1,800円以上の注文で送料無料

負けるのは美しく の商品レビュー

4.1

45件のお客様レビュー

  1. 5つ

    12

  2. 4つ

    21

  3. 3つ

    8

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2012/04/11

児玉清『負けるのは美しく』(2005/2008文庫版)を読む。 タイトルがいい。    どうせ勝利感を得られないのなら、    また明確な勝利を望むべくもないのなら、    いっそ、せめて美しく負けるのを心懸けたら、どうなのか、    そう考えたとき、     はじめて心に平和...

児玉清『負けるのは美しく』(2005/2008文庫版)を読む。 タイトルがいい。    どうせ勝利感を得られないのなら、    また明確な勝利を望むべくもないのなら、    いっそ、せめて美しく負けるのを心懸けたら、どうなのか、    そう考えたとき、     はじめて心に平和が訪れた思いがしたのだ。    心の中にあったもやもやと苦渋の塊は    決して霧散はしないが、    何よりもの俳優として生きる心の励みと戒めとなったのだ。    爾来、「負けるのは、美しく」は僕のモットーとなった。                           (p.288) 本書は児玉が俳優になったきっかけから70台を迎えたときまで、 俳優人生を綴ったエッセイである。 巻末第5章には2002年に37歳で天に召された娘について書いた 「天国へ逝った娘」を収録している。 密度の濃い、けれど軽快なリズムを持つ児玉の文章は 並外れた読書量の産物だろう。 思い通りにならないことの方が遙かに多かった俳優人生を 慰めてくれたのは本だった。 児玉は翻訳本を読み尽くし、英文原書の世界に飛び込んでゆく。    英語を読み解く冒険の楽しさと    原作の小説の面白さが重なるのだから、    翻訳本を読むより喜びの深さが倍増する。    新しい発見は、英文を読んだときに、    頭の中にぱっと閃く意味の、得もいわれぬ感覚だ。    あとで、懸命に智恵を絞っても日本語の文章にならない、    読んだ瞬間の意味の知覚だ。    日本の言葉にできない知覚に陶然としてしまうのだ。                          (p.237) 英語を学ぶ者として励みにもなり、 かつ高みでもある児玉の境地である。 読者へのサービスとして各エッセイに 児玉が小説から引用したワンセンテンスの英文が掲載されている。 俳優としての児玉の存在感には物足りなさを僕は感じていたが、 彼の持つバックステージの豊かさ、潔さには感銘を受けた。 (文中敬称略)

Posted byブクログ

2012/02/21

ご本人には大変申し訳ないのですが、著者より先に、モノマネ芸人さんでキャラを知ったクチです…私見ですが、このタイプの役者さん(他には、石坂浩二とか?)は、この先はもう新たに出現する可能性が無さそう。本当の意味でインテリというか、知性と品性を兼ね備えた雰囲気が、今の若い人にはもう無い...

ご本人には大変申し訳ないのですが、著者より先に、モノマネ芸人さんでキャラを知ったクチです…私見ですが、このタイプの役者さん(他には、石坂浩二とか?)は、この先はもう新たに出現する可能性が無さそう。本当の意味でインテリというか、知性と品性を兼ね備えた雰囲気が、今の若い人にはもう無い。良いとか悪いとかではなく、事実としてもうそういう文化は失われつつあるんじゃないかな?と思います。

Posted byブクログ

2012/09/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

俳優 森雅之さんと共演したときのエピソード「宙(そら)を見ていた」を読んでいたら泣けてきた。当時の自らの振舞いを悔いる著者・児玉清がなんともよい。児玉さんは2011年に亡くなられたが、その死を惜しむファンが多い理由がよくわかる。

Posted byブクログ

2011/12/06

今年5月に惜しまれつつ亡くなつた児玉清さん。こんな本を引つ張り出し哀悼の意を表するものであります。 児玉さんは東宝専属の俳優だつたのですが、東宝時代の出演映画は、わたくしあまり観てゐないのです。 せいぜい「電送人間」(冒頭のお化け屋敷の客で出てくる)、「悪い奴ほどよく眠る」、「日...

今年5月に惜しまれつつ亡くなつた児玉清さん。こんな本を引つ張り出し哀悼の意を表するものであります。 児玉さんは東宝専属の俳優だつたのですが、東宝時代の出演映画は、わたくしあまり観てゐないのです。 せいぜい「電送人間」(冒頭のお化け屋敷の客で出てくる)、「悪い奴ほどよく眠る」、「日本海大海戦」くらゐですかな。無論追悼上映をしたのであります。イイ。 さて本書はその児玉清さんのエッセイ集。その文才については、今更わたくしが喋喋するまでもございますまい。そのたたずまひ同様、清冽で贅肉をそぎ落としたやうな文章ですね。同時に温かみを感じます。 東宝に入社するに至つた経緯の「母とパンツ」に始まり、屈辱の経験から俳優として見返してやらうと決意する「雑魚と雑兵」など、下積みの苦労を綴つた文章が多い。 また、共演の山茶花究さんや信欣三さんの意外な一面など、初めて知る秘話もあります。信欣三さんは面白すぎます。 最終章「天国へ逝った娘」では、36歳の若さで他界した娘さんのことを語つてゐます。 正直、涙なしには読めぬ辛い文章であります。それにしてもこの病院は酷い。児玉さんも言ふやうに、死期が迫つてゐる患者だからと気軽に人体実験まがひのことをしたのではないか。義憤を感ずると同時に、一般に病院とはかういふものかと恐怖も迫るのであります。 しかし、児玉さんも娘さんの元へ行く。きつと再会したであらうと思へば、救ひはあるでせう。 尚本書は、著者の没後に再び注目を浴びたやうですので、入手は容易と申せませう。では。 http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-248.html

Posted byブクログ

2011/12/04

児玉清さん、博学な人というのはこういう人のことを指すのだと良くわかった。お書きになった文章や一つ一つのエッセイに添えられた英語の引用などを通して、幅広い知識をお持ちであることが窺い知れる。 児玉さん若かりしころの、映画業界の裏話はとても興味深い。 唯一、読んでいて辛くなるのは、...

児玉清さん、博学な人というのはこういう人のことを指すのだと良くわかった。お書きになった文章や一つ一つのエッセイに添えられた英語の引用などを通して、幅広い知識をお持ちであることが窺い知れる。 児玉さん若かりしころの、映画業界の裏話はとても興味深い。 唯一、読んでいて辛くなるのは、若くして亡くなられた娘さんの闘病の日々を記した章。一人の親、一人の人間としての苦悩が、包み隠さず、とても正直に書かれていて、読んでいる人の胸を打つ。

Posted byブクログ

2011/11/18

アタック25の司会者だった故・児玉清さんのエッセイ。文体とセンスが美し過ぎる。大人というのはなんと繊細な存在なのか。生前を全然知らなかったことが悔やまれる。人生の滋養を知りたい人はぜひ読んでください。

Posted byブクログ

2011/12/16

当事者は、今やっているまさにその最中は、夢中でその中に隠れているいろいろなことに気づく暇がない。そういったことは以前にも言葉にしたことがあった。 http://plaza.umin.ac.jp/~shiro/cgi-bin/46_mt_essay/2007/05/notremid...

当事者は、今やっているまさにその最中は、夢中でその中に隠れているいろいろなことに気づく暇がない。そういったことは以前にも言葉にしたことがあった。 http://plaza.umin.ac.jp/~shiro/cgi-bin/46_mt_essay/2007/05/notremid.html その後振り返った時に、後から意味を見いだす。おそらくエッセイを読むというのは、他人がそうして振り返っている姿に寄り添うことだと思う。さらにその姿を参考にこれまでの自分自身について振り返り、自分自身の体験に意味を見いだすのが、エッセイの醍醐味だと思う。   この文章で児玉さんが歩んだ俳優としての道を一緒に振り返る姿のなかで、印象に残ったこと。 「傲慢でいることの傲慢さーくり出せなかったパンチ」 「背中に見た哀しみと大人振りー宙を見ていた」 なかでも、自身の立場故に怒りを感じないでいられなかったのは、娘さんの癌闘病を綴った一節「すべて焼滅した」だった。こんなことはあってはならない。優しさが見え隠れする児玉さんの真っすぐな怒りとやりきれなさが伝わり、悲しくなった。 自身の俳優体験が軸でありながら、いつも描かれているのは、その視点から見た周りにいる人の姿であり、それに畏れ入る児玉さんの姿だった。 とてもその佇まいは謙虚で、選び抜いた言葉で綴り、しかし自分への自信も忘れない。「負けるのは美しく」座右の銘が表す姿を生き抜いたのだと思う。

Posted byブクログ

2011/09/03

文章がうまい。表現力に優れている。そして改行が少ない。 児玉さんは、本当はもっともっと書きたかったのだけれど、ページの限られた文字数に苦心されたのではないかと思う。 児玉さんはたくさん本を読み、かつ、書き下す能力、インプットアウトプットに優れている人である。 それは俳優業にも大...

文章がうまい。表現力に優れている。そして改行が少ない。 児玉さんは、本当はもっともっと書きたかったのだけれど、ページの限られた文字数に苦心されたのではないかと思う。 児玉さんはたくさん本を読み、かつ、書き下す能力、インプットアウトプットに優れている人である。 それは俳優業にも大いに役立ったのだろうと思う。 ご冥福をお祈りします。

Posted byブクログ

2011/08/31

俳優・児玉清が書いた自叙伝。 ひょんなことから俳優となった人生の、思い出深い部分を切り取って一生を振り返った作品。 もともと俳優になるつもりは毛頭もなく、母の死によって1年だけつなぎのつもりで芸能の世界に入った。しかし、ある言葉をきっかけに俳優として名を残すため10年は頑張ろう...

俳優・児玉清が書いた自叙伝。 ひょんなことから俳優となった人生の、思い出深い部分を切り取って一生を振り返った作品。 もともと俳優になるつもりは毛頭もなく、母の死によって1年だけつなぎのつもりで芸能の世界に入った。しかし、ある言葉をきっかけに俳優として名を残すため10年は頑張ろうと必死にしがみつき、やがて名俳優となっていっく。 人生訓めいたことは一切書いていないが、自分の人生にあったことを忠実に文字におこしている。それだけにぐさっと胸にささるような言葉はないが、彼の信念「負けるのは美しく」というものを感じられた。

Posted byブクログ

2011/08/25

【きっかけ】 JBpressの記事 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/19562

Posted byブクログ