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魔王 の商品レビュー

3.4

1354件のお客様レビュー

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    145

  2. 4つ

    421

  3. 3つ

    517

  4. 2つ

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  5. 1つ

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2023/02/09

私がこの小説から受け取ったメッセージは「流されるな、考えろ」だった。 解説にもあるが、安藤兄弟は、それぞれのやり方で危険な思想に傾く大衆の流れに逆らおうとしている。解説では、兄は情報を直視し、疑うことを武器に。弟は、情報から距離を置き、日常の平和を感じることで情報に右往左往する...

私がこの小説から受け取ったメッセージは「流されるな、考えろ」だった。 解説にもあるが、安藤兄弟は、それぞれのやり方で危険な思想に傾く大衆の流れに逆らおうとしている。解説では、兄は情報を直視し、疑うことを武器に。弟は、情報から距離を置き、日常の平和を感じることで情報に右往左往する世論に逆らおうとしていた。 自分には、2人のやり方がどちらも大切に感じる。常に批判的に考えることで、短絡的な結論を回避することも大事だし、膨大な情報から距離を置き、流行と相反する普遍的な幸せや平和を自覚することも大事だと思う。 ------ 犬養の言葉に、「お前たちのやっていることは、検索で思索ではない」とあった。これを読んだときにハッとさせられ、もう一つ似た言葉を思い出した。ニーチェは「本を捲ることばかりしている学者は、ついにはものを考える能力を喪失する」と言ったらしい。ネットで検索するにしても、本読むにしても、優れた考えを効率的に吸収できるかもしれないが、それが最適解であると信じ込むのは危険ではないかと思う。 ----- 安藤兄は、「でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決していけば世界が変わる。」と信じている。これは案外正しいのかもしれない。自分の考えを持たずに、周囲やネットの情報を信じてしまい、疑うことを知らなければ、たとえ失敗しても、その失敗を偶然と片付けてしまう気がする。逆に自分で考え、仮説を立て、実験を繰り返していけば徐々に仮説が質の高いものになっていく。 それに、受け売りの考えを脳死でひけらかす人よりも、やや偏見が混じっていても、不完全でも、経験に基づいた自分だけの考えを持った人の方が魅力的に写る。伊坂さんの作品に出てくるキャラクターが魅力的なのも、そういう不完全だけど芯のある人間性のようなものが要因である気がする。 ----- 最後に余談だが、猛禽類の定点調査をしているシーンは、本当に自分が広大な自然の中で青空を眺めているような気分になれて、気持ちが良かった。鳥の視点を借りた描き方も、人間てまは見ることができない景色を体験できて新鮮だった。

Posted byブクログ

2023/01/25

気づかないうちに集団が操られていく怖さを感じた。政治の話やはっきりしない結末から読了後のスッキリ感はあまりなかったけど、色々と考えさせられる大人向けの本だと思った。 世界を変えるために自分が動かないと、という兄の雰囲気や考え方が、砂漠の西嶋とすごく似ていた。

Posted byブクログ

2023/01/23

伊坂幸太郎さんの作品は大好きだ だけどこれはちょっと主題をうまくつかめなくて…読解力不足の自分のせいで星3つ   作中『ファシズム』って言葉がよく使われていて さて ファシズムってなんだったっけ…とネット検索する ああ そういえば世界史で習ったなと思い出す 私はもう一回 歴史を...

伊坂幸太郎さんの作品は大好きだ だけどこれはちょっと主題をうまくつかめなくて…読解力不足の自分のせいで星3つ   作中『ファシズム』って言葉がよく使われていて さて ファシズムってなんだったっけ…とネット検索する ああ そういえば世界史で習ったなと思い出す 私はもう一回 歴史を学び直した方が良さそうだ 何もかも忘れているのに 私は歴史が作った現代社会を平気で生きている…と反省   おそらく ファシズムであるところの全体主義的統治VS安藤兄弟の 微力ながら特殊能力でそれに抗う個人の力というのがこの物語のベースとなっているのだと思う  世の中が選挙で右往左往する中で 安藤兄弟の兄弟愛や弟潤也君とその彼女(後に妻になる)詩織ちゃんが 個々に それに流されずに自分らしく生きようとする姿が生々しくて好きだ  やはり 作中にはキラリと光る名文や ああ伊坂幸太郎さんの知識をまたひとつ得ましたよ!というエピソードが散見された 以下は本文より引用したもの 『他にはあれだ。正座していると足が痺れるだろ。びりびり。兄貴はあれをさ、コーラとかの炭酸と同じだと考えていたんだ。炭酸の泡も放っておくと、消えるだろ。 足の痺れも一緒だ。だから、コーラは足の中の細胞から作られているんじゃないかって、真面目に考えていたんだ。』 『向かって右側には与党の議員が、古株、中堅、若手、という順に並んでいる。別の表現で言えば、老獪、安定、熱気、という並びかもしれない。』 『この世の中で一番贅沢な娯楽は、誰かを赦すことだ』 『それ、誰の言葉?』 『ノーバディ・グッドマン』 『誰それ?』 『昔、アメリカで二十人を殺して、死刑になった男、だったと思う』 『そいつだけは赦しちゃ駄目だよ』 『子供の頃から潤也は、「ごきぶり」という名称が嫌いで、もちろんあの虫自体も毛嫌いしていたが、とにかく、 「ごきげんようおひさしぶり」と回りくどい呼び方を選んだ。最初と最後の文字を繋げると「ごきぶり」となるわけだ。』 『マザー・テレサの、「愛の敵は、憎しみではなく、無関心だ」というあの有名な言葉を思い出した。 『ほら、おかしいですよ。憲法で戦力放棄を謳っているくせに、軍隊を持ってるなんて矛盾ですって。どこの国も笑ってますよ。戦争放棄の憲法を持った国が、平然と軍隊を持ってるなんて、大掛かりな冗談じゃないですか。 憲法が前振りで、自衛隊がオチですよ』 (本文より)   シューベルトの「魔王」を聴いてみようかな 宮沢賢治の詩集を読んでみようかな 何か私も特殊な能力が開花するかもしれない そうそう『死神の精度』の千葉さんが出てた 彼がこの物語のキーマンなのかも知れない 安藤さんについて情報を多く知りすぎた読者の読解能力までひっくるめて調査してたかも知れない あぶない あぶない…

Posted byブクログ

2023/01/09
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※このレビューにはネタバレを含みます

なんだかよく分からないまま終わってしまった。なんかスッキリしない。『モダンタイムス』を読めばスッキリできるか。。。けどこれをただのフィクションとして終わらせてはダメだと思う。なかなか考えさせられる。千葉さんが現れた時点で安藤兄の運命は決まっていたか。

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2023/02/26

兄の能力は、面白いと思った。 マスターの能力は、恐ろしいと思った。 弟の能力は、心の底から欲しいと思った。 ストーリー展開は流石だなと思った。

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2023/01/05

伊坂幸太郎の政治がテーマの一つの作品。政治家の言動や思考がリアルだった。思ったことを他人に口に出させる能力を政治にうまく使えるようになるといいが、この能力で政治が良くなるようではいけない。 なかなかの課題を投げかけた小説であるように思える。

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2022/12/21

随分前に一度読んだ作品ですが、今読むと余計に面白く感じました。「政治家が賢いのと馬鹿なのでは、どっちが怖いんだろう」というセリフが印象に残りました。

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2023/01/08

20年近く前の作品だが、作中に出てくる政治の雰囲気が今と全く一緒なんだけど… 作者が未来予知しているのか、20年間政治が進歩していないのか 謎を撒き散らしてそのまま放置するから読後のモヤモヤがすごいある。 ☆2.3

Posted byブクログ

2022/12/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

検索であって 思索ではないって言葉が載っている小説 この物語に「魔王」と名付ける ここで言う「魔王」とは何か? 個人なのか 個人ではない何かなのか 何を考えるべき? 何があったのか 何を求めているのか この先どうなっていくのか オチではないところで 終わってしまったような気がするけど これがこの物語 結論を描いてしまうと 引きづられてしまうからこそ ここで一旦ページを終える物語

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2022/11/16

念じた相手に自分の考えを言わせる能力を持っている男性。 日本国民が憲法改正や議員選出を雰囲気で決めてしまう風潮を憂いて、この能力を使って食い止めようと試みる。 友人や同僚の世論に流される様子をファシズムの成り立ちに照らし合わせて論じ、危機感を訴えるような話でした。 ストーリー半分...

念じた相手に自分の考えを言わせる能力を持っている男性。 日本国民が憲法改正や議員選出を雰囲気で決めてしまう風潮を憂いて、この能力を使って食い止めようと試みる。 友人や同僚の世論に流される様子をファシズムの成り立ちに照らし合わせて論じ、危機感を訴えるような話でした。 ストーリー半分、論説半分の作品で正直面白みを感じられませんでした。

Posted byブクログ