漂流 の商品レビュー
江戸時代に、船が難破して無人島に流れ着き、そこで長年暮らしてきた男たちの壮絶な話を史実に基づいて描いている。長平を始めとして、絶望と希望を持って生き抜き、最後は船をこしらえて、島を出るまでの過酷な毎日はとても感動的だ。
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江戸、天明の時代。 航海に出て難破。 辿り着いた先は、絶海の孤島。 無人島で約十三年、生き抜いた一人の男がいた。 まるで側にいて、その男の一挙手一投足を見ていたかのような、克明な描写。 吉村昭には毎回、その取材力に驚かされる。 正に、サバイバルドキュメンタリー。
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※このレビューにはネタバレを含みます
ラジオクラウドで赤江珠緒のたまむすびを聞いている。 ピエール瀧がまだコカインで逮捕されなかった頃に、ふたりでこの本の話をしていて、ずっと頭の片隅に残っていたのだ。 吉村昭は「戦艦武蔵」「関東大震災」「羆嵐」「ふぉん・しいほるとの娘」「破獄」などを、高校生の頃から読みたいと思いつつ先延ばしにしていた。 7年ほど前に「少女架刑」を読んで感動していた作者だが、「少女架刑」はむしろ筆歴から見ると異色なのだろう、記録文学のほうが本流らしい。 さて本作の感想。 ・序文で、江戸期の漂流記とアナタハン女王事件や横井庄一 が繋げて語られるが、そこについては、うーん……。本作には掘る掘られる殺す殺される猜疑心疑心暗鬼妬み嫉みはほとんど描かれない。序文が浮いている感じ。 ・漂流以前の長平の来歴・人物設定・背景が簡略に示されるが、「かつぐ」という文化。まるでキルギスの誘拐結婚だ。wikipediaの「誘拐婚」の項目にも「高知県大豊町ではかたぐという言葉で誘拐婚が存在した」とあり、文化人類学的にも興味深い。 ・不毛な島の描写が凄い。無人島モノ漂流モノといえばヴェルヌ「十五少年漂流記」、デフォー「ロビンソン・クルーソー」、ゴールディング「蠅の王」、ダニー・ボイル監督レオナルド・ディカプリオ主演「ザ・ビーチ」ロバート・ゼメキス監督トム・ハンクス主演「キャスト・アウェイ」さらにはアン・リー監督「ライフ・オブ・パイ」などなど枚挙に暇ないが、本作は過酷さ・孤独において、結構極北なのではないか。島自体が不毛なのだから。YouTubeで「鳥島」を見たら、想像以上に不毛だった。 ・唯一救いなのは、見たことのない鳥が万単位で来ること。その鳥(あほう鳥)の肉のみを食べ、しかし絶望ゆえ体を動かさないことで、脚気で死ぬ……これは恐い。それに気づくのは、凄い。 ・ざっくりあらすじとしては、4人→1人になり→大坂船の11人→薩州船の6人→舟を作って脱出……という、それだけ。それだけをここまで克明に描くのは、やはり小説の力だ。 ・個人的には、舟作りへ向けた希望と絶望の交互よりも、ひとりっきりになってしまった中盤の精神錯乱に、凄みを見た。念仏を唱えることで保つ、という処世術というか自我保持術というかにも、頷くところあり。長吉はひたすら理性=言葉=ロゴスの人なのだ。
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日本は海に囲まれている。 ということを地理的な意味でも、意識的な意味でも、 強烈に感銘した重厚な一遍であった。 江戸時代、船がシケにあって船乗りが絶海の孤島に漂着。 火山島で水が湧かない、草木もわずかの実はアホウドリの生息地、 現代、鳥島と呼ばれているところにである。 ...
日本は海に囲まれている。 ということを地理的な意味でも、意識的な意味でも、 強烈に感銘した重厚な一遍であった。 江戸時代、船がシケにあって船乗りが絶海の孤島に漂着。 火山島で水が湧かない、草木もわずかの実はアホウドリの生息地、 現代、鳥島と呼ばれているところにである。 そしてサバイバル、次々と遭難仲間も増え、12年ののち、故郷に帰れるのである。 定評のある吉村氏の筆力が、壮絶に書き尽くしているのは当然ことである。 鎖国の政策が江戸時代の船乗りたちにどんな危険を与えたか、に怒りを覚え、 主人公の「長平」という人物がサバイバルに打ち勝つその人間の成長に共感する。 克明で、淡々とした吉村氏のメッセージ、 海に囲まれ黒潮の流れる太平洋に面している日本の位置を強く意識させられた。 また この主人公の読み書きもままならない若者が、人間として成長する強さは やればできる!という希望を与えてくれる。 閑話休題 その鳥島のアホウドリを食べることが主人公たちの命を救うのだが、 たしか、今ではそのアホウドリも絶滅の危機で、 トキのように保護繫殖の労をとっている、とドキュメンタリーで見た。 その時に食べつくしたわけではあるまいが(笑
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ピー瀧さんと玉ちゃんのお勧めで随分前から読みたいと思っていた作品。 その前に吉村昭氏の他の作品を十数冊読んで氏の作品の緻密さに感嘆。 本作も同様にその描写の細かさに無人島の暮らしの大変さを味わった。 いや〜自分ならどうなるやろう。 現代人なら生きていけないな〜。 いろいろ勉強...
ピー瀧さんと玉ちゃんのお勧めで随分前から読みたいと思っていた作品。 その前に吉村昭氏の他の作品を十数冊読んで氏の作品の緻密さに感嘆。 本作も同様にその描写の細かさに無人島の暮らしの大変さを味わった。 いや〜自分ならどうなるやろう。 現代人なら生きていけないな〜。 いろいろ勉強になりました!
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時間を忘れて一気に読んだ。 描写が超リアルで、まさにその場面にいるような気になった。 そして、あまりに壮絶な体験に触れ、いまの自分が大変だと感じていることなど何でもないと思えた。 本書に勝る吉村昭作品には出会えていない。
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とてもリアルに描かれた、約12年間の無人島生活の物語。描写が細かく、主人公を中心に内面の深掘りもされており、とても読み応えのある作品です。自分だったら1年も持たないだろうなと感じます笑非常に心の強い主人公に励ませれました。
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先に読んだ「アラスカ物語」に引き続き史実に基づいたサバイバル系のお話であるが、今回の主人公は苛酷な状況で、更に孤独である時間が長過ぎる。 仲間を失い、一年半もの間、絶海の孤島にたった一人で生き延びる。 殆ど道具と呼べる文明の利器の無い状況にありながら兎に角工夫して生活するうちに、...
先に読んだ「アラスカ物語」に引き続き史実に基づいたサバイバル系のお話であるが、今回の主人公は苛酷な状況で、更に孤独である時間が長過ぎる。 仲間を失い、一年半もの間、絶海の孤島にたった一人で生き延びる。 殆ど道具と呼べる文明の利器の無い状況にありながら兎に角工夫して生活するうちに、僅かな道具と自分に無い知恵と経験を持った漂流者が現れる事で、彼の運命の舵が大きくきられる。 それにしても、江戸、明治時代の人って寿命短い割りに身体丈夫。−40℃でも、鳥の羽の服でも元気でいられるなんて。 100歳時代という割にはやれトクホだ、サプリだか言ってる我々はサバイバル状況になったら、すぐお迎えが来るに違いない。
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普段私たちも孤独を感じることはあるがここで描かれている孤独はそれとは質が違う。社会から物理的に断絶され、死という恐怖と常に隣合わせの生活は想像を絶するものだった。 生きることを諦めなければいずれは道が開けてくるのかもしれないと思った。
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江戸天明の時代。 シケに遭い黒潮に乗って無人島に遭難してしまった男たちのドキュメンタリー小説。 水も湧かず、川も泉も無い。 火山島であるその島はアホウドリの生息地だった。 火も起こすことが出来ず、食料はアホウドリと貝しかない。道具も無い。 そんな過酷な無人島生活を12年も過...
江戸天明の時代。 シケに遭い黒潮に乗って無人島に遭難してしまった男たちのドキュメンタリー小説。 水も湧かず、川も泉も無い。 火山島であるその島はアホウドリの生息地だった。 火も起こすことが出来ず、食料はアホウドリと貝しかない。道具も無い。 そんな過酷な無人島生活を12年も過ごし、生き残って本土に生還した長平の壮絶な物語。 いやぁ、、、 壮絶な物語だった。 これ本当にあった話なんですよね!? 凄い。 生き抜く為の人間の知恵。 凄まじい感動を呼ぶ長編小説。 一読の価値はあります!! 思ったより、文章難しくなくて読みやすく、読みだすと止まらないスリル感。 あー!こんな生活嫌だぁ!!!って思うのに、光を求めて読み続けてしまう。 そんな小説だった。
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