知的創造のヒント の商品レビュー
外山滋比古による1977年発表(講談社現代新書)のエッセイ集。ちくま学芸文庫で2008年に復刊された。 外山氏の「思考法」に関する初期のアイデアのエッセンスが語られており、近年ベストセラー化した『思考の整理学』(1983年発刊。ちくま文庫で1986年文庫化)はじめ、その後の外山氏...
外山滋比古による1977年発表(講談社現代新書)のエッセイ集。ちくま学芸文庫で2008年に復刊された。 外山氏の「思考法」に関する初期のアイデアのエッセンスが語られており、近年ベストセラー化した『思考の整理学』(1983年発刊。ちくま文庫で1986年文庫化)はじめ、その後の外山氏の著作のアイデアの基の多くが本書に綴られている。 「ものを考えようとすれば、ある特定の問題に心を寄せなくてはならないが、関心をもつとたちまち、・・・ものがあるべきように見えないで、あってほしいと思う形をとるようになる。・・・interestをもちながらdisinterestednessの状態をつくり出さなくてはならない。思考の逆説はそこにある」 「カクテルは他力本願である。知的創造は他人のものを失敬したり、加工したりして生まれるものではなく、自分の頭の中の化学反応によってのみ可能である。酒でないものから酒が造られなくてはならない」 「セレンディピティー・・・考えるには、あまり、勤勉でありすぎるのもよくない。ときどきなまけている必要があるらしい。その空白と見える時間の間に、ナマな思考が熟して発酵が準備されるのである」 「くよくよものを考える頭でおもしろいことなど考えられるわけがない。頭をよくしようと思ったら、つまらぬことはさっさと忘れることである」 「大きな木の下には草も育たない・・・圧倒されそうな影響をもっているものには不用意に近づかないことである。近づいてもながく付き合いすぎてはいけない」 「ひとのめがねでものを見てから自分の目で見ても、ものが正しく見えるはずがない。まず、自分で見る」等 メモの功罪、ノート作り、論文の作り方、本の読み方なども語られてはいるが、優れた着想を得るための心構えに関するフレーズが印象に残る。
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おすすめ資料 第86回 「考える」ことを考える(2009.4.3) 「知的創造」というと身構えてしまいそうですが、知的創造をするために自分で「考える」コツを分かりやすく教えてくれる本です。 各章で様々なヒントが紹介されていますが、なかでもおすすめなのが、筆者が大学で外国文学...
おすすめ資料 第86回 「考える」ことを考える(2009.4.3) 「知的創造」というと身構えてしまいそうですが、知的創造をするために自分で「考える」コツを分かりやすく教えてくれる本です。 各章で様々なヒントが紹介されていますが、なかでもおすすめなのが、筆者が大学で外国文学科の学生を対象にした講義で毎年紹介していたという"どうすれば論文が書けるのか"という話です。 「酒を造る」というタイトルのこの章では、ひらめいたアイデアを論文のテーマとして発展させるにはどうすればよいのか、酒づくりになぞらえて説明し、実例として、シェイクスピアを読んだ感想が論文のテーマとして発展していく過程が詳しく紹介されています。 他章でも「忘却」「読みさし」のすすめなど、ユニークな思考術や、著者による実践の様子などが数多く紹介されています。 「知識の記憶」ではなく「知的創造」をすることの必要性とその難しさを説きつつ、「考える」ことを始める人へのエールにあふれています。 皆さんが大学で取り組む知的創造にきっと役立つことでしょう。
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とっても良かった。Serendipityとか,着想は奇襲するとか。睡眠がとっても大事。ノートの使い方のコツも紹介されていてよかった。保存することも考えて,同じノートを使い続けるのが良いらしい。
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学者のエッセイは結構好きで気分転換にたまに読んでいる。同著者の『思考の整理学』と基本的な方向性は似ていた。私事となるが、これまで院を修了した後の知的活動・生活について模索していた1年だった。明確な生活の方法は、そう簡単にはそうわからないということがわかりかけている程度が現状となっ...
学者のエッセイは結構好きで気分転換にたまに読んでいる。同著者の『思考の整理学』と基本的な方向性は似ていた。私事となるが、これまで院を修了した後の知的活動・生活について模索していた1年だった。明確な生活の方法は、そう簡単にはそうわからないということがわかりかけている程度が現状となっている。そうした中本書を読み、研究に携わってきたり研究指導をしている人であっても、試行錯誤の上、研究や知的な創造活動を行っていることがわかった。
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考えだすという行為は曖昧模糊で、機械的にいかないところはもどかしいが、実に人間らしいものなのだと感じさせてくれるエッセイ。
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内容自体は悪くないのだけれど、『思考の整理学』とかなりかぶっているのであちらを読んだ人にはちょっと残念な本。
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読んだのは2回目?奥付を見ると2008年とあるので、26歳くらいの時に読んだらしい。思考の整理学を読んで、「すごい!」と思って、買ったと思う。 今年で90歳。でも、言っていることはとても新しい。 今、ビジネス書で盛んにテーマになっている、ライフハックとか、思考術とか、生活・仕事...
読んだのは2回目?奥付を見ると2008年とあるので、26歳くらいの時に読んだらしい。思考の整理学を読んで、「すごい!」と思って、買ったと思う。 今年で90歳。でも、言っていることはとても新しい。 今、ビジネス書で盛んにテーマになっている、ライフハックとか、思考術とか、生活・仕事の中でクリエイティブを生み出す環境、生き方をデザインするという考え方を1970年代に書いていたところがすごいなーと思う。 =================================================== ▼いいね! 本を〝中絶〟癖。 〝面白すぎそうな予感があって怖くなるのである〟 面白すぎて、胸が高鳴るような本に出会うと読むのをやめるらしい。 良くわかるー! パンドラの箱を開けるような恐ろしさを感じて、読み進めるのが惜しい!と 思うことがある。 あと、時間に制限があったり、眠いとかいいコンディションでないときに、 あとで読むために読むのをやめるとか。 ▼論文を書くのは酒づくりと同じ。 自分が思ったこと、感じたこと×着想、視点 そこに時間の経過が加わって、学びは深化される。 寝かせて時間を置くのが大事。 ▼いいね!と思ったところを抜き書き =========================== 「月光会」 場所を自宅で持ち回りにして、集まって話す場。 1770年代のイギリスで開かれていた。 畑違いの学術研究者の集まりで、各自の関心事を話して 学び合う場。 ‘相手が畑違いのシロウトで、こちらの言っていることを批判する知識もなく、感心する側に回る方が好都合’ 異なる分野の人同士であるからこそ、各自が異なる領域から自分の関心事とつながることを見出して、各自学びを深める。 寺子屋塾での対話、先日のサスプログラムでの対話を思い出す。 〝近代文化は物事を細分化させた。専門に区切ってその中で深化を図る。異質なものとの触れ合いに欠けて、一般への展望を失いがちである〟 ○○カフェなどのフラットな場で、異質なものが出会う学びの場が盛んに展開されているけど、それを求める人々のニーズは200年以上前と今とで全く変わらないのだなー。
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『知的想像のヒント』 外山滋比古 人間にとって価値のあることは、大体において、時間がかかる。即興に生まれてすばらしいものもときにはないではないが、まず、普通は、じっくり時間をかけたものでないと、ながい生命を持ちにくい。寝かせておく。温めておく、そして、決定的瞬間の訪れるのを待つ...
『知的想像のヒント』 外山滋比古 人間にとって価値のあることは、大体において、時間がかかる。即興に生まれてすばらしいものもときにはないではないが、まず、普通は、じっくり時間をかけたものでないと、ながい生命を持ちにくい。寝かせておく。温めておく、そして、決定的瞬間の訪れるのを待つ。そこでことはすべて一挙に解明される。(p11) ★アドリブは過去の反復練習が「決定的瞬間」に表れているということ。日々の積み重ねということが大切。本当に。 ものを考えるのは、ものを覚えるというのとは違うけれども、頭の中にいろいろごちゃごちゃ詰まっている状態が望ましくないのは共通している。(p23) ★ごちゃごちゃかさばっているだけで、量や質ともになかったりするんだろうな。 なんとなくまとまらない気持ち、妙に心にかかること、気になることがあっては、落ち着いてものを読むこともできない。そんなときは散歩にかぎる。(p25) ★散歩の効用はわかるが、そのもやもやが消えるとは思えない。機会があれば。 本を読むと、その当座はいかにも知識が豊になったように感じられる。人間が高尚になったと思うこともあろう。ただし、本から離れると、やがてまたもとのモクアミに帰る(p34) ★よくわかる。本を読んで満足してはいけないのだ。そこがスタートラインでありたい。 考えの種子はしばらくそっと寝かせておくのである。その間に種子は精神の土壌の中で爆発的発芽の瞬間を準備する。中間のプロセスがはっきりしないだけに、そしてあらわれるときの状態が中途半端なものではなく、ほぼ完璧な形をしているだけに、着想はいかにも天来の偶然のように感じられるのである。(p56) ★寝かせるといのは著者の本の中に度々出てくる。それはキーワードなのだろう。 自由にものを考えようと思ったら、心の中は出家の状態にあることが望ましい。執着ほど自由な思考を妨げるのもはない。 (p94) ★物欲が強くなってきたので耳が痛い。執着なくしよう。 読むコツは、谷のところで読みささないで、山のところ、あるいは、山へさしかかるところで休止することである。(p110) ★読むということは習慣化されているのでよし。また仕事についても上記と同じことが言えるだろう。 批評はしたがって否定的想像活動ということになる。新しいものを生み出すひとつの方法ではある。……どこまでも書いてあることを信用し、おとなしくいわれるがままについていくやり方である。(p115) ★批評については詳しくない。小林秀雄を中心に勉強したい。また批評は視点を変えることであり、常にそういった視点は持っていたい。 AからJをそれぞれ別の紙片に書く。十枚のカードができるから、それを並べてひとつひとつにらむ。仲のよさそうなカードを隣におき、続き具合の悪そうなのは離してやる。こうしてあれこれ順列組み合わせをやってみて、これしかないという配列ができたら、その通りに大きな紙に貼りつける。 さらに、これとは別に、この問題について頭に浮かんだことをカードに書き写しておいたものを一面に並べて、さきの柱となるカード別にかるた取りの要領で集める。それぞれの親カードの下へ貼っておく。こうして設計図が完成する。これを見ながら書いていけば構造や理論がひどくおかしくなるということはすくない。(p126) ★長くなったがなるほど、合点がいく。ものを書く時にやってみたい。 感想に核を与えて新しいまとまりにするには異質な要素が添加される必要がある。(p140) ★論文や小説でも同じ。「新しいもの」が心を動かす。 機械的に全部写しとるよりも、要領よくまとまった概要(シノプス)をつくる方が、はるかに効果的である。ただ、重要なところを選び出すのは、丸々筆記sるよりはるかに難しい。つまり、価値観と選択能力が求められる。全部書きとるよりもメモを取る方が高度の知的作業である。いわゆるノート取りがすくなくなってきたのは、その点から見て慶賀するべきかもしれない。(p154) ★辻原教授の講義をひたすらノート取っていた自分には耳が痛い。教訓にしたい。
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んー、はっとする事が無くもないが、やっぱり大学の先生のゆったりした時間の流れのなかでの創造性の高め方なのかな。
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知識のインプットをするのが人間だけではなくなった今、人間にしかできない「考える」ことの重要さを著者は主張しています。 知識というと少しカタい感じがしますが、観たもの・聞いたものをどのように自分なりに消化するか。それが「考える」ことではないでしょうか。けれども、ものを「考える」...
知識のインプットをするのが人間だけではなくなった今、人間にしかできない「考える」ことの重要さを著者は主張しています。 知識というと少しカタい感じがしますが、観たもの・聞いたものをどのように自分なりに消化するか。それが「考える」ことではないでしょうか。けれども、ものを「考える」ということは案外難しい。この書籍には、そのためのヒントが書かれています。 これから論文を書こうと思っている学生のみなさんにおすすめなのはもちろんのこと、社会人の方々も一読の価値はあり!
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