料理人 の商品レビュー
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ある日ある時ある田舎町に、異様な風貌の男が現れる。彼はその町の名門家にコックとして雇われ、その不思議な料理で次第に人々を魅了していくが・・・? なるほどまさに、「悪魔本」である。 不気味で恐ろしくて、でも奇妙な魅力があり、さっぱり本意が見えない。引き込まれるようでもあり、翻弄されているようでもある。 淡々とした語り口。断定的な説得力。そして美食、魅惑的で向上心とさえ勘違いしてしまいそうな、とろけるような美食・・・。 なんでもこの本の作者は経歴の一切が伏せられているそうで(その経歴すらもこの本をより引き立てるための要素で、だからこそ出版社も堂々と著者経歴にそう書いているのだろうけど)、現在でもその正体はわからない、そうである。 そしてそれは、この本の異様な主人公・コンラッドにも当てはまる。 以下、少々ネタばれ↓↓ 結局この主人公の目的、というか望みが何なのかは、この本では具体的には示されない。 ただ、遠く遠くからの遠景として、そして人づての噂として、淡々と、まるで風に飛ばされてきた便りのように、描写されるだけである。 しかし、その最後まで貫き通される「第三者的視線」と「底知れなさ」が、この物語の結末には非常にふさわしいものと思われた。 コンラッドが求めていたもの、それがどんな形であり、何であったかが明らかになったとしても、その「意味」を「噛み締め」、「味わい」、そして「消化」できるのは、おそらく彼ただ一人であろうから・・・。
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悪魔物にジャンル分けされるらしい 「悪魔物」なんでジャンル始めて知ったけど、 ゲーテのファウストとか読んでいるので、 「ああ、こういう話か」と納得がいく にしても作者についても全然知らないし、タイトルも特に惹かれるわけでもないのに、 めちゃくちゃおもしろい 爽快で、...
悪魔物にジャンル分けされるらしい 「悪魔物」なんでジャンル始めて知ったけど、 ゲーテのファウストとか読んでいるので、 「ああ、こういう話か」と納得がいく にしても作者についても全然知らないし、タイトルも特に惹かれるわけでもないのに、 めちゃくちゃおもしろい 爽快で、ブラックな雰囲気が漂っていて、なんかちょっと矛盾してるけど、それでもそれらが上手く両立している なんか伝わりづらいけれど、不思議なテンションで話に夢中になってしまう こんなに面白い小説久しぶりに読んだ
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謎の料理人の引力につられて結末まですらすら読める。ただ、読み終わったあとには何も残らない。その余韻のなさも含めて狐につままれた感覚に陥る作品。あやしい魅力を発していた主人公の行く末は……それでいいのか?と少し思う。
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ある村に食べた人の人生を変える料理を作る料理人がやってくる。 彼は何の目的で、この村にやってきたのだろうか…? 巧みな文章で、全編に奇妙で貴族風味な雰囲気が漂う。 スピードを保って読むことができました。 中盤以降は結末が読めてくどさが出たかな?ということで、偉そうですが☆4。 ただしエピローグは予想外でした。 ---------------以下ネタバレ-------------------- (私の想像も含みます) 読み終わって、まず感じたのが、「コンラッドは自分の結末(城の主となり食に溺れる)を想定し、望んでいたのだろうか」ということ。私は彼は望んで身を滅ぼしたのだと思います。 彼は悪魔に魂を売るように食に魂を売ったのです。(料理ではなく) まずおそらくコンラッドは、財産目当てではなく自分の「食」を満たすためにコブ家の乗っ取りを決行し、そしてプロミネンスの主となったのでしょう、というのも、 ―もしコンラッドが「料理を作ること」を生きがいにしているならば、プロミネンスに移った後でも料理長として料理を作り続けていたでしょう、しかし実際はエスターのように丸々と太る結末を迎えます。このことから、コンラッドの第一とする目的は、 「食」そのものであり、 料理の味、食器、配膳マナー、等々をそろえた上で、「食」を自らが味わうこと、そしてこれを実行できる料理人や従者の育成(つまりヒル家の三人)にあったことがうかがえます。 結婚前にハロルドが何度プロミネンスの調理場を見に行くのに誘っても「見に行くだけじゃいやだ、見に行くだけじゃ」と断ったことも、 妻となったエスターが丸々と太っているのを目にしても笑顔を向けたことも、このように考えれば納得がいくでしょう。(もしかしてエスターはコンラッドの「食」の完成の為の実験台にされたのかもしれません) それから、傍若無人に振舞いながらも、勝負事には平等だった左利きのブロッグ。 酒に溺れながらも、コンラッドの為にと雉を手に抱えたまま死んだルドルフ。 彼らや、さらにマクスフィールド、ダフネ、ドクター・ロウ達のキャラが、一層コンラッドの「悪役ぶり」を目立たせています。 コンラッドを最初から悪役と考えて読み直すと、新たにわかる点があるかもしれません。 ドクター・ロウはコンラッドがダフネを「殺そう」としていたことに気づいていたのかな?それは考え過ぎか。 それでは、読み直してきます
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簡潔かつ淀みない文体で、ハイスピードに展開する物語。 不気味な主人公の心情はまるで明かされず (「目的」は早々に分かるけれど、その裏にある「感情」が全く分からない)、 異様な結末に向かって突っ走る。 「食」という生々しい欲をテーマにしつつ、 何故だかべとつかない語り口で、悪夢的に...
簡潔かつ淀みない文体で、ハイスピードに展開する物語。 不気味な主人公の心情はまるで明かされず (「目的」は早々に分かるけれど、その裏にある「感情」が全く分からない)、 異様な結末に向かって突っ走る。 「食」という生々しい欲をテーマにしつつ、 何故だかべとつかない語り口で、悪夢的に面白い。 映画化されているけれど、どこかに映像落ちてないかな。 偽名らしく作者の正体が分からない。 残された2作品のうち、もう一つの作品は既に絶版…残念。 ミステリー、幻想文学、アート、フランス語などなど、 わりと雑食な、新しくできた古本屋さんで購入(神保町)。
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突然現れた天才ともいうべき能力の料理人。 じっくりコトコト時間をかけて作るスープのように、彼は慎重そして狡猾に、周りの者を支配してゆく… どんな展開になるかと思ったら、まるで遅々として進みやしない。起伏の少ない日常描写に飽きるし、主人公の思惑が読めた時点で、この話は私の中で終わ...
突然現れた天才ともいうべき能力の料理人。 じっくりコトコト時間をかけて作るスープのように、彼は慎重そして狡猾に、周りの者を支配してゆく… どんな展開になるかと思ったら、まるで遅々として進みやしない。起伏の少ない日常描写に飽きるし、主人公の思惑が読めた時点で、この話は私の中で終わってしまった。 それでもレビューが高評価だったから期待して最後まで読んでみたけど、意外性はエピローグにしかなかったな。あれは蛇足かもしれないけれど。
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一人の料理人が、その卓越した腕前で人々を魅了し、やがて支配していく。 とても不気味でざわっとくる筋立て。 あまり頭の良くない無防備な人が、たった一人のずるがしこいやつに どんどんいいようにされていく。これでいいのかよ!? と言いたくなる。 ピカレスクロマンの変形バージョンなのか。
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ストーリーがとにかくすごい。場面が急展開で変わっていくし、コック・コンラッドの何気ない一言で何もかもが決められていく。ああなるほどな、というコンラッドの言葉なのですが、気がつけば、彼の望む環境に変わって言っている。 唯一気になったのが、ラスト。どうにもこうにも、コンラッドの描写に...
ストーリーがとにかくすごい。場面が急展開で変わっていくし、コック・コンラッドの何気ない一言で何もかもが決められていく。ああなるほどな、というコンラッドの言葉なのですが、気がつけば、彼の望む環境に変わって言っている。 唯一気になったのが、ラスト。どうにもこうにも、コンラッドの描写に「幸せそう」とか「嬉しそう」というのがないのが気になりました。 彼はこの結果に満足だったのかな、と疑問を感じます。
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ハヤカワ文庫の中でかなり読みやすい小説だなと思います。主人公のコンラッドの不気味さが病み付きというか。読後は「色んな人間がいるんだなー・・・」となんだか考えさせられました。
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読書が好きな人に「お薦めは?」と聞かれた時に薦める一冊に決めています。 読後感を一言で表すと『奇妙な味』かな。 古い表紙のイラストの方が好み。
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