったことが書いてあるだけ。もっと深い話かと 思ったからがっかりだった。まぁ、横領をする人が人間的に 深いはずもないから、結局そういう人を書こうとすると こうなってしまうのかな。ページをめくる手を違う意味で (面白くないから早く読み終わりたい)早めた作品だった。
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期待せずに読んだけど、なかなかよかった。 この人の話て淡々としてるイメージだけど、 今回は 真実を押し殺し豪遊している主人公のテンションとうまくシンクロしていた。 本人は勝手にだめになったから自業自得なんだけど、妻が気になる。 口に出すと共犯になるから、不安定で贅沢な平和を守る...
期待せずに読んだけど、なかなかよかった。 この人の話て淡々としてるイメージだけど、 今回は 真実を押し殺し豪遊している主人公のテンションとうまくシンクロしていた。 本人は勝手にだめになったから自業自得なんだけど、妻が気になる。 口に出すと共犯になるから、不安定で贅沢な平和を守るために気づかないふりをしてたのかな。 でも恋愛結婚だった筈なのに虚しいね。 そして武志が不毛な恋愛(?)に走るのは何から逃げるためなんだろう。 スピンオフ書いてほしいな。
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素直に怖いと思った。 誰でもちょっとした事から思いがけない危険な状況に陥る可能性はあるんじゃないかなぁと思った作品。
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公社職員が東南アジアでぷらぷらする。 最初は優雅だと思った。すごい額の公金横領してた。 物語の中ではまだ職員だったけど題名が「【元職員】」てゾッとした。 そら眠れないよ。怖かったー。
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≪内容≫ 主人公の片桐は観光に訪れたタイの地で武司という青年と出会う。彼に紹介されたミントという娼婦との束の間のバカンスの中で徐々に見えてくる登場人物たちの嘘と真実。吉田修一による久々の書き下ろし小説。 ≪感想≫ 犯罪文学と銘打ってあるが、描かれているのは巧妙なトリックや奇抜な手口ではない。その部分はむしろストレートで、あまり捻りがなかった気もする。焦点はそこではなく、端的に言えば、嘘と真実について。吉田修一は誰もが触れられたくないと思っている人間の汚い部分を的確に突いてくる。 世界的な観光地となったタイを舞台に設定し、そこで振舞う日本人の滑稽さや生真面目さ、迷いや開き直りなども巧みに描き出されている。これらの微妙な心理は途上国を訪れたことのある人なら誰もが何かしら思い当たるのではないだろうか。僕自身も舞台となった都市を訪れたことがあり、そのとき感じた気持ちの昂ぶりや不安、驕りなど、色んな記憶が呼び起こされるようだった。 色んな局面で「わかっててやってる」という自己弁解が、いつのまにか僕の中で根強いものになってしまった。歳をとる度にその感覚は強くなっている気がする。結局それは甘えであったり、何かを押し殺しているだけなのかもしれないが、そんなことも麻痺して気付かなくなっていく。 自分を騙す痛しさと苦しさ、空しさ。そんなことを考えさせられた小説。
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