ドキュメント死刑囚 の商品レビュー
2008年6月、宮﨑勤に対して執行された死刑に余程憤ったのか「死刑囚にだって最低限の人権や人格はあるはずだ」「死刑囚の人権や人格を究極に否定する行為が、死刑執行ではないのか」といきなり始まる、そういうスタンスで書かれた本。 死刑や無期懲役を言い渡された犯罪者に積極的に交流をしてそ...
2008年6月、宮﨑勤に対して執行された死刑に余程憤ったのか「死刑囚にだって最低限の人権や人格はあるはずだ」「死刑囚の人権や人格を究極に否定する行為が、死刑執行ではないのか」といきなり始まる、そういうスタンスで書かれた本。 死刑や無期懲役を言い渡された犯罪者に積極的に交流をしてその心の内側に迫ろうとする著者。 主に取り上げられているのは、宮﨑勤、小林薫、宅間守といずれもセンセーショナルな事件を起こした死刑囚。 犯罪を起こした背景を掘り下げず抹殺するだけでいいの? 死刑を望んだ犯罪者に死刑を与えることの矛盾、とかいろいろ言いたいことはわかったのですが。 うーん……。 あまりにもこの人は犯罪者の心に寄りすぎてるなあ、という印象でした。 手紙をやりとりして、世間で極悪人と呼ばれる人間たちの心に触れて、ちょっと懐かれでもしたら情もわくのはわかるけど。 家庭環境にちょっと問題がある人なんていくらでもいる。 ちょっと心がささくれて生きるのがつらい人だっていっぱいいる。 それでも、大多数の人間は人を殺すなんてことはしない。ましてや死体に残虐な行為なんてできない。 その一線を越えてしまった時点で、罪を償うとか死んで詫びるとかそういう話じゃないと思う。 命を奪うことは取り返しのつかないことなのだから。 犯罪者として世間に注目されて、身勝手な持論をかまして、たまに自分に寄り添う人間が出てきてくれて。 そんなの理不尽だ。 殺された子たちは何もできないのに。 喜びも悲しみも、怒りもなにももう感じられないのに。 秋葉原の加藤もこの人にしてみたら、心の闇が見えてくるのかな。 彼の孤独や閉塞感に共感した人は結構多いと思う。 つまり、それくらいありふれた感情なんだ。彼が特別なんじゃない。 でも多くの人は、思い余ってだれかを傷つけたりしない。 それって人が社会で生きていくための最低限の資格だと思うんだけど。
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そんなにおいそれと、トラウマ引っ張り出しては いけないと思うのだけれども、 彼らは、犯罪そのものを、犯罪を犯した人間そのものを 深く掘り下げて、再発を防ごうとしていると語る。 掘っても掘っても、深い闇があるだけだったりする し、変わらないことも多いのだけれど、 「...
そんなにおいそれと、トラウマ引っ張り出しては いけないと思うのだけれども、 彼らは、犯罪そのものを、犯罪を犯した人間そのものを 深く掘り下げて、再発を防ごうとしていると語る。 掘っても掘っても、深い闇があるだけだったりする し、変わらないことも多いのだけれど、 「罪を犯した人間を抹殺して忘れたら解決する なんてことはありえない。 」 ということだけはよくわかった。 理解できないことだからと、蓋をしてしまっても どうしようもないのだろうな、と。
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著者が深く関わってきた死刑囚とのやりとりをもとに、死刑制度に疑問を投げかける一冊。 「犯罪抑止効果がある」という死刑への凝り固まった考えをほぐそうというのが目的のよう。 でも私は責任能力とか、反省するとか、償うべきとか、犯罪に対して思わない。 起こした事実とイコールの罰を受ける...
著者が深く関わってきた死刑囚とのやりとりをもとに、死刑制度に疑問を投げかける一冊。 「犯罪抑止効果がある」という死刑への凝り固まった考えをほぐそうというのが目的のよう。 でも私は責任能力とか、反省するとか、償うべきとか、犯罪に対して思わない。 起こした事実とイコールの罰を受けるべきだと思うので。
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「自ら死刑を望んで罪を犯した人間を死刑にすることが、本当に処罰になるのか」という著者が以前から抱いていた疑問を、実際に死刑囚と文通しながら考察していった本。 もちろんこの本の中で上記の答えが出るわけではないし、「罪を償うこととはどういうことなのか」という疑問はさらに深まる。しかし...
「自ら死刑を望んで罪を犯した人間を死刑にすることが、本当に処罰になるのか」という著者が以前から抱いていた疑問を、実際に死刑囚と文通しながら考察していった本。 もちろんこの本の中で上記の答えが出るわけではないし、「罪を償うこととはどういうことなのか」という疑問はさらに深まる。しかしそこは急がず、死刑囚の心境などを丁寧に時には手紙を原文のままに提示することで、読者にも更に考察する機会を与えてくれている。改めて「死刑の是非」「罪を償うこととは」等の問題提起を促す好著だと思った。
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ある死刑囚達の報道では知ることができなかっただろう、ドキュメント。 ここに登場する死刑囚。 宮?勤(幼女連続殺害事件) 小林薫(奈良女児殺害事件) 宅間守(池田小無差別殺傷事件) 記憶にも新しい、事件。 それぞれの死刑囚の マスなメディアからでは知ることができなかった 内...
ある死刑囚達の報道では知ることができなかっただろう、ドキュメント。 ここに登場する死刑囚。 宮?勤(幼女連続殺害事件) 小林薫(奈良女児殺害事件) 宅間守(池田小無差別殺傷事件) 記憶にも新しい、事件。 それぞれの死刑囚の マスなメディアからでは知ることができなかった 内容が、ここには書かれており、非常に考えさせられた。 裁判員制度が開始されるのか・・・ この本の中で、事件の衝撃的な描写もあるが、 一番、印象に残っているのは 小林薫が寄稿した記事の中に 「子供と一緒に食卓に着き団欒のひと時を過ごしてください。」 「子供の話を聞いてあげてください」 「子供を信じてあげてください」 「子供と遊んであげてください」 「子供を叱る時、何で叱るのか、何が悪いのかを言い聞かせて教えてあげてください。」 「子供が2人、3人といるなら平等に接してあげてください」 という、自らが父親に望んでいた事を、子供を持つ全ての親に宛てて書いていたこと。 むーん。。。
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ジャーナリストである著者が、宮?勤、小林薫、宅間守といった、世間を震撼させた殺人犯たちとの文通や接見あるいは弁護士等を通じた情報収集に基づくドキュメント。 マスコミの一面的な偏向報道では窺い知ることのできない、事件へと至る経緯から拘置所における様子、死刑執行までを追いかけ、凶...
ジャーナリストである著者が、宮?勤、小林薫、宅間守といった、世間を震撼させた殺人犯たちとの文通や接見あるいは弁護士等を通じた情報収集に基づくドキュメント。 マスコミの一面的な偏向報道では窺い知ることのできない、事件へと至る経緯から拘置所における様子、死刑執行までを追いかけ、凶悪殺人犯のリアルな素顔に迫る。 著者は中立的な表現を保っており、死刑制度の是非やその在り方について、どうすべきかという判断を示してはいないが、自然に読者に問題を提起し問いかけてくるような内容になっている。そのため、死刑囚の状況について単に裏側を知るということに留まらず、死刑という制度について否応なく考えさせられる書となっている。 かく言う私は、死刑制度に対しては「肯定」という単純な考え方しか持ってこなかったが、この作品を読了し、考えが90度変わった。90度であるのは、死刑制度を肯定とも反対とも判断できなくなったためである。ただ、この作品を読んで間違いなく言えると感じたことは、凶悪殺人に至るには必ず原因があるということだ。それは、他人には理解しがたいこともあるだろうが、原因やきっかけがあるものだ。それを、マスコミの報道のように一面的に先入観を持って捉えず、よく考えることが重要なのではないだろうか。
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雑誌「創」の編集長と2名の死刑囚との交流記、また別の死刑囚と獄中結婚をした女性の手記等を通じて分析する、「死刑囚」という人々。 昨今加速する「死刑執行熱」のようなものにブレーキをかけるような内容。「真実」がなんであるかを明らかにしない司法に、意味はあるのだろうか。
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死刑囚の収監後の様子がよくわかる。犯罪の内容よりも、死刑囚の生活背景、特に「家族」、「解離性」をテーマにしている。テーマ的にもっと厚く濃密であっても良かったんじゃないか。
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死刑制度はなぜあるのか?ということを考えさせてくれる本です。 感情論で「だれそれは死刑だ!」と思っていたことを反省しました。 もちろん、被害者の感情も加味しなければなりませんが、 本当に考えなければいけないことは、刑を執行することではなくて 犯罪を未然に防ぐためにはどうしたらよい...
死刑制度はなぜあるのか?ということを考えさせてくれる本です。 感情論で「だれそれは死刑だ!」と思っていたことを反省しました。 もちろん、被害者の感情も加味しなければなりませんが、 本当に考えなければいけないことは、刑を執行することではなくて 犯罪を未然に防ぐためにはどうしたらよいかを考えなければいけないわけです。 そのためには、加害者がなぜ、凶行に走ったかを調べる必要があるわけで こういう難問に対して、きちんと向き合わなければいけないと思います。 裁判員制度や、死刑廃止論など、司法に注目が集まっているからこそ こういう本を広めるべきだと思います。
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この本に登場する3人の死刑囚、宮崎勤・小林薫・宅間守は事件の残酷さと更正の可能性から、多くの人は死刑を当然だと考えているだろう。 著者は雑誌編集者の立場で獄中の彼らと取材を行い、そのやりとりを通して、死刑を前にした彼らの内面に迫る。「死刑」が罪の償いとして、どのような影響力を持...
この本に登場する3人の死刑囚、宮崎勤・小林薫・宅間守は事件の残酷さと更正の可能性から、多くの人は死刑を当然だと考えているだろう。 著者は雑誌編集者の立場で獄中の彼らと取材を行い、そのやりとりを通して、死刑を前にした彼らの内面に迫る。「死刑」が罪の償いとして、どのような影響力を持つのかを考えさせられる。 残虐な事件が起こるたび、加害者が死ぬことで償う「死刑」は刑罰として妥当なのか、よく論じられる。しかし、今の報道は事件と犯人の特異性を強調するだけで、その結果、死刑はやむを得ずといった印象を与えている。 死刑を論議するなら、著者のように死刑囚の内面を掘り下げ、死刑が彼らに与えた影響を分析する必要はあるだろう。その結果、被害者遺族を逆なでするかも知れないにしても。 とはいえ、3人の死刑囚の異常さだけが印象に残る本でもある。
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