欲望という名の電車 の商品レビュー
アメリカの人種対立を描いた戯曲。南部地主階級、白人労働者層(アイリッシュ、ポーラック)、メキシカン、アフリカ系アメリカ人、それぞれの生活がモザイクのように重なり合う世界がニューオリンズを舞台に展開されている。1951年発表にして、せまいアパートにも冷蔵庫がありラジオがあり、バスル...
アメリカの人種対立を描いた戯曲。南部地主階級、白人労働者層(アイリッシュ、ポーラック)、メキシカン、アフリカ系アメリカ人、それぞれの生活がモザイクのように重なり合う世界がニューオリンズを舞台に展開されている。1951年発表にして、せまいアパートにも冷蔵庫がありラジオがあり、バスルームがあり、ボーリングや深夜映画が最盛という大衆消費社会である。南部の没落を乗り越えて、下層白人が豊かになっていく。その豊かさは、そのままアメリカの黄金時代(フィフティーズ)へと続く。
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たとえサーカス芝居でも どんないかさま舞台でもー 嘘もまことになるのよ ただ 私を信じたら! ミスブランチという人物は上記の言葉に集約されている。 彼女は真実を嫌い、真実であらねばならないことを語る。 バーチャルな世界がどんどん現実に差し込んでくる現代、ブランチのように現実を...
たとえサーカス芝居でも どんないかさま舞台でもー 嘘もまことになるのよ ただ 私を信じたら! ミスブランチという人物は上記の言葉に集約されている。 彼女は真実を嫌い、真実であらねばならないことを語る。 バーチャルな世界がどんどん現実に差し込んでくる現代、ブランチのように現実を直視することを忌み嫌う人が多いのではないだろうか。アイドルなどの偶像もまたそう。 仮にロボトミー手術が現代にも通用するのであれば、たくさんの患者が日本にいるだろう。 ブランチのような結末ではない結末は他にあるのだろうか。つまり夢物語に乗せられた幸福を送り続けること。
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※このレビューにはネタバレを含みます
この作品の持つ強いリアリティが、劇の進行と共にしだいに暗い影を落とし、やがては陰惨なまでの様相を帯びてくるまでになる。それほどに、この劇の推進力は大きい。とはいっても、劇中にこれといった事件が展開する訳ではない。すべては心理劇であり、それが圧倒的な力でブランチを追い詰めて行くのだ。そして、それはまたアメリカ南部の没落農園主の2人の娘たちと、ポーランド系移民の男スタンリー、それぞれの内的な葛藤をも描き出してゆく。ニューオリンズを舞台に選んだこと、そして背景に流れる音楽もまた大きな効果を上げているだろう。
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恩田陸さんの「チョコレートコスモス」に出てきた戯曲で、面白そうだったので。 途中までは主人公のブランチに共感出来て、そこそこ楽しく読めました。 けど最後のあたりは、ブランチがだんだんと壊れていく描写が怖すぎました……。 けど物語に全体に漂う陰鬱とした雰囲気は嫌いじゃないです。 ...
恩田陸さんの「チョコレートコスモス」に出てきた戯曲で、面白そうだったので。 途中までは主人公のブランチに共感出来て、そこそこ楽しく読めました。 けど最後のあたりは、ブランチがだんだんと壊れていく描写が怖すぎました……。 けど物語に全体に漂う陰鬱とした雰囲気は嫌いじゃないです。 基本的に、登場人物達が内面で悶々と悩むものが好きなのかな。 サリンジャーとかチェーホフとか。 テネシー・ウィリアムズは、作者本人がそんな感じですよね。 実際、名声を得ながらも孤独感を生涯背をいつづけて、私生活も荒れてたらしいし。 ブランチは自分自身であると言っているように、まさにブランチも内面に孤独感や不安感を持ち続けている人。 そんな人が私は堪らなく好きなんだよなぁ…
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「欲望という名の電車」なんて題名からわかるように、とても象徴的なおはなし。テネシー・ウィリアムスの作品はなぜだかわからないけど、そのストリーがいつも頭の中で煤けた壁に映し出される8ミリフィルムみたいになって流れだす。ことばがクリアにイメージされるんじゃなくて、うす汚れた鏡にことば...
「欲望という名の電車」なんて題名からわかるように、とても象徴的なおはなし。テネシー・ウィリアムスの作品はなぜだかわからないけど、そのストリーがいつも頭の中で煤けた壁に映し出される8ミリフィルムみたいになって流れだす。ことばがクリアにイメージされるんじゃなくて、うす汚れた鏡にことばがうつしだされるような、そんな不透明だがなぜか惹きつけられるような、そんな不思議なイメージの世界。たぶん劇中に流れる音楽であるとか、幕にはられた紗のカーテンとか、作品を象徴化するような舞台装置と、ことば自体によって語れる薄汚れながらも哀愁を感じさせる世界観、そういったものが混じりに混じって彼の作品の魅力を形成しているのだと思う。多分「ガラスの動物園」は、そんな魅力がたくさんつまった作品だ。ただ、「欲望という名の列車」について語るときは、それだけではどうも不十分なような気がしてくる。テネシーは明らかに、処女作の「ガラスの動物園」の延長線上に、そしてそれを突きやぶるかたちでこの作品を書いている気がする。彼が「ガラスの動物園」で「現実の残酷さ」の暗い波を足下ちかくまで忍ばせながらも、ただ一人最後までそれにつかることなく、ひとり美しいまま物語を閉じたローラを、今作は、その例外さえも飲み込むように、「欲望」という列車にのせ、否応なく現実の粗暴さに対面させようとしている。労働者階級と資本家階級、決して交わることがなかった両者がついに完全に向き合わされるとき、ブランチ、いやローラは、混沌に陥り、狂気するのである。そしてその狂気を、象徴性を突き進めるかたちによって描くことで(例えば本作では音が狂気を増幅させるために使用される)、まさに前作でガラスに例えらたれうつくしさが、まるで蝶番が反転したかのように、グロテスさや現実の生々しさに変容する。ぼくはその変容におそれおののきながら、「ガラスの動物園」で描かれていたあのはかないうつくしさは、狂気と隣り合わせであったからこそうつくしさなのだと、いまさらながら気づかされた。( 欲望=ブランチ not スタンリー)
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生まれてはじめて読んだ戯曲。舞台はアメリカのニューオリアンズ。落ちぶれた名家の娘ブランチは、妹とその夫スタンリーの暮らす家に身を寄せる。「古き良きアメリカ」の時代を引きずりブランチと「新しいアメリカ」の価値観に生きるスタンリーの対立を軸に悲惨な物語が展開される…。 残酷な時代...
生まれてはじめて読んだ戯曲。舞台はアメリカのニューオリアンズ。落ちぶれた名家の娘ブランチは、妹とその夫スタンリーの暮らす家に身を寄せる。「古き良きアメリカ」の時代を引きずりブランチと「新しいアメリカ」の価値観に生きるスタンリーの対立を軸に悲惨な物語が展開される…。 残酷な時代の変化についていけない人の厳しい宿命を感じた。ブランチはあまりに繊細で、新しい時代を受け入れられなかったんだと思う。人間には輝かしい過去を捨て、厳しい現在を生き抜くしたたかさが必要なんだと思う。
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新聞で紹介されていたので興味を持っ…たらシナリオですかorzって思ったけど、ちゃんと話が繋がってきちんとひとつの物語が再生されてくれました。DVD借りて観たいな~と思います。始終テンションが高いので、疲れちゃいそうだけど。
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そこに神はいない。 わが身を守るのに必死な生き物がいるだけ。 悪臭がただようほど装うのも、皮膚がひきちぎれるほどむきだしにするのも、ただ傍観しているのもすべて同じこと。 弱者の中でも、序列ができるのは自然の摂理だ。 どんなに科学技術が進歩しても、人間の性は変わらない。 これは10...
そこに神はいない。 わが身を守るのに必死な生き物がいるだけ。 悪臭がただようほど装うのも、皮膚がひきちぎれるほどむきだしにするのも、ただ傍観しているのもすべて同じこと。 弱者の中でも、序列ができるのは自然の摂理だ。 どんなに科学技術が進歩しても、人間の性は変わらない。 これは10世紀の話でもあるし、21世紀の話でもある。
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・恩田陸「チョコレートコスモス」で使用されていた題材なので読んでみる。 ・アメリカ文学の面白さに気づかせてもらえた。 ・脚本的なのも面白い。想像して読みやすい。 ・ブランチに自身を心を合わせて同情してしまう。
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ブランチの悲劇。 ブランチの生き方に突っ込みどころは数多くあるのだが、もし現代に彼女が生きていたら、それなりに幸せをつかめた可能性がある気がする。 当時のアメリカの価値観が彼女を不幸に追いやった感じがある。 由緒ある家柄に生まれ、16歳の時結婚するも彼が「普通の男」でなく、(彼は後に自殺する)名家の屋敷は次々と人が死んでゆく。その時彼女が見たのは生と死の間の断末魔の声。彼女曰く「死」の攻撃。 そのあげく金も尽きベル・リーヴ(屋敷)をなくす。 その後さらに彼女は奈落の底に落ちていく。 ー強い女になれなかった、弱い人間は強い人間の好意にすがって生きていかなければならないのよー と嘆くように彼女は数々の男達との「性」によってなんとか生きながらえる事になる。 さらにこれは謎だが、教師でありながら16歳の少年と繋がってしまう。そして町を追い出される。 そこからは妹のステラを頼ることになるが、スタンリーとの確執が始まる。最終的に彼女は精神異常ということで病院送りにされてしまうのだが、彼女はそれにしても最後までよく頑張ったなと思うのだ。彼女は弱い弱いと言いながら絶望の淵まで叩きのめされない。ギリギリのところで耐えている。彼女にはまだ望みがあるからだ。 シェップ・ハントレーと言う大富豪からのお誘いを待つという希望が。 彼女を支えているのはつまり「幻想」なのだ。 思考は実現しなかった・・・
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