二十億光年の孤独 の商品レビュー
追悼の再読。本書は、谷川俊太郎さんが21歳の時に刊行された第一詩集です。谷川さんの原点と言うべき、50篇の自由詩からなる表題作、4篇の散文、自筆ノート(写真)、表題作の英訳版で構成されています。 谷川さん、やはり凄いの一言です。18歳にして、目先の大学進学なんぞ全く考えてお...
追悼の再読。本書は、谷川俊太郎さんが21歳の時に刊行された第一詩集です。谷川さんの原点と言うべき、50篇の自由詩からなる表題作、4篇の散文、自筆ノート(写真)、表題作の英訳版で構成されています。 谷川さん、やはり凄いの一言です。18歳にして、目先の大学進学なんぞ全く考えておらず、書き溜めた詩を記したノートを読んだ哲学者の父、詩人の三好達治が驚愕。世間知らずの少年が見ていたものは、叙情性を秘めた輝きと孤独が同居する広大な宇宙でした。若くして、詩の神降臨!といったところでしょうか…。 制約のある詩や短歌、俳句などを、普段好んで読んではいませんが、時々琴線に触れる作品に出合い、心を動かされることがあります。吟味、濾過された言葉には、確かに真実がある気がします。 本書の魅力は、「二十億光年の孤独」はもちろん、後に書いた「自註」を含めた4つの散文、そして個人的に最重要なのが、「自筆ノート」があることです。 18歳で書いたノートのモノクロ写真には、丸みのある一字一字丁寧に書かれた文字が並び、50.5.1のように日付もあります。よくぞ掲載してくれました。それほど価値あるものと思います。 80ページ分の英訳は、若い方にとっては、原文と比較しながら読むのもありかなと…。 二十億光年という距離は、当時(1950)の谷川少年の知識にあった宇宙の直径らしいのですが、詩の中で 万有引力とは ひき合う孤独の力 宇宙はひずみ それ故みんなもとめ合う 宇宙は膨らみ それ故みんな不安 と記してあります。膨張し続ける宇宙は、今では直径が900億光年とも言われているようです。 かつての少年は、宇宙の膨張とともに、ちっぽけな地球で暮らす人の「孤独」「もとめ合う」「不安」の度合いが、もっと膨らむことを予見していたのでしょうか…?
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本当に惜しい人を亡くしました。 ご冥福をお祈りしたくない、どうかいかないで。 そんなことを思いながら。 この若者は意外に遠くからやってきた。 そして突忽とはるかな世界に旅立っていった。
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難解な部分を自分の中で咀嚼しきれず、著作の中ではあまり響かない読後感だった。読むタイミングも関係していると思うので、また記憶が薄れた頃に再読する。
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明快な詩を好む私には難解なものが多かった。 世間と折り合いながら生きてきた中年が、独特の軸をもつ十代の若者と、初見でそう容易く会話できるわけもなかろう。 その意味では随筆のほうがすんなり読めた。 薔薇と詩のくだりがいい。 高村光太郎の「五臓六腑のどさくさとあこがれとが訴えへたいか...
明快な詩を好む私には難解なものが多かった。 世間と折り合いながら生きてきた中年が、独特の軸をもつ十代の若者と、初見でそう容易く会話できるわけもなかろう。 その意味では随筆のほうがすんなり読めた。 薔薇と詩のくだりがいい。 高村光太郎の「五臓六腑のどさくさとあこがれとが訴えへたいから中身だけつまんで出せる詩を書くのだ」というフレーズを思った。光太郎の詩をまた読みたくなった。
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湧き出す言葉たちが一つの宇宙を作っている。 孤独を持って生まれた一人のひとの、曇りなく、みずみずしく、凛とした姿が浮かび上がってくる。 この世界とまたやって来る明日に向き合う勇気をくれるような、軽やかにして力強さを感じさせる詩集。
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気なった作品を一つ一つ紹介。英訳と見比べるのも楽しい。 ・一九五一年一月 様々な事物がそれぞれの性質や思想を語っていくようなインタビューじみた詩 一つ一つもかっこいい(特に海が好き)がラストの神「私は創った」のかっこよさは格別 全ての事物の総括としてラストに始まりの根源が現れる...
気なった作品を一つ一つ紹介。英訳と見比べるのも楽しい。 ・一九五一年一月 様々な事物がそれぞれの性質や思想を語っていくようなインタビューじみた詩 一つ一つもかっこいい(特に海が好き)がラストの神「私は創った」のかっこよさは格別 全ての事物の総括としてラストに始まりの根源が現れる構成が素晴らしい 鉤括弧が後ろ半分ないのも更なる神の発言を予感させており奥行きを感じる しかし生産者表示のようなシュールさも同時に感じる ・夕立前 雨の今に降りそうな予感とそれに立ち向かう詩人の姿 戦いへの高揚 ・二十億光年の孤独 表題作 壮大な宇宙空間とそこにポツンと浮かぶ孤独と仲間を求めるこころ、ラストに詩人のくしゃみで一気に地球に引き戻される空間的な移動のダイナミック 火星人の思考をネリリ、キルル、ハララと彼らの言葉で示そうとする遊び心 万有引力は引き合う孤独の力という一節があるが、シン・ウルトラマンの歌詞にそんなのがあった。あれもまさに地球という友人を得た孤独かつ単独の宇宙人の話であり、このイメージがあるのだろうか? ・机上即興 机の上の物品とそれに対する短いフレーバーテキストじみた詩的な解説からなる ゲーム的面白さ ・夜 幻想的な生と死 天国の情景 それを科学用語とテクノロジーで解説する面白さ
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人は、言葉に生かされ、言葉に殺される。時は超えてはいけないから、言葉で記憶する。また、言葉に救われる。 谷川さんの詩は、独りでありながらどこか広いところへ連れていってくれる、そう感じる。
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二十億光年の孤独の詩が際立ってよかった。 万有引力とは引き合う孤独の力である。 一般的に万有引力という言葉からイメージされるのは物理世界における厳格な定義であるのに、この詩では極めて心理的、精神的な意味での不安定さを想起します。
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なんだかんだ言って私にとって初めて一から読み終えた詩集になる。 谷川俊太郎の詩は本当に繊細で、力強くて好きだ。 ページを捲るたびに言葉がはらはらと降ってくる。 それがとても心地よかった。
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谷川俊太郎の詩集は何冊も読んでいるのですが、この特別な一冊を読むのは今回が初めて。 この詩を18歳前後で書いているんですか。 息子から差し出されたノート2冊を読んだ父が勇んで知り合いに送りつける理由がわかります。 本当に衝撃的。 唯一無二の存在であると改めて思い知らされました。...
谷川俊太郎の詩集は何冊も読んでいるのですが、この特別な一冊を読むのは今回が初めて。 この詩を18歳前後で書いているんですか。 息子から差し出されたノート2冊を読んだ父が勇んで知り合いに送りつける理由がわかります。 本当に衝撃的。 唯一無二の存在であると改めて思い知らされました。 また、詩だけでなく「私はこのように詩をつくる」などの随筆や直筆ノートが眺められるページ、英訳ページも収録されたちょっとした展覧会のような出来の楽しい一冊でした。
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