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魔王 講談社文庫
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商品詳細
| 内容紹介 | 「死神の精度」の著者が贈る、不思議な能力をもつ男の話。会社員の安藤は弟の潤也と2人暮らし。ある時、自分が念じるだけで、それを相手が必ず口に出す能力を持つと気づく、そして安藤は1人の男に近づいていった。何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語がここに‥。 |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 講談社 |
| 発売年月日 | 2008/09/11 |
| JAN | 9784062761420 |

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商品レビュー
3.4
1395件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
魔王とは、主に米国からの日本の脱却を目論む強い思想を持った犬養のことを指していると思っていた。読み進めていくにつれて、自分の中で様々な魔王候補が上がったが、読了後最終的には犬養支持派の群集が魔王のことを指しているのではないかと感じた。物語の中では犬養の言葉を表面的に受け取った群衆が実際には関係のない帰化人の家や米国生まれの店を燃やしたりなど過激な行動をとっていた。犬養自身が狙っていた可能性も否定できないが、狙ってたにせよ、情報の取捨選択ができない群集、集団心理の怖さみたいなのを感じた。本書発売当時の時代の風刺的な意味もあるのだろうが、これを読んだ2025年現在にも同じ恐怖を感じることがある。まずは主人公兄弟のように自分の考えを持てるような人間になりたい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
これが2005年に書かれた作品ということにまず驚き。話題性のある新しい野党、憲法改正、日米関係と、ここ最近のトピックにも思えてしまう話題が登場する。(解説文にもある通り、それだけ政治というものが同じ事を繰り返しているのかもしれないが。) 結局のところ「魔王」とは何者なのか?カリスマ性を発揮し世論を突き動かす政治家・犬養なのか、他人の発言を一息分だけ意のままに操る「腹話術」を手に入れた兄・安藤なのか、安藤を死に至らしめたドゥーチェのマスターなのか……。あるいはここに描かれる突飛な特殊能力は全て安藤の病による妄執で、それこそが魔王なのかもしれない。 物語が進むにつれ、疲弊と錯乱を見せる安藤の視点で話が進むので、何を信じてよいのか分からない。その点で、読者側も安藤の疑心暗鬼を追体験するのが面白い。 後半は『魔王』の物語の5年後の弟・潤也の姿を、妻となった詩織の視点で描く『呼吸』は、その視点の穏やかさが不穏なシーンを一層際立たせる。兄の死後能力に目覚めた潤也こそが魔王なのか?明示こそされないが、詩織の身の回りに少しずつ巻き起こる奇怪な現象が、安藤の腹話術や彼が見た幻を思わせるものというのが空恐ろしくも面白い。 魔王の正体は作中では明らかにならないが、それこそがこの作品の本質のようにも思える。 魔王とは特定の一人物の姿をしておらず、この世界すべてを覆う暗雲のようなもので、我々は知らず知らずのうちに魔王に操られているのではないか? 群衆という名の暴力に対して個の力はあまりに無力で、それでも安藤兄弟は一人で戦うことを選んだ。その是非・正解は無論示されない。〈でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決していけば〉。個の力に出来るのはそれしかなくて、それで良いのかもしれない。
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表題作の「魔王」とその5年後を描いた「呼吸」という構成。 「魔王」は、念じたことを相手に喋らせることのできる能力を持つ安藤が、危険な政治思想と戦う物語。「呼吸」は、5年後、安藤の弟の潤也の物語。 単行本は2005年の刊行。この頃の伊坂さんは神がかっていて、何を読んでも面白かっ...
表題作の「魔王」とその5年後を描いた「呼吸」という構成。 「魔王」は、念じたことを相手に喋らせることのできる能力を持つ安藤が、危険な政治思想と戦う物語。「呼吸」は、5年後、安藤の弟の潤也の物語。 単行本は2005年の刊行。この頃の伊坂さんは神がかっていて、何を読んでも面白かったなぁ。
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